第29話 飛び散る電撃
1
湖也達が飛び去った直後、雷が落ちた。
「おっほー、どれどれー」
トルボが雷の落ちた場所を覗き、死体を確認する。
「今だ!」
その隙を突いて湖也は高く飛び上がり、デバイスに指を置き、両腕の装甲を変化させる。
真上からトルボを思い切り叩き潰す作戦だ。
その間、陸は紗水達を戦闘の場から避難させている。
だが次の瞬間、
「ノンノン」
トルボと湖也の間に分厚い氷板が生まれ、防がれてしまった。
だが、
「次はこっち!」
トルボは後ろから声がしたことに気づく。
天が蹴りを入れようとしていた。
「おーいしょ!」
間抜けな声を発しながらトルボは真上の氷板を後ろへ投げつける。
「ぐはぁ…」
典型的なやられ声を発して転がる天の後ろから上伊が飛び出す。
「ちょっとー蓮真ー!ウェアー?」
トルボは頭上に氷の矢を生み出し上伊に投げつける。
しかし上伊はその矢を弾きながら前に進む。
トルボは拳を氷で覆うと上伊の腹に突き付けた。
上伊の体がぶっ飛ばされる。
その時、トルボは後ろから声をきいた。
「こっちだガキ!」
振り向くと血斗が拳を振り下ろしているところだった。
あまりのスピードに避けきれずぶん殴られる。
「ペイン!ペイン!」
叫びながらトルボは体を変化させる。
シロクマのような姿になった。
ものすごいスピードで血斗に殴りかかる。
血斗はそれを避けながら反撃する。
ものすごいぶつかり合いだ。
「ユー強いね」
「小さい頃から喧嘩ばっかしてるからな!おそらくお前とは経験の差が桁違いだ!」
血斗は重い一撃を連続で叩き込む。
トルボは両腕を分厚い氷で覆いそれを受け止める。
空から無数の氷の矢が降ってくるが、血斗はそれを避けると同時にものすごいスピードでトルボの死角に回り込む。
「っ!オーノー!」
トルボは急いでその場を離れる。
振り返ると、もう血斗の姿はいなかった。
そもそも、途中から彼以外の姿を一切確認していない。
「…もう!ファッキンダイ!」
「奴は追ってこないな」
血斗と合流し、周りを見渡すと湖也達は駅に向かって戻り始める。
「今からどこに行くんすか?」
「どこって俺たちの学校だよ」
湖也は答えた。
それを聞いた蓮真は戸惑いの表情を浮かべる。
それを見た湖也は蓮真の方をポンと叩いた。
「大丈だって!仲間達には俺たちで説得するからさ!何も問題無し!」
「やっぱりいいっす。俺、やりたい事があるんす。キャンピングカーに来たのも必要な物を取りに来ただけなんす。湖也達は学校に戻ってください。ここで一旦さよならっす」
「ん?そか。じゃあこれ」
「?」
湖也はポケットからメモ帳とボールペンを取り出しその場で何か書き始めた。
書いた物を蓮真に渡す。
「俺の連絡先。何かあったら伝えてくれ」
「あ、分かったっす」
そのメモを受け取ると蓮真と湖也達は離れていく。
蓮真と離れた直後、湖也は拳を握りながら思い切り笑顔を見せた。
「クールに連絡先渡すの一度やってみたかったんだ!初めてやった!嬉しい!な、紗水俺クールだっただろ?」
ハイテンションな湖也を見て紗水は困惑する。
「あ、あんた…」
「これだけのためにいつもポケットの中にボールペンとメモ帳を突っ込んでたんだもんな!」
「そうそう!」
陸と湖也が和気藹々と話す。
「いいなー僕もやりたかったなー」
「でも、蓮真さんの連絡先は聞かなくて良かったんですか?私達の方が必要じゃありません?」
葉種が今更そう言った。
「あ…」
どうやら渡すのに夢中で聞くのを忘れていたようだ。
「向こうの連絡先なんか必要ない!」
「必要でしょ!湖也の馬鹿ね」
紗水が叫ぶ。
「だったらお前が聞けよバーカ!」
「馬鹿って言った方が馬鹿なのよバーカ!」
「その言葉マジックシリンダーだバーカ!」
その様子を見てた葉種が陸に訊く。
「…紗水先輩と湖也先輩、何してるんですか?」
「夫婦喧嘩でしょ」
陸が微笑みながら言った。
「何ニヤニヤしてるんですか」
「いや、湖也の奴、最近ずっと頭抱え込んでたからさ。こんな元気な姿見るの久しぶりだなって。紗水との関係もギスギスしてたっぽいし、元に戻ってくれて嬉しいよ」
紗水と湖也の口喧嘩に割り込むように上伊が口を開く。
「あいつの連絡先なら俺が聞いといた」
「え?嘘、いつの間に」
「裏切られたら困るからね。一度助けてもらったとは言え蓮真は敵サイドの奴なんだ。いつ何をするか分からない」
「でもその連絡先も嘘の可能性があるんじゃないのか?」
湖也は言った。
「それ疑ったらキリがないだろ。早く学校に戻ろう」
2
『湖也君、調子取り戻してくれたみたいじゃないか。どうする?ゲームの続きをするか?』
電話越しから自分そっくりの声が聞こえてくることに今更ながら違和感を覚えながら夢境は考える。
「いや、一般市民を襲ってくれ。無関係な人を巻き込まないとあの子はまた戦わなくなってしまうかもしれないからな」
『しかし、そうしたら我々が生徒達を育成してきた意味がなくなるんじゃないのか?』
「もうそんな事どうでもいいじゃないか。もう少しあの子にヒーロー気分を味わわせてやろう」
電話を切るとまた電話がかかってくる。
「なんだね」
『話は聞かせてもらったわ』
女性の声だ。
『でもこのまま続けてたらあの子が真実を知った時、どうなるかしら。生きる希望失わなければいいけど』
「そうならない為に試練を与えている訳じゃないか。あの子はもっと強くなる。その為にちょっと嘘を付いたって構わない」
『大人の嘘がどれだけ子供の成長を阻害させてるか知ってる?』
「君は私の仲間だろう。なぜ気に食わない態度をとっているんだね?」
『私は見たいだけよ。彼が人の想像力を観察したみたいに、そしてあなたが人の『顔』に興味を示すように、人の信じる力を』
「だったら、黙って観ていてくれたまえ」
湖也達は学校に戻った。
体育館に入ると誰もいない。
「あれ?みんなどこ行ったんだ?」
湖也が体育館の周りを見るが人の気配が全く感じられない。
「みんな食堂行ったのかな?」
「それともどっかで戦闘してる可能性がある」
上伊が言う。
「アナウンス流れてなかったぞ」
「昼間のやつがまだ続いてるかもしれないって事だ」
「だったら裏山とかにいるんじゃない?」
「とりあえず校舎の中探していなかったらそっち行くか」
「でもなんだか嫌な予感がするなー」
天が呟く。
「嫌な予感って?」
歩きながら陸が質問する。
「よく分からないけど、後ろから大きなものがゾワゾワ〜って」
「意味分かんないこと言うなよ」
血斗が返す。
湖也達は校長室の前まで来た。
「ここ見る必要ある?」
紗水が言った。
「一応確認しといたほうがいいだろ」
湖也はドアを開ける。
「俺一度も校長室入った事ないからちょっと興味あるな」
血斗が一番に入っていく。
「ちょっと!」
空が止めようとするが、みんなも入っていくので流れに負けて結局入ることにした。
「そういや、あのノートはまだあるんだろうか」
湖也が上伊の耳に囁く。
この事態を知らない血斗と空、そして葉種に聞こえないように配慮した。
「あのノートって?」
「お前のねーちゃんが生み出した生徒を操る魔のノートだよ」
「あー、確かにその後どうなったか聞いてないな」
「ここに隠されてたりして」
「あったらどうするんだよ」
「二人とも何話してるの?」
二人の間に天が大きい声で割り込んだ。
「いやー何も!」
湖也は焦って首を振り後退りする。
「おい!」
血斗はみんなに見えるように大きく指を刺す。
「本棚が少しずれてる」
「これ推理アニメとかでよくある隠し扉だよな」
「なんでこんな所に?」
本棚をずらすと中から鉄の扉が顔を出した。
「おーこりゃ凄い」
湖也が声を漏らす。
「感心してる場合じゃないでしょう?」
紗水が返す。
「でもなんで校長は隠し扉の奥にこんな頑丈な扉を作ったんだろう?」
天は首を傾げる。
「隠したいものでもあったんだろ?」
「そんなに隠したいものって…」
「きっと金だぁ!この奥には校長の大量の財産が眠ってるんだ!な!今校長留守だしチャンスだぜ!待ってろ俺のお小遣いぃぃぃ!」
陸はそう言うと扉を開ける。
そこには階段があった。
「きっとこの下を降りると金銀財宝が眠ってるぜ!」
「学校にそんなものあるあるわけないでしょ。って、あーあ勝手に降りてっちゃったわよ」
「しょうがない、俺たちも行くか」
「僕も何があるか気になるし」
陸に続き湖也、天、紗水も階段を降りていく。
「何があるかは知らないけど、人の隠しているものを勝手に見ようとは悪い奴らだな」
「まーそう言うの気になるお年頃ですし、先輩も行きましょー!」
「嫌だね面倒なことに巻き込まれたくないし。っていでででででで!腕引っ張るな!こら先輩の言うこと聞けないのか!」
葉種に引っ張られる形で上伊も入っていく。
「どーしようみんな行っちゃった」
「俺たちも行くぞ」
「え、ノボリも行くの⁉︎」
「嫌ならそこで待ってろー」
「やだ怖い…じゃあ私も行く」
「うちの学校なのにそんなに怖がることないじゃないか」
階段を降りると扉があった。
「よーしこれで億万長者!」
陸が扉を開くとかなり広く暗い部屋に繋がった。
「ここって…」
「金庫?」
「馬鹿じゃないかしら」
「おー君たち、ようやく到着したかね」
奥から声が聞こえた。
声のした方を見ると、何やら地面から光の柱が生えているのが見える。
その奥には校長の姿が見えた。
そして手前側には、大政達の姿がある。
「おぉ!みんなここにいたのか!」
「なんなんだここは…校長、これは一体なんなんです?この天井に映ってるものって…」
上伊は天井を見る。
「あそこに映っているのは、少年?少女?誰だ?」
血斗は首を傾げる。
天井には複数の少年少女が映し出されていた。
「私達と同じくらいだよね」
「ここに映っているのは海洋高の生徒たちだよ」
校長は不気味な声で言った。
「うみこう…つまり、暴狐達か⁉︎」
湖也が叫ぶ?
「は?どう言うことだ」
大政が問いかける。
「俺たちは聞いたんだ。奴らから逃げ出した蓮真から、海高の生徒が暴監の儀式って奴で暴狐にされたって」
「そこまで知っているなら話は速い」
「話?話ってなんの?」
今度は天が首を傾げる。
「この戦いがなぜ起こったのか、暴狐達がなぜ生まれたのか。真相を話そうと思っていた所だよ」
校長は顔を歪ませていた。
「校長、あんたまさか…」
湖也は唾を読み込んだ。
「校長があいつらを生み出したと言うのか?」
血斗が続いて言った。
「違う!私じゃない!まあ、詳しいことはこれから話そう。以前私は、人の個性について研究をしていた。人間には表と裏、二つの『顔』がある。その顔を主に研究の題材にしていた」
「先生やる前は研究者だったのか?」
「そうだ。そしてある日、その二つの『顔』を暴走させることで人間に不思議な力が芽生えさせることに成功した。人間に極度のストレスを与えることでその能力の具現化、人間を異形のものに進化させることに成功したんだ」
「それが暴狐ってことか?」
「暴狐が二つの能力を持っているのは表と裏、二つの『顔』を暴走させて生まれた怪物だからなんだよ」
「かなり無茶苦茶な話だけど実物見てるから信じるしかないわね」
「ところがある日、私の兄、夢境影正が私の研究資料を持ち出してしまった。そしてそれを悪用して海高で暴監の儀式を行い、生徒を暴狐に変えてしまった」
「それでこの有様だって言うのか。それってつまり、お前のせいでこんな状況になってしまったってことじゃないか!」
「だから私は対抗策を考えた。人間の個性を抑える事で発揮する、奴らに対抗できる力を作り上げた。それが君たちの持ってるデバイスとその装甲なのだ。だがこれはみんなの個性が抑えられてないと起動しない。そのために、私は上伊君の姉が作り上げたあのノートを使ってみんなの欲望を叶え、個性を抑えようとした」
「それが、校内戦闘事件の全貌ってことか?」
次の瞬間、湖也は校長を殴り倒していた。
倒れた校長に馬乗りになり、胸ぐらを掴んで顔を目の前まで持って来て叫ぶ。
「ふざけんな!お前のせいで俺がどんだけ苦しい思いをしたことか!あれら全てお前の計画の内だと言うのならば、俺が今まで苦しんできた分の痛みを味わってもらおうか!」
気がつくと、校長の姿は消えていた。
校長は湖也から離れた場所にいた。
「テレポート…本当にあったんだ」
紗水が驚く。
「確かに君には悪いことをしたと思っているが、あの事件のおかげでこのデバイスが完成、暴狐から守る手段を作れたのだ。感謝して欲しいな」
「貴様…!」
(そして、あの一件のおかげで君はここまで強くなれたのだ。よく頑張ったと褒めてやりたいが、まだ問題は山積みだ)
湖也はデバイスを起動させる。
装甲を身につけて、校長の元は全力疾走する。
しかし、校長はすぐに消えてしまう。
「ちょっと湖也!」
陸と天が割って入った。
「お前の苦しんできたのは分かるが、今は怒りに囚われるな!」
「校長テレポート使うから攻撃当たらないし…」
「…そうだな。あんな奴ぶん殴ってもなんの解決にもならない」
「校内戦闘事件とはなんだ?」
大政が校長に問い詰める。
「君には関係のないことだ。気にするな」
「でも、なんで野田君が暴狐なんかになってしまったの?」
凛が質問する。
「え?野田が⁉︎」
上伊が叫んだ。
「しかも、あいつが暴狐になった時、デバイスは誤作動を起こし装甲は消えてしまった。これについてはどう説明するんだ?」
大政が合わせて質問する。
「野田君の事は残念に思うよ。おそらくこの戦いの中、彼の二つの顔が暴走をしてしまったのだろう。『みんなに合わせて戦わなければならない』という面と『死ぬのが怖い』という面が、彼にストレスを与えて暴走、暴狐になってしまったというわけだ。そしてさっきも言っただろ。この装甲はみんなの個性を抑えて作動するんだ。うちの生徒から暴狐が出てしまった場合、その時点でデバイスは作動しなくなる」
「なんだと…」
「誰でも暴狐になる可能性を持っていて、しかも俺たちの中から暴狐が出たらデバイスは作動しなくなる…」
「俺たち不利すぎないか?」
陸が首を傾げる。
「ふざけんじゃねぇ!なんでお前の罪滅ぼしのために俺達が戦わなければならないんだ!」
「でも君たちの力を借りなければこの世界が危ないんだぞ!頼むから奴らを止めてくれ」
「それが、ミスした大人の態度かよ」
湖也は怒りを抑えながら静かにその場を離れた。
他の生徒達も湖也について行く。
「湖也、これからどうするの?」
「暴狐達との戦いをやめるか?」
「なんの罪のない一般人が襲われるのは止めなければならない。校長に従うのは癪だけど、奴らとの戦いをやめるわけにはいかないだろ」
後ろでは葉種と上伊がコソコソ話をしていた。
「ノートって?校内戦闘事件ってなんのことですか?」
「君の知る必要のない話だよ」
「えー教えてくれたっていいじゃないですか」
3
「ちぇっ。湖也君を再起不能にしたと思ったのに」
ハデスは夜の道を歩いていた。
向こう側から誰かが歩いてくる。
「トルボ、蓮真はどうなった?」
「逃げられちゃった。エヘヘ」
「なんだその態度は、失敗した奴の態度じゃないよね」
「ワッツ?じゃあなんて言えばいいの?」
「この時は謝罪の言葉を言うのが常識だと思うけどなー」
「なんでユーに言わなきゃいけないの?リーダーなら分かるけど」
「君にはお仕置きが必要みたいだね」
イラつきながら言ったハデスは、体を怪物の姿に変化させる。
トルボの恐怖を増幅しようとするが、トルボの様子は変わらない。
「ナンセンスだねー。人のマインドを操る能力を持っているユーが感情的になってどうするのさ。ユーに恐怖心抱くピープルなんてミー達生徒会にはいないよ」
「へー、ただのバカだと思ってたけどいいアドバイス貰ったなぁ」
イライラを抑えながらハデスは言う。
「サンキュー」
話を終えてトルボはその場を去ろうとする。
ハデスはその後ろを狙った。
「行け」
静かに言う。
ハデスの背後から現れた高校生が、包丁を持ってトルボに突っ込む。
しかし、その包丁はトルボの体を貫く事はなかった。
彼と包丁の間に氷の板が生まれ、包丁を飲み込んでいく。
次の瞬間、ハデスの体に異変が起きた。
「急に…喉が…」
「ユーがその気なら、ミーも相手するけど?」
「…わかったよ。もー降参だ」
そう言うとハデスの体の異変は治る。
「トルボ、お水ちょうだい」
「ゼアーに自販機あるよ」
ハデスはトルボの指さした方向へ走ると急いで水を買い、一気飲みする。
「トルボ、僕と手を組まない?二人で一緒に湖也君達を倒すんだよ」
「ワオ!面白そう。ナイスアイデア!」
4
湖也達は体育館で休んでいた。
「マットの上に堂々と寝転がるなんて今しかできないから思う存分楽しもう!」
「そうだなー」
天と陸はそう言いながらマットの上をゴロゴロ転がっている。
「なぁ、暇だろ。卓球でもしないか?」
上伊は寝っ転がっている湖也に向かって言った。
「なんで卓球?」
「ここなら卓球台も貸し出し用のラケットもある。戦いの為に体力をつけておくのも悪くないだろ」
「戦いね…」
「ん?どうした?まだ悩んでいるのか?」
「いや俺じゃなくてだな…」
湖也は周りを見回す。
「みんな暴狐の正体が分かってから暗いんだよな。当たり前だよ。海高の生徒だったんだから。中には中学や小学の友達だっているかもしれない」
「お前らはなんでそんな呑気にしていられるんだ!」
誰かが叫んだ。
「もう俺たちは決心がついたんだ!例え昔仲良かった友達がいたとしても、なんの罪もない人を傷つけていい理由にはならない。倒すしか方法はない。こんな時だからこそ、明るくやっていかないと精神がもたないんだ!」
「そのとうりだ」
湖也の元に大政はやってくる。
「あんたは…三年の大塚大政」
「昔の友だったとしても今は敵でしかない。俺も最初は反対派だったが、こんだけこっちの生徒がやられると戦わざるを得ないだろ」
「だからこそ今卓球をやるんだよ!不安や憎しみをピンポン玉にぶつけて打ち合えば気も晴れるさ!台ならすでに俺と葉種で用意してある。さ、やろう湖也」
「湖也先輩!一緒に上伊先輩をボコボコにしましょー!」
葉種は腕に付けてるデバイスを見せる。
「装甲卓球で!」
「お前球打つ前に頭打ったか?」
「ちょっ、なんですかそれ!ほら、やりましょー!」
そう言うと葉種は湖也の左腕を引っ張る。
「いででででで!ん?」
湖也は左腕に付けられている黒色のデバイスを見る。
「そういえば、最近ずっと腕についてるこっちのデバイスはなんなんだ?」
「あーそれ、ハデスが先輩の腕に付けたやつです」
「お前が負の感情に囚われた時、暴走するよう仕組んであると言っていた。あの化け物のことだ。とてもハッタリとは思えない」
血斗が湖也に説明する。
彼に続いて空が言う。
「もしかしたら、それも校長の言っていた『顔』に関係があったりするのかな?」
「だからな、あまり闇に囚われるな。苦しくても、耐えて戦ってくれ。俺たちも手伝えることはなんでもするからさ」
「登…ありがとう」
その時、デバイスにアナウンスが流れた。
『暴狐が出現した。場所は海高近くのショッピングモール』
「あーなんかムカつくけど行くしかないか。まだなんか隠してる気がするし」
湖也は頭を掻きむしる。
「でもあそこって結構遠いわ。ここから行ってもかなりの時間がかかる」
『その前に、みんな校長室に来てくれ』
「なんだ、また校長室かよ」
校長室にみんなは向かう。
「なんだよこんな時に、まだ何か説明するものでもあるのか?」
「いや、これからは私も君たちをサポートしようと思っていてな。目的地まで運んであげよう」
そう言うと校長室が光に包まれた。
気がつくと湖也達はショッピングモールにいた。
「なぜ校長はこんな力を持っているの…」
凛は呟く。
「そんなことより今はあれだろ」
湖也は目の前を指さす。
ショッピングモールの駐車場が氷で覆われていた。
「この光景、昨日のやつと一緒だな」
「じゃあ、またあいつが…」
「おや、来るのが思ったよりも早い!」
声のする方を見るとそこには背の小さい男の子がいた。
「君は…」
湖也が呟くと今度は別の方向から声が聞こえた。
「お!ハローエブリワン!」
怪物姿のトルボが凍った車の上に立っている。
「危ないぞ!安全な場所に避難してるんだ!」
湖也が男の子に叫ぶ。
みんなはデバイスに指を乗せる。
「装着!」
一斉に叫び、みんなに装甲が着けられる。
みんながトルボに挑もうとするが、その前に声が聞こえた。
「装着?だっさい掛け声だねー」
その声は男の子の口から聞こえてくる。
「ヒーローの掛け声といえばやっぱりあれじゃないの?あれ」
「君、何が言いたい?」
「そっかー、君たちはその装甲をつけて戦っている。自分の力ではなく、その装甲に身を守ってもらっている。そんなのがヒーローとは、情けない話だだねぇ」
「湖也、あんなうざいやつほっとこうよ」
陸が言う。
「でも一般人だ。助けないわけにはいかないだろ」
「ねーえーこっちカモン!」
仲間外れにされてるトルボが襲い掛かろうとする。
「まだダメだよトルボ!じっとしてて」
男の子が叫び返した。
「ちっ、オーケー」
「お前まさか、暴狐の仲間…?」
「聞いた話だと、君はヒーローに憧れてるらしいね、湖也くん。心に闇を抱えて生きる我々と、市民の光になるために戦う君たち。それじゃあ、どちらが本物のヒーローか、確かめようか」
男の子は湖也の方に歩きながらそう話した。
立ち止まると、男の子は最大限に顔を歪ませ笑いながらこう言った。
「『変身』」
次の瞬間、男の子の体が変化。
その姿を見た湖也達は驚きのあまり数秒思考が停止した。
「ハデス…」




