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もしもこの世界で、あなたと  作者: 白銀
序章〜全ての始まりと繋がり〜
2/52

第2話 その後


文化祭は中止になった。


あの事件の後、警察が来てかなり大変だった。いろいろ話聞いてくるし。パトカーうるさいし。


まぁでも無事に解決してよかった。


学校の屋上で街の景色を眺めながら湖也はそんなことを思っていた。


文化祭が途中で終わったため、下校時間までまだ時間がある。


あの時陽キャになるって宣言しちゃったけど、具体的には何したらいいんだろう。陽キャって何してたっけ?他人のことには興味ないから陽キャ達がどんな性格でどんな話をしているか全くわかんね。


「陽キャ…ねぇ…」


ポツリと呟き、息を吐く。


その時、


「どうしたの?ため息なんかついて」


後ろにあるドアの方から声がした。

振り返ると、黒髪がこちらに向かって歩いて来てる。


「どうした河原、帰らないのか」


河原紗水(カワハラサナ)。今回の被害者、いつも「お前」や「あいつ」で呼んでたから名前を呼ぶと恥ずかしくなってしまう湖也だが、これから守るって誓った以上、適当な呼び方ではいけないと思い頑張ってみる。


「何よ…!急にそんな呼び方して…」

対する紗水の方も少し恥ずかしいらしく、少し顔を赤くして変に目線を逸らした。


「今まで通りの呼び方がいいか?」

「…いや、名前で呼んでほしい」

「…わかった、河原…」


かなり小さな声で言われて本当にいいのだろうかと思ってしまう湖也だが、名前で呼んでほしいと言われたので練習を兼ねてもう一度呼んでみた。


すると、紗水の方は呼び方に不満を感じたらしく、

顔を赤くしたまま怖い表情を作り、湖也をじーと睨み始めた。


その様子に湖也は少し怯え、

「なんだよ、名前で呼べって言ったのはそっちじゃんか」

と言うと、紗水は怒ったのか少しだけ大きな声で

「名前で呼んでほしいってのは…その…下の名前で呼んでってことなの!」

と返してきた。


え?あ、そっち?と戸惑う湖也に

「名前といったら下の名前でしょ?」と冷静に返してくる。いや、そんなことねーけど?と湖也は反論したかったが、そっと心の中にしまっておくことにした。


「…えぇっと…じゃ、じゃあ…さ、紗水…」


女子の下の名前を呼んだことがあまりない湖也は、恥ずかしすぎて最後の方は近くで聞いてもわかんないほどの小さな声になりながら言う。


「声が小さい!いつも陸とか天といるときはもっと声大きいじゃん!私は男の子に下の名前で呼ばれるなんてよくあることだからなんとも思わないけど、あなたは恥ずかしがりすぎ!もっと大きな声で言って!」


怒りながら紗水がいろいろ指摘すると、顔を横に向けてしまった。


その横顔が、今まで見たことないくらいに真っ赤に染まっていたから、


「お前顔真っ赤だぞ」

と湖也が口にすると

「ふ、ふん!別にあんたに名前呼ばれることくらいなんともないし。別にあなたのこと好きだとかそんな気持ちは…」

と紗水は言い返してきた。


ほう、これがツンデレかぁ、紗水のキャラが崩壊しかけてるけど、クールな黒髪ロングのツンデレはいいものだなと湖也はついニヤついてしまう。


いいもの見せてくれたお礼に、ちゃんと名前を呼んであげよう。

湖也は紗水の顔をみて、

「わかったよ、紗水」

とはっきり言った。堂々と言うとあまり恥ずかしくないものだ。


紗水は嬉しそうだがなんとか表情を変えまいと必死に顔の筋肉に力を入れながら、

「うん、ありがと」となぜかお礼つきで言葉を返した。

「…なんで名前を呼んだくらいで感謝されるんだよ…」

変な気持ちになり湖也は頭をかく。


「いや…名前で呼ばれることくらいなんてことないけど…なんか…その…」

紗水は頑張って理由を作ろうとするが上手く作れなかった。うれしすぎて頭が回らないのかもしれない。


そんなツンデレ姿を見せられて湖也は心にしまいきれず、とうとう声に出してしまった。

「いいツンデレだなぁ」

「ッ!ツンデレって何よ!自分に正直じゃないとかそんなこと言いたいわけ!?」

「別にそんなこと言ってないだろ!」


ツンデレと言われてとうとう紗水の怒りが爆発。対する湖也も変な勘違いされたことを訂正しようと声を張り上げる。


ワーワーギャーギャーと、2人の言い争いが始まった。


「だいたいあなたは…!」

「そう言うお前こそ…!」


………


……




ようやく口喧嘩が終わり、2人は街の景色をぼんやりと眺めていた。

そこで湖也が口を開く。

「なぁ」

「ん?」


「紗水のツンデレ、動画に撮って陸と天に見せていい?」

「まだその話続いてたんだ!?」








校長は校長室の窓から外を眺めていた。

手には携帯電話が握られており、耳に近づけて誰かと話をしているようだ。


「君のお父さん、捕まってどんな気分だ?」


残念そうな様子で問いかける。黒木先生を失ったのは悲しいようだ。

対して、電話相手の黒木の娘は、つまらなそうな調子で答えた。


「ん?別にどーでもいいよー、他人の子供に手を出す時点で父さんじゃねぇし。狙われたのは誰?」

「2年の河原紗水という女の子だ。聞くところによると我が校一の人気者らしいな、彼女をいじめる同級生も今日見つかった。」

「その人気者さんをいじめた人の名前は?」

柳沢火凪(ヤナギサワヒナ)を含む4人の集団だ。」

「あ、あいつ?あいつは中学の頃もいろいろやってたからなー高校でもそんなくだらない事やってたんか」


笑いながら言う黒木の娘の話を聞いて、校長も本当にくだらない事だと思った。いじめがあっていいはずがない。


「うちはそこの生徒じゃないからよくわかんないけど、他にもやばいやついるらしいねー」

「他校の校長と携帯電話で話している君も相当やばいやつなんだがな」


そして出来れば敬語を使って欲しい。そう校長は思ったが何度言っても変わらないためもう諦めていた。


「褒め言葉として受け取っておこう」

「そして、他の高校の校長の連絡先も入手してるとも聞いた。」

「持ってて損するものじゃないしー、他校の情報手に入れるの面白いじゃん?なんか支配してる感じがして」

「情報だけで世界を支配できると思うな。知識だけでなんとかなるほど世界は甘くない。」


ふーんと黒木の娘は適当に流し、少し声のトーンを下げて質問をする。

「で?要件は何?まさか父の逮捕を知らせるためだけに電話かけてきたわけじゃないよねぇ」

「あぁ、そろそろ本題に入ろうか。君の知ってる通りこの学校はやばいやつがゴロゴロいる。生徒にしても先生にしても、私だってその1人だ」

「自覚あるんだー」


クスクス笑いながら黒木は言う。

「そして君はそんなことを普通に知っている。当たり前かのように。それどころか他の高校の情報までたくさん持っている。まるで図書館のように」

「情報をたくさん持ってるってのは事実だけど、もっといい例えなかったの?」


黒木の言葉をガン無視し、校長はある要求をする。

「そんな情報図書館になってる君に、一つ頼みたい事があるんだが、黒木花蓮(クロキカレン)君」









オレンジ色に染まりかけている空を見ながら、2人は今日の出来事を思い出していた。

ちなみにツンデレの話は終わった。多分。


「まさか紗水がいじめられていたとはなぁ」

ポツリと湖也は 呟いた。


「たまに柳沢達と一緒にいるのは知ってたけど、まさかそんなしょーもないことだったとは…陰キャでクラスの女子と全く話さないからよく知らないが、そんな酷い性格ではないと思ってた。」


湖也はまっすぐ前を向いたまま紗水に話しかける。


「女はすぐに性格を変える生き物よ。目に見えてる姿だけで女の性格を判断しないことね。」


紗水も空を眺めながら女の恐ろしさを語る。


「それってお前のツン」

「その話はもうしないって言ってたでしょ」

「すまん」


すぐに性格を変えると聞いてどうしてもさっきの紗水が頭の中に浮かんでくる湖也だったが、なんとか消そうと頑張った。しかし実際には脳裏にしっかりと焼き付いて消えないんだが。


「なんで相談しなかったんだ?先生でも友達でも、俺でもよかったのに、もちろん家族でも。」

「恐ろしかったのよ。柳沢さん達、お腹ばっかり殴って顔とかは全く手を出さないから見た目でいじめられてるってわかりにくいし。なんでお腹しか殴らなかったんだろう。」

「さぁ、紗水の言う通りバレないようにするためかもな」


そこで、湖也は火凪の持っていたペットボトルを思い出した。


「そういえば、柳沢は紗水に何しようとしてたんだ?かつあげ?なんかペットボトルを持ってた気がするんだが…」

「あぁ、あれ見ちゃったの?」

「一瞬だけな、なんか茶色の液体が入ってたような気がする」


そこで紗水はちょっと暗い表情を作った。

中身のことを言おうか迷っているみたいだ。


それに気づいた湖也は、少し焦りながら

「無理に思い出さなくていいんだぞ!」

と言った。


だが紗水は覚悟を決めたらしく、夕日を見ながら湖也に質問をする。

「なんだと思う?」

湖也はうーん…と少し考えてから、

「カフェオレ?」

「そんな甘いものじゃない」

「コーヒー?」

「そんな甘いものじゃない」

「…コーヒーって甘いか?」


中身のことを知らない湖也は真剣に考え始める。

確かに砂糖をドバドバ入れたら甘くなると思うが…

うーんと唸ってしまう湖也。

そこに紗水の指摘が入る。


「甘いって味のことじゃなくて、湖也の考えが甘いってこと、あれの中身がコーヒーやカフェオレだったら言うことに躊躇う必要ないじゃん。それどころかその場でガブガブ飲んでると思う」


「そうか…」

確かにそうだなと納得してから湖也は再びシンキングタイムへ。


だが茶色の飲み物というとそれくらいしか思いつかない。やばいものとなるともっと思いつかない。


そこで湖也はあることに気づく。


「もしかして、飲み物じゃないとか…」

「そ、もう答え言っていい?」

紗水が確認をとる。どうやらこの話を早く終わらせたいみたいだ。


まぁあまり思い出したくないものだろうし当然だよなぁと湖也は思う。


「どーぞー」

「あれはね、犬のフンジュース」


あまりにさらっと言うもんで一瞬ふーん…と聞き流す湖也だが、すぐに聞き直した。


「犬のフン!?」

「そ、おまけに生きた蜘蛛5匹付き。」

「うわぁ、飲みたくねぇ」

「でしょ?私もあの時吐きそうになったもの。」

「で、飲んだの?」

「飲むわけないじゃん飲まされそうになったけどね。」


そこで来たのがあの黒木なのって紗水は言う。

黒木、普段はいい先生だったんだけどなぁと湖也は授業を思い出す。特別授業が面白いってわけじゃないけど、信用できる先生だった。


「あいつもう結婚して子供もいるのにな…」

「なんでそんなこと知ってるの?」

「授業中にいろいろ言ってた。」


体育の教師は男女で担当が違うので、紗水は聞いたことがなかったのだろう。だが紗水と黒木は接点がないわけじゃない。一年の頃の女子担当の体育教師が黒木だったのだ。


「お前一年の頃聞かなかったの?」

「そんなこと聞かなかったし、もし聞いてたとしても興味ないからすぐに忘れてるわ、そんなこと」


お前男の話には全く興味ないもんなと湖也は呟く。

そうそうと紗水はニコニコしながら頷いた。


そこで湖也はあることに気がついた。

「もしかしたら黒木は一年の頃から紗水を狙ってたんじゃ?」

「その可能性は高いわね。2年になってから一度も話したことないもの。そう思うと寒気がする。」


そこで湖也はふっと息を吐き夕日を見つめながら呟く。

「黒木はこれからどうなるんだろう。」

「考えなくてもわかるでしょ?妻と娘は離れるし、仕事も見つからないでしょうね。『JKを襲った』なんて知ったらとこも雇う気なくなると思う。」

「柳沢たちは?」

「普通の高校生活送れるかわからないわね。あいつらのことなんか考えたくもないし」


でもこれで紗水を襲う奴は居なくなった。そう思いたいが、もう出てこないと言う保証はない。


「紗水、お前高校生活大丈夫か?」

不安になり、湖也は聞く。


対する紗水は微笑みながら

「あなたが守ってくれるんでしょ?」

と言った。


まぁそうなんだけど…と湖也は困る。

「でも、全てから守れるわけじゃないと思う。黒木みたいな怪物が出できたら勝てないし、校長が敵になったら戦った瞬間退学になる可能性もある」

「大丈夫よ、あの校長は悪い人じゃないもの」


例え全校生徒が敵になっても守るって決めた。

その思いは変わらない。

だが先生も入ってくると話は別だ。

黒木みたいな先生が敵になるかもしれないし、生徒の親が襲ってくる可能性もある。

いや、もう終わったのか?

今日の事件が起こり、生徒はいじめをなくそうという意識が高まったかもしれない。

ていうか紗水はそもそもいじめられるキャラじゃないだろ。

ていうかなんでいじめられてたんだ?


湖也はいろいろ考え、ある疑問を浮かべる。

「なぁ紗水、なんでお前は柳沢たちにいじめられてたんだよ」

「さぁ、ただ気の弱い奴と絡んで金を奪おうとしてたんじゃない?」

「いや、でもお前を守ってくれる人はたくさんいるだろ。人気者だし」


人気者…黒木も火凪たちもみんな私のことをそう呼んだ。

なんで私は人気者と呼ばれるまでになったんだろう。

そんなことを紗水は考える。


紗水の表情が暗くなり、湖也は少し慌てる。

「今朝もそんな顔したよな。人気者って言葉が嫌いか?」


自分で考えてもわかんないや。こんな気持ち始めて。

そう思い紗水は湖也に答えを求める。


「ねぇ、なんで私は人気者になったんだろう?」

「うぜぇ」


男女ともに人気がある紗水からそんな相談をされ、女子からの人気0(男子からの人気も0に等しい)の湖也は舌打ちをする。


その反応に紗水は慌てて

「真面目に考えてるの!今日の事件が起きた原因はそこにあると思うから」

「そりゃ、勉強運動できて美人だったら人気でないわけないでしょ」

「じゃあ勉強運動しなくて美人じゃなかったら人気でないんだ」

その言葉を聞いて夕日を見ていた湖也は目だけを動かして紗水の方を見る。

「…一体何をするつもりだ?」

「人気者になったからいろんな人に狙われるようになった。だったら単純な話、人気が出ないようにすればいい。勉強しない、運動しない、変な目つきで周りを見下す悪になってやる」


邪悪な笑みを浮かべてそう発言する紗水を見て湖也はえぇ…とドン引きした。


「そんなことしていいのかよ…いや、お前はそういうのが一番似合わないタイプだ。そんなことしてはいけない」

「だったらどうしたらいじめられなくなる?」

「だからまだいじめが確定したわけじゃないしそんなこと気にしなくていいだろ。それにいじめられたとしても俺が助ける。何度も言わせるな」

「そっか…でも心配。カメラがなかったら今日助けなかったんでしょ?」


うっと何も言い返せなくなる湖也を見て紗水はため息をつく。


「だからそれは相手が教師だったからって言ってるじゃん」

「ほんとに?」

「あぁ。相手が同級生だったら戦ってた」

ほんとはめんどくさくて助ける気はなかったなんて言えない湖也は必死に言い訳をする。


紗水は疑いの目を向けながら、

「ま、いいわ。ここでちゃんと約束したし」

「お前、少しは自分を変えようとか思わないのかよ」


紗水と話してると自分を変えようという意志が伺えない。他人任せにしようとしてないか?と湖也は思ったが…


「だから悪になるって言ったじゃない。止めたの湖也でしょ?」

「あれには反対なんだが…」

「何?他に何があるの?」


湖也はため息をつきながら


「自分の意思をしっかりと伝えられたらいじめは減ると思うぞ。嫌なら嫌、関わらないで、話しかけないで。自分の意見をはっきり言うだけで相手は紗水の見方を少しは変えると思う」


その言葉を聞いて、紗水はドキッとした。

紗水がいじめられてた理由。そしていじめられても止めることができなかった、他人に相談することができなかった理由がそこにあると思ったからだ。


「そう…参考になるわ」

顔を赤くして呟く。


他人に頼ってはダメだ。他人に頼ってばかりだといざ被害にあった時自分の意志を伝えられなくなるし、他人に相談できなくなる。自分から想いをぶつけるようになれば少しは環境は変わるだろうか。


そんなことを考えながら紗水は空を見た。

少し前までオレンジ色だった空は、いつのまにか青く暗くなってきていた。








「へぇ、学校に来て欲しい。ねぇ」

転校しろってこと?と花蓮は校長に質問する。


「いや、そうじゃないんだが。いや、間違ってもないが、数日こっちに来てくれないか、お前の意見を聞きたい。」

「それならいつでもこうやって言うことができるけど?」

「違う。学校を見てどうしたらいいか聞きたいのだ。来週の月曜日から来て欲しい。そっちの校長には私が伝えておこう。」


うーんと花蓮は考え始める。


校長は続ける。

「そっちにいても面白くないだろ?」

「その言葉うちの校長が聞いたら大変なことになるぞー」

「いや、そっちには普通の生徒しかいないだろ?ってことだ。こっちに来て色々刺激を受けたいと思わないか?」

「こういう周りに普通しかいないから自由なことができるんだがねー。周りが変なやつだったらこうやって情報集めていろんなお偉いさんと会話なんてできないと思うし」

まー確かに刺激が欲しいと思うことはあるんだけどねーと花蓮は続ける。


この学校はこのままではダメだと校長は考える。

一見すればちゃんと校則を守り学力もまぁまぁな普通の生徒ばかりだが、教師の見ていない、学校に縛られてない裏では色々やってるって聞く。その一つ結果が今日の文化祭である。


校長は湖也を思い出す。

彼は落ち着いていた。あれだけの事件現場を見ていたのに、焦らず、詳しく状況を教えてくれたのだ。

今まであまり気にしてなかったが、彼には何が変なものを感じた。この学校をひっくり返してくれそうな何かを。


今電話で話している黒木も使える。

彼はいろんなところからいろんな情報を得ている。

教師の情報、生徒の情報、学校の情報。それらの情報を持っている黒木は自然と普通の生徒と「やばい生徒」を見分ける能力を得ているだろう。


そこで校長は考えた。

花蓮君がこの学校の隠れた闇を見つけ、湖也君がそれを排除する。


2人が手を組めばそう長くない時間でこの学校の「掃除」をすることができる。


校長が考え事をしている間、花蓮はずっとおーいとかもしもーしとか言っている。


「おい、おいってば」

「あぁ、すまん。で、うちには来てくれるのか?」

「まぁ少しくらいそっちに行ってもいいかなー。いつ?」

「再来週の月曜からでどうだ」

「8日後か、まーいいだろう」

「そっちの校長には私が伝えておこう。では、またな」

「ばいばーい」


通話を終えた後、校長は窓の外を見て思った。

(この学校を変えてくれる2人…か。面白くなってきたな)








湖也と紗水の2人がこれからのことについて話し合っていると、後ろの方から音が聞こえてきた。ドアの開く音だ。


振り向いてみると、そこには陸と天の2人がいた。


天は、街の景色を眺めている2人を見て、

「おうおう!なんだ付き合い始めたのか?俺より先にリア充になりやがって!」

「別に付き合ってねーよ。だが、いいものは見られた」

「え?何!?」

「紗水のツンデレだ」

「え?嘘!?河原のツンデレ!?ねぇ動画撮った?」

「撮らせてもらえなかった」

「ていうか、お前いつから河原のことを紗水って呼ぶようになったの?」

「さっきから」

「やっぱり付き合ってるんだー」

「だから付き合ってねぇって」


そんな会話をする2人を見ながら、紗水はため息をつく。

陸が天の肩を軽く叩き強制的に会話を終わらせて

「もうそろそろ下校時間だぞー。帰ろうぜ」


えっ嘘と湖也と紗水は慌てる。2人とも時計を持ってなかったし、話に夢中で時間のことなど全く考えてなかったのだ。




4人で校門を出て、湖也は紗水に

「じゃあな。また月曜日」

と言った。


紗水にはそのことが嬉しくて、つい微笑んでしまった。だって、今まで「また〇〇日にな!」とか言われたことないし。


その様子を見ながら陸が

「お前やっぱり付き合ってるだろー」

と言い、湖也が

「だから違うって言ってるだろ!?」

と叫びながら天を含む3人は自転車をこぎ始め、紗水は家の方向へと歩き始めた。




事件は解決し、しかし何か大きなものが動き出し、

9月16日、文化祭は幕を閉じた。

文化祭の話はこれで終わりです。ちなみにここまでチュートリアルみたいな感じです。次回からは学校の「やばいやつ」と湖也達のバトル(迫力はないと思う)になると思います。次回も見てもらえたら嬉しいです。

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