第26話 禁じられた戦略
1
数日が経ち、湖也の体はある程度回復していた。
「もう動けるか?」
「あぁ、問題ない。運良く暴狐が現れなくてよかった。そして、すまなかったな。特に葉種、俺の分まで頑張らせて…」
「いえいえ!私は若いので大丈夫です!」
「一歳しか違わないけどな」
陸が口を挟んだ。
「いいじゃないですかー!若いのは事実なんですし!」
「まるで俺たちが老ぼれみたいな言い方だけは勘弁だな!まだまだ人生これからなんだぞ!」
ワーワーギャーギャー言ってる二人を見て、湖也はクスリと笑った。
「ん?湖也どうしたの?」
天が聞いてくる。
「え?あーいや、あの二人の距離近くなったなって」
「まあこんな生活してたら仲良くなるよね」
血斗が近づいてくる。
「無理すんなよ。戦いを平和に終わらせるのは賛成だが、肝心なお前が傷つく必要ないからな」
「ノボリ、とうとう賛成派になったんだね!」
「まぁ、まだハッキリとした答えは出てないけど…」
「悩めばいいと思うよ。俺だって今も悩んでいるし…」
湖也は自分の手を見つめる。
相手は人間。
この手で殺すしかないのか?
殺していいのか?
それが嫌だから学校を抜け出してきたというのに、それしか方法がない様に思えてくる。
「まあまあ、湖也先輩も回復したんだし、今日はぱーと何かしません?」
「いやそんなに金ねぇよ!」
「陸先輩のケチ!空先輩!ぱーとやりましょう!」
「私も土屋君に賛成かな…」
空が苦笑いする。
「えぇー!たまには何か派手な事したいです。いつも地味ーな生活続けてて。いい加減飽きました」
「もう大人だろ。これくらい辛抱できなきゃ一人暮らしする時大変だぞ?」
「まだ16歳ですぅー!血斗先輩一人暮らしした事ないくせに何偉そうなこと言ってるんですか!」
「あ、今名前で呼んだなこんにゃろ」
「いでででで!痛いです!天先輩助けてー!」
「頑張れー」
「天先輩ぃぃぃぃ!」
はしゃいでる彼らを見て湖也は考える。
(前まで天と陸ぐらいしか話せる一緒にはしゃげる人がいなかったけど、賑やかになったな。)
暴狐を殺らなければ、こっちがやられる可能性もある。
今まで築いた関係が破壊される可能性がある。
でも暴狐達とも仲良くなれる方法があるのかもしれない。
どうしたらいい。
「何かいい案ないかな…」
2
ハデスとミラーは公園にいた。
「ねぇねぇ、僕たちに絆ってあると思う?」
ハデスがミラーに訊く。
「絆?あるわけないでしょ。いい?私たちはみんなバラバラなの。向こうが団体戦を仕掛けてくるとしたら、こっちは個人戦で挑んでるようなものよ。みんな基本仲間意識はないの。だからハデスの力が必要じゃない」
「そう言われると照れるなー」
「でもあなたはすぐダメにするのが難点ね…その力をうまく使えばバラバラになっている私たちをうまくまとめあげることもできるし、相手をバラバラにすることもできるのに」
「だって人の怖がる顔って面白いんだもん。極限まで恐怖を感じさせたくなっちゃう」
「我慢なさい。男でしょ?」
「性別の話?」
ハデスはぶーたれる。
「でもなんで夢境は僕達を作ったんだろうね。暴監の儀式で個性を暴走させて、能力化、怪物化して。みんな暴れてバラバラになって、そしたらリーダーが帰ってきて学校を襲う様になった。何がしたいのかな?」
「リーダーの復讐のためでしょ?」
「それはリーダーの目的じゃん。夢境の目的は?」
「そんなん私が知るわけないでしょ」
ミラーは手元にあったボトルを掴みお茶を飲みながら空を見た。
今は夜、十二月に入ってより寒くなった。
ミラーの口から白い息が漏れる。
「もしかしたら、私たちはデータかもしれないわね」
「データ?なんで?」
「まだリーダーは怪物になってないじゃない。リーダーがここを離れている間に私たちは怪物になったわけだから。つまり私たちはリーダーのためのデータで、私たちでデータを集めてリーダーをより強い怪物にする…んじゃないかな?」
ハデスは頭の中に?を浮かべてミラーを見る。
その後ニッと笑って
「そんなわけないじゃないか!つまり僕たちが実験体みたいじゃないか!やだよそんなの」
ミラーの背中をバンバン叩く。
ミラーもフッと笑う
「冗談よ。冗談。あ、リーダーが呼んでる。行ってくるね」
そう言うとミラーはベンチから立ち上がり鷲羽の肩を叩く。
鷲羽はしばらく無言でハデスを眺めていた。
「…?どうしたの?」
ハデスが問いかける。
いや何でもと言った感じで鷲羽は目を逸らすとミラーと一緒に消えていった。
ハデスは一人でベンチで横になった。
「なんか面白いことないかなー?」
「そろそろいいころだろう。ハリネズミ君達を出したまえ」
夢境はミラーに向かって言った。
「何がそろそろなの?」
「余計な事は考えなくていい。君たちはあの学校を潰すことだけに集中しなさい」
「気になるじゃん」
リーダーが割り込む。
「ミラー、私たちの目的はあの校長への復讐なんだ。黙って夢境の言う事を聞いていればいい」
「それもおかしくない?だって夢境影利はあの校長の弟なんでしょ?なんでそんな人が協力してくれるわけ?」
夢境はミラーの目を見る。
「ミラー君、前も言ったろ。兄弟喧嘩の延長戦だと。私は向こうに負けるわけにはいかないんだ。よろしく頼むよ」
ミラーは黙り込む。
とにかく従うしかない。
従わないと何されるか分からない謎の恐怖がミラーを包み込んでいた。
「分かりました。最後に一ついいですか?」
「なんだね?」
「この戦いに勝ったら、どうするんですか?」
「さぁ。君たちの力を使って世界を支配するのもいいね?」
夢境は冗談混じりに言った。
ミラーは鷲羽と共にヤマアラシの暴狐の目の前に現れた。
「出動よ」
「今かよ?まぁいいが」
ヤマアラシの暴狐は路地裏で銃の暴狐、スイカの暴狐と共にドラム缶を囲んでご飯を食べていた。
「今から出るんだ?」
声が響いた。
全員が声のした方を振り向くと、ハデスが路地裏に入ってきたところだった。
「ハデス。どうしたの?」
「いやーちょっと頼みたいことがあってね」
ハデスはヤマアラシの肩を掴んだ。
「いい事気づいちゃった。面白いことをしたいから、手伝ってよ」
3
校長は電話で話をしていた。
女性の声が電話から聞こえてくる。
『聞いたわよ〜湖也君に怪我させたんだって?ちょっとやり過ぎじゃないかしら』
「少しぐらいなんてことないさ」
『湖也君、まだ戦う気にならないの?』
「あぁ」
ため息が聞こえてくる。
『やっぱり野放しにしておくのは良くないと思うの。このままだと湖也君戦いから逃げるようになるかもしれないわ。戦いとは無関係の生活を送るようになる。それってあの子のためと言えるの?』
「仕方ない、少し乱暴な手を使わせてもらうよ。やはりあの子では自分だけで壁を越える事は出来なかったらしい」
もうみんなにようとしていた夜のコンテナに、デバイスからアナウンスが鳴り響く。
『暴狐出現!繰り返す。暴狐出現』
「出たか」
湖也達は急いで出る準備をした。
それは学校側も同じで、体育館に集まっていた生徒が一斉に外に出ようとする。
しかし、体育館の扉は固く閉ざされていて全く開かなかった。
上伊達は焦る。
「ちょっと!これどうなってんの!」
上伊が装甲を装着し、エネルギーを貯めたパンチをするがドアはびくともしない。
「ほんっとこの学校の建物って固いな」
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!早く外に出て暴狐を倒さないと!」
「そうだな。みんなで手分けして開いてるところを探そう」
数分後
「無いんだけど!」
「完全に閉じ込められたな。一体誰の仕業なんだ?」
その時、体育館のスピーカーから校長のこえが響き渡った。
『えー、少し申し訳ないが君たちには留守番をさせてもらうよ』
「「「はぁ!?」」」
生徒達は叫ぶことしかできなかった。
上伊は顎に手を当てて考える。
(一体何を考えているんだ?)
湖也達がカバンに頭を置きそろそろ寝ようとしていたところにデバイスのアナウンスが鳴り響いた。
湖也達も起き上がっていた。
「眠いよぉ」
天が目を擦りながら呟く。
「みんな起きろよ。早くいかないと被害者が出る。奴らの戦いを止めるために」
「もういいんじゃないですか?」
眠そうな声で葉種が言う。
「もう彼らは放っておいて、私たちはここでのんびり暮らしましょうよ。暴狐退治は学校側に任せればいいじゃないですか。戦いの事は忘れて寝ましょうよ」
「馬鹿野郎!それじゃあなんの解決にもなってねぇだろうが!」
湖也は激昂した。
その声でみんな目を覚まし飛び起きる。
「あ!すみません!私寝ぼけてました!急いでいきましょう!」
「いや、俺もすまない。みんな行こう」
現場に向かうと前と同じ暴狐達が暴れていた。
前回と同じように関係ない人を次々に襲っている。
ただ前回とは一つ違う点があった。
「あれ?学校の奴らは?」
血斗が呟く。
上伊達がいないのだ。
そのせいで暴狐達は好き勝手暴れ回り、一般人を次々と襲っている。
倒れている人も何人かいた。
「とにかくあいつらを止めよう!」
「「「起動!」」」
湖也達は装甲を装着するとヤマアラシの暴狐の目の前に立った。
「お前ら!これ以上無関係な人を巻き込むな!俺の相手をしろ!」
「ほう、ようやく戦う気になったんだな?」
「違う!俺の話を聞いてくれ!」
「バカバカしい。そんな話を聞くぐらいなら好き勝手暴れたほうが面白いだろ」
「仕方ない。天と陸と葉種は銃の暴狐の動きを止めさせろ。登と青山さんはスイカの方を頼む」
「了解!」
「あ?何する気だ?」
ヤマアラシが困惑していると銃の暴狐の方に天と陸と葉種、スイカの暴狐に血斗と空が向かった。
「あれれ〜?何しにきたのかなぁ?」
銃の暴狐が挑発する。
天と陸は目を合わせて合図を送ると、
なんと土下座を始めた。
(…けっこう恥ずかしいね)
小声で天が言うのを
(シー!)
陸が必死に止める。
血斗、空、湖也も同じようにしている。
「は?」
予想外の展開に暴狐の目が点になる。
「もうやめてください」
湖也は土下座をしながら言う。
「は?何やってんの?」
「もう戦うのをやめてください」
「馬鹿野郎!土下座なんかしている暇があったら戦え!」
『…をチャージましす』
「あ?お前なんか言ったか?」
とその時、ヤマアラシの暴狐は異変に気づいた。
湖也の腕が一回り大きくなっていた。
それは天達も同じだった。
そして微かに聞こえてくる機械音声、
『チャージが完了しました。エネルギーを解放します』
「…お前、まさか!」
次の瞬間、爆発が起きた。
湖也達は変形した拳を地面に思いっきり突きつける。
地面が抉れ、土が宙を舞う。
気がつくと暴狐はクレーターの真ん中にいた。
「んなバカな!」
唖然としているとクレーターの外から声が聞こえる。
「よし!今だ!埋めろ!」
「え⁉︎ちょっと待て!嘘だろおい!」
逃げようとする暇も無く、上から土が流れ込んできた。
「お前、まさかいきう…げほ!げほげほ!」
暴狐達は目を瞑り口を閉じるしかなかった。
しばらくすると、土が流れ込まなくなったので、目を開ける。
(ん?目線が低い…)
気がつくと、体が土で埋められており、顔だけが出ている状態になっていた。
「ディグダかよ!」
「んー今のツッコミはイマイチかなー」
頭上から声が聞こえてくる。
見上げると装甲をしまった湖也達がニヤニヤしながら暴狐達を見下ろしている。
「お前、なんだよこれ!早く出せよ!」
「俺のバカな頭をフル回転させて出した答えがこれだ。これならお前らは何も出来まい」
湖也の隣にいる葉種が暴狐の目の前までやってきて、暴狐に向かって指を刺す。
「出たかったら、ちゃんと反省しなさい!反省しなきゃおやつ抜きですからね」
(発想が幼稚すぎる…)
暴狐達は空いた口が塞がらなかった。
「作戦成功したな、湖也」
陸が湖也の肩を叩く。
「でもこれからどうするんだ?一旦動きは止めたけど、これじゃあなんの解決にもなってないぜ」
血斗が言う。
「う〜んどうしようかな」
みんなで考えていると、天が異変に気付いた。
「湖也、後ろ…」
「ん?」
天に言われて振り向くと、そこにはドアがあった。
「あれ?これって校長室のドアだよな?」
そして周囲を見渡すとなんと校長室になっていた。
しかも気づいた時には陸達はいなくなり、湖也一人になっている。
「えぇ⁉︎校長室?どうなってんだ⁉︎天達はどこ行ったんだ⁉︎」
「やれやれ。世話のやける子だ」
正面から声が聞こえた。
振り向くと、目の前にある机に校長が肘をついて座っている。
「校長がなんで⁉︎これってまさか夢!」
「夢じゃない。私が連れてきたんだ。ここは学校の校長室だよ」
「そんな、テレポートじみたこと…」
「そんなことよりまだ迷っているのかい?暴狐を殺るかどうか。迷ってる暇はないんだがね。我々学校だけじゃない。すでに暴狐は一般人を巻き込んでいる。世界を守るには倒さなければならない」
「でも!あいつら人なんだろ⁉︎そんなの、殺れるわけないよ!殺せるわけ…ないよ」
「はぁ…」
校長はため息を漏らす。
「いつまでもうじうじしている。それが君の悪いところだ」
校長はリモコンを取り出した。
校長の後ろにはプロジェクタースクリーンが垂れかかっていて、リモコンを操作すると映像が映し出される。
「見たまえ」
画面には埋められているヤマアラシを含む3人こ暴狐、そして天達5人が映っている。
「これって…」
「天君達の状況をリアルタイムで映したものだ。君は暴狐を埋めて何をしようとしていたのかね?」
「それはこれから考えようとしていたところだ!」
「ふざけたことをいうな!」
校長は激昂した。
「その判断の鈍さがどう災いを呼ぶか、一度目で確かめると良い」
次の瞬間、画面で動きがあった。
「さて、反省してくれましたか?」
葉種は暴狐に呼びかける。
「誰が反省なんかするか!それにお前、勝った気でいるようだが…」
「?」
葉種は怪訝な顔をする。
次の瞬間、地面が割れた。
「なんだこれ!」
陸が叫けんで暴狐達から離れる。
割れた地面から出てきたのは、巨大な根だった。
「それ…まさか!」
血斗が一人の暴狐を見つめる。
スイカの暴狐から巨大な根が伸びて湖也達が固めた地面を砕いたのだ。
「植物の力を甘く見過ぎたようだな」
暴狐達は脱出すると天達を狙って襲いかかる。
天達は急いで装甲を付けるが銃の暴狐の放った砲弾に吹き飛ばされる。
そこからは一方的だった。
暴狐達の暴行に天達はボロボロにされていく。
「これを見てもまだ戦わないと言い切れるかね?」
校長は湖也に呼びかける。
「君たちが戦わない選択をしたから天君達は一方的にやられる。殺られる前に殺るしかないんだよ」
「でも、俺には…」
「命を守るためには、捨てなければならない優しさがある」
「…」
「いや、この場合甘さと言うべきかな?さぁどうする。このまま天君達がやられていくのを待つか、それともみんなを守る為に戦うか」
「…一つ質問だ。なんで俺なんだ。天や陸達は置いていって、なんで俺だけ連れてきた」
「これら全て、君の決断が招いたことだからね」
「…俺は、戦いたくない」
「まだ言うかね」
画面ではすでに5人の内3人が倒れている。
ヤマアラシの暴狐が一般人を刺そうとしている。
「でも、やるしかないというなら…」
「そもそも君は2回倒してるじゃないか。今更何を言っておる。覚悟を決めろ。精神を強くしろ。さぁ、決断を聞こう。君はどうしたいのかね?」
「戦うよ」
ヤマアラシの暴狐は体に生えている針を伸ばして槍を作っていた。
一般人の脳天目掛けで投げようとしている。
次の瞬間、突如空中に現れた湖也によって横に吹き飛ばされる。
「湖也…!」
「みんな、戦おう」
「え、でも戦いたくないって」
「もうこうするしかないんだ」
そう言うとものすごい勢いで走りスイカの暴狐を蹴り飛ばす。
「あの!三村くん!平和に解決しようと言うのは」
空が叫ぶ。
「こうするしかないんだって!仕方ないじゃないか!こいつらを生かしてたら俺たちだけじゃない、他の人にも被害が及ぶんだ!もう、倒すしかないじゃないか」
「湖也、一旦落ち着こうよ!」
「あいつ、暴走してやがる」
血斗は空を見上げる。
湖也に蹴り飛ばされたスイカの暴狐が空中で爆散したところだった。
「ようやく戦う気になったかゔぁ!」
ヤマアラシの暴狐の言葉も待たずに手を掴むと勢いよく振り回し銃の暴狐に投げつける。
倒れている暴狐に向かって湖也はゆっくりと歩み寄る。
「最後の忠告だ。お前らがもう暴れないって言うなら殺しはいないが、嫌だと言うなら殺す。さぁ、どっちだ?」
「へっ!誰が反省なんかするか!」
「そうか」
湖也はデバイスに指を近づける。
『確認しました。チャージ開始します』
「ならば殺す」
ヤマアラシの暴狐はそれでも笑っていた。
銃の暴狐がヤマアラシに言う。
「おい、ここでやるのか」
「ふふ、ふははははは!おもしれぇ!おもしれぇぞハデス!これも全て計画の内か!なら協力してやろう!この少年の心をへし折ってくれるわ!」
血斗は二人の暴狐を眺めていた。
「登先輩、どうかしたんですか?」
「なんか嫌な予感がする」
「嫌な予感って?」
空も訊ねる。
「いや、俺にもよくわからないんだが…」
血斗は湖也に向かって叫んだ。
「おい!ちょっと待て湖也!一旦冷静になれ!」
血斗の声も聞かずに湖也は空高く飛び上がる。
右足の装甲が展開をして太くなる。
『チャージが完了しました。エネルギーを解放します』
「待てって!」
血斗は湖也のところへ行こうとするが、空に止められる。
「ダメ!ノボリが怪我しちゃう!」
湖也のキックが二人の暴狐に当たる寸前。
暴狐に変化が起きた。
なんと怪物の姿から人間の姿に戻ったのだ。
生身の状態となった二人にキックが当たる。
爆発はなく、大量の血液と粉々になった肉がそこら中に散る。
湖也が異変に気付いたのは着地してからだった。
自分が血の湖也の真ん中に立っていることに気付き、ようやく状況を理解する。
「あ…あ…」
足を眺める。
鮮血で赤く染まっていた。
(人…人を殺した…)
硬直した装甲の中で、湖也は思い切り叫んだ。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
夜中のスーパーの駐車場で、少年の声が響き渡った。
この瞬間、湖也の心は粉々に砕け散った。
モニターを眺めながら、校長は怒りのあまり机の上の置物を砕く。
「あいつらめ、余計なことをしてくれる…強くなってくれると思ったが、まだしばらくは手助けが必要となってしまったか…」




