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もしもこの世界で、あなたと  作者: 白銀
第1章〜校内戦闘〜
16/52

第16話  校内戦闘

なんかかっこいい決め台詞作ろうと思ったけど思いつきませんでした。

1.


小さい頃、ヒーローに憧れていた。

テレビという四角い箱の中で、みんなの笑顔を守るために悪の怪人と戦うヒーロー。

バイクに乗って戦うヒーロー。3〜7人の集団で戦うヒーロー。巨大化して戦うヒーロー。

でもそれは、撮影と編集によって作り出されたわけであって、実際には存在しない。

玩具の変身アイテムを使ってもなれないし、そもそも倒すべき怪人が現実世界にいるわけない。

それでもみんなの笑顔を守るヒーローになりたいと思っていた。


2.


「やめてくれ…」

「おらおらどーした!支配者さんよぉ!さっき女どもからチヤホヤされておきながら!今度は命乞いか⁉︎自分ばかり幸せになろうとするな!」

上伊の頬に拳が当たる。

「自分勝手すぎるんだよなー。その結果こんな事態になるなんて自業自得。ダサすぎるよなー」

腹に別の人の蹴りが入る。

「がは…」

何か吐きそうになる。

(そうだ…学校を戻せば…)

「そーいや言い忘れてたけどさぁ」

遠くから声が聞こえる。

上伊がいじめられてる様を見物している翔士の声だ。

彼はポケットから何かを取り出した。

掌に収まるくらいの小さい四角の箱に青いボタンが取り付けられている。

「この学校を元に戻してこの状況を抜け出そうとしても意味ないからなぁ?お前が目覚める前に爆弾を仕掛けさせておいた。スイッチ一つで建物が吹き飛ぶぜ。元に戻した瞬間押してやる」

「そんなことしたら…お前も死ぬぞ」 

「いいんだよ別に。面白いもの見るためにはなんでもやる」

「狂ってやがる…大体爆弾なんかどうやって手に入れて…」

「作ったんだよ」

「高校生が作れるもんじゃないだろ…」

「ごちゃごちゃうるせぇんだよ!」

耳元にでかい声が聞こえたと思った次の瞬間、再び殴られた。


どうして、どうしていじめられるんだ。

俺はこの学校の支配者だったはずだ。

権力という力を確かに手に入れていた。

いじめられていた姉が言っていた悪と対抗できる力を。

Q果たしてそれは正しい力だったのか?

 正しい?どういうことだ?

Qいじめられないようにいじめる側に回った。その行為こそが悪なんじゃないのか?

 そうかもしれない。

Qお前は、間違った力を手に入れてしまったのではないのか?

 でも仕方のないことだったんだ。

Qそもそもお前がそんな力をつける必要なかったんじゃないか?お前はいじめられるような人間ではないだろう。

 人間いつ失敗していついじめられるかわからないだろ!やられる前に手を打っておくべきだ!

Qでもそれは道具を使ってまでやるべきことか?人間関係なんか道具ですぐに作れるわけじゃない。

 それは湖也から聞いた!もうほっといてくれ。俺が全て間違っていたんだ!

上伊は理解した。

俺は本当に馬鹿なことをしていたと。

お姉ちゃんは俺に何をして欲しかったんだろう。

どんな学校生活を送って欲しかったんだろう。

「お姉ちゃん…」

上伊は呟く。

「おいおい、こいつお姉ちゃんとか言い出したぞ!」

「今度は姉に頼るのかよ!情けねえなぁ!」

「死んだ人の名前なんか呼んでもなんも起きねーよバーカ!」

「お前の姉さんが死んだからって俺らには関係ねぇんだよ!自分の事情を他人に持ち込むなゴラァ!」

「雑魚は雑魚らしく死んどけや!ギャハハ!」

彼らの言葉が、上伊に怒りの火をつけた。

殴られ、蹴られ、再び意識を失いそうになる。

しかし、上伊は対抗する。

自分のしてきた事を認めた上で。

「確かに俺は間違っていたのかもしれない!いいや間違っていたんだ!でも、お前らだって俺と同じ状況に立っていたらどうする!絶望から抜け出せるならなんでもするだろ!」

そうだ、絶望だ。絶望しないために俺はこんな事をしてきたんだ。

それに対して彼らは

「こいつ、本当馬鹿だな」

「なんでこんなこと言ってるんだ?」

「幸福は独り占め、墜ちるなら他人ごと。そんなのあたり前じゃないか」

「でもなんだ。もしもお俺らに姉がいて死んでしまった時の事を想像してみろってか?笑わせる。もしも俺に姉がいたら、お前の姉みたいな弱い人にはなってないだろうさ!」

「現に私姉がいるけどいじめられてるなんて聞いたことないわ!」

「姉が馬鹿だからお前も馬鹿になったんだ!」

「おい」

と言いながら人混みの後ろから声がした。

人混みは左右に分かれ、真ん中をゴツイ男性が歩いてくる。

学校で恐れられている不良グループのリーダーだ。

「こいつ殺そうぜ。そんなに姉が好きなら合わせてやる。そして馬鹿同士そこで楽しく暮らすんだな」

「お…れ…の…お姉ちゃんを…!」

リーダーが拳を振り上げる。

上伊の顔面目掛けて振り下ろす。

「馬鹿に…するな!」


次の瞬間。

上伊の体は光に包まれた。


拳を寸止めさせたリーダーや、その後ろにいる「やばい生徒」たちは驚く。

「おい、なんだこれは…」

遠くから眺めていた翔士も目を丸くする。

「おいおい、なんだこいつは」


正確に上伊の体から光が発せられていた。

真っ赤な光だ。怒りの感情がそのまま光となって出てきたような感じだ。

ちょうどその時、体育館の扉が開いた。

湖也達が到着したのだ。

彼らも赤い光を見て驚く。

「一体どうなってるんだ⁉︎大橋は⁉︎あいつはどこにいるんだ!」

「あの赤い光に包まれてるのが、上伊君みたいね」

「マジか、てかよくお前冷静でいられるな」

と湖也と紗水が話している横で、赤く照らされている体育館の中を見ながら天と陸が

「プラネタリウム?」

「わー本当だ綺麗ー。って違うわ」

「よく冷静にツッコミできるね」

と話している。

「ていうか人多いな!何人いるんだ?彼らも大橋みたいに連れてこられたのかよ!」

「いいやそれは違うな」 

すぐ上から声が聞こえた。

上伊達を観察していた翔士だ。

彼は二階の観客席から湖也達の方を見ている。

「俺が全員呼んで大橋を襲わせるよう仕向けたのさ。あいつら、今の学校に不満が溜まってんのかすぐに飛びついちゃってよ」

「お前…!」 

花蓮からこの事件の主犯者だと知らされていた湖也達は一斉に翔士を睨むが、翔士の方はそんなこと気にせずぶつぶつ呟いている。

「まさか、あのじじいの目的はこれだったのか!」


3.


校長室では校長が机の上にある欲望を叶える本をペラペラとめくっていた。

「ほう、この段階まで来てしまったか」 


その一方、花蓮は冷や汗を垂らしていた。 

「これは本格的にまずいことになりそうだ」


4.


赤い光を放っている上伊は声を張り上げた。

「俺のお姉ちゃんを馬鹿にするな。俺の大事なお姉ちゃんを…」

その様子を見ていた翔士はさらなる異変に気づく。

「欲望の暴走か…欲望を叶える本の力が強くなっちまっている。さっきまで散々大橋を甚振っていたあいつらも行動を止めてしまっている…これは観察するしかねぇなぁ!」


湖也は上伊に向かって叫ぶ。

「おい、大橋!なにがあった⁉︎待ってろ!今すぐ助けてやる!」

「観察の邪魔すんじゃねーよ」

二階の観客席からひとっ飛びで湖也達の目の前に着地した翔士はイラついた表情で発した。

「観察なんかしてどうする」

「別にどうもしない。俺の趣味だ。こんな面白いもの見て止めろと言う方が無理だろ」

「あいつが苦しんでるかもしれないんだぞ」

「それでも結構。苦しめば苦しむほどあいつの欲は大きくなる。さらに面白いものが見れそうだ」

「止めるといったら?」

「力尽くで邪魔をするまで」

次の瞬間。

翔士は湖也を蹴り飛ばした。

飛び膝蹴りを喰らった湖也の体は体育館の壁に叩きつけられる。

「お前…そんな力…」

「凄いだろ?お前じゃかなわんよ」

翔士はゆっくり歩きながら湖也に近づく。

その時、天と陸が翔士を止めるべくしがみついた。

「僕も戦うって言ったんだ!」

「ここに来た以上、湖也がボコられるのを黙って見てるわけにはいかない!」

「そんな貧弱な力で俺を止められると?」

二人に体を固められた状態で、翔士は体をブン!と思いっきり振り回した。

二人の体が吹き飛ばされる。

「お前、人間なのか?」

「お前らとは違うかもな!」

吹き飛ばした天へ近づき、腹に向かってかかとをぶつける。

「がはぁ、いででででで!」

「ぬぅぅぅぅおぉぉぉぉ!」

叫び声と同時に飛び出し湖也は翔士の顔面を狙うが、

「遅い」

殴る二秒前の湖也を回し蹴りで吹き飛ばしていく。

「俺に殴り合いで勝てると思うなよ?」

倒れた湖也の真正面に立ち笑う翔士。

その隙をついて、陸はポケットに入っていたボールペンを取り出した。

翔士の後頭部を狙って思いっきり投げ飛ばす。

そのペンは奇跡なのか後頭部に吸い込まれるように飛んで行ったが、

「馬鹿が」 

翔士は一言言うと腕を後ろへ回し当たる寸前のボールペンを掴み取った。

「はぁ!おかしいだろ⁉︎」

「こんなほっそいペン、当たっても痛くはないんだが…」

翔士がペンを握った拳に力を入れると、ボギボギボギと折れてしまう。

「あぁ!俺のペンが!一本しか無い赤ペンがぁ!」

「ちゃんと予備も持っていくんだな!」

翔士は陸へ急接近し顔面目掛けて足を伸ばす。

陸は転がるようにその場から離れる。

「ちょこまかと動きやがる。だが…」

方向を変え一直線に飛び出すと陸の襟を掴んだ。

「捕まーえた♡」

「わ!気持ちわ…」

言い終わる前に翔士の拳が陸の顔面を殴打した。

「戦闘の経験の無いお前らじゃあ勝ち目はねぇよ」

湖也は起き上がりながら、

「そんなもの、やってみなくちゃわからない」

「もう結果見えてるんだが?」

倒れた三人を眺めながら翔士は笑う。

「ガハハハハ!全く学校を元に戻すって粋がってた割にはあっけねぇなぁ!やっぱりお前らは底辺だよ。底辺は底辺らしくいじめられて学校のシミにでもなってるがいいさ」

その時、体育館の入り口から声が聞こえた。

「なんだこれ?赤いプラネタリウムがあるしなんか三人倒れてるし情報量多すぎだろ」

「なんか怖いよぉ!やっぱり帰ろうよ」

「馬鹿野郎ここまできたらかっこよく事件解決するのがヒーローだろ?」

「ノボリいつからヒーローになったの…?」

その言葉を聞いて湖也は思い出した。

小さい頃、ヒーローに憧れていたこと。

みんなの笑顔のために悪と戦う、そんな存在になりたいと思っていたこと。

「ほほう?キラキラネーム野郎になんの取り柄もない雌豚かぁ!お前らで俺を止められると思ってんのかぁ⁉︎」

「わりーが、俺は小さい頃名前が原因で殴り合いばっかやってたんだ。彼らと一緒にしてもらっちゃ困るぜ」

イキり散らす血斗の隣にいる葵は入り口のすぐ隣の壁に背中を預けている紗水に気づいた。

「え!?ぁぁあなた一体何やってるんですか!?」

「私に質問しないでくれる?」

なんとなく付いてきたものの目の前の光景が悲惨すぎて体が固まってしまっていたのは秘密だ。


翔士が血斗に注目している間、ジリジリと匍匐前進で陸に近づいた天はヒソヒソと囁く。

「ねーねー、一宮くん観察するとか言ってたけど全く向こう見てなくない?」

「そーゆーのは気にしない方がいいぞ天」


戦いの鐘が鳴った気がした。

二人は同時に動き出す。

先に攻撃を仕掛けたのは翔士だが、避けられ、隙をつかれ腹に蹴りを喰らってしまう。

その場に倒れ込む翔士は近くにあった血斗の足を掴むと引っ張り無理やり転ばせる。

「ってぇなぁ!」

そのまま血斗は足に力を入れてもう片方の足を掴んでいる翔士の顔を数発蹴る。

あくまで普通の高校生なので、ものすごい空中戦ができたり凄いビームが出たりするわけではない。

男子高校生の泥沼なバトルがそこにはあった。

彼らがドンパチしている間、湖也、天、陸の三人は一点に集合する。

「大丈夫か?天、陸」

「あぁ、多少痛むけど、問題ないさ」

「これで泣いてちゃ男として恥ずかしいよ!」

「お前さっき涙目になってたけどな」

「う、うるさいなー陸!」

元気な二人を見て安心した湖也は体育館の奥を見つめる。

体育館内を照らす光の根源。

大橋上伊を。

彼は手足をロープで縛られていて動けそうにない、やはり助ける必要がある。

「待ってろ大橋!今そっちに行くからな!」

「もういい」

返事が返ってきた。

しかし予想していたのとは違う、拒絶を示す返事だった。

上伊は手足を縛られたまま体育座りをして壁に背を預けている。

周りの人間はピクリとも動かない。

「大橋…?お前どうしたんだ?」

「もう誰も信用しない」

「は!??どう言うことだよお前!」

「ちょっと!学校を元に戻してよ!」

天が叫ぶ。

「お前何言ってんねん!頭壊れとんのか!」

陸も叫ぶ。

「なぁ三村。こいつらさっきなんて言ったと思う?この学校の現状を知らされて、どんな感想を述べたと思う?まだ俺に対しての怒りだけだったら良かったんだ。この状況を作り出したのは俺、悪いのは俺なんだから。だがこいつらは俺のお姉ちゃんを侮辱してきたんだ!なんで⁉︎関係ないでしょ!なんでもういないお姉ちゃんのことまで言われなきゃならないんだよ!ふざけるんじゃないよ!」

「大橋…」

「こいつらは自分が楽しければどうでもいいっていうやつなんだ!他人の不幸を吸って自分の笑いに変えるやつなんだ!お前だってそうなんだろ⁉︎学校が戻ればそれでいいって!自分が不幸じゃなくなればそれでいいって!自分の願望のためだけに動く。お前も『やばいやつ』なんだ!」

「お前よくそんなこと言えたな⁉︎」

湖也は言い返す。

「自分の欲望の為に学校を作り替え、わざわざ関係ない俺たちまで巻き込んで。こんなことしといてよく人のことが言えたな!馬鹿野郎だ!少しは自分のしてきたことを見返してみろよ!」 

「じゃあお前、こいつが言ってたことを肯定すんのかよ?お前まで俺のお姉ちゃんのことを馬鹿にすんのかよ!」

上伊はもう、冷静な判断ができなくなっている。

「なんでそうなるんだよ!」

「湖也…」

突然ポンと肩を叩かれた。

振り向くと陸がいた。

「もういい加減突っ込もうぜ。なんかすげぇイライラしてきた」

「大橋くんさーよくこんなんでクラスの人気者になれたよね。羨ましいよ!一発ぶん殴りたいよ!」

天も掌にもう片方の拳をペチンと叩きつけながら言う。

湖也は再び視線を上伊に戻すと、

「お前まだ分かってねぇみたいだな。ならば相手になってやる。冷静になるまでお前の思いぶつけてみろ!」

「やれ」

小さい声が上伊から聞こえた。

次の瞬間、上伊と湖也達の間にいた数百人の「やばい生徒」がのろりと動き出した。

湖也達に向かって進んでくる。

「お前、こいつらの精神を完全に操ってるのか⁉︎」

「じゃあ向こうにいる登達も…?」

陸は後ろを振り向くがそんな様子はない。今も翔士と戦っている。

操る対象を自在に決められるのだろうか。

怒りと共に欲望も爆発した為か、力が前より格段に大きくなっている。

湖也達は彼らの中に突っ込んだ。

「お前…殺す…お前…殺す」

と呟きながら迫ってくる「やばい生徒」達はまるでゾンビに見えた。

勢いよく走って突っ込んだが、やはり人混みの中に入ると自然とスピードも下がる。

「「「やっぱ無理」」」

すぐに三人は人混みの中から出てきた。

「俺たちがこいつらを引きつける!湖也は大橋を!」

「分かった!」

湖也が返事をするとまず陸が動き出した。

勢いよく右へ走る。

「やばい生徒」の大半は陸の方へ意識を向けた。

彼らが陸を追うのを確認してから、湖也と天は左へと走り出す。

正確には左から回り込んで上伊のところへ行こうという作戦だ。

当然、残っていた「やばい生徒」たちが二人を追う。

彼らが「陸を追うチーム」と「湖也と天を追うチーム」に完全に別れたことを確認した天は足を止めた。

「湖也!あとは任せたよ!」

「お前も無理すんなよ!」


湖也が走り去ったあと、天は彼らに向かって歩き始めた。

(無理に突っ込んでも仕方がない、なら少しずつ近づいて相手の出方をみよう)

彼らの一番先頭にいた奴が突然拳を上げた。

次の瞬間それが振り下ろされる。

天は体を右へ回転させることで回避する。

「あれ?今避けれた?あれ?僕って戦闘センスあるのかな?」

テンション上がった天は考えるのをやめ彼らの中に突っ込んだ。

「ほっとっやぁ!」

人混みの中でも攻撃は続いた。

足を出すもの、拳を出すもの、つかもうとしてくるものなどいるが、天は人混みを利用して全て避けていく。

すると避けられた攻撃は目の前の人に当たり、攻撃をくらった人は怒り、目の前の人を殴り返す。

自然と仲間割れが行われた。

一つの団子になって殴り合いを始めた「やばい生徒」の中から抜け出した天はその様子を見て喜ぶ。

「楽しい!」


陸はひたすら走っていた。

湖也に注意を向けないように、湖也から離れるように彼らの注意を引きつけていく。

階段を上り二階の観客席に着いた。

「はぁ、はぁ、疲れた」

めんどくさななった陸は観客席の椅子を彼らに投げつけ進行を止めようと思ったが、椅子は固定されていた外れない。

(ていうか、大橋に操られているだけでこいつらに罪はないからな。怪我を負わせたらかわいそうだ)

だがこのまま走り続けても疲れて追いつかれるだけだ。

外まで連れ出そうと考え入り口を見ると、まだ血斗と翔士が戦闘を続けていた。

(一気に大勢を足止めできる方法ないのかよ⁉︎)

とその時、コロン、という音が聞こえた。

音のした方を見てみると、腰ぐらいまでの長さの鉄のパイプが転がっていた。

「なんで鉄パイプがこんなことろに⁉︎」

見渡してみると、二階の壁に等間隔に鉄パイプが立てかけてある。

建設に使用したものだろうか。

「なんだかよくわからねぇが、助かったぜ!」

言いながら陸は彼らに向かって鉄パイプを転がす。

考えなしに歩いてくる彼らの一人がその鉄パイプを踏みつけ、バランスを崩し転んだ。

すると後ろにいた人もつられて倒れていく。

全員とは言わないが、ほとんどの彼らの動きを止めることができた。

「申し訳ない!痛いと思うけど、少し我慢してて!」


湖也は上伊のところにたどり着く。

気付くと上伊の手足を縛っていた紐は無くなっていた。「やばい生徒」達に突っ込んだ時に後ろで彼らの数人を使い解いてもらっていたのだろうか。

「おい!いい加減目を覚ませ!この学校を元に戻してくれるんじゃなかったのか⁉︎」

「うるせぇ!俺はこの力で学校の全てを支配してやる!もう人は信用しない!意見も聞かんわ!」

「お前なぁ!」

湖也は歩き上伊の目の前まで来ると胸ぐらを掴んだ。

上伊は喧嘩腰で

「やんのか?」

「お前前回の殴り合い覚えているか?負けたよな?お前」

「殴り合い?あんな小学生レベルの椅子の投げ合いを殴り合いというの?」

「覚悟はできてんだろうな」 

「俺が最初に聞いたんだが?」

胸ぐらをを掴まれたまま、上伊は膝を湖也の腹に押し込んだ。

「ぐほ⁉︎」と声と共に湖也は掴んでいた手を離す。

お腹が痛くて立てなくなる。

すかさず上伊は湖也の顔を蹴る。

「ほらほらどーしたよ!」

「ったくねぇわこんなもん!」

叫び声と共に湖也は上伊にアッパーを喰らわした。

殴り合いが始まった。

泥沼の肉弾戦が。

お互い殴り、殴られ、ダメージを与え合う。

殴りながらも湖也は言う。

「お前の姉さんはこんなことを望んでたのかよ!ちげーだろ?こんなところだら下らない争いを天国にいる姉さんが見てたらどうする⁉︎」

「きっとお姉ちゃんが言っていた力ってこのことだったんだ!お前に勝てばお姉ちゃんが安心できる!」

「んなわけねぇだろ!」

叫びと共に湖也は上伊を殴り飛ばす。

「虐められていた姉さんがこんな展開望むはずない!もっと平和に生きる為の力をつけろっつーことだろ!」

「お前の意見は聞かんて言ったよな⁉︎」

今度は上伊が湖也を、殴り飛ばした。


5.


「なんでお前が邪魔をするんだよ!お前はあいつの奴隷じゃないのか?」

翔士は叫ぶ。

翔士と血斗の戦闘は続いていた。

この学校は今、上伊がトップになるように作り替えられてる。

湖也、陸、天、上伊以外は影響を受けているはずだ。

翔士という例外を除いて。

「他人がいじめられてるところを黙って見ているわけにゃいかないだろ!アホかてめぇは!僕もいじめられていたんだ。だからこそいじめられている奴の気持ちは痛いほどわかるし、いじめを止めたいと思うんだ」

「はっ、あっちではいじめこっちでもいじめ。どんだけいじめが起こってんだここはよぉ!」

「いじめなんて表に出てないだけで目立たないところではたくさん起こってるのよ。もう少し周りを見渡してみたらどう?」

そう言ったのは紗水だった。

「うるせぇ!あ、そーだ。いいこと思いついちゃった」

ニヤリと顔を歪めながら血斗の攻撃を避け距離をとる。

というのは建前で、本当の目的は紗水に近づくことだった。

紗水は葵と共に体育館の入り口にいた。

翔士は紗水の手を引っ張り壁から背を離すと回し蹴りで体を吹っ飛ばした。

突然の衝撃に動けなくなっていた紗水の体む。

葵と血斗の二人から距離を取り、人質を得ることに成功したのだ。

「さぁてどうしようかなー」

ニヤニヤしながら翔士は呟く。

ナイフ等は持ってないので、脅しに使うことは出来ないが、相手の判断力を鈍らせることはできる。

「お前汚ーぞ!」

血斗が叫ぶ。

その一方で、

血斗の隣にいる葵が覚悟を決めたような顔つきで歩き出した。

「え?おま、何を…」

困惑する血斗を無視し、翔士に近づく。

翔士も少し戸惑ったが、フッと笑うと。

「そうかそうか人質になってくれるかぁ。いいぜぇこっちこいよ。お前がくればあいつはなんも出来なくなるだろう」

葵が翔士の目の前にきた。

次の瞬間、

「油断したね」

の声と共に葵は勢いよく紗水を掴んでた腕に噛みつく。

「いででででで!」

慌てて振り解こうとする翔士は紗水を解放してしまった。

「いってんだよぉ!」

翔士は勢いよく葵を殴り飛ばす。

次の瞬間、

「僕の葵に手を出すな!」

と叫びながら葵の後ろから飛び出した血斗は翔士の顔面を殴り飛ばした。

不意の一撃を喰らった翔士は気を失った。

「ふぅ、勝ったか」

額の汗を拭う血斗の隣で、葵は顔を赤らめた。

「僕のって…もうノボリったら…」

その言葉を聞いて血斗も赤面する。

「あ、ちが…いや、違くないけど…その…ごめん」

「いいよ全然、助けてくれてありがと!」

「私も礼を言うわ。ありがとう」

紗水も葵の隣に来て礼を言った。

「いくら女王様でもそんな上から目線で礼を言わないでね?」


湖也と上伊は殴り合っていた。

「お前に姉を失い、さらに侮辱された俺の気持ちが分かるかよ⁉︎」

「とても辛いってことは分かる!だがいつまで経っても姉に頼りきりじゃダメだろ!」

「うるせぇんだよぉ!」

上伊が湖也の顔面に拳をぶつける。

湖也の体がぶっ飛ぶ。

二メートルの間隔を開け、両者は睨み合った。

「いい加減前に進みやがれ!」

「なんで分かってくれねぇんだよぉ!」

二人は右拳に力を込める。

お互いの拳が相手の頬にぶち当たる。

両者渾身の一撃の末、立っていたのは…

はぁ…はぁ…と息を吐いて倒れた相手を見ていたのは…

上伊であった。

倒れたまま、湖也は上伊を見る。

「お前…戻す気はないのか…?」

「俺にはこれしかないんだ。これで生きていくしかないんだ」

上伊は壁に背を預けながら、するする…と腰を落としていく。

「お姉ちゃん。これで良かったんだよな…?お姉ちゃん…会いたいよ…」

もしもこの世界で、あなたと今も一緒に過ごせていたら、俺は正しい方向へ進んでいけただろうか。

すると突然。


上伊の頭上で青い光が発生した。


「…?」

「なんだこれは…?」

「何あれー?」

「おいおい、なんだありゃ」

「綺麗ー」 

「え…?」

体育館のにいる全員がその光に集中した。

その光はやがて輪になり、この世界とどこかをつなぐホールみたいに形作られていく。

その中から何かが飛び出してきた。

その正体は…

「お姉ちゃん⁉︎」

上伊が叫んだ。

その姿は紛れもなく上伊の姉であった。

ふわりと降りてくる彼女を見て、湖也は

「天使?」

と呟いた。

実際天使のようだ。

その天使のような上伊の姉は浮かびながら上伊の目の前までやってきた。

夢でも見ている気分だと湖也は思う。

「もう、何勘違いしてんの?上伊」

姉が微笑みながら話しかける。

一方、上伊は涙を流していた。

「お姉ちゃん…お姉ちゃん!なんで急にいなくなっちゃったの⁉︎なんで死んじゃったの⁉︎俺ずっと寂しくて…どうしたらいいか分からなくて」

「一々言わなくちゃ分からないの?もうまだまだお子様だなー。こんな使われ方をするなら、願いを叶える本なんでつくらなきゃ良かったよ」

「え⁉︎あれお姉ちゃんが作ったの⁉︎」

上伊が驚きの声をあげる。

一方、二人をを眺めてた湖也は

「あんたのせいかよ…」

と呟く。

「上伊のことが心配で、困ったときは助けになりますようにって願ったらあの本が生まれてきたの。でもこうなるなんてお姉ちゃんショック。一応校長の許可がないと使えないことになってるけど何を考えているのかしらあの人」

「ごめんなさぁい」

上伊は泣いて謝った。

「湖也くん達が困ってるでしょ。早く学校を戻してあげなさい」

「でも、それじゃあ俺はどんな力を身につけていけばいいの?お姉ちゃんの言っていた力ってなんなの?」

「それはね、絆よ」

「絆…」

「そう、どんな時にでも頼りになれる、絆で結ばれた仲間を作って欲しかったの。ほら、あちらにあなたの仲間になってくれそうな方たちがいるじゃない。あなたには、みんなを奴隷として扱う支配者じゃなくて、仲間の絆を信じて前に出るリーダーになって欲しかったの」

そういうと姉は湖也の方へと飛んでいく。

「今まで私の弟が迷惑をかけてごめんなさい。あなたには弟が困った時力になってくれる仲間になって欲しいの。お願いできますか?」

「なんで最初から出てきてくれないんですか。もっと早く出てくれればこんな苦労しなくても良かったのに…」

「あの子が強く願ったから出てこれたのでございますよ。あなたを倒して不安になったのでしょうね。あの子はクラスの人気者等言われていますが実は信用できる人が少なくいつも孤独だったのですよ。あの子が私がいなくても安心して学校生活を送れるように、あなたが見守っていてくれると助かります」

「分かりましたよ。これまでしてきたことは気にくわないけど」

「ありがとう」

姉は一言言うと移動して天の目の前までやってきた。

「あなたにもお願い出来ますか?」

「あ、はい!」

天が返事をすると姉はふわふわと飛んで二階にいる陸のところまで行く。

「あなたも、私の弟を見守ってください。勝手な願いを押し付けてごめんなさい」

「構いませんよ」

「ありがとう」

姉は微笑む。

そして再び姉は上伊の前まで飛んできた。

「もう私はここには来れません。困ったときは彼らを頼りなさい。仲間の絆を信じて」

「うん、分かったよ」

「返事を聞けて安心した。じゃあ学校を戻してあげなさい。私はもう逝くね」

「え!ちょっと待って!」

上伊は叫ぶ。

姉は青いホールの中に吸い込まれるように浮かび上がる。

「待ってよ!お姉ちゃんには話したいことがたくさんあるんだ!もう少しここにいてよ!」

「ダメなの。そもそも、死んだ人間がここにいること自体間違っているんだから」

「じゃあ最後に一つだけ!」

上伊は涙を流したまま笑い、

「お姉ちゃん、大好きだよ」

姉は最後にもう一回微笑むと、ホールの中に入っていった。

姉を吸い込んだ光のホールは、ぼんやりと消えていった。

「お姉ちゃん…」

上伊は一言呟く。

次の瞬間、上伊が光に包まれた。

上伊だけじゃない、体育館、校舎、武道場、学校の施設全てが黄金の光に包まれていく。

「これは…?」

陸が湖也のところまで来て聞いた。

「何…?」

天も湖也に質問する。

湖也は答える。

「学校が元に戻っていってるのかもしれない」

「え⁉︎じゃあもうこれからは普通の学校生活が遅れるってことだな!やったな湖也!」

陸は歓喜の声を上げる。

「え…そうなの…」

一方で、天は不安の声を上げた。

天は考える。

学校が元に戻ればそれまでの記憶は生徒達から消えてしまう。

じゃあ、天が紗水から勉強を教えてもらった思い出も、紗水から消えるってこと?

「これからも勉強教えてね」っていう約束も、

全てが無になるということなの?

「ちょっと、待ってよ!」

「ん?どうした天」

「学校はこのままの方がいいというか…ほら!せっかく仲間も増えたし!」

「なーに言ってんの天!こんな学校もう嫌だぜ俺は。お前はこんな学校がいいってのかよ」

「いや…そんなわけじゃないけど…」

天は紗水の方を眺める。

その視線を追った湖也は何かを察した。 

その時、後ろから声がした。

「なんだこれは…」

目を覚ました翔士だった。

翔士は立ち上がりながら、

「どうなってんだよこれは」

と呟く。

その質問に湖也が答えた。

「学校が元に戻るんだ。前の学校に…」

「またあのつまんねぇ学校に戻るのかよ…」

「あぁそうだ」

「いいのかよ。元の学校よりこっちの方が平和そうに見えるぜ。お前らはいじめられているのかもしれないが、お前らを除けば全員楽しそうな顔をしている。その笑顔を壊すってのかよ」

「俺は今の学校は嫌に決まってるし、それは上伊が学校を作り替え、強制的に生徒を笑顔にさせてるってことだろ?俺は作られた全員の笑顔より、個人の心の底からの笑顔を守りたいんだ」

「クソが…」

翔士は吐き捨てた。

(そうだ。俺は一人一人の笑顔を守る。そんなヒーローに憧れてたんだったな)

と湖也は思った。


そして、全てが元に戻る。


6.


ビー、ガチャ。

どこかで工場の機械のような音が響いた。

校長室にある、鉄の扉の奥だった。

扉の前に立ちながら、校長は呟く。

「よし、これで準備は完了だ」

扉を開く。

中には特撮系でよくある、変身ベルトのバックルのような物があった。


「ん?なんで俺はこんなところにいるんだ?」

「あれ?俺も」

「てかここどこー?」

「おま、重い!離れろよ!」

「ちょっと誰が重いよー」

当然ながら天や陸が相手をしていた「やばい生徒」達も元に戻っていた。

彼らはぶつぶつ言いながら体育館から出て行く。

残っていたのは翔士、そして紗水、血斗、葵、天、陸、上伊、湖也だけだった。

「あれ?ここどこ?なんで私こんなところにいるのよ。授業受けてたはずなんだけど…」

紗水が呟く。

「良かった、元に戻ったみたいだな」

紗水のところに湖也がやってきた。

陸は上伊の元へ向かっていた。

湖也に勝ったとはいえ、「やばい生徒」から殴られ、湖也と戦い、体はボロボロになっていた。

天は湖也の方に行こうとしたが、陸から

「うわ結構ボロボロだなー。肩貸そうか?天も手伝ってー」

と呼ばれ、

「う、うん…」

と陸の方へ行ってしまった。

血斗と葵は二人で首を傾げていた。

「ん?どこだここ」

「ノボリ、なんで私達ここにいるの?」

「僕にも分からん」

「お前らにも世話になったな。何も覚えてないと思うけど」

二人に湖也は話しかける。

「あれ、三村お前もここにいたのか」

「あれ…俺の名前わかるの?」

「分かるのも何も、この前殴り合ったじゃないか」

「あの時はうちのノボリが失礼しました」

「うちのってなんだよ葵」

なぜか血斗達はこの前の戦闘を覚えていた。

おそらく全ての記憶が消されたわけではなく、某精神系能力者みたいに、一部の記憶は誤解を生まないよう変換されているのかもしれない。

再び湖也は紗水のところへ行く。

「ここってどこなの?」

紗水は状況が掴めていないようだ。

「俺もよく分からん。作りかけの体育館ってことくらいだ」

「それにしても大きいわね」

湖也は1度紗水の目をしっかりと見据える。

「ようやく、元に戻ってくれたんだな」

その言葉で、紗水はいろいろ察することができた。

前学校が変な風に作り替えられた相談をしてきたことがあったからだ。

おそらく、その事件が終わったのだろう。

きっと、私の想像のしない苦難があったに違いない。

だから紗水は、笑顔で言う。

「おかえりなさい」

「あぁ、ただいま」

そこで紗水は、上伊に肩を貸している天を見かけた。

「あ、ちょっと天ー」

紗水は天のところへ駆け寄る。

「まだ勉強は終わってないからね。ってそっちの天は私と勉強してたのかしら」

う〜んと考える紗水。

一方、天は目に涙を浮かべた。

「良かった…その記憶は残ってるんだね」

「え?」

「ううん、なんでもない!僕頑張るよ!」

「天ーその前にこいつを保健室に連れてくぞー」

「分かってるよー陸」


全てが終わったように見えたが、まだ完璧に片付いたわけではなかった。

翔士は終わりムードで体育館を出ようとしている湖也達を睨みながら叫ぶ。

「おいお前ら!」

「お前まだいたのかよ」

「ふざけんじゃねぇ!せっかく面白いものが観れると思ったのに!邪魔をしやがってぇぇぇ!」

そこで上伊は思い出した。

翔士がさっき言っていたことを。

「みんな!ここは爆発する!早く外へ避難するんだ!」

「え!大橋それ本当かよ⁉︎」

「あれ?まだ終わってなかったの?」

紗水は質問する。

「いや全て終わったはずなんだが…」

「許さねぇもう許さねぇ!」

翔士はポケットからスイッチを取り出した。

「まずい!」

「マジかよ…」

焦る湖也達。

そんな彼らを待つことなく、翔士は叫んだ。

「お前ら全員、灰になれぇぇぇぇぇ!」

次の瞬間、とてつもない爆音が山奥で響いた。


7.


気がつくと、湖也達は森の中にいた。

バヂバヂバヂと言う轟音が聞こえて後ろを振り返ると、中から熱風と炎を吐き散らす体育館がある。

「助かったのか?」

「でもあんな一瞬で外まで出られないだろ」

「瞬間移動?」

「危機一髪だったわね」

各々が感想を述べる。

突然別の声が聞こえた。

「間に合って良かったよ」

声の聞こえた方向を向くと、機械的な鎧が立っていた。

正しくはその装甲を誰かが身につけている。

「誰⁉︎」

湖也が叫ぶ。

「私だよ」

「その声は…校長先生?」

「そうだ」

鎧は腰についているベルトを取り外した。

すると装甲が消えていき、中から校長が現れる。

「なんなんですかそれ…」

「これは身体能力を上げる装甲(アーマー)だ。」

そう言うとベルトのバックルがビジジ…と音を発した。

「おやおや、壊れてしまったか…まだ試作段階だからしょうがないか」

「それについても聞きたいんですけど、それより翔士はどうしたんですか?」

「あいつは死んだよ。爆発に巻き込まれてね。まあこんだけのことをしたんだし罰を与えないとね」

「そんな…」

紗水の顔が青ざめた。

「生徒の命を守るのが先生じゃないんですか!殺してどうするんですか!」

「私が殺したわけじゃないし、君たちを助けるので精一杯だったんだよ。いくら身体能力を上げると言っても私はもう年寄りだし。さぁ、帰ろう」

「はい…」

なんか納得のいかないまま湖也達は帰った。


翌日、校長が爆発した建物を見に来た。

体育館は燃えてはいなかった。

爆発なんかなかったかのように、中は綺麗な状態だった。

そして、翔士の死体もなかったのだ。

黒こげになった死体とか、骨とか、そう言ったものは一切無かった。

「向こうでも元気にしとるかね?翔士は」


8.


学校は元に戻った。

湖也達は普通の学校生活を満喫していた。

「いやあ元に戻ってくれて良かったよ。やっぱりこっちの方が何倍もマシだ」

「だな!」

「だねー」

今は昼休みの時間、三人で昼食をとっている。

「そういえば、黒木はどこ行ったんだ?」

あの日以降、花蓮の姿はどこにも無かった。

「あいつからこの学校の『やばい生徒』をやっつけろ!とか言われてたけど…」

「あぁそれならもう大丈夫だ」

割り込んできたのは上伊だった。

「驚かすなよ…」

「ごめんごめん。あいつらあの時体育館にいただろ?」

「あ、あそこにいたの『やばい生徒』だったのか」

「そう。で、俺がこの学校を元に戻す時に、彼らの心の中に入って彼らの欲望を全部無くしてきたから。もう『やばい生徒』ではなくなったんだよ」

「そんな器用なことまでできたのか…じゃあ俺の仕事も終わったんだな!」

「良かったな!湖也!」

「あぁ!」

こうして、湖也達の過酷な戦いは幕を閉じたのであった、めでたしめでたし。

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