第31話 夢の跡地
日常回
1
「鷲羽の奴!危険な事をしおって!」
校長は怒っていた。
「奴はとんでもない野郎だ!早めに片付けなければならない!」
そう言うとアタッシュケースを手に取り飛び出す。
2
「あれ?湖也?」
紗水が周りを見渡す。
信じられないことが起こった。
みんなが消えたのだ。
ここに残されてるのは紗水、葉種、大政の3人だけ。
ショッピングモールの駐車場のど真ん中、気づいたらあたり一面を覆っていた氷はあの光景が嘘だったかのように消えてなくなり、静寂を漂わせている。
「みんなどこ行ったんですか⁉︎突然消えましたよ⁉︎」
葉種もキョロキョロと首を動かして叫ぶ。
「どこ言ったのかしら…これも暴狐の仕業?」
「まぁそうだろうな」
大政は駐車場の近くに聳え立つビルの屋上を見上げる。
「みんなが消える前、あそこに少年が一人で立っていた。暴狐のリーダーと一緒にいた奴だ。もしかしたら、あいつの仕業かもしれないな」
「みんな一斉に消すなんて!どんなチート能力ですか⁉︎」
「とりあえずもう少し詳しく辺りを調べよう」
「そうね」
紗水がそう返事して動き出そうとした時だった。
「あっ!いたー!」
と声が聞こえた。
みんなが一斉にその方向へ向くと、血斗を安全な場所へ避難させていた天がこっちに向かって走ってきているところだった。
「登君と青山さんを避難させていたら突然みんないなくなっちゃうんだもん。怖くて泣きそうになっちゃったよ」
「もう既に目の周りが赤くなってるけど?」
紗水は呆れたように指摘する。
「エヘヘへ…だって急にみんないなくなっちゃうんだからすごく怖くなって…」
天は頬をかき照れ笑いをする。
「何よその笑い方。気持ち悪い」
「おい、あれを見ろ」
大政は駐車場の中心にある大時計を指さす。
「さっきから少しも時計の針が動いていない」
「えぇ⁉︎本当ですか⁉︎」
葉種はいち、にい、さんと数え始める。
ゆっくり数えるが60数え終わっても時計の針は動かない。
「時間が止まってる…?」
葉種の心にどのようにしてこの事態を受け止めたらいいか複雑な感情が入り混じる。
「故障じゃ無いの?」
「そんなわけないでしょ」
「俺たちだけ別の空間に飛ばされたと考えるのが適切だな」
「元の空間に戻るにはどうしたらいいんですか?」
「そんなもん知るか。とにかく、他にも人がいないか探しながら戻る方法も探そう」
「じゃあ、とりあえず中入りません?」
葉種は我先に走り出すとショッピングモールの入り口を指差す。
ということで四人はショッピングモールの中に入った。
先ほどまで駐車場で戦闘をしていたので、殆どの人が中に退避しているはずなのに中には誰もいない。
「やっぱり誰もいないわね」
「ね!誰もいないとさ。なんか走り回りたくならない?」
天は目を輝かせながら言った。
「は?あなた急に何言ってるの?」
「あ、それ分かります!普段しちゃいけないって怒られるけど、注意する人がいないとどうしてもやりたくなっちゃいます!」
葉種が乗っかる。
「注意する人ならここにいるわ」
「いいじゃんちょっとくらい。はい、タッチ!」
そう言うと天は葉種の肩を叩く。
「あはは、葉種ちゃん鬼ー!」
一目散に駆け出した。
「あ、ちょっと待ってくださいー!」
続いて葉種も走り出す。
「全く、なんで子供ってあーなのかしら」
「俺たちも同じ子供だろ。見失わないように気をつけないとな」
大政と紗水はゆっくりと歩を進める。
「先輩がまともな人で良かったわ」
「まともじゃ無いさ。俺なんか、まともぶってるだけ」
「それ自分で言う?」
「あんたもまともじゃないな。先輩に向かってタメ口なんて」
「この状況で先輩後輩とかどうでも良くなっちゃって。いやなら敬語にするけど?」
「別にいいよ」
2人が人を探しながら歩き回っていると、天と葉種の
「「2人とも早くー!」」
という声が聞こえたのでため息をつきながら早足で追いつくことにした。
葉種と天が紙に包まれている饅頭を手に取る。
「別の空間に来たと言うことはこれ食べてもバレませんよね?」
「もしバレても責任とらんぞ」
「2人で勝手にして頂戴」
「2人ともノリ悪いなー」
天はそう言うとめくり掛けた紙包を元に戻して元の場所に置く。
「せっかく自由に何でもできるってのに、つまらないの」
「別の空間だからって何でも出来るってわけじゃ無いぞ」
「でもこうやってみんなでショッピングモールに来るの楽しいですよね!」
「葉種ちゃん、私たちは遊びに来たんじゃないのよ?」
「分かってますって!だからこうやってはしゃいでいるんじゃないですか!誰か気づいてくれるように!」
「だったらそんな回りくどいことやらないで普通に声出して探しなさい」
「でもそれじゃなんだか気持ちが暗くなりません?助けの声を上げてたら出られなくなったらどうしようとかマイナスな事考えそうで怖いです。前向きに楽しんでいればいつか元に戻るし気づかれる可能性もあがる!そう思いません?」
「あなたのお花畑のような脳みそが羨ましいわ」
「じゃあ取り替えますか?」
葉種は顔を紗水の目の前まで近づけて囁く。
低く、冷たい声だった。
「⁉︎…」
唐突の急接近に紗水驚いていると、葉種は紗水の額をちょんとつついて笑った。
「はっはっは先輩冗談ですよ!行きましょ!」
「あ、ちょっと待ってよー」
走って行く葉種に追いつくように天も駆け出した。
「恐ろしい奴だなあいつ。からかい方を熟知している」
「へっへぇ〜人をからかうときってあんな風にすればいいのね。いい勉強になったわ」
「声震えてるけど大丈夫か?」
「大丈夫!人を探しましょう!」
声を張り上げる紗水に大政は驚きつつ探索を続けた。
四人はパーティーグッズを取り揃えている店まで来た。
「この中まで探す必要あるのかしら?」
紗水は首をかしげる。
「ただのモールの店巡りになってるな」
大政が苦笑いした。
「いいじゃないですか普段あまりないメンツで店巡り!」
「ま、実際楽しいからいいけどさ」
「あなたがそっち側に行ってどうするのよ!」
紗水が大政に向かって叫んだ。
「いやあんたにつくとは言ってないし」
「ほら紗水先輩これとかどうです?」
葉種は近くにあった黒いとんがり帽子とマントを紗水に着せる。
「いいじゃないですか本物の魔女みたい」
「そ、そうかしら…」
「美しいです!よっ!美魔女!」
「そうね美魔女…って誰が美魔女だごら!私はまだ高校生よ!」
紗水は葉種のほっぺたを思い切り引っ張りいじくり回す。
「あんたを魔法で喋れなくしてやろうかしら!」
「ひぃぃ!助けて天先輩!」
葉種の助けを聞いて天は笑顔で紗水に言った。
「いいじゃん!美魔女!」
「あんた美魔女の意味分かってないでしょ」
「これは?」
大政は天使の羽の飾り物を紗水の背中につける。
「うん、かわいい」
「いや可愛いとかの問題じゃ無くて…」
「あ、こっちにタコの足あるよ」
「なんでタコのコスプレ衣装とかあるわけ…」
「これ首にぶら下げてみたら?」
「重っ!ってこれ鉄アレイ⁉︎何でこんなところに…」
「ドラゴンの鉤爪…」
「あっ、これなんかどう?民族の祭りの衣装!河原さん脱いで!」
「脱ぎません!てか天も便乗するな!」
色々着せられて数分後、紗水の姿はこの世のあらゆるものを身に纏った怪物みたいに変貌した。
その姿を見て3人は呟く。
「「「暴狐だ…」」」
「あんたらがやったんでしょうが!」
紗水は脱ごうとするが、様々なパーツが複雑に絡み合ってなかなか脱ぐことができない。
「ちょっとこれ脱げない…ほら3人とも脱ぐの手伝いなさい!」
必死に脱ごうとする紗水を見て葉種は思わずぶっと吹き出し、次の瞬間には3人で大笑いしていた。
「何笑ってるのよ!」
「悪い悪い、今ほどくから」
「あぁ、陸の奴がこの場に居なくてよかったわ」
絶対もっと酷いことになるもんと紗水は陸の何かを企む顔を思い描いて身震いをした。
「ほら、もとあった場所に片づけなさい」
紗水は腕いっぱいにあるコスプレ衣装を全て天に渡す。
「えぇー何で僕⁉︎最初に言ったの葉種ちゃんだし」
「3人で片づけなさい」
「そうやってなんでも上から目線で物事決めると嫌われますよ紗水様」
天が紗水の耳元で囁いた。
「あんた達みたいに人をおもちゃみたいにして遊ぶ子も嫌われますー!さっ、お片づけでちゅよー」
「僕は赤ちゃんじゃないやい!」
「⁉︎」
一瞬、紗水は背後に違和感を感じて振り返る。
「…」
「…河原さん?どうしたの?」
突然の反応に天が心配そうに問いかける。
「今あそこの通路を誰かが通った気がしたんだけど…」
「おい!それって本当か⁉︎」
大政は急いで通路のほうへ行き人がいないか確かめる。
「誰もいないぞ」
「ごめんなさい。多分気のせいだわ」
「もしかして、幽霊とかじゃないんですか?」
葉種が紗水をからかうように言った。
「そんなわけないじゃない!」
「いや、ここが異次元でしかも死後の世界に迷い込んでしまったとしたら、そこら辺に幽霊がうじゃうじゃ居てもおかしくないかもしれません」
その言葉を聞いて天と紗水は顔を青くして飛び上がった。
「葉種ちゃん?今言うべき冗談じゃないよ?」
「そそそうだよ冗談ってのは場と空気を選んで言わなきゃ面白くないのよもう少し頭使いなさい」
「最後に棘を飛ばしてくるのはなんでですか」
大政は誰も居ないはずの通路を眺める。
「幽霊か…だとしたら暴狐にやられてったあいつらいるのかな…」
寂しそうに呟いた。
「先生も…」
「あっ、いやほんとに死後の世界に来たわけじゃないと思いますよ?」
「ん?待ってここが死後の世界って事は僕たち死んだって事?」
「ちょっと天先輩?ただの冗談ですって。死後の世界なんてあるわけないじゃないですか」
「まぁ死後の世界じゃないだろうし。さっきのもある私の気のせいだから。人を探しましょ」
「結局振り出しに戻ったのか」
「そもそも全然話進んでませんし」
四人は探索を続けた。
「あっ、みなさんあそこ知ってます?」
葉種はお化け屋敷を指差した。
「最近お化け屋敷が期間限定でやってるらしいんですよ。なかなか怖いと評判なんですけど行きましょうよ!」
「何でさっきの話をした後にこういうところ行こうとするのかしら?」
紗水は言葉に99%の怒りを乗せて言った。
「それに脅かす人とかもいないから何も怖くないしな」
「ビビってるんですか?」
紗水と大政はスルーしようとしたが、その挑発に天が乗ってしまって
「ビビってないし!僕一人でもいけるし!」
と勝手にズカズカと入っていった。
「葉種ちゃん。何余計なこと言ってくれたのかしら?」
「ほら、先輩達も行きましょうよ!」
「出口で待ってるから行ってきてもいいぞ」
「私もそうするわ」
「ビビってるんですか?」
葉種は再び挑発の言葉を言うが、二人に効果はない。
「…」
「…」
「ビビってください!」
「「ビビってんのそっちじゃん」」
「やっぱり待つんだな」
大政は出口で待つ葉種に向かって言った。
「だって天先輩が一人で行けるか確かめたくて」
「本当は怖いくせに」
紗水がため息混じりに行ったのを聞いて葉種は立ち上がった。
「怖くないです!」
数分後(体内時計基準)
「あいつ全く出てこねーな」
しばらく待つが天が出口から出てくる事はない。
「まだ迷ってるんじゃないかしら?」
「やっぱりちょっと様子見に行きません?」
「入れ違いになったらどうするのよ」
「じゃあ私大政先輩と行くんで紗水先輩はそこで待っててください」
「えぇ⁉︎あ…ちょ…」
紗水は一人になるのが嫌で反対しようとしたが二人が入っていってしまったので仕方なく待つことに。
「こんな時に一人になるのよ…」
「ふぃーようやく出口だ!ってあれ?葉種ちゃんと大塚先輩は?」
「ぎゃー⁉︎」
突然出てきた天に驚き紗水が叫び声を上げる。
「脅かさないでよ!てか出てくるのおそすぎ!」
「いやー思ったより広くて時間かかっちゃった」
「どうするのよ!葉種ちゃん達中入ってっちゃったよ!」
紗水が入口を指した時、奥から
「ぎゃぁぁぁぁぁぁっ!」
「うるさっ」
と声が聞こえた。
天と紗水が急いで中に飛び込む。
「どうしたの?」
「今…あの奥で影が動いてたんです…!タコの足見たいなものがウネウネと…!」
「そういう仕掛けじゃないの?」
「いやいやあれは完全に生き物でした!ここあれですよ!クラーケンの生きてる次元なんですよ!」
「どんな次元よ…馬鹿馬鹿し。いい加減元の次元に帰る方法探しましょ」
四人はお化け屋敷を出て探索を再開する。
「ねぇ、そもそも何で僕たちはこんなところにいるわけ?」
不意に出た天の言葉に紗水は怪訝な顔をする。
「知らないわよ。何でそんなこと聞くわけ?」
「いやー僕達がここにいるのは何か理由があるのかなと思って」
「確かに。このメンツでここに飛ばされたのには何か理由がありそうですね!」
「知らないわよそんなの暴狐に聞きなさい」
「じゃあ、ここに飛ばされる前河原さん達は何してたの?」
「何してたって湖也が…あっ!」
紗水が何かを思い出して大声を上げたのを見て天がビビる。
「なっ何…?」
「そうよ!湖也のあの馬鹿と言い争いしてたんだった!天のせいで思い出しちゃったじゃないどうしてくれるのよ!」
「えぇ…僕のせい?」
あーむしゃくしゃする!と頭を掻きむしる紗水を見て葉種が
「紗水先輩落ち着いて!あっそうだ!あそこで一休みしません?」
と通路に置いてあるベンチを指差したので四人はそこで一休みすることにした。
二つベンチがあったので、天と紗水、葉種と大政のペアで座る。
「湖也がどうかしたの?」
天が紗水に訊ねる。
紗水は湖也と喧嘩したこととその理由を天に話した。
「あいつ信じられなくない⁉︎あんな大事なことずっと言ってなかったなんて!しかも校長が黒幕かもしれないとかもー最悪!」
「そうだったんだ…」
「それだけ⁉︎もっと他に言うことないの⁉︎」
「まぁ、湖也はダメな所沢山あるよ?すぐに逃げるし決断できないし。でも湖也には湖也なりの考えがあるからそんな責めないであげて欲しいな」
「あいつにどんな考えがあるってのよ」
「うーん」
天は窓の外から見える夜空を眺める。
「月が綺麗だねー」
「は?」
唐突のセリフに紗水は頭にハテナを埋め尽くす。
「ねぇ、河原さんは湖也の事好き?」
「はぁ⁉︎」
紗水は顔を赤くしながら叫んだ。
「何言ってるのアンタ⁉︎」
「僕は好きだよ」
「え⁉︎」
「友達としてね」
「なーんだ」
「何を期待してたの?」
天は首を傾げる。
「湖也の事好きだから、僕は許しちゃうな。湖也だって僕たちの事を全力で守ろうとしてくれてるし、一緒に戦おうとしてくれる。内緒にしてたのも、河原さんを守る為だったんじゃないかな?河原さんのことが好きだから」
「それってどっち⁉︎友達としてか!異性としてか!」
「それは知らないよ。湖也に聞けば?」
「…」
「そう言えば、どうして河原さんは湖也と一緒にいるの?」
「ねぇ」
紗水が会話を遮った。
「紗水でいいわよ。ずっとそんな固い呼び方でなんか嫌だったから」
「え?いいの?じゃあ、紗水ちゃん!紗水ちゃんはなんで湖也と一緒にいるの?」
「別に、最初は暇だったからちょこっと意地悪しただけよ。でも思ったよりいい奴だったからずっと一緒にいただけ」
「そして好きになったと」
「うん…まぁ、友達として?」
「それじゃあさ。信じてみよ。湖也の事、もう少し」
「あんた。湖也に優しすぎじゃないかしら」
「エヘヘ…だって僕の数少ない友達なんだもん」
「あーもう分かったわよ!信じてみるわ!」
「ありがとう!」
「大政先輩って亮矢先輩と仲良いですよね」
葉種は隣にいる大政に問いかける。
「ん?あぁ昔はいろいろやってたからな」
「何やってたんですか?」
「喧嘩、殴り合い、タイマンを張ってたりしてたな」
「それってみんな同じ意味じゃ…でも意外ですね。大政先輩って結構優しい感じですけど」
「昔は荒れてたさ。しょっちゅう他人に喧嘩売ってはボコってカツアゲしてた。これが結構溜まってさ。遊びまくったわ」
「へ、へぇ…」
あまりのエピソードに葉種は引いた。
「亮矢先輩にもカツアゲを?」
「いやぁあいつは別だよ。ある日病気で40度近い熱が出てな。寝込んでたんだけど、外で亮矢が誰かとツルんではしゃいでてうるさくってイラついたから外行ってボコってやった。それがあいつとの出会い」
「そんな熱出ててガキ大将の亮矢先輩を⁉︎」
「でもそんなことしててもなんの意味もないことに気づいてな。辞めたんだよ。人を傷つけるのはやめようって。でもやらなきゃいけないってなってらやるしかないよな。3年はもう俺しか残っていない。みんな死んじまったよ」
「そうなんですか…」
「やはりあの校長は怪しかったんだ。早急に潰す必要がある」
「頑張ってこの戦いを終わらせましょう!ってその前にここから出なくちゃいけないんですけどね」
「そうだな、そろそろ行くか」
四人はショッピングモールを出た。
「結局誰もいませんでしたし、なんの手がかりもえられませんでしたね」
「そうね…でも、なんか悪くは無かったわ」
「あれれ〜?紗水先輩最初は早くここから出ようとしてたのに、楽しんでませんか?」
からかう葉種に紗水は微笑んだ。
「?」
葉種は首をかしげる。
その額を紗水はちょんとつついた。
「真面目すぎるのもあまり良くないじゃない」
「紗水先輩変わりましたね」
などと話しながら四人は最初にいた場所にたどり着いた。
その時、
「「あいた!」」
突然目の前に湖也が現れ紗水と額をぶつけてしゃがみ込む。
「あれ⁉︎湖也⁉︎」
「ん?なんだよ?」
驚く紗水を湖也は額をおさえながら見つめる。
他の生徒も全員揃ってる。
「見ろ」
大政が時計を指差した。
「時計が動いている」
「じゃあ元の世界に戻ってきたんだね!」
「でもなんで突然…」
「なんか夢を見てた気分だわ」
「ん?お前ら何言ってんだ?」
湖也が首を傾げる。
「ううん。なんでもない」
「それより、本当これからは気をつけるからさ。きちんと相談するから、今回のことは許して!」
「ん?あーそのことはもういいわ」
「え?いいの?」
「うん。ちょっとぐらいのミスなんだし。そんなことチマチマ言ってもなんの解決にもならないからね」
「お前、なんか変わったな」
「エヘヘへ」
天みたいな笑い方をする紗水を見て湖也は頭に疑問を浮かべながら頭をかいた。
紗水が天に向かって囁く。
(あの次元の事は内緒にしよ)
(秘密が出来ちゃったね)
「お前ら何こそこそ言ってんだよ」
「ううん、何も」
3
仲直りする湖也達を見て鷲羽はビルの屋上から去ろうとする。
その時、背後から声が聞こえた。
「とんでもない事をしてくれたね」
鷲羽は振り返る。
そこにいたのは、この世の全てのものを身につけたような姿をした怪物だった。
タコの触手のような複数の足に、背中から生えた天使の翼、両腕から伸びる虎の牙のような爪、そして顔面に集う蜘蛛のような目の集合体。
一言では言い表せないような異形の怪物だ。
「夢境影利か。何のようだ」
鷲羽は冷や汗をかきながら言った。
「君は少々悪ふざけが過ぎたようだ。消えてもらおう」
「…そうか」
「だが分からんな。あの異次元でお前は紗水の硬く冷たい心を和らげ、湖也と仲直りをさせた。敵である彼らになぜそんな事をする?」
「暴狐が全員悪い奴だと思わない事だ」
次の瞬間、鷲羽の首は吹っ飛んだ。
「これでミラー君も私に気づいたかもしれないし、大体湖也君が核心に近づきつつある。一旦隠れて様子を見るか」
こんなにちじょうがあってたまるか




