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もしもこの世界で、あなたと  作者: 白銀
第1章〜校内戦闘〜
15/52

第15話 心変わり:後編

1.


この学校は森に囲まれている。

校舎に武道場、体育館に運動場、そして部活で使う練習場。森の中だからこそ、敷地を最大限に使用した大きな作りになっている。

周りを見渡すと木ばかり、入ると蜘蛛の巣だらけだし危ない獣が出てくるかもしれない。

なので、生徒たちは森へ入ろうとしないし、これまでに生徒が勝手に入ったと言う報告もない。

だから生徒たちは知らない。

その森の中に『もう一つの体育館』がある事を。

それは建造途中で放置されており、大きさは普通の体育館の二倍以上はあり円形で、体育館というより屋内競技の試合会場みたいな作りになっている。

これが今回の舞台。

生徒たちの拳のぶつかり合いが、今始まる。


2.


「さぁてそろそろ始めるか。あのじじぃも準備できてんだろ。さぁ、観察を始めようか」

何やら意味深な言葉を、中庭で話をしている湖也達を見ながら呟いているのは一宮翔士(イチノミヤショウシ)という湖也達と同じクラスの男子である。

「ねぇーえ?何を始めるの?」

「わぁ!誰だお前!ってなんだ黒木か。どうしたんだよサボリ魔」

突然背後から聞こえた声に慌てて振り返る翔士。

そこには花蓮がいた。

「やーだなぁサボリ魔って呼ばれるの。まぁ確かに授業ちょくちょく抜けたりしてるけどさ?決してサボってるわけじゃないからね?」

「知らねーよお前のことなんか。なんか用か?」

「今さっき観察とか言ってたでしょ??始めるとか言ってたでしょ?何をやるつもりなの?」

「なんでお前に教えなくちゃならねーんだよ」

「とっておきの秘密もってるんだーこの学校の」

「それがどうしたってんだよ」

「君がやろうとしていることを教えてくれたらぁ、秘密を教えてあげてもいいよ?」

「興味ねぇ」

「この学校はねーえ?上伊くんが作ったんだよ?自分自身が生徒のトップになるように、元あった学校を作り替えたの」

「何勝手に始めてんだよ」

「校長室にねぇ?願いを叶える本があって、そこに上伊くんがこの学校のトップになりたいって願いを書いたら本当にその通りになっちゃったの。誰も上伊くんには逆らえなくなっちゃった。まぁ、その本は願いってより、書いた本人の欲望に反応してるんだけどね?でも最近、上伊くんの悪口を言う生徒が出てきてるんだよね?本人の欲望が薄れてきてるのかな?」

「なんだそんなことかよ」

「驚かないの?」

「驚くも何もそんなことは知ってるさ」

「知ってたの!?」

逆に驚かされる花蓮を放って翔士は教室に帰ろうとする。

「じ、じゃあこれは?学校の裏山の中に、作りかけの体育館があるの。五年前に校長が提案して建設が開始されたんだけど。途中でボツになってそのままになってるっていう…」

「それも知ってる」

去っていく翔士を眺めながら花蓮はニヤつきながら

「なんか嫌な予感がするねぇ。それなんであいつがこんなこと知ってるか知らないけど、早く止めた方がいいねこれは。校長の要望にも答えないといけないし」


3.


「お前の姉が…まさか…そんな…」

上伊の姉のことを聞いて絶句する湖也。

「姉ちゃんが言ってたんだ。たとえ勉強ができてもダメ。強くならないとって、だから俺はこの学校のトップになることを決めたんだ。姉ちゃんの信用してた黒木先生はもういない。姉ちゃんみたいにならないように、学校の支配権を手に入れた」

「でもなんで!お前がいじめる側に回ってんだよ!わざわざ俺達を底辺に設定することはなかったはずだ!」

「怖かったんだよ!お前が文化祭の時河原を助けて英雄になったことが!人間の評価なんざきっかけ一つ零にもなるし百にもなる!もしお前をみんなと同じ地位にしたら俺のところまで這い上がってくるんじゃないかって!」

「はぁ!?おかしいだろそんなの!困っていたら助けるなんて当たり前な事だろ!もしそれだけで俺の評価が上がっていたとしてもクラスのリーダーになれるわけじゃねぇ!評価と立場を一緒にすんなよ!クラスの中心が奪われるのが怖いからって!そんなわがままで人をいじめていい訳ないだろ!」

「…すまん」

湖也は上伊の制服の襟をガッ!と掴むと顔を目の前まで持ってきて叫ぶ。

「今更謝ってどーすんだよ!さんざん酷い目に遭わせておいて!立場ってのはな!そーゆー変な小道具で無理やり作るものじゃねぇんだよ!自分の性格、人間性、長所短所を理解してもらって初めて相手のも理解して初めて成立するもんなんだよ!」

立☆場☆逆☆転

過去や理由がどうであれ、いじめをするのはいけないことである。

「…すまん。本当に俺何やってんだろうな。自分の立場ばかり気にして周りのことは見て見ぬ振りをして。一回お前に負けたはずなのにチャンスが巡ってきたら調子乗ってお前を地獄に叩き落とすような真似をしてさ。今分かったよ。姉ちゃんが言ってた強くなれってのはこんなことを言ってるんじゃないって。もっと人間として強くならなきゃいけないんだって」

「当たり前だろ。勉強できるのにそんなこともわかんねぇのか」

「本当俺はバカだよな」

「あと、お前はさっき『お前を地獄に叩き落とす』って言ってたが」

「…?」

「地獄に叩き落とされたのは俺だけじゃねぇ。天と陸も俺より被害は少ないけどいじめに巻き込まれてるんだ。あいつらにも謝れよ」

上伊はどうやら自分の間違いを見つけたらしい。

彼にとって自分のことを周りに理解してもらうことが必要なことだったのかもしれない。

じゃあなんで早めに過去のことを言わなかったのか疑問に残るところだが、そこんところは深く追求しないでいただきたい。

彼にも彼なりの事情があるのだ。

「あぁ、後で謝っておくよ」

「じゃ、これで今までの争いは終わりにするか。これからはよろしくな。大橋」

「おう!三村!」

二人は硬く握手をした。

結構長い間いじめに遭っていたが、説得は割と一瞬だったな。


4.


こちらにいるのは血斗と葵のコンビ。

どうやら二人は自販機に飲み物を買いに行く途中らしい。

「どうやら最近海高では怪獣映画が作られてるらしいよ?」

「マジか。あそこの生徒は大人しいと聞いていたが、最近はっちゃけたことするな」

「ねーねーまた今度見に行こう?ね?」

「高校生が作る怪獣映画なんて、低予算でつまらないものだろう。てかそれって多分文化祭用に作ってるんだろ?あそこ時期遅いし。俺たち他校の生徒が見に行っていいのか?」

「知り合いから招待されたとか言えば入れてくれるんじゃない?ほら海高からの転校生の黒木さんがいるし」

「それだったら別にそいつ経由しなくても海高の友達から招待されればいいだろ」

「ノボリ。海高の友達いる?私はいないよ?」

「うっ…」

などと話をしながら教室から歩いてきたのだ。

校舎を出てから自販機まで向かう途中、職員達の駐車場を通るわけなのだが…

「あ、カラスだ」

葵は駐車場の空席のど真ん中で堂々と羽を休ませているカラスを指差す。

「一々指差さなくてもよろしい。カラスなんて別に珍しいもんじゃないだろ」

「え、そうかな?学校の中でカラスってあんまり見かけなくない?」

「基本的にゴミ捨て場とかにいるからなー。まぁ、カラスもたまにはのんびり休みたいんだろ」

「ずっと休んでくれたらいいのにね、なんでゴミを漁るんだろう」

「食料に困ってるんじゃないか?」

「でもだからってゴミを漁る必要なくない?魚とったり虫食べたり果実を啄むなりすればいいじゃない。わざわざ人間の邪魔をする必要なくない?」

「あのなぁ、どちらかと言えば邪魔をしているのは人間の方なの。ゴミをポイ捨てしたりして環境汚染なり、木を伐採して無理矢理住処を奪い取ったりして地球を他の動物の住みにくい所に変えてるんだから、それぐらい許すべきなんじゃないか?」

「ノボリ、やけに詳しいね」

葵は驚き手を口に当てる。

「この前ネットで見た」

「うーん、でもゴミを漁るのはやっぱりダメだと思うけどなぁ…」

ちょっと気まずくなってしまった。

場を和ませるために血斗は話題を変える。

「そーいや、カラスは英語でブラックバードって言うんだぜ?」

「えーウソー」

嘘である。

カラスの英語名はcrowである。(g○ogle調べ)

「本当だって」

「えーなんでそんなこと知ってるの?」

「この前ネットで見た」

嘘である。

「うーん…でも嘘っぽいなー」

「本当だって、英語のテストの点数俺の方が高いだろ?」

マジである。

「まーそうだけど…」 



5.


「うーんわかんない!」

「なんで分からないの?」

こちらにいるのは天と紗水の二人。放課後の紗水先生による個別指導の最中である。

「応用問題なんて難しすぎるよ!基本でさえ分からないのに!」

「さっき教えたじゃない」

「それに物理の他に英語に化学に数学まで!多すぎるよ!」

「あなたが今までやってこなかったのがいけないじゃない。他のみんなはコツコツやってるのにその間あなたは遊んでばかり。今まで貯めてきた分の苦労を味わうのは当たり前。あなたずっとサボってたらこれの二倍近い量を受験の時にやることになるのよ」  

「それは無理だ!」

それを聞いて天がガタガタ震え出した。

おや?天の様子が、

「うっ…分かりました。勉強します」

おめでとう!天はようやく改心したようだ!

「はいよろしい。ではこれやりましょうねー」

「わかりません」

「もう!じゃあ使う公式だけおしえてあげるからもう少し考えて見なさい」

天が改心したからか紗水の口調が優しくなった。

「でも先生!なんで急に教えてあげるなんて言い出したの?」

「最初は今まで酷いこと言った湖也への罪滅ぼしになればと思ってたわ」

さらっと紗水は理由を打ち明ける。

「でも湖也に聞いたらあなたの方が酷い事を知って、放っておけなくなったのよ。大丈夫、私がなんとかしてあげるわ、て言うか」

「え…?」

理由を語り終わった紗水は隣にある机を天の机にくっつけると椅子に座る。

「いちいち指示するより一緒に解いた方が教えやすいかも。どこらへんが分からないの?」

「ぅ…ここ」

「これはここを三角形として…」

「うん…うん」

気づくと天の顔は赤くなっていた。

素直に解説を聞きながら、天は思う。

(これが惚れるって事なのかな?)

「あ、あの!」

天が叫ぶ。

「ん?何かしら?」

「もしよかったら…期末も教えてくれない…かな?」

はぁとため息をつく紗水。

「いいわよ。困ったら声をかけてちょうだい」


6.


「あのさぁ三村」

「ん?なんだよ」

「一つ確かめたい事があるんだ。学校を戻すのはそれが終わってからでいいかな」

「?あぁいいけど…」

二人で教室に戻っていく。

取り残された寛信は一人ポツンとベンチに座ったまま

「あれ?俺は?ねぇ上伊!俺の相談に乗ってくれるんじゃなかったのかよ!」

叫ぶが二人の耳には入らない。


二人は階段を歩き教室へ戻っていく。

その途中、

「なぁ大橋」

「なんだい三村」

「俺ちょっとトイレ行きたいからさ。先戻っててくれない?」

「しょんべんか?なら俺も一緒に行こうかな?」

「お前もトイレか?」

「いや、違うけど。話したいこともあるし連れションしようかなと」

「悪いが大の方なんだ」

「じゃあ入り口で待ってるよ」

(なんで待ってるんだよ…)

トイレは一人で静かに踏ん張りたい派(?)の湖也はしょうがなく上伊を入り口に待たせトイレへ向かう。

踏ん張る途中、大事なことを書き忘れてた湖也は口を開く。

「なぁ、大橋?一つ確かめたいことってなんだ?」

すると遠くの方から声が聞こえた。

入り口で待ってる上伊の声だ。

上伊は入り口と反対側の廊下の壁に背を預けている。

「みんなに聞きたいんだ。俺がこの学校を支配していてどんな気持ちだったのかを。学校を元に戻すとその間の彼らの記憶も消えちゃうからさ」

「ふーん」

「本当に、悪かったな…今度…」

「おーいたいたちょうど一人だ」

別の方向から聞こえてきた声に上伊は話を中断させる。

「一宮か?どうした?俺に何か用?」

「お願いがあってさー。ちょっとついてきて欲しくてね?」

「まぁいいけど。どこに?」

「あー大丈夫。すぐに着くから」

「?」

次の瞬間。

上伊には何が起こっているのか分からなかった。

唐突に腹に重い衝撃が走ったと思ったら1メートルくらい吹き飛ばされた。

翔士が上伊の腹を殴った後、回し蹴りをして体を弾き飛ばしたのだ。

すぐに上伊の意識は奪われてしまった。

ドサッという音がしたが、他の生徒は教室ではしゃいでいるのか、廊下には彼らはの他に人はいなかったし、教室から覗き込んでくるものもいなかった。

ただ、トイレにいる湖也は異変を感じ、

「おい?大橋?どうしたんだ?」

と叫ぶが、その時には彼らの姿はなかった。

「おい!返事しろよ!糞!今トイレ中なのに!」


カミヨシの目が覚めると、そこは屋内競技の試合会場だった。

あくまで試合会場ではなく、その形をした体育館だが。

上伊を中心に円形のアリーナがあり、目線を上げると観客席が取り囲むようにあるのが見える。が、暗くて詳しいことは分からない。

体を動かそうとしたが、身体中にロープが巻いてあり、転がるのが精一杯だ。

口は自由に動く、ガムテープなどで口は塞がれていないらしい。

急になんでこんなことになってしまったのか。

「目が覚めたか、大橋」

声が聞こえたのでそちらを向くと、そこには翔士が仁王立ちしていた。

「何の真似だ。一宮」

「ちょっと遊びに付き合ってもらいたくてな?手荒な真似をさせてもらったぜ」

「どんな遊びだ。なんで拘束する必要がある!今は何時だ!授業は始まってるんじゃないのか!先生にバレたらどうするんだ!」

「先生?そんなもん知るかよ。来たところでなんだ?何か不味いのか?」

「不味いだろ!最悪退学処分だ!そんなことになってもいいのか!」

「退学?笑わせるわ!俺はもともとここをおさらばする予定なんだよ!最後ぐらい何やってもいいだろ!それに、ここには誰も来ない」

「そもそもここはなんだ?市の体育館か?」

「いや?ここは学校の体育館だよ?」

「学校にこんな広い体育館あるわけないだろ!体育の時間に使ったこともないし学校案内にもなっていなかった」

「知ってるか?五年前、この学校はもう一つの体育館を作ろうとしてたんだ。校長が極秘で、学校の裏山の中にな。どんな理由かは知らんが、途中で建設は中止になった。完成間近といった状況だったが、このまま放置され、授業に使われることもなくなったんだと」

「それがここなのか?」

「そ。なんで作ったんだろうなー。年寄ってたまに変なこと考えるよなぁ。で、この建物は森に隠れていて学校からは見えないし、誰にもバレないってことだ。まぁ一人知ってる奴がいて驚いたが、あいつは何もしないだろ。誰かが助けに来る可能性はないに等しいぞ?」

「てかこの学校は今俺が支配しているはずだ!なぜお前は俺の支配から逃れている!お前も俺の奴隷となっていたはずだ!」

「あれか?最初は面白そうだったから参加してたけど、なんかつまんなくなったからやめたわ。お前も丸くなっちゃったし」

「もしかして、あれはドッキリか何かだったのか!学校絡みの!」

「バーカ。そんなわけねぇだろ。確かにみんなお前の奴隷になってるさ。俺はその影響を受けないがな?」

「何故だ?」

「お前が知る必要はねぇ」

「…ここで何をやるつもりなんだ?」

「ふふふ、お前には少々実験台になってもらうぜ」

そう言いながら翔士は指を鳴らす。

それを合図に、天井のライトの電源が入る。

今までよく見えなかった観客席の所もよく見えるようになった。

周りを見渡して、上伊は驚く。

アリーナを囲む観客席の場所に上伊を囲む様に点々と生徒たちが立っていた。

少なくとも二百人以上はいる。

「なんだこれは!」

「この学校にいる「やばい生徒」とやらを全員呼んできた。集めるのに苦労したんだから楽しませてくれよ?」

「何を始めるつもりだ」

ニヤリと翔士は口元を歪ませると声を張り上げた。

「お前ら!こいつがこの学校の支配者でいいのかぁ!こいつは自分の姉がいじめで死んだから、いじめられるのが怖いからとこの学校を自分のものとなる様に作り替えた!自分勝手な都合で!自分のためだけに!他の生徒のことは考えないで!お前らを支配下に置いたんだ。生徒は皆平等ではならない!学力体力の差はあれどそれで立場が作られるなんて間違っている!こいつは自分だけみんなより上に立ってればいいと傲慢な願いを無理やり実現させた!これは許されていいことなのか!」

「お前、何言って…」

上伊の顔が青ざめる。

「いいわけねぇよな。さあ今がチャンスだ。こいつを殴りたい奴は出てこいよぉ!好きなだけいじめてやれ!最悪殺しても構わねぇ!こいつはそれだけのことをやってきたのだから」

観客席にはいる生徒がゾロゾロと歩き出す。

その中に一人、知った顔があった。

「先輩!なんでここにいるんですか!」

さっき上伊に相談をした寛信だった。

「うるせぇ!お前相談に乗ってくれるって言ったじゃん!なんで勝手に自分の過去の話をした後三村ってやつとどっかいったんだよ!」

「いや、それは…」

「おまけにそんなことで学校を支配者になっていたなんて。ぜってー許さねぇ」

「こいつ本当クソだな」

「さぁてどうやって甚振ってやろうか」

ぞろぞろと「やばいやつ」達が上伊に近づいてくる。

体を拘束されている上伊は叫ぶことしかできない。

「やめ、やめろ!やめてくれ!」

「今更ごちゃごちゃ言ってもおせぇんだよ!」

「こんなつまらん奴がこの学校の支配者なんてサイテー」

「楽しいゲームの始まりだぁ!」


上伊が怯えている様子を、翔士は遠くから眺めていた。

ニヤニヤしながら彼は言う。

「さぁ、お前がいじめられてる様を、観察させてもらうぜ」


湖也は勢いよく教室の扉を開けると中を見渡す。

もしかしたら教室に戻ってきてらかもと思いと思い上伊を探してみるがやはりいない。

「湖也、どうしたんだ?」

「何かあったの?」

陸と天が聞いてきた。

「お前ら、大橋を見なかったか?」

「え?いや、見てないけど」

「どうしたんだ?そんなに慌てて」

「大橋が誰かに拐われたかもしれない。何か変なことに巻き込まれてるかも」

「え?」

「拐われるって。そんなぁ、ドラマじゃないんだから」

「俺の早とちりかもしれないけど、あいつはこの学校の支配者だ。誰かに恨まれていてもおかしくはない」

「でも、お前の言うとおりこの学校の生徒はあいつの支配下にあるんだろ?言葉一つで簡単に操れるんだから、そんなことありえないと思うけどなぁ」

「いや、少なくともこの状況を不満に思ってる生徒がチラホラいたんだ、何かテロを起こしてる可能性もありえる」

「大橋上伊がどこにいるか、知りたい?」

突然二人の後ろから声がした。

天と陸が振り返ると、そこには花蓮がいた。

湖也が訊ねる。

「お前、何か知ってるのか?」

「お前の言うとおり、彼は何者かに拐われてしまった。犯人は一宮翔士だ」

「あいつが?」

「あぁそうだ。そして多分彼らは作りかけの体育館にいる」

「作りかけの…」

「体育館?」

天と陸が同時に首を傾げる。

「なんだそれは?」

「この学校の裏山の中にある建物さ。本来は第二の体育館としされるはずだったが、建設が中断されてしまったんだ。この情報を知っている生徒は私とあいつしかいない。拐うならあそこがベスポジだ」

「なんでお前がそんなことを…」

「そこらへんは気にするな。さぁ助けに行ってこい。早く行かないと取り返しのつかないことになるぞ」

「分かってる!」

湖也はくるりと半回転すると助けに行こうとする。

が、その行動を妨げる者がいた。

走り出そうした瞬間ガシッと何かに引っ張られた。

振り向くと天が腕を掴んでいる。

「ねぇ、本当に行くの?」

「え?」

「あいつが湖也に何したか分かってる?学校全体を作り替えてまで湖也をいじめた張本人だよ?あんな奴ほっとこうよ」

「確かに、俺もあいつのことは気にくわんからなぁ。ほっといてもいいんじゃない?」

「確かに、俺はあいつに散々酷い目に遭わされてきた」

湖也は、一度二人の意見を聞き入れる。

聞いた上でこう言った。

「だから、助けなければならないんだ。今あいつがどんなことをされているから知らないが、あいつが酷い目にあっていいわけじゃない。あいつは必ず助け出す。この学校の平和は俺が取り返してやる」

「ちょっと待ちなさい」

別の声が聞こえた。

振り返ると、そこには紗水がいた。

「か、河原さん…」

天が呟く。

「私も行くわ。誘拐だなんて下らないことしてる一宮にガツンと叱っておかないと」

「え…お前も来るのか?」

湖也は少々困惑する。

「じゃあ俺も行く、お前だけじゃ心配だ。俺だって力になるさ!」

「じ、じゃあ僕も行く!一緒に助けよう!」

「しゃーねーな。分かったよ!じゃあついて来い!」

四人は上伊を助けに走り出した。

階段まで来たところで、後ろから叫び声が聞こえた。

「おーい、お前ら。作りかけの体育館がどこにあるのか分かってんのかー」

「あ…」


血斗と葵は飲み物を買い中庭を歩いていた。

そこで二人は、校舎から飛び出してきた湖也、天、陸、紗水の四人を目撃する。

「なんだよあいつ!案内してくれるのかと思ったら口頭で説明して『行ってこーい』って、ふざけてんのか!」

「喋ると走る体力なくなるわよ」

「うるせぇ」

とかなんとか言いながらどこかに走っているようだ。

「どうしたんだ?あいつら」

「なんか忙しそうだね」

「行ってみる?」

「ノボリがそうしたいなら別にいいけど…」



戦闘アニメを見て、ぶっ飛んだものを書きたいなーと思い書いたものです。

さぁ次回は第一章最終回!お楽しみに!

結局誰の心が変わったんでしょう?

ちなみに紗水と天のところは無理やりねじ込んだんで他のと時間軸が別々になっています。

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