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もしもこの世界で、あなたと  作者: 白銀
第2章〜校外戦争〜
21/52

第21話  表と裏

最初の方少し閲覧注意かもしれません。

1


夜、高層ビルが何本もたつ都会の路地裏で10人の少年少女が集まっていた。

「なぁ、あいつ死んだらしいぜ」

一人の少年が口を開く。

「戦いに行って負けて死んだそうだ」

「マジかよ⁉︎ガチで負けたら死ぬのかよ…」

「最期は勢いよく爆散したらしい」

「やだなぁ…行きたくないよ」

「死神野郎も殺られたって言うしな」

「そんな、俺たちじゃ無理じゃねーか!」

「なぁ俺らもうやめようぜ。このままどっか逃げちまおうよ」

「でもあいつが常に見ているからな…どうやって逃げたものか…」

「やぁやぁ、なんか頑張ってるねぇ」

その集団の中に一人の少年が紛れ込んでくる。

背が低く、見た目は中性的で幼い女の子にも男の子にも見える。

その少年は今入って来たにもかかわらず、今までそこにいたかのように馴染んでいた。

「お前…!どこから聞いていやがった?」

「馬鹿なのかなぁ。君たちの会話は全部聞こえているよ。最初から最後まで」

「何しに来たんだよ…」

「召集がかかったよ。すぐにリーダーの元に集まれってさ。多分戦いに駆り出されるね」

「いやだね。俺たちの会話聞いていたんだろ?俺たちはここを離れる。もうお前らに付き合ってられるか」

「ダメだよそれは〜。リーダーの言うことは絶対。逃げるなんて許されないんだから」

「ダメでも何でも逃げる!死ぬなんてまっぴらごめんだからな!」

「しょうがないなぁ」

そう言うと伝言に来た少年は怪物に姿を変える。

二人の真っ赤な胎児を引き連れた小さな球体の怪物。その姿はおぞましく、見た者全員が恐怖を感じるほどだ。

怪物は二人の背中の曲がった胎児を動かし頭と足を合わせて一つの円を作るとその真ん中に自信を置き目玉を連想させる姿へ変形する。

「ヒィ⁉︎」

その姿を見た少年は腰を抜かす。

「やだなぁ僕の姿何度も見てるだろ?さぁ、戦いに参加しようよ」

そう言うと怪物は目の前の少年の恐怖を増幅させる。

少年は恐怖のあまり全身をガクガクと震わせる。

「さぁ、僕と一緒に行こ?」

震えている少年は必死の思いで振り返ると後ろにいる仲間に向かって

「お前らは逃げろ!」

「逃げさせないよ?」

怪物はその場にいる全員の恐怖をコントロールする。

「なんで…あんたの姿まだ見てないのに…」

「お前は心の中にある恐怖をコントロールするんじゃなかったのかよ…」

怪物はん?と疑問の声を漏らすと

「まぁそうだね。恐怖だけじゃなく感情をコントロールするのが僕の力。喜びにしろ恐怖にしろコントロールするにはまずその感情が対象の心に無いといけない。恐怖の感情を引き出すために僕はこの姿をしているからね。でも…」

怪物は一拍間を開けると

「姿を見る見ない関係なく、僕が現れた瞬間から君たちは恐怖を感じていただろ?」

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

少年達は訳もわからず叫び始めた。

「ほら、精神がおかしくなる前に、僕と一緒に戦いに出ようよ」

「やだぁ!やだぁぁ!やめてよぉ!」

「俺たちを自由にしてくれよぉぉ!」

少年達の悲痛の叫びが路地裏に響き渡る。

「僕についてきてくれたら恐怖からは解放してあげるよ?」

「いやだぁ!いやだぁぁぁぁ!」

少年達はのたうち回るしかなかった。

「ハ…デ……ス…」

一人が怪物に向かって言う。

「お前は…ハデスだ!人の感情をおもちゃの…ようにいじくり回して…なんとも思わないのか!」

「ハデス?いい名前だね!冥府の神かぁ!ありがとうこれからそう名乗って行くことにするよ。お礼に君達の恐怖をもっと増幅させてあげよう」

怪物は嬉しそうに言うと少年達の恐怖心を極限まで増幅させる。

「やだぁ!死にたく無い!死にたくなーい!」

「やめ…!やめて…!もう行くから…」

「本当?」

「本当に行くから…グヘ…」

一人の少年が奇声を発した。

「あ、ごめーんもう時間切れみたい」

怪物は数メートル後ろに下がる。

「キャハハハハハハハ!」

突然、少年達は狂ったように笑い始めた。

「ぎぇー!ばうばう!ギャハハハハハハ!」

「何言ってるの?」

怪物は冷静に問いかけるが、少年達の耳には届かない。

目の前にいる少年達は興奮しだし服を脱ぎ、狂ったように踊る。

「おー今回はまた独特な壊れ方ですな」

「ぎぇー!ガブルルルルルル!」

「わうぇー!うー!ははははは!」

理解不能の奇声が暗い路地裏に響き渡る。

少年は二人ペアになりお互いの勃起した男性器を噛みちぎる。

女性は自身の胸を掴み、勢いよく引きちぎる。

彼らはそれでも飽き足らず全身を勢いよくかきむしり、数分後全身から血を出して死んでしまった。

怪物は人間の姿に戻る。

「あーあ、また死んじゃった。ミラー、後片付けよろしく」

すると、何もなかった空間から突然1人の怪物と1人の少女が姿を表す。

怪物は

少女の方はピンクの髪をポニーテールにまとめた姿をしている。

「もう、蝶野はすぐ殺すんだから!死体処理すんの面倒なんだからね?」

「やだなーせっかくこの子からハデスってなんかすごいカッコ良さそうなあだ名貰ったのに、蝶野って呼び方はやめてよ」

「何その痛いあだ名」

「酷いなー。君のミラーって名前も似たようなものだと思うけど?」

「私のはみんながそう言ってるだけで、私自身は許可した物じゃないんだから!とにかく!なるべく殺さないでね?リーダーだって戦闘員が減るって怒ってたよ?」

「僕は殺してないよ。この子達が勝手に死んでいったんだもの」

「…」

ミラーとハデスが話している間、ミラーと一緒に来た怪物はじっと静かなままだ。

その怪物に手を置くとハデスは

「じゃあ死体処理がんばってね。鷲羽(ワシバ)君、リーダーのところまで飛ばして」

そう言うと鷲羽とハデスの姿はきえてしまった。


「お前もう少し考えて力を使え、どんだけ殺したら気が済むんだ」

呆れるようにリーダーは言う。

「僕は殺してないって、思った以上にいやだって言う子が多くて、少し力を強めたらあれだよ」

「その力の使い方を考えろと言っているんだ。君の力はいろんな使い方ができるんだぞ」

「でもやっぱり僕は恐怖以外の感情にあまり興味がないからね。最初は恐怖でここを支配しようと思ってたけど」

ハデスは目の前にいるリーダーに向かって力を使う。

恐怖をコントロールしようとするが、リーダーに異変は現れなかった。

「リーダーって恐怖心がないもんねー。強い心をお持ちで。本当に人間?」

「恐怖に興味がないだけだよ」

「やっぱり、あの人への復讐心しかないの?」

「あぁ、あいつも馬鹿だよな。自分のしたことで自分の首を絞めてやがる」

「『暴監の儀式(ボウカンノギシキ)』の事?」 

「あぁ」

リーダーは短く返す。

「予定通り100人であの校舎を攻める。現場の指揮は大羅に任せよう。二日以内に集めてくれ。大事な戦闘員を殺すなよ?」

「でも結局向こうの戦力に負けて死ぬと思うけどな」

「戦う前に殺すなと言ってるんだ。行け」

「しょうがないなー」

ハデスが姿を消すとリーダーは背後にいる老人に話しかける。

「これでいいんだよな?夢境影利(ムザカイカゲトシ)

「そうだ。そろそろ決戦の火蓋を切る時だ」

「だが分からないな。あいつはあんたの弟だぞ?」

「なぁに、大きな兄弟喧嘩みたいなものさ」

「これが喧嘩とか、狂ってるな」

「お互い様だよ」


夢境は自分の部屋に戻ると、ドアの鍵を閉め、固定電話の受話器を取る。

ボタンを押して電話をかける。

『もしもし』

年寄りの男性の声が聞こえて来た。

「私だよ。私」

『おうおうどした?』

「そっちの様子はどうだ?こっちは次100体もの軍勢を襲わせるが、間に合うか」

『ちょっと早すぎないかねー。そっちは準備万端だとしても、こっちはまだ戦えるのが二人しかいないんだよ』

「戦いは2日後だ。それまでに数を揃えておくんだな」

『分かったよ。なんとかしておく』


ハデスは公園に来ていた。

しかしそこには遊具などが一切無く、かつて公園だったところと言う方が正しい。

すっかり空き地に()()()その広い土地には大きい土の城が建てられている。

「大羅ー、ハデスだよー」

城のドアをノックする。

「ハデスぅ?誰」

ドアの奥から不機嫌そうな声が聞こえてくる。

「だからハデスだって」

「俺の知り合いにハデスっつー名前の奴はいねぇよ」

「いいから開けてよー」

ハデスは思い切りドアを叩く。

「あぁうるせぇな!誰だよドンドンドンドンぶっ叩きやがって!殺すぞ!」

大羅は思い切りドアを開ける。

赤い髪のがっしりした体型の少年だ。

「蝶野じゃねーか!」

「やだなーハデスだよ♪」

「あ?訳わかんねーこと言ってねーでさっさと入れや」

二人は城の中に入る。

と言っても建物のほとんどは土で作られているので城の中にいると言うより形の整った洞窟の中にいる感覚だ。

二人は向かい合わせになっている土の椅子に腰を下ろす。

「それじゃあ死ぬ寸前のゴミがお前に名付けたあだ名がハデスっつーことか。あだ名っつーか二つ名とか異名だろ」

「やだなーそんなの痛いじゃないか!厨二病じゃないんだし。あだ名ということにしておいてくれ」

「ハデスっつー名前を気に入っておいて何言ってんだ。それより用件はなんだ。まさかその名前を自慢するために来たわけじゃぁねーよな?」

鋭い目つきでハデスを睨む。

「あーそうそう。リーダーが次陸高校に100人の軍勢を送り込むんだけどさ。現地での指揮を大羅にとって欲しいんだってさ」

「あぁ⁉︎なんで俺がゴミどもの飼育をしなきゃならねーんだ!めんどくせぇ俺は行かねーぞ」

「だーめ。これはリーダーが決めたことなんだから」

「お前が行けよ」

「君を指名してるんだよ」

「俺は俺のやりたいようにやる。そうリーダーに伝えとけ」

「ダメだよ。行くの」

ハデスは怪物の姿に変える。

力を使って大羅の恐怖をコントロールする。

「あ?なんでその姿になってんだよ。なんだ?俺がテメーにビビってるとか言いてーのか?バカ言え、有利なのはこっちの方だ。お前なんかいつでも生き埋めに出来る事を知ってるよな?テメーはこの下に眠るゴミどもの仲間になりてーのかよ」

「むー!」

ハデスは人間の姿に戻る。

「じゃあ…」

一歩ずつ、ゆっくりと足を前に出し大羅へと近づいていく。

「あ?」

頭に疑問を浮かべる大羅の目の前まで来ると、急に跪き、大羅の手を掴み自身の頬へと近づけて

「僕が行ってもいいけど…僕だけじゃ心細くて怖いから、大羅兄ちゃんにも来て欲しいな…」

目をキラキラさせ上目遣いで語りかける。

その様子を見た大羅は一言、

「死ね」

次の瞬間、

グゴゴゴゴ!

と音が鳴り響き城の内部が大きく動き始める。

土の壁でハデスの四方を囲むと上から勢いよく土砂が降り注ぐ。

「えぇ⁉︎ちょっと!」

ハデスは本当に涙目になり叫ぶ。

その時、

「だからそんな直ぐに殺さないでって!」

気がつくと、ハデスは城の入り口にいた。

「ちっ、鷲羽ぁ!」

城の中から外へ出て来た大羅は生きているハデスを見ると舌打ちをして別の方向に向かって叫ぶ。

そこにはミラーと鷲羽がいた。

「なんで直ぐに殺そうとするかなー」

ミラーは腰に手を当て頬を膨らませている。

「黙れ!何をしようが俺の勝手だろうが!」

「よし!今だ!」

ハデスは怪物の姿に変わり大羅の『怒り』をコントロールする。

「うっ!ぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐ!」

大羅は怒りをなんとか抑えようとする。

「ぐぁっ!ああああああああああああ!」

その様子を見たミラーは怪物の姿になり腕を伸ばし手のひらをハデスへ向ける。

途端にハデスの周辺に半透明のピンク色の壁が生み出され正方形を形成しながら彼を隔離してしまう。

「ぐぁ!っはぁ…はぁ…」

能力の効果が切れた大羅は思い切り息を吸い大量の酸素を肺に送り込む、

「もうこのままずっと放置していてもいいんだけど?」

隔離されてるハデスに向かってミラーは話しかける。

「反省したなら出してあげる。君の能力は協調性が無いのに無駄遣いしすぎ。これ以上能力を使って仲間を減らしたりしないと誓う?それともその檻の中で餓死するまでいる?」

「はっ!ざまーみろ!お前が調子乗ってるからそうなるんだ。頭冷やせやゴミ野郎」

檻の中にいるハデスは二匹の胎児を使い壁に頭突きをしている。

「あーごめんね。こっちの声も聞こえてないよね。鷲羽、一旦檻の中からハデスを連れ出して」

「…」

鷲羽は頷くとテレポートで檻の中に入り、ハデスを掴むと再びテレポートで檻の中から出てくる。

「反省した?」

「反省って何を?」

「能力の無駄遣いを辞めなさい。調子乗んな。分かった?」

「いつ?いつ僕が調子乗ったの?無駄遣いした?」

「鷲羽」

「…」

鷲羽はハデスをテレポートで檻の中へ戻す。

再び閉じ込められたハデスは泣き叫ぶ。

「はぁ…」

ミラーは一度大きなため息をつくと鷲羽に再び檻から出すよう命じる。

「反省した?」

「しました…」

「よろしい」

ミラーが手を下ろすと半透明な壁が空間に溶け込むように消えてしまう。

「で、さっきはなんて言ってたの?」

「反省したならいいわ。それに、大羅。そもそも君が言うこと聞かないからこうなったのよ。なんでそんなに戦うのが嫌なの?」

「別に戦いが嫌いなわけじゃねーよ。逆に大好きだね。ただあんなゴミの大群の指揮を取るのが嫌なだけだ。あんなのチマチマ動かして何が楽しいってんだ」

「ゴミとは何よ!大事な私達の仲間じゃない!」

「俺に仲間なんかいねぇ!お前らだってそうだ俺の仲間じゃねぇ。俺は俺の好きなようにやるんだ」

「この前まで一緒だったのに…なんでそんなこと言うようになったのかな…」

「何かあったのか?」

ハデスでも、ミラーでも大羅でも無い者の声が聞こえた。

鷲羽がリーダーを連れて来たところだった。

「鷲羽に連れてこられたが」

ミラーはリーダーに今までのことを話す。

「ちょっと聞いてよリーダー!大羅が全く協力してくれない!」

「なんで俺を指名したんだ!この前みたいにこいつでいいだろ!」

大羅はハデスを指さす。

「蝶野…いや、今はハデスと呼ばれてるんだっけ?」

「おーさすがリーダーわかってるー!」

「ハデスはこの前使ったからな。向こうも何か対策して来ているかもしれない。今回は君に頼みたい」

「嫌だと言ったら?」

「お前目的を忘れたのか?」

リーダーは冷たく話しかける。

「その能力。なんのために使うのか。忘れたわけじゃ無いだろうな。我々は我々を生み出したあいつを殺すと言う目的がある。そのために君は手を貸すと言った違ったか?」

「そーだそーだ!」

ハデスはここぞとばかりに声を張り上げる。

「君は一度言ったことを簡単に曲げるほど心の弱い者なのか?その能力はそんな貧弱な心を表した物なのか?」

「わーったよ。なんかもう冷めた。行けばいいんだろ行けば!ったくだりー仕事押し付けやがって」

そう言うと大羅は城の中へ戻っていった。

「ミラー、ハデスの代わりに人数集めとけ」

「えー僕じゃダメなの?」

「お前はすぐ能力使うからダメ。お前よりミラーが誘った方がついてくるだろ。お前はもう少し人のこと考えろ」

「考えてるよ?考えてるからこの能力が身についたんじゃない」

「脅す以外の方法を考えろっつってんだ馬鹿。じゃあ、ミラーよろしく」

「分かったわ」


2


「やっぱり不安だよね。2人だけだと」

学食で晩御飯を食べながら天はそう切り出す。

「そうか?俺はなんとかなると思うけど」

カレーをかきこみながら湖也が返す。

「いや、ダメだよ」

「なんだ、天も戦いたいのかな?」

陸が水を流し込みながら訊く。

「うん…湖也と上伊に協力したいなと思って」

「そういえば、この前怪物一気に2人来たよね。今度は5体とか10体かもしれないな〜」

「でも生身での戦闘は危険だ」

「そうね。私達が戦場に出ても足手まといになるだけ」

「なんかさ。あるじゃん!ヒーローを援護する特殊部隊とか!それなら湖也達の邪魔にはならないでしょ?」

「でも銃もナイフも持ってないじゃん」

「校長に頼む!」

「だったら装甲を頼め」

湖也はプレートを返却口へ運んでいく。

その時、アナウンスの音がスピーカーから鳴り響いた。

続けて、校長の声が聞こえる。

『えー、全校生徒職員に連絡する。今から緊急で全校集会を始める。15分後、体育館へいつもの形で並ぶように。繰り返す、15分後、体育館でいつもの形で並ぶように』

「何かあったんだろうか」

上伊が水を飲みながら言う。

「避難訓練?」

「いやそんなわけないだろ」

「めんどくさいけど、行くしかないよな」


生徒職員は体育館に集まった。

司会の言葉などはなく、生徒の整列が完了すると校長は壇上へ上がる。

『えー、皆さんお静かに』

スピーカーから校長の声が響き渡り、生徒達は会話をやめる。

『ありがとう。えー、校長の夢境です。てもうみんな知ってるよね。今日は皆さんにお願いと報告のために集まっていただきました。今年からこの学校の校長に就任し半年間君たちを見て来ましたがみんないい子で明るく高校生活を送れていると思います』

「どこがだよ」

湖也は小さな声で呟く。

「まぁまぁ」

陸が苦笑いする。

『しかし今この学校に未知の怪物が襲いかかって来て、みんなの明るい学校生活の邪魔をしようとしていることもご存知でしょう。奴らはこの学校の生徒、つまり皆さんを狙っています。この学校は頑丈に作られているので、みんなの学舎であると同時に怪物が来ても安全なシェルターの役割も担ってくれています。しかしずっとこの校舎に閉じこもっているのは学校面でも皆さんの精神面でもよろしくない。普通なら警察沙汰ですからね。しかし警察に連絡しても普通の銃などは奴らには無意味でしょう。むしろこの事が世間に知られては街中、いや、日本中がパニックになりうる可能性がある。そこで私は対怪物用の肉体強化装甲を開発した。これは奴らの攻撃を受け止めるだけでなく、装着者の身体能力も極限まで高めてくれる物です。それを使って2年6組の三村湖也君、大橋上伊君には怪物の駆除を任せています。ですが、敵の数も分からずいつまでこの状況が続くか分からない。そして2人だけに怪物駆除を任せるわけにもいかない。次怪物が何体くるかも分からない。3匹?7?10?それとも100?そうなったら湖也君達だけでは対処できないでしょう。そこで!私は君たちにお願いをしたい。みんなで!みんなの力を合わせて怪物と戦っていただきたい!湖也君達が使っている装着デバイスを今みんなに配布しています。君たちが教室に戻れば机の上に置いてあるでしょう。これならはみんなでこの学校を守りましょう!私の目的はただ一つです。この学校の脅威となっている怪物どもの殲滅!その目的のために皆さんが協力してくれると信じています!』

もはや演説になっている校長の話を聞いて、職員はポカンと口を開けるしかなかった。

校長の言ってる意味がわからなかった。

教員の1人が叫んだ。

「校長!なぜ生徒にそんなことをやらせるんです!学校は生徒のためにある物!なのにその学校を守るために生徒達が命かけていたら本末転倒です!戦うのは我々職員だけでいい。その装着デバイスとやらを私にください。そして今配布している物を回収してください」

『もちろん!君にもやるとも!言っただろう?みんなの力で守り抜くと!我々の学校を!我々の手で!』

誰かが拍手をした。

途端にその音は大きくなっていき、気づけば生徒の殆どが拍手をしている。

「やった!僕たちも湖也の力になれるよ!」

拍手の中、天が湖也に向かって叫ぶ。

湖也は怪訝な顔をする。

(何考えてんだ?まぁ確かに人手はあった方が俺たちは助かる。だが生徒全員が戦いに出たら学校の存在価値はなくなっちまわないか?)

「なぁ、普通に考えておかしいよなこれ」

湖也は隣にいる上伊に向かって言う。

「本当だよ。校長は何を考えているんだ?それに、こんなぶっ飛んだ事に拍手することみんなもおかしい」

「みんなだって、湖也の力になりたいんだよ!」

天がそう返した。

『みんなありがとう!さぁ!みんなの手で!勝利を手にしましょう!未知の怪物を一匹残らず殺し!明るい未来を我々の手に!取り戻しましょう!』


「あぁ…なんでこうなるんだよ」

湖也達が教室に戻ると、湖也と上伊以外の生徒の机の上に装着用デバイスが置かれていた。

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