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もしもこの世界で、あなたと  作者: 白銀
第2章〜校外戦争〜
30/52

第30話 のたれ死ぬ明晰夢


目の前には暴狐が2体。

「さぁ、どちらが本物のヒーローか決めようじゃないか」

ハデスは言った。

近くを歩いていた鳩が何かを察して羽ばたいていく。

最初に飛び出したのは血斗だった。

トルボに向かって一直線に駆け出していく。

「待て!登!」

湖也が焦って叫ぶ。

それを無視して血斗はトルボに突っ込んだ。

「この前の決着をつけようじゃねぇか!」

「オーケー」

突然空気中に巨大な氷の十字架が半径30メートルほどの円を描くように複数生まれ、地面に突き刺さった。

徐々に隙間を氷が埋め尽くしていく。

中に取り残されたのはトルボと血斗だ。

「トルボ!これはどう言うことだ!」

ハデスは叫んだ。

「ユーやっぱり邪魔だからどいててー」

「は?なにそれ。まあいいや」

ハデスは返事をすると人間の姿に戻り近くのベンチに腰を下ろして漫画を読み始めた。

「あいついじけたぞ。さっきまで決着をつけようとか言ってたくせに」

湖也が天に向かって言った。

「僕たちの事は全く警戒してないね」

「おい!そんなのんびりしてていいのかー!」

陸がハデスに向かって叫んだ所を湖也と紗水が無理矢理押さえ込む。

「お前なに挑発してんだよ!」

「バッカじゃないの⁉︎」

一方、陸の言葉を聞いたハデスは陸の方を見ると、鼻で笑った。

「命知らずだね。そんなに死にたいならかかってきてもいいけど?」

「随分余裕こきやがって!」

陸はハデスに向かって突撃しようとするがすぐさま湖也に連れ戻される。

「あいつはデバイスの機能を停止させることができんだぞ!」

「でもだからって煽られてばっかなのは悔しいぜ!」

「とりあえず一旦落ち着け」

むむむ…と陸は感情を抑えて氷の柱の方を見る。

その中ではでは今でもトルボと血斗の死闘が繰り広げられており

「ひゃっほぉぉぉぉう!」

とトルボの楽しそうな声が聞こえたと思えば

「ふざけんなっ!」

と血斗の罵声が聞こえることもある。

「…楽しそうだな」

陸が湖也に向かって囁いた。

「馬鹿これは遊びじゃねーんだぞ」

「だったら助けなくていいのか?」

「わかってる…けど」

湖也は氷の柱の側まで行きその壁を必死に叩くが、全くびくともしない。

両腕を変形させて思い切り叩くが小さなヒビも見えなかった。

「やっぱり無理だ。つか寒い」

エネルギーを解放して硬直状態になったまま湖也は叫んだ。

「その壁は空気中の水分を極限まで固めた氷で出来てるから君たちの力じゃ壊さないよ」

ハデスはあくびしながら言った。

「随分素直に教えてくれるんだな」

「いやいやいやでも!いくら空気中の水分集めたってこんな巨大な氷生成するのは無理がある!」

陸が言った。

「ノボリが!ノボリが危ない!」

空が生身で近づこうとするが、それを亮矢が阻止した。

「つまり、あの氷を壊せばいいんだろ?」

「無理だね、君達には壊せない。どうせ中ではそのノボリって奴がへばってるだろうさ」

ハデスが半笑い気味に言った。

「お前、なにするつもりだ?」

陸が亮矢に問いかける。

「一つ試したいことがあってな。要は暴狐らは表と裏の感情を爆発させた結果生まれた魔物なんだろ?なんちゃら事件やらノートの事は知らないがそんな事はどうでもいい。俺に表も裏もねぇ。昔から俺はガキ大将として熱いハートさえあれば良かった!そのたった一つの感情を爆発させた時、俺の体がどうなるのか気になるよなぁ?」

「お前、そんな無茶な!」

上伊は叫んだ。

「無茶も承知!行くぜ!うぉぉぉぉぉぉぉ!」

亮矢は叫びながら柱に向かって思い切り駆け出した。

みんなのデバイスから微弱な電波が走り、悲鳴を上げている。

「やばい!デバイスの機能が停止する!」

だが次の瞬間、さらに注意を引く出来事が起こった。

走っている亮矢の装甲から炎が吹き、体を包み込んでいった。

「立松!」

湖也が叫んだ。

「こんなんへっちゃらだぁぁぁぁぁぁぁ!」

炎を纏ったまま亮矢は勢いよく飛び上がった。

頂上に達した時、スッと亮矢を纏った炎は消え、中からみんなとは違う、赤い装甲が飛び出したのだ。

気がつくとみんなのデバイスの悲鳴も鳴り止んでいた。

「装甲の色が変わった⁉︎」

湖也が驚きの声を上げる。


モニターに映っている真っ赤な装甲を見て校長、そして同じくその様子を見ていた影利ははしゃいでいた。

「何と言うことか!私のプログラムの枠を超えた新たな装甲の誕生とは!彼の想像力は素晴らしい!これが彼の夢見ていたこと!翔士君がこの光景を見ていたらさぞかし喜んだだろうに」


「どうだ!俺の心の煮えたぎる炎はこの氷壁を一瞬で溶かすぜ!」

亮矢は今度は両腕から炎を吹き荒らし、両腕を前へ突き立てて上空から氷の壁目掛けて飛び込んだ!

「うぉい!あぶねぇじゃねぇか!」

叫びながら逃げ出す湖也をよそに亮矢の拳は壁へ突き刺さり、みるみるうちに溶かしていく。

パリッ!ドンッ!という音とともに氷の壁が一気に割れ中からぐっだりと地面に倒れ込む血斗とその体をツンツンしているトルボの姿が現れた。

「貴様の相手はこの俺だ!」

亮矢はトルボ目掛けて炎を纏った拳を振り、勢いを落とす事なく吹っ飛ばす。

不意の事でトルボも避けきれず、数回体をバウンドさせた後、ゆっくりと起き上がる。

「ワイ?あの壁を…ハウ…」

「ごちゃごちゃ言っては暇ねぇぞ!」

亮矢はトルボの胸ぐらを掴むと燃える拳を何度も顔面に叩きつける。

「ぐふ…がは…」

殴られるたびにトルボの力の入らない声が響き渡る。

「いいぞ!やれ!立松!」

湖也が叫んだ。

その様子を見ながら空は血斗を安全な場所へ避難させている。

血斗は僅かな意識の中亮矢を見てつぶやいた。

「恥ずかしいこった。自分から飛び出しておいてこんなザマだとは…だが奴に勝てる可能…」

「無理して喋らなくていいよ。ちょっと休もう」

「俺たちも手伝うぜ」

陸と天がそれぞれ空と血斗を抱えて安全なところへ避難した。


ミラーはビルの上から亮矢の装甲が変わる様子を見ていた。

「ちょっとあれまずいんじゃない?」

あたりには誰もおらず驚きのあまり一人で呟いてしまっていた。

「あれは…」

隣から声がしてミラーは振り向く。

気がつくとそこにはリーダーと鷲羽がいた。

「あら、珍しいわね。あなたが戦いの様子を見に来るなんて」

「蓮真に呼ばれてきたんだが、これは想定外だなぁ」

ミラーがトルボを助けにいこうとビルの上から飛び降りようとするが、リーダーはミラーの肩を叩き引き止める。

「助けてあげないの?」

「ハデスがいるから大丈夫だよ」

リーダーの隣にいた鷲羽はずっと黙って下の様子を見ていた。

彼の瞳孔が僅かに動いた。


「うおりゃぁぁぁぁぁ!」

亮矢は最後の一撃をトルボにお見舞いするべく腕を思い切り引き力を貯めていた。

殴ろうとした瞬間、もう少しで倒せると思った瞬間だった。

亮矢の装甲が消えた。

その様子を見て上伊はハデスの方を見る。

ハデスの姿が暴狐の姿に変わっていた。

ハデスが力を使い亮矢のデバイスの機能を停止させたのだ。

その事に湖也も気付き拳を地面に叩きつける。

「くそ!立松の装甲でもあいつに消させるなんてどうしたらいいんだ!」

装甲を失った亮矢は一瞬時が止まったように動かなくなったが、すぐにトルボの顔面目掛けて拳を下ろそうとした。

しかしトルボは亮矢の装甲がなくなったのを知ると、失っていた調子を取り戻し亮矢の拳を受け止め、彼の頭蓋を掴んだ。

「着ぐるみなくなりゃミーのターンだよ」

トルボはウッキウキの声で言った。

「うるせぇよ。さっきまでへばってたくせに…」

「グレイト!まだ喋る気力があるなんて!」

なにもできない亮矢にハデスは不気味な笑い声を上げながら近づく。

「哀れだね〜。自分の力を手に入れてパワーアップしたかと思えば今やそれも無力。ねぇ!勝てると思った?思ったでしょ?今悔しい?あ、それとも怖い?あ、湖也君達近づいたら君たちも装甲消すからね」

駐車場の車の影からナイフを持ったハデスの奴隷が歩いてきた。

見張るように湖也達を見つめている。

両手で亮矢の体をガッシリ掴んだトルボは陸なら向かって叫んだ。

「ヘイ!さっきミーの能力の為の水分をどうやって集めてるか疑問に思ってるピープルいたよね?そのクエスチョンに答えてあげるよ。ミーの喉を潤しながら」

トルボはまるで赤ん坊を抱き上げらように亮矢の体を持ち上げた。

「ヘイ知ってる?ヒューマンの体って80%は水分で出来てるんだよ?」

「お前…まさか、人間の水分を吸収し貯めてると言いたいのか?」

湖也が問いただす。

「エグザクトリ!」

「やめろ!」

湖也は思わず走り出すが、直後体を纏っている装甲が消えてしまう。

「だから近づかないでって言ったじゃん。湖也君、次はないよ」

「あんた達!そんな卑怯な方法で勝利の余韻に浸ってドヤってんじゃないわよ!」

引き下がる湖也の横に並んで紗水が叫んだ。

「は?」

ハデスは低い声で威圧を乗せて返した。

「正々堂々戦いなさいよ!こっちの戦力無くして戦意喪失したところを見て楽しむとか正気の沙汰じゃない!」

「僕たちは正々堂々、自分の能力を使って戦っているだけだよ?まさかと思うけどそっちが勝てないからこっちの戦いにケチ付けてるんけじゃないよね?これは命懸けの戦いなんだよ?そんな相手に同情してはい戦うのやめまーすなんて小学生の喧嘩じゃないんだからあるわけないじゃん。吠えるくせに考え方は幼稚だねぇ」

「あんた…!」

言い返そうとする紗水の肩を湖也が叩く。

「何を言ってもあいつには無意味だ」

「ねーそっちの話終わった?ミー水分補給していい?」

亮矢の体を左右に揺らしながら退屈そうにトルボはハデスに聞く。

「あぁ、ごめん。いいよ」

「やったー。いただきまー」

次の瞬間、ナイフを持った少年が動いた。

少年は勢いよく走ると、トルボの肩目掛けてナイフを差し込む。

「いっだ!」

トルボは叫び声を開けると人間の姿に戻り、亮矢の体を手放し左手で刺された右肩を押さえ込む。

少年は表情を変える事なく引き抜いたナイフを別の箇所に刺そうとする。

トルボは急いで避けると、少年と距離を取りハデスに向かって叫び声を上げる。

「ワイ⁉︎ハデスこれどーゆーこと⁉︎」

「どーゆーことって、見たら分かるんじゃない?」

ゆっくりとハデスはトルボに近づく。

「あの時の仕返しだよ。戦闘による疲れが溜まりで水分もまともにない。やるなら絶好のチャンスだからね。実際、この子に全く注意してなかったしね。いや〜この時を待ってたよ」

その様子を見て湖也は紗水の耳元で囁く。

「…何あれ?」

「私に聞かないでよ。なんか亮矢君は助かったっぽいけど、こんなところで仲間割れなんて本当わけわかんない連中ね」

「まぁ、校長の説明を聞くにそう言う連中だってのは薄々理解してたんだが、実際に見てると空いた口が塞がらない」

ハデスは薄気味悪い笑みを浮かべながらのナイフを持った少年の隣へ行くと、少年に向かってトルボの首を掴むよう指示する。

なんとか距離をとったトルボだったが流石に体力の限界が来てしまいあっさり捕まってしまう。

「あれ〜さっきまでの笑顔はどこ言ったかな?言っておくけど悪いのは僕では無く油断したトルボだからね?もう能力使う体力もないか」

ハデスは静かに命令した。

「刺せ」

ドンッ!と言う何かがぶつかる音が聞こえた。

湖也達は目を瞑る。

体力の無いトルボは少年に刺されて死ぬ。

何度も暴狐を倒してきたはずなのにこのような場面はずっと慣れない。

当たり前だ。

「え…?」

困惑する声が聞こえた。

ハデスの声だった。

(ん?何でハデスからあんな声が漏れてんだ?)

目を開けると、少年の体が湖也達の側まで転がってきていた。

「うわぁ!」

湖也は驚き近くにいた紗水に抱きつく。

「ちょっと何勝手に抱きついて…うわぁぁ!」

湖也の反応に気付き目を開けた紗水も同じようなリアクションを取り二人して最初からずっと立ち止まって固まっていた凛達のところへ戻る。

「全く、何でハデスの手下がこっちまで来てるんだ?」

湖也は振り向き遠くを見た。

ハデスの近くに少女が二人、少年が一人立っていた。

叫び声が聞こえる。

「あんたねぇ!何度言ったらわかるの⁉︎リーダーもリーダーよ!こんなやつに任せようなんて頭どうかしてる!」

「すまんなハデス。私は別にいいんだけどミラーがうるさくてな」

「ほら、リーダーからキツイお仕置き受けてきな?」

その話し声は湖也達にも微かに聞こえた。

(リーダー?今リーダーっつったか?まさか、あそこに暴狐のトップがいるのか?)

「ん?」

リーダーは湖也達の方を振り向く。

(ハデスにわちゃわちゃ言ってる奴は前見たことある。あと二人、不気味な格好したあいつは男か?もう一人はよく見えねぇ。どっちがリーダーだ?)

湖也が近づこうとした瞬間、リーダーの方から動きがあった。

こちらに歩いてくる。

だんだんその顔が見えてきた。

「え…?黒木?」

「久しぶりだね、三村君」

なんと近づいてきたのは校内戦闘事件から姿を消していた黒木花蓮ではないか。

湖也は状況が理解できなかった。

「何で黒木がそっちにいるの?こっちの生徒だったでしょ?なんで海高にいるの?」

湖也は声を震わせながら問いただす。

「いや、もうとっくの昔にこっちに戻ってきたよ。言ってなかったっけ?一ヶ月だけそっちに滞在しますって」

「は?」

湖也は脳のの奥底に眠る記憶を掘り起こす。

(一ヶ月間よろしくね)

と確かに言っていた気がする。

そして元々海高の生徒だってことも分かっていた。

しかし、理由が分からない。

「ていうか、リーダー?お前が?」

「あぁ、そうだよ。私が暴狐達のリーダーだが、何か不満かな?」

「嘘だろ⁉︎お前は学校を元に戻す手助けをしてくれたじゃないか!何で俺たちを潰そうとする輩のリーダーやってるんだよ!あ、はっはーん。俺気づいちゃった。冗談だろ。俺を騙そうとしてる」

「いや、本当の事だ」

「じゃああれか?脅されてるんだろ!ハデスに!心を支配されて今俺に精神的ダメージを与えるためにリーダーの代わりを演じてるだけだ!」

「いや、彼女は本当に私たちのリーダーよ」

後ろからミラーが近づきながら言った。

「じゃあお前も心を支配されて…」

「は?何であんな奴に従わなきゃいけないのよ。ていうかこいつ誰?リーダーの知り合い?」

「前も話しただろ。大陸高にいた時に出来た友人の三村湖也くんだ」

「あぁ、夢境のお気に入りの」

「そいつは誰だよ」

湖也はミラーを指差しながら言う。

「彼女?ミラー。海高の生徒会の一人。まぁ暴狐の幹部だと思ってくれたらいいかな」

「で、リーダーはその中でも一番の存在なの」

そこまで聞いて湖也は理解した。

絶望して膝を折る。

黒木は完全に向こうの人間だ。

いや、人間じゃないのかもしれない。

「なんで俺たちと敵対するんだよ。黒木、理由を教えてくれよ!」

「夢境影利への復讐」

「…⁉︎」

湖也は息が詰まりそうになった。

そんな湖也を気にもせず黒木は振り向くと鷲羽の元へ行く。

「戻ろう」

次の瞬間、鷲羽と黒木の姿が消えた。

「って、私を置いてかないでよ!仕方ないトルボ連れて帰るか。じゃあね湖也君」

ミラーはそう言うとトルボのところへ向かう。

ボロボロで動けなくなったトルボを抱え歩いていく。

「追いかけるか?」

上伊は湖也に訊ねる。

「いや、あいつは暴狐の幹部だろ。どんな能力持ってるか分からない。俺たちも登と立松連れて帰ろう」

倒れてる亮矢の元へ向かう湖也。

「待って湖也!」

後ろから声が聞こえた。

紗水の声だ。

「あんたさっき黒木の言葉を聞いた時の反応、なんかおかしかったけど。何か知ってるんじゃないの?彼女の事」

「…」

湖也は上伊の方を見る。

上伊は湖也の思いを悟りため息をつくとみんなに話し出した。

「別に隠してるんけじゃなかったんだ。この件とは全く関係のない事だと思ってた。校長の起こした出来事がまさか黒木さんを苦しめることになったなんて…」

「で、どう言うこと?」

紗水の声には棘があった。

ごちゃごちゃ言っているのに苛立ったのだろう。

「奴の復讐、それは恐らく父親の事だ」

「父親?父親と校長になんの関係があるのよ」

「紗水だって覚えているだろ?黒木先生の事」

湖也は声を震わせながら言う。

その言葉に紗水は体を震わせた。

文化祭の日、紗水を襲ったのがその黒木先生だからだ。

彼のあの顔は今でも鮮明に思い浮かぶ。

「黒木って…まさか彼女の父親があいつだって言うの⁉︎」

「明確にそうと決まったわけじゃないが、あまりにも不自然すぎる。俺は見たんだ。校長室に眠ってるあのノート、そこに黒木先生が女子生徒を襲うように仕向けるような内容が書かれていた。つまり、あの文化祭の事件は校長によって仕組まれていたものだったんだ」

「でも何で花蓮はうちの学校に来てたのよ。校長に恨みがあるなら来るのはおかしいでしょ⁉︎」

「来てから知ってしまったんじゃ無いかな?」

「校内戦闘事件の時、校長もあの体育館にいた。校長室は無防備状態だった。そこにあいつがこっそり入り込んでノートの中身を見たのだろう」

上伊は言いながら考えた。

「つまり、この戦いは校長のミスにより生まれたわけじゃ無い。校長が意図的に起こしたものだ」

「なんでそんな大事な事もっと早く言わなかったのよ…」

紗水の声は震えていた。

「だからこれは…」

「だからじゃない!もっと早く言ってればその事に気づけたはず!湖也も自分で言ったわよね。ほうれんそうは大事ですって!あんたが出来て無くてどうするのよ!」

「いや、ごめんって」

「ごめんで済ませないでよ!」

紗水の肩を大政が叩いた。

「河原さんだっけ?三村君のこと許してあげてもいいんじゃ無いの?だってあの事件の被害者は君なんだし。あの嫌な事件を思い出させないために気を遣ってくれてたんでしょ。な、三村」

「そ、そうなんだよ紗水」

「言い訳じゃないの?大塚さん、あなたは湖也と上伊の事許せるの⁉︎」

「ちょっと河原先輩落ち着いて!」

葉種が間に入る。

その様子をビルの屋上から眺めている者が一人いた。

鷲羽だ。

喧嘩をしている紗水を見つめている。

怒鳴り、暴れて、怒り狂う彼女を見て鷲羽は一度深く息を吸うと、呪文を唱えるように呟いた。


『一次元から四次元までの関数を指定し、脳内の思想を展開する。人数を参照し感情を引き数として空間より引用、不可とした者を計算から排除。時効を決めず試行無しで実行』


次の瞬間、紗水、葉種、大政を除く全ての生き物が消えた。

「…あれ?湖也?」




アイタタタ

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