第32話 仮説の下準備
1
「おーい登。大丈夫か?」
湖也達は遠くへ避難した登の状態を確認しに行く。
だがそこにいたのは陸と空だけだった。
「あれ?登は?」
「さっき校長が来て保健室に運んでいくって」
陸が答える。
「え!?」
湖也が叫ぶ。
校長が血斗をさらって行った?
「え!?って、そんな驚くことか?こんなところで寝てるより保健室に行ったほうがいいだろ」
「今登が校長の手に渡ったらまずいんだ!」
「な、なんだよ急に」
湖也は校長について考えている事を陸と空に話す。
「じゃあ今までの全ては校長のミスじゃなく、校長が意図的に起こしていた可能性があると」
「あくまで推測だが、じっとしていられない。俺たちも学校へ戻るぞ」
「でも、ここから学校までどのくらいかかるのかしら?」
紗水が言った。
「え?」
「ここから学校まで13キロよ」
「校長のテレポートを借りる!」
「こういう時は利用しようとするな!」
紗水が叫ぶ。
「しょうがない電車で戻るか」
湖也達が行こうとすると、陸がつぶやいた。
「あれ?亮矢いなくね?」
「あ、忘れてた」
「俺が運んでいくよ」
振り返ると亮矢をおんぶした大政がやってきたところだった。
「いや…俺は大丈夫だから…」
亮矢が力の無い声を漏らす。
「無理するなって、俺に任せろ。ほら、行くぞ」
そう言うと大政は駅まで向かった。
「さすが三年生…頼もしいなぁ」
陸が言った。
「お前は三年になっても頼もしくならなさそうだけどな」
2
血斗は目が覚めると保健室にいた。
「…知らない天井だ」
「なんでみんな同じ反応するのだろうか…」
校長は呆れた声を漏らす。
「あれ、みんなは?」
「いずれ戻ってくるさ。君が重症だったから先に連れて帰ってきた」
「そうなのか…空の奴心配してるだろうな」
「君はいつも空君と一緒にいるね」
「いじめられてた俺を救ってくれた大切な俺の彼女だからな」
「君は以前名前が原因でいじめられていたね。湖也君と同じような人生を歩んできておる」
「え?あいつも名前が原因で?」
「っ!…」
校長は何かに気づくと立ち上がる。
「ノボリ!大丈夫⁉︎」
保健室のドアを勢いよく開け空が飛び込んでくる。
中には血斗しかいない。
「あれ?あいつは?」
湖也は部屋を見渡す。
「仮にも校長なのにあいつ呼ばわりとは…」
紗水がつぶやいた。
「あんな奴はもう校長なんかじゃねーよ。登、あいつは見なかったか?」
「校長なら今さっきテレポートで消えてったけど…どうかした?」
「お前なんか変な改造とかされてないよな⁉︎暴狐にされてたりしないよな⁉︎」
「されてないけど…あ、そうだこれ」
血斗は少し大きめの筆箱くらいの大きさの箱と手紙を差し出した。
「なんだそれ」
「校長が三村に渡して欲しいって」
「俺に?」
湖也は二つを受け取ると折れ畳まれた手紙を開き、内容を確認する。
『これを読んでる頃には君は私の正体を知りつつあると言う事だな。こうなった以上もう君たちに手を貸すわけにはいかない。しばらく姿を消させてもらうよ。暴狐から市民を守るために頑張りたまえ』
「なんだこの偉そうなふざけた文章は!!」
湖也は怒りのあまりビリビリに破いてしまいそうになる。
「ちょっと!まだ続きがあるでしょ!」
「…っ!あぁ、そうだな」
湖也は続きに目を通す。
『前にも説明した通り君たちの中から暴狐が生まれてしまった場合、デバイスが機能しないようになっている。
そうなった場合、その暴狐を倒さない限りデバイスを起動させることは不可能だ。だが生身で暴狐に立ち向かうのは厳しい。そこでそのスイッチを湖也君、君に預けよう』
湖也は一緒に渡された箱を開ける。
中にはボタンとダイヤルがついたグリップが入っている。
『デバイスに仕組まれた爆発機能を起動させるスイッチだ』
「爆発機能⁉︎」
『それぞれのデバイスに記されている番号にダイヤルを合わせてボタンを押せばデバイスが爆発する仕組みだ』
「仕組みだじゃねーんだよ。つまりは仲間を殺せって事だろ?」
『今の君なら理想のヒーローになれる。勇気を振り絞れ』
「なにこのわけ分からん最後の一文」
最後まで読み終えたことを確認すると湖也は、
「だぁぁぁぁぁぁぁぁ!くそぉぉぉぉぉ!」
と叫びながら手紙をビリビリに引き裂いていく。
「なんなんだよこれ、あいつ俺に責任押し付けて逃げたって事かよ⁉︎」
「湖也、大丈夫?」
天が心配そうに言う。
「そのスイッチどうするの?」
紗水も心配そうな様子で聞いた。
湖也はキッパリ答える。
「このスイッチは俺が保持する。誰にも取られないように、悪用されないようにな。俺は絶対に悪用しない。信じてくれ」
「まぁ、もうお前がこの学校のリーダーみたいなもんだしな」
上伊が言った。
「本当?実は俺お前のリーダー性に憧れてたんだよな」
「もうお前は俺を超えてるよ」
「というか上伊君がリーダーしてるとこ全く見てないよね」
「「しー!」」
天が言ったのを紗水と陸が押さえる。
湖也の肩を叩く。
「よろしく頼むぜ」
「任せろ」
「でもなんで校長はそんな事手紙で伝えたのかしら。別に普通に渡せばいいのに」
「一旦校長室に行こう。登立てるか?」
「あぁ、もう大丈夫だ」
みんなは校長室に行ったが校長の姿は無い。
一応隠し扉の奥にある地下室にも行ったがそこにも居なかった。
「俺たちの事を察して逃げたか…」
「それじゃあどうするの?」
「あいつはテレポート能力があるから逃げると捕まえるのは難しい。一旦あいつの事は置いといて暴狐の方に専念したほうがいいな」
「それじゃあ海高に潜入する?敵のアジトに!」
天が楽しそうに言う。
「いや、あいつらはバラバラで活動しているから海高が拠点となってるかは怪しいところだ。蓮真を空き地のキャンピングカーで暮らしてたしな」
「蓮真に聞けば居場所教えてくれるんじゃない?」
「あ、そうだ連絡先教えてもらってたんだった。上伊が」
上伊は蓮真の番号にかけてみるが電話には出なかった。
「やっぱり偽物なんじゃその番号」
「お前が信用しなくてどうする」
上伊は呆れた様子で返す。
3
暴狐も校長も現れず数日が経った。
「飯ー、飯をくれー」
陸がマット上で転がりながら言う。
「はいはい、今作るからねー」
学校に来ているおばちゃんが昼飯の用意をしてくれている。
「おばちゃん悪いなー。タダ飯になっちゃって」
「いいのよーみんながこの町を守ってくれるんだから」
せっせと働くおばちゃんを見て湖也は葉種に言う。
「おばちゃんいなかったら俺たち食いもんなくて死ぬよな」
「また働くしかありませんね」
「葉種ー。水ー。水をくれー」
「もう!私の能力は無から水を生み出す事じゃないですよ!」
亮矢の件があって、みんなそれぞれ能力を身につけた。
表と裏の顔を一つに絞る事で能力をデバイスに記憶させることができた。
葉種はトルボと同じく水を操る能力。
しかし暴狐と違って二つの能力を得る事はできない。
「このデバイスもなんでもありだな」
「校長がそもそもこうなる事を前提として設計したのかも知れません」
「だったらどうして俺の能力は開花しないんだ?」
そう、湖也には能力が生まれなかった。
血斗と上伊も能力を習得できていない。
「他のみんなは使えるのに」
「俺たちのだけ使えないのおかしいよな」
3人が顔を合わせて話し合う。
その様子を見て葉種は呟いた。
「なんか、3人って似てますよね」
「「「は?どこが?」」」
「そーゆー所ですよ」
納得のいかない3人だが、突然湖也が何か閃いた。
「つまり俺は登でもあるってわけだ。つまり青山さんは俺の彼女でもある」
「えぇ…ちょっと待ってよ三村君…」
空は腕を掴まれ困惑する。
その様子を見た紗水は怒りの表情を顔に出す。
「ちょっと湖也!何勝手な事言ってんの?」
「だって俺お前より青山さんの方がタイプだし、大体俺たちは付き合ってねーじゃんか。俺青山さんと付き合う登に少し憧れてたんだよな」
「ほう?勝手な事言ってんじゃねーか」
「おい。勝手に空触ってんじゃねーよ」
「あ、やべ」
風神雷神のように立ちはだかる紗水と血斗の顔を見て湖也は慌てて逃げる。
「「待てゴラァ!」」
その様子を見て天が呟いた。
「湖也が風神から逃げて大移動してる…」
「ん?なんか言ったか?」
おにぎりを貪りながら来た陸が返す。
その様子を見て葉種は賑やかでいいなーと思いつつもふと疑問を頭に思い浮かべる。
「あれ?というか何で私たち学校で暮らしてるんでしたっけ?」
「そりゃここにいた方がみんな固まって動きやすいだろ?」
「でも、もう私たちそんなに多くありませんし校長もいないんじゃ固まる意味ないんじゃないですか?」
「確かにそうだな」
上伊が呟いた。
「むしろ校長がいなくなり、いくら頑丈が校舎があるとはいえまとまる方が危険になったまであるか。もうみんな各々の家に帰った方がいいんじゃないか?」
「私、そろそろお母さんの顔見たいです」
「私のテレポート能力使えば目的地まですぐ行けるしね!ようやくみんなの役に立てる!」
凛も賛成する。
「な、それでいいよな湖也」
「何⁉︎ちょっと待って今それどころじゃ無い!」
「お前が撒いた種だろうが」
「なるほど、確かに帰ってもいいかもしれないな」
「それじゃあみなさん一旦帰りましょう!」
各々は荷物をまとめると帰っていく。
「およそ一ヶ月ぶりの帰宅だね、湖也」
天はニコニコしながら言う。
「あぁ、親の顔見るのも久しぶりだな」
4
(お母さん達、暴狐にやられてないだろうな)
帰宅中、嫌な想像をしてしまう。
(いやいや変な想像はやめろ!ようやく帰れるんだ。楽しい事を考えないと)
家に到着。
ドアの鍵を開けて、ドアノブを握る。
さっき嫌な想像をしたせいで心臓が変な鼓動を脈打ち、手から変な汗が溢れ出している。
思い切ってドアを開けた。
その目の前に、ちょうど掃除機をかけようとしていたお母さんがいた。
「湖也!」
お母さんは笑顔で叫ぶ。
その姿を見るだけで、気がつくと湖也の目から涙が溢れていた。
「お…お母さん…」
「もう学校のことは大丈夫なの?」
「お母さぁぁぁん!」
お母さんの質問には答えず、湖也は情けない声を発しながら、勢いよく靴を脱ぐとお母さんの胸に飛び込んだ。
「無事で、無事でよかった…!」
「大変だったのね…おかえりなさい。湖也」
お母さんの優しい言葉で安心して余計に涙が溢れ出す。
文化祭の時も、いじめられてた時も、親に向かって泣き叫ぶことはなかった。
ただ、少しの期間顔を見なかっただけでこんなに情けない姿になってしまうとは、まだまだ子供だったんだなと泣きながら湖也は実感した。
教師や仲間達、校長へと信頼など沢山のモノを失ったが家族だけは失いたくないと思った。
数分して、ようやく涙は止まった。
「稀里には言うなよ。俺が泣いてたこと。兄として恥ずかしいからな」
「分かってるよ。少し待ってなさい。今からご飯作るわ」
そういえば結局昼飯は食べずに帰ってきた。
陸は食べてたけど。
時計を見ると4時を過ぎている。
「うん。ありがとう」
湖也は笑顔で言った。
「ただいまー!」
大きな声と共にドアが勢いよく開く。
稀里が学校から帰ってきた。
「あ!お兄ちゃん!帰ってきたの?」
「あぁ、心配かけたな」
稀里は湖也の隣に抱きつき、顔を埋める。
だが次の瞬間、何かを思い出したように叫んだ。
「あ!そういえばお兄ちゃん。さっきね、稀里怪獣見たんだよ!」
「なんだって!?」
湖也はすぐに家を飛び出そうとする。
が、母が彼を呼び止めた。
「行くのね」
「夕飯までには帰ってくる。安心して」
家を出ると走りながら周りを確認する。
(どこに出たんだ)
スマホを取り出し、電話をかける。
(デバイスに通信機能があればなぁ)
『もしもし?もう寂しくなった?』
相手は天だ。
「暴狐が出たらしい。探してくれないか?」
『おー早速僕の飛行能力が役に立つ時だね』
「それにしてもお前が飛行能力って名前通りだな」
『名前は個性の象徴だよ?』
「本当かぁ?あ…」
『え…どうしたの?』
「見つけた。でっかいやつ」
湖也の目の前には、巨大な土の暴狐がいた。
「あの時の暴狐だ」
『あー開戦の日の?』
「とりあえず山崎に連絡する。一旦切るわ」
『おけー』
続いて凛の電話に繋げる。
「山崎。暴狐が出た。みんなを集めてくれ。場所は…」
『ごめんだけどこっちにも出てるんだよねー。全員送ることはできないかも』
「分かった。じゃあとりあえず天と陸をこっちに」
次の瞬間、湖也の背後に天と陸が現れた。
『結構能力使うの疲れるわ』
「そりゃあ、テレポート能力は大変だろうな」
『三村君もらってくれない?』
「他人の能力奪うことって出来るのか?」
通話を切ると、後ろの陸が顔を青く染めていた。
「湖也、今山崎さんにもらってくれない?って言われてなかった?それって山崎さんが湖也のお嫁さんになるってことか⁉︎」
「お前をこっちに呼んだのは間違いだったかもしれない」
土の巨人が現れたのは大きな道路の真ん中だった。
そこまで来て湖也は異変に気づく。
「おかしいな。こんなに巨大な暴狐がいるのに周りは全く逃げたりしてない」
そう、巨人が道路の真ん中にいるのに、周りの人間は気に留めず平然としている。
「おい!あれ見ろよ湖也!」
陸が慌てて指を刺す。
そこでは走行中の車が巨人の足にぶつかり、動けなくなっていた。
後ろを走っていた車も堰き止められ、数台がその場に溜まって行く。
「まずい!」
湖也達は急いで装甲を身につけてそこまで走ろうとする。
「みんな逃げて!」
湖也の声は届かず、次の瞬間、溜まった車が一気に爆発した。
「あ…」
助けられなかった。
「あぁぁぁぁ!」
周りでは車の爆発に注目人々と装甲を身につけた湖也達に注目する人といた。
「ねぇ湖也!」
今度は天が指を刺すところを見る。
巨人が動き出したのだ。
これ以上動かれるとさらに被害が出てしまう。
「天!」
「うん!」
天は自身の能力を利用し空高く舞い上がり、巨人の頭部に着地する。
「しかし何でみんな気づいてないんだ?」
「こいつの二つ目の能力じゃ無い?」
「それしか考えられないか」
頭部に着地した天は暴狐の頭を思い切り叩くが、びくともしない。
天に気づいた暴狐が天を摘み目の前まで持ってくる。
「なぁお前、湖也って奴を知らないか?」
突然の質問に湖也達は沈黙する。
「湖也なら俺だけど」
「ん?そうかお前か」
すると突然、巨人の体がドロドロに溶け、土石流の中から少年が現れる。
「お前は…?」
「俺は大羅。海高の生徒会の一人…つー悪役っぽい自己紹介憧れてたけどいざやると恥ずかしいな」
大羅は恥ずかしそうにボサボサと頭をかく。
「随分と余裕そうにしてるじゃねーか」
「余裕っつーか、俺あんま戦う気無いんだよね。やるってんなら相手になるけどあとハデスを潰す為なら喜んで戦う」
「お前ら仲悪いのな…」
陸はつぶやいた。
「出向いたのもお前を探す為だし。ミラーがお前がどっかの家に入って行くのをみたって言ってたけど、俺方向音痴だからさー。適当に暴れてたら出てくるかなーと思って。まさか鷲羽を失った影響がここで出てくるとは…」
「ふざけんな!そんなことのために関係無い人たちを巻き込んで!」
「別にいーじゃねーか。だってあいつらは…」
「良くねぇだろ!」
湖也は大羅の言葉を無視し殴りかかろうとする。
それを軽く避けると大羅は再び土の鎧を纏う。
今度は竜の姿になった。
「あんまり俺を怒らせるなよ。せっかく生身で話し合いをしようと思ったのに、叫ぶわ殴るわ。イラッとするな!」
尻尾を振り回し湖也達を払い退ける。
勢いのあまり周りの建物にもあたり、瓦礫を落としながら崩れて行く。
「陸!」
「分かった!」
陸はその瓦礫を操り、通行人に当たるギリギリで止めた。
「あいつは危険だな」
「自分の都合で暴れる奴は危ないってそれ一番言われてるからな」
「陸ってあんな感じの能力だよね」
天が期待の眼差しを向ける。
「…なんだよ」
「陸のカッコいいドラゴンが見たいな〜」
「確かに、あんな感じの姿になればあいつとも互角にやりあえる」
「湖也まで無茶振りかよ!」
大羅は足を上げ湖也達を踏み潰そうとしていた。
「避けろ!」
湖也の掛け声でみんなそれぞれの方向へ飛ぶ。
「ったくやってやらぁ!」
そう言うと陸は先ほどのビルの残骸を操り体中にくっつける。
みるみるうちに大きくなり竜の姿になった。
「「おおー」」
二人は感心して見上げるが、
「大羅より小さいね」
「うるせぇ!」
陸の竜は大羅より二回りも小さかった。
「小さい分素早さはこっちの方が上!だといいな!」
そう言いながら羽ばたく。
「は!そんな小さい体で勝てると思うなよ!」
大羅も羽ばたくと大きい体を力強く振り回して尻尾を陸に叩きつける。
勢いよく落ちていった陸をそのまま踏みつけようとする。
「陸避けろ!」
「そんなトレーナーのようなこと言うな!」
陸は勢いよく飛び上がって避ける。
「なんかブレスとか吐けないの?」
「俺も向こうもこれは竜の形をしたただの瓦礫の塊。ブレスなんか吐けねーよ!だぁぁぁ!」
陸は勢いよくタックルをするが、大羅は全く動じない。
「茶番はこれで終わりだ!」
大羅が陸を捕まえようと腕を伸ばした瞬間、
「今だ!」
陸は素早く回避すると背後に回り込み大羅の翼をもぎ取る。
翼を無くした大羅を地面に叩きつけ、追撃しようとするが、
「お前は甘い」
と言う声と共に大羅の体は巨大な手に変化し、陸の体を掴んでしまう。
「まずい!」
陸は体の瓦礫を分解して難を逃れる。
いつのまにか通行人達にも大羅の姿は見えるようになっており、みんな遠く離れた場所で戦いの様子を観察し、マスコミ達も来ておりお祭り騒ぎである。
「頑張れ!」
「負けるなー!」
と言う声援が遠くから聞こえる。
「こんな応援されちゃ負けないわけにはいかないね!」
「でもどうやって倒すんだよ」
「俺が囮になるからなんとか隙をついて攻撃してくれ」
湖也が言った。
「そんな無茶な!」
「お前ら、何グダグダ話してんだよ」
突然、なぞの声と共に巨大な手が粉砕された。
湖也達の目の前に着地する。
「大政先輩!かっこいい!」
「なんだ貴様!」
大羅は再び土を集め巨人の体を作る。
「そんな体で俺に勝てると思うな」
「なんだと!」
大羅は腕を振り上げ叩き潰そうとするが、次の瞬間その腕は根本から切り離されていた。
「ほれ陸それ使え」
切り離した土の腕を陸に向かって放り投げる。
その土を使って陸は体を形成し再びドラゴンの姿になる。
「これでこっちの方が有利になったな」
「くそったれ…」
大政は大羅にとどめを刺そうとしたが、次の瞬間大羅の土の体が崩れ本体は姿を消してしまった。
「やつめ!俺と同じことしおって!パクんな!逃げるな!卑怯者!」
陸は怒りの叫びを上げる。
「まああんな程度ならいつでも倒せる。結構な被害が出たらしいな」
「すみません先輩…助けられなかった」
「俺ももう少し早く駆けつけてやれればな…次行くぞ」
「次?次ってなんのことです?」
大政の発言に湖也は首を傾げる。
「いろんな所で暴狐が出現してるんだ。みんなそれぞれ対処しているが中にはかなり苦戦を強いられている所もある。そこんところの応援に行くぞ」
「応援?チアボーイになるの?」
「そっちの応援じゃねぇ」
天の言葉に湖也はツッコむ。
「こっちだ」
そう言うと大政は走り出す。
「あれ?山崎のテレポートは使わないんですか?」
「あの能力はかなりの体力を消費するらしい。無理に使わせる気は無い」
「そう言えば先輩はどんな能力を?」
「暴狐や君らの位置把握能力だ」
湖也達はさらなる戦場へ突撃する。




