第28話 亀裂
1
湖也はすっかり回復した。
「湖也!大丈夫?」
天が心配そうに言った。
「あぁ、もう大丈夫だ。戦う決心もついたしな」
その言葉を聞いて紗水は安心した。
「そっか。戻ってきてくれたんだね」
「迷惑かけてすまなかったな」
「ところで…」
葉種が割り込んでくる。
「私達荷物をあのコンテナの中に置いて来てるんですけど…」
「あぁぁぁぁぁぁ!そうだった!どうりで俺のカバンが無いと思ったら!」
「あんた達はなんでそんな大事なことを今思い出すのかなぁ⁉︎」
紗水は怒鳴った。
「え、いやぁ夜暗くて危険ですし、夜が明けてから取りに行こうと思いまして」
ということで湖也達はカバンを取りに戻るために駅に向かう。
「なんで紗水と上伊までついてくるんだよ」
「あんた達がどんなところで生活してたか気になるし」
「うんうん」
「そんな友達の家行く感覚で行けるほど近くないんだがなぁ」
「あ、そういえば校長がなんかテレポート使ってたじゃん。あれ使えないの?」
「は?テレポート?」
陸の言葉に紗水は耳を疑う。
「そんなのあるわけないでしょ。馬鹿なんじゃないの?」
「あ?馬鹿っつったな?本当にあったんだって」
「校長に聞いてみたんだがそんなことのために使いたくないってさ」
湖也が答える。
「え?本当にあるの?テレポート」
天は血斗と空を見つめている。
「なんかいつもより仲良しだね?」
「え?そうかなー?」
「いつも仲良しだよ?ね、ノボリ」
「なんだろう。すごくムカついてくる」
電車で二時間、目的地に到着。
「着いたぞ」
「へー、こんなオンボロな車でよく生活できてたわね」
「学校の方が設備もしっかりしてるし快適じゃん。こんなところで暮らすなんて考えられんわ」
「お前らが来たいと言ったからつれてきてやったのにその感想はないだろ」
そう言いながら湖也はキャンピングカーの扉を開けた。
すると中からガタガタ!とものすごい物音が聞こえてくる。
「何⁉︎今の音!」
中を覗くと一人の少年が色々漁っていた。
湖也は叫ぶ。
「誰だお前は!」
「こっちのセリフだ!」
少年が叫び返してくる。
2
「なるほど、つまりこのキャンピングカーは君の家ってことか…」
「ごめんなさい!誰も来ないからって使っちゃって」
天が謝る。
「あんた、名前は?」
紗水が質問する。
「俺は蓮真って言うっす」
「「っす?」」
天と陸が首を傾げる。
「っすってなんだよ」
「ツッコまないでくれっす。落ち着いているとこんな口調になるんす」
「俺は湖也。勝手に使って本当にすまなかった。荷物をまとめたらすぐ出て行くよ」
「え?」
蓮真は眉を顰めた。
「もう一度名前聞いてもいいっすか?」
「え?湖也だけど…」
「高校生?通ってる高校は?」
「え?県立大地高だけど…」
「なんでここにいるんすか…」
「おいおい、どうしたんだ」
上伊は蓮真の顔を覗き込む。
「あ、いえ!なんでもないっす!」
蓮真は両手を振る。
その時、紗水達のデバイスからピピピ…と音が鳴った。
『暴狐が出現した。場所は学校の校庭、湖也君達はすぐに戻ってきてくれ』
そのアナウンスに蓮真は体を震わせる。
「暴狐が出たって!」
「なんで俺のデバイスからは出ないんだ?」
「俺のもならないよ」
湖也と上伊は自分のデバイスを見つめながら呟く。
「その、暴狐ってなんのことなんすかね?」
蓮真の声は震えていた。
湖也達は話そうか悩んだが、
「教えてもいいんじゃない?」
と紗水が言ったので教えることにした。
「秘密にしておいてくれ。そして、今から言うことは嘘じゃないんだ。暴狐ってのは、俺たちの倒さなければならない怪物だ。人を襲う、危険な怪物なんだ。大丈夫、怖がらなくていい。俺たちが全部倒すから。一匹残らず倒して見せる」
湖也は蓮真に向かって一気に言う。
「う、うん。頑張って」
「理解が早いね」
天が言った。
「じゃあ行ってくる。じゃあな」
そう言うと湖也達はキャンピングカーから飛び出した。
次の瞬間、湖也達の目の前に別の暴狐が現れた。
「こっちにも…」
その暴狐はカラスの様な姿をしていた。
その暴狐を見て空は指をさす。
「あ!ブラックバードだ!」
「「「「「は?」」」」」
湖也達から声が漏れる。
血斗は思わず吹き出す。
「ねえ知ってる?カラスって英語でブラックバードって言うんだよ!」
自信満々に空は解説した。
「えぇ…ええっと?」
上伊は困惑する。
「何言ってるの?空、カラスは英語でクロウよ」
紗水が指摘した。
「え?でもノボリが…」
空は血斗の方を見る。
必死に笑いを堪えている彼を見てようやく理解した。
「ノボリ嘘ついたの⁉︎」
「ブハハハハハ!まさか信じてるとは思わなかった!」
「ひどい!もうノボリ嫌い!」
涙目になり小学生の様な反応をする空を見て周りもようやく状況を理解した。
「登先輩サイテー」
「酷すぎるわね」
「いや、まさかあの話を覚えてるとは思ってなかったからさ。ブフフフフフ」
「ノボリとの会話は全部覚えてるよ!」
空はポカポカと血斗の背中を叩き続ける。
「いて!いてて!悪かった!謝るから!すまなかった!ブフ!」
「あ!また笑った!」
「そもそもそんな英語中学生レベルだろ…」
上伊が呟く。
「おい、そんなことは後にしてくれ。じゃないと…」
湖也は暴狐を指差した。
その光景を見た血斗達の顔はどんどん青ざめていく。
「あいつどんどん増えてくぞ」
カラスの暴狐はみるみる増殖していく。
すでに128体になっていた。
湖也達は一斉にデバイスに指を乗せる。
装甲が一気に装着されていく。
湖也の隣に上伊が並ぶ。
「すごい数だな。戦えるのか?」
「大丈夫だ。俺達ならいける」
湖也の隣に血斗が並ぶ。
「「覚悟を決めた俺は強いぞ」」
湖也が血斗の方を見る。
「お前いつ決めたんだよ」
「うるせえお前には関係ないだろ」
「わ!凄いことになってやがる⁉︎」
外の騒ぎを聞きつけキャンピングカーから出てきた蓮真は叫び声をあげる。
「危ないから避難してろ!」
湖也が叫び返した。
空が蓮真の手を引く。
「こっち、落ち着いてね!」
蓮真達を狙おうと24体のカラスの暴狐が向かう。
しかし、気づいたらそのうちの半分が消えている。
「あれ?12体どこ行った?」
暴狐が止まり首を傾げる。
「すまん、俺が消した」
なんと分身した暴狐の一体の体の上に血斗は立っていた。
「お前が空に近づこうなど百年早いわ」
血斗は思いっきり拳を振り上げると思いっきり叩きつける。
分身が消える直前血斗は別の分身に飛び乗り次々破壊していった。
「わ、あいつ昔喧嘩ばっかしてたらしいからな。流石の身体能力だわ」
陸が戦いの様子を見て呟く。
「喧嘩と身体能力の因果関係が謎すぎるんだが」
湖也がツッコむ。
「来るよ!」
天が湖也に向かって叫ぶ。
向かってきた暴狐を湖也は身を回しながら避け、すぐさま蹴りを入れる。
暴狐は爆発することなく煙の様に消えていった。
「この中のどれかが本体というよくあるパターンか」
「まぁ地道に倒すしかないな」
遠くからその光景を見ていたハデスは困惑する。
「なんで…なんで戦ってるの?あそこまで戦意喪失させたはず!なのになんで⁉︎」
隣にいたミラーが吐き捨てる様に言った。
「あの子はあなたが思っているほど弱くはないってことね」
3
学校では残った生徒が装甲を装着して昇降口前に集まっていた。
「おう、今日は大政先輩いるんすね。いつも出てこねーのに」
亮矢は隣にいる三年の弥生大政に向かって言った。
「今は人手不足だからな。俺も参加した方がいいだろう」
「あんたがいると頼もしいな」
「こういったごちゃごちゃしたことは好きじゃないんだがな」
「昔はたくさんしてたくせに」
「いいからほら、前見ろ敵が来てるぞ」
目の前には戦車の様な姿をした暴狐がいる。
「殲滅殲滅ゥ!敵の殲滅によって我が軍の希望は生まれる!迷わず殺せ!」
戦車の暴狐が叫ぶ。
「ちょっと殲滅君うるさい」
後ろにいたコウモリの暴狐が戦車を蹴る。
「ひゃっはー!行くぜ行くぜ行くぜー!」
戦車の暴狐は砲台から砲弾を発射した。
「うわあっぶね!」
亮矢は避けると後ろにいた数人にその球は当たった。
「ちょっと大丈夫?」
凛はその生徒達に駆け寄る。
「ちょっと、避けろとか指示ぐらいしたらどう?」
「あ?そんなん知るか。俊敏な判断が出来ないこいつらが悪い。じゃ、先行ってるわ」
そう言うと亮矢は暴狐に向かって駆け出した。
「はぁ、うるせぇな」
大政は亮矢の後を追う様にゆっくり歩く。
他の生徒達も彼らに続いて攻めていった。
しかし、一人の生徒が昇降口の近くでずっと怯えている。
「大丈夫?野田君」
「怖い怖い怖い!いやだ。死にたくない」
「ちょっと教室戻ってようか」
凛は野田の肩を抱えると中に入ろうとする。
しかし、野田は凛の腕を振り払うと震えながらも暴狐に向かって進んでいく。
「ちょっと!怖いんじゃないの?」
「怖い。嫌だ。無理。重いよ。重すぎるよ。僕なんかが怪物と戦って街を守るって、みんなの命が掛かってるって。そんな重みいらないよ…」
そう言いながら進んでいく野田を見て凛は背筋が震えた。
「なんかイかれたロボットみたいね」
進むにつれて野田の体が光に包まれて行く。
真っ青な光だ。野田の恐怖の感情がそのまま光に現れた様な感じだ。
「ちょっと野田君!何がどうなっているの?」
暴狐と戦闘をしていた亮矢は野田の異変に気づき驚きの声を上げる。
「おいお前…何なんだよそれ…」
「いやだ、いやだぁ!」
次の瞬間、野田の体に異変が起こった。
みるみるうちに怪物の姿になっていく。
気がつくと野田は鏡を体一面に貼り付けた虎の様な姿をしていた。
と同時に、生徒たちのデバイスが悲鳴をあげ装甲が消えていく。
「な、なんだあれ⁉︎」
亮矢は一目散に校舎に逃げ出した。
「ちっ、お前らも戻れ!」
大政は他の生徒に避難を呼びかけると攻撃を仕掛けていたコウモリに蹴りを入れ、怯んだ隙に校舎に駆け込む。
「逃がさねーぞ!」
戦車の暴狐は生身になり校舎に逃げ込もうとした生徒に砲弾を打ち込む。
数人に直撃し、吹っ飛び校舎の壁に当たったあと、動かなくなった。
校舎の壁が血で赤く染まっている。
無事校舎の中に逃げ込んだ生徒は窓から怪物になった野田を見る。
「あいつ、暴狐になったのか?」
「なんであいつが怪物になってんだよ!」
亮矢は怒りの声を上げる。
「それになんで俺たちの装甲が消えている⁉︎」
「野田君…なんで…」
彼らの元に夢境校長が近づいてくる。
「まさかこんなことになるとは…花蓮君の置き土産か」
「校長!何なんだよこれ!何であいつが怪物になって俺たちの装甲が消えてんだ!教えろよ!」
「詳しいことは後で話そう。今教えられることは、野田君を倒さないと君たちのデバイスが動かないと言うことけだ」
「なんで…何でだよ!」
「それって、上伊君達のも動かないってことですか?」
「あぁ、湖也君達のデバイスも今は動作不能という訳だ」
「そんな…」
カラスの暴狐の数は30体まで減っていた。
「お前ら大丈夫か!」
「まだまだいける!」
湖也がデバイスに指を乗せようとした時、デバイスが悲鳴を上げた。
直後、湖也達の装甲が一気に消えていく。
「え…なんで…」
「またあのハデスっつーやつの仕業かもしれない!」
「とりあえず逃げよう!」
湖也がそう言うと空から声が聞こえてきた。
カラスの暴狐の声だった。
「逃がすと思うかい?」
30体の暴狐が一斉に襲いかかってくる。
湖也達は身構えて目を瞑る。
と、その時
「危ない!」
声が聞こえた。
「…あれ?襲ってこない」
湖也達が目を開けると、目の前には正十二面体の物体が浮かんでいた。
「こいつって…」
「あの時の…」
陸と天は呟く。
「先生を殺した暴狐だ!」
湖也は叫んだ。
気がつくとカラスの暴狐の分身は消えていた。
カラスは正十二面体の暴狐に向かって言った。
「蓮真、なんのつもりだ」
「蓮真⁉︎」
みんなが口を揃えていった。
「こいつらは俺が守るっす」
「なぜだ」
「あの先生の愛していた生徒だからっす」
「大人嫌いのお前が先生のために守るだと?何があった?」
「あんたには教えないっす。とっとと逃げるっす」
「はぁ…まあいいか」
そう言うとカラスの暴狐は飛び去っていった。
「この口調、確かに蓮真だな」
正二十面体から人間に戻って行く蓮真を見ながら陸が言った。
「ごめんなさいっす。さっきは内緒にしてて。そして、あんたらの学校の先生を…」
言い終わる前に湖也は蓮真の胸ぐらを勢いよく掴んだ。
「お前一発殴らせろ!全く罪のない先生を皆殺しにしやがって!俺たちの命守ったから全部チャラにしてもらおうってか!それだけで許されると思うなよ!」
「湖也!ちょっと待って!焦らないで!落ち着いて!」
紗水がそれを必死に止める。
「蓮真君、あなたの話を詳しく聞く必要があるようね」
4
「あれ?何でみんないないんだ?」
野田は周りを見渡す。
さっきまで暴狐と戦っていた生徒は一人もいなくなっている。
「何だよ。怖いよ。一人で戦えってのかよ!」
そう言いながら必死に見渡すと、校舎の窓から生徒達が顔を覗かせてこっちを見ているのが見えた。
(何で校舎に戻ってるんだ?暴狐との戦いはどうしたんだ?)
とりあえずみんなのところへ行こうと四足を動かしながら駆け出す。
(あれ?走るってこんな感覚なんだっけ?)
しかし何故か、近づけば近づくほどみんなの顔が青ざめていることに気づいた。
「おい!どうしたんだ!みんなそんな顔して!僕のことそんなに嫌い?」
野田が近づいてくるのを見て亮矢は窓を開けると身を乗り出しながら叫んだ。
「こっち来んな化け物ォ!」
(え?)
「俺たちを殺そうってのか!裏切り者!さっさとどっか行けよ!」
「な、何でそんなことを言うの?ひどいよ!僕たち仲間じゃないか!」
さらに近づく野田に対して、亮矢は恐ろしい形相をしながら握っていた箒を投げ飛ばした。
「来んなっつってるだろ!」
「いてっ!何で、何でそんなに冷たいの…」
その時、窓ガラスに反射した自分の姿が目に入った。
(え?何これ…)
目の前には装甲を着た自分でも、生身の自分でもない四足歩行の化け物がいた。
「どうして、僕は人間のはず…何でこんな姿になってるんだ?」
野田はガラスに張り付いた。
自分の姿を写したガラスを何度も引っ掻く。
ガラスの向こうにいる生徒は必死に逃げ、残っている者は誰一人いなかった。
「いやだ!僕は人間だ!助けて!戻して!」
今度は上の窓から叫び声が聞こえてくる。
「さっさとどっかいけ!裏切り者ぉ!」
「違う!僕は誰も裏切っていない!何で分かってくれないんだ!」
「その姿が裏切り者の証拠だ!」
もう一度野田はガラスに目をやる。
自分の顔を触るが、人間の顔の形じゃない。
「もう、僕はここにはいられないんだ」
そう言うと野田は振り返った。
そこには戦車とコウモリの暴狐がいる。
(そっちに行けば仲間にしてくれるかな…)
野田はゆっくりと歩いた。
こちらに向かってくる野田を見て、暴狐の二人は警戒する。
「すみません。僕を仲間に入れてくれませんか?こんな姿になっちゃって、もうあいつらは僕を受け入れてくれないんです。言われたことは何でもやります。どうか、お願いします」
その話を聞いて、二人は顔を合わせる。
「どうする?殲滅君」
「あ?そんなの決まってるだろ。同類だろうが何だろうが、敵は敵。迷わず殲滅だぁ!」
そう言うと戦車は野田に向かって発砲した。
その砲弾は野田の頭に当たり体がぶっ飛ばされる。
「痛い…何でみんな僕を省くんだ…」
ゆっくりと起き上がる。
「む、あいつ硬いな」
戦車は何度も野田に向かって発砲する。
「痛い!痛いです!お願いします!助けてください!死にたくないです!」
再び起き上がる野田を見て戦車は驚く。
「なんと、まだ生きているのか」
「あの子他の子より死にたくない、怖いと言う感情が強いな。その個性があの防御力を生み出したのか」
コウモリの暴狐は冷静に分析する。
「もう一つの『顔』が気になるが、厄介な能力を持ってたら困るな」
「なぁに、ここで殲滅すれば良いだけの話!」
何度も何度も野田に向かって発砲する。
「痛い!痛い!嫌だ!痛いよ!」
何度も砲弾を喰らううちに野田の体がだんだん赤くなってきていた。
「嫌だ!助けて!僕を仲間に入れて!お願い!」
構わず暴狐は砲弾を打ち込む。
「嫌だ!助けて!いたっ」
次の瞬間、野田の体が限界に達し、
爆発した。
「野田君…」
凛はその姿を見てられなかった。
爆発音がして窓の外を見ると既にいなくなっていた。
「これで良かったのかな…」
「何馬鹿なこと言ってんだお前!あいつが死ななきゃ俺たちは戦えねーんだぞ!あんなゴミのことなんか切り捨てて当たり前だ!」
「そうだ、これは仕方のない犠牲ってモノなんだ。理解してくれ」
遠くから校長が歩いてくる。
「でも、こんなのってないよ…」
「もうあいつのことは忘れるんだな。これまでの戦いで死んでる人は何人もいるんだ。いちいちあいつに情を入れてる場合じゃない」
大政は凛の肩を叩いた。
「それより一つ気になることがあるんだが…校長」
大政は校長の元へ歩きながら話しかける。
「これまで色々暴狐の情報とか教えてもらってたんだが…あまりに不自然すぎる。あなたはどうやってその情報を手に入れた?」
「ん?何を言いたいのかね弥生君」
「これらの戦い全部あなたが仕組んだんじゃないのかい?」
「んー?」
場が一気に静まった。
5
「美百合先生を殺したのはお前じゃない?」
湖也が聞き返す。
「そうっす。確かに俺は殆どの先生を殺しました。ですが、美百合先生を殺したのは…」
「ハデスっていうそちらのリーダー格だ」
陸が言った。
「え?何でお前知ってんだよ」
「だって前ハデスから聞いたし。湖也がゴロゴロしてる間」
「言い方…」
天が苦笑いする。
「でも他の先生だって戦いとは無関係だ。先生達を殺した罪はデカいぞ」
「分かっているっす」
「そもそも、あなた達は何であんな怪物になったんですか?」
葉種は身を乗り出しながら聞いた。
「これから全てを話すっす。俺たちは二ヶ月前、怪物になったっす。全校生徒がグランドに集められて、強制的に怪物にされたっす。俺たちはその儀式の事を暴監の儀式って呼んでるっす」
「サバトみたいなものか…」
陸は言った。
「二ヶ月前か…文化祭からしばらく経ってからだな…」
湖也は顎に手を当てる。
「文化祭がどうかしたの?」
紗水が訊ねると湖也が上伊の方へ目を向ける。
何か言おうとした時、血斗が何かに気づいた。
「ちょっと待て、全校生徒ってことは怪物みんな学生なのか?」
「そうっす」
「どこの?」
「私立海洋高校っす」
「海高⁉︎それじゃあ…」
湖也が叫んだ次の瞬間、キャンピングカーが大きく揺れた。
中にいた湖也達も勢いよく倒れる。
「いでで…なんだ⁉︎」
みんなが慌てる中、蓮真は冷静に分析する。
「これは…大羅か」
外に出ようとするが、扉が固く動かせない。
「なんか寒くなって来たな…」
上伊が体を震わせる。
蓮真は何度も扉に体当たりをするが、全く開きそうにない。
「待ってろ」
湖也が装甲を装着すると、扉を勢いよくぶん殴り無理やり破壊する。
外に出ると、周りを氷が覆いキャンピングカーを飲み込んでいた。
「とんでもねぇな…これが大羅ってやつの力か?」
上伊が蓮真に訊く。
「いや、これは…」
「あっはー!ロケート蓮真ー!」
遠くから明るい声が聞こえて来た。
目を向けると小さな男の子がこちらに歩いてくるのが見える。
「あいつも海高の奴か⁉︎」
「なんかちっさいですね…本当に高校生?小学生じゃありません?」
「いや、あいつはトルボ、海高の生徒っす」
「この氷、あいつがやったのか…」
「蓮真ー!リーダーに言われて殺しに来たよー!」
トルボは手を振りながら叫ぶ。
「暴狐達は仲間意識ないのかよ」
湖也が蓮真に訊ねる。
「基本的にないっす。暴監の儀式以降我々はリーダーに従うか、自分の好き勝手動くかだったんで」
「おい、あいつの事分かるんだよな?あいつの能力はなんだよ」
「確か空気中の水分を自在に操る事が出来る能力っす。もう一つは分かんないっすけど」
「蓮真ー!ユーと一緒にいるのはエネミー?ま、誰でもオッケー」
トルボは真上を指さす。
湖也達がそちらを向くと、巨大な雲が出来上がっていた。
「不味い!みんな逃げろ!」
上伊が叫ぶ。
トルボは真上へ向けた指を蓮真達に向ける。
「まとめてオーバーキル!」
次の瞬間、雷が発生した。




