第11話 思い出
いやーおくれてしまってすいません!と言っもどうせこんなクソしょーもないものを楽しみにしてくれる人なんて(…
血斗は、ベットの上に寝っ転がった。
学校での出来事を思い出してみる。
名前が原因で喧嘩をしたのっていつぶりだっけ?
昔はよくしてたなー。
そんな風に血斗は昔を振り返ってみる。
1.
「僕の名前は登血斗です!」
小学校一年の頃の僕は元気よく自己紹介した。
なんとなくかっこいいと思ってたし、親がつけてくれた名前なんだから、はっきり言いたいと思った。
しかし、クラスの反応は
「なにそれ変な名前!」
「チートだってチート!」
「アホみてぇな名前だな!」
と馬鹿にされた。
その時俺は初めて知った。
俺の名前が変だと。
幼稚園の頃は友達から何も言われなかった。
まだチートという言葉を知らなかったからかもしれない。
しかし小学生と言う、知恵のついた子供達の中に放たれた瞬間、僕は孤立した存在になった。
最初はまだよかった。
「よぉ!チート!やっぱり変な名前だな!」
とバカにされることはあったが、名前のおかげで注目を浴び、クラスの人気者になった。
友達も出来て、毎日外でおにごっこやドッチボールをしていた一年生の頃は楽しかった。
よく公園で遊んでいたらボールが近所のおじいさんの家の庭に入り、勝手に侵入しては見つかって怒られたのも今ではいい思い出だ。
その頃はまだみんなチートという言葉の意味を理解していないかったからかもしれない。
二年生になってから僕の地獄が始まった。
二年生になってからはテレビゲームが流行りだした。
みんなゲームをして遊んでいた。僕だってやっていたさ。
よく友達と対戦して遊んでいたあの頃はまだ楽しかった。
しかし、ゲームの流行とともに、チートという言葉の意味もみんな知るようになる。
「よぉ!チート!お前ゲームでもチートしてるんか!?」
一人の友達がそんなことを言い出した。
「そういえばチートってゲームでよく聞くチートなの?」
「それ以外ありえねーだろ」
「え!チートくんってまさかチートしてるの?」
急にクラスではそんなことを言い出す奴が増えた。
実際僕はチートなんか使っていないのだが、名前の風評被害はやばかった。
「お前チートするからもう遊ばない」
一人の友達がそんなことを言い出した。
チートなんか使っていないのに。
それから友達はどんどん僕から離れていった。
「近づくなチートやろう」
「あの子チート使ってるんだって」
「え、何あの子近づかないでおこう」
と気がつけば僕に周りに味方はいなくなっていった。
「うるさい!僕はチートなんか使ってない!」
僕は叫んだ。
「へ!チートを使ってない証拠がどこにあるんだ!やーいやーい」
「本当に使ってないもん!」
「じゃあ証拠は?今度学校にゲーム持ってきてよ!もうお前とは遊びたくないし。そして証拠を見せることができたら認めてやるよ」
「わかった!持ってくる!」
なんで僕はわかったなんていったんだろう。
罠だと知らずに。
実際に僕は学校にゲーム機を持っていった。
そして先生のいない休み時間にこそこそと見せるつもりだった。
しかし、ハメられた。
休み時間にゲーム機を取り出すと、証拠を見せろといった張本人が、僕のゲーム機を奪ったのだ。
彼はゲームの画面なんか見ないですぐ大声で叫んだ。
「先生!チートくんが学校にゲーム持ってきた!」
その声は廊下を歩いていた先生に聞こえ、先生はこっちに走ってくる。
「こら!登くん!ゲーム機なんか持ってきたらダメでしょ!」
僕は別の部屋は連れられ、めちゃくちゃ叱られた。
僕は「あいつが持ってこいって言ったから持ってきたの!」と訳を話したが、「言い訳を言ってはいけません!」と聞いてもらえなかった。
大体、訳があっても学校にゲーム機を持っていくのはいけないことだ。
僕は先生にゲーム機を没収され、遊べなくなった。
その事は保護者会で親にも伝わり、親からも酷く叱られた。
その頃から、俺は名前が原因でこんなことをされていることに気づいたんだ。
親に向かって叫んだ。
「お母さんがこんな名前つけるから僕は学校でいじめられるんだ!」
そう、いじめられていたのだ。名前をいじられ、友達は消え、ハメられる。
これはもういじめと言ってよかった。
しかし、親は謝る事はなかった。
「なんなの!せっかくその名前をつけてあげだだから、わがまま言わないで大切にしなさい!」
そう叱られ、殴られた。
そもそも子供にチートとつけるほど馬鹿な親だ、今更何を言っても無駄だったのだろう。
僕は諦めた。
ふつうに生活していればいいんだ。
そう思い、親の言うことをただ聞きながら生活してった。
ゲームに関するいじめは無くなった。
しかし、僕の生活は明るくなることがなかった。
今度は別の方向からいじめを受けたんだ。
「お前、テストの点数見せろ」
突然そう言われた。
言われた通りに昨日のテストを見せる。
僕は勉強が出来ないわけではないが、頭がいいわけでもない。
「ハッ!お前そんな名前なのに100点とれねぇの?」
そんなことを言われた。
学力にチートは関係ないはずなのに。
「チートなのに頭悪いんだ」
テストの点数は89点と特別悪いわけでもない。
それなのに100点じゃないと頭が悪いと叫ばれた。
「チートなのに100点とれねぇんだ!」
大きな声で叫ぶから、クラスのみんなはこっちをみた。
「え?チート君カンニングしてるの?」
「机に答え書いた?」
「先生に報告だ!」
そんな感じでカンニングもインチキもしていないのに先生に叱られた。
毎日いじめを受けた。
僕は幼稚園の頃を思い出した。
まだ名前でいじられることのなかったあの頃。
太陽が昇った幼稚園の庭で、友達と追いかけっこをして遊んでいた日々。
そんな日常はどこにも無くなっていた。
学校のクラスメイトはみんな敵だし、親に相談しても相手にしてくれない。
僕はおばあちゃんに泣きつくことしかできなかった。
「またいじめられた〜」
おばあちゃんは僕を優しく抱いてくれた。
「ごめんね、ママがこんな名前にしちゃってごめんね」
なぜかおばあちゃんが謝ってくれた。
悪いのはお母さんとお父さんなのに。
それから特に生活に変化があるわけでもなく、小学校生活は幕を閉じる。
2.
中学になるといじめはさらに激しくなった。
殴られる回数がかなり増えたのだ。
変な名前だからという理由で、
悪いことをしたとかそういう事ではなく、
親から貰ったもので。
たが僕もただいじめられていたわけではない。
やり返す事を覚えた。
一対一くらいなら勝てるくらいには力もつけた。
それから僕の性格は変わり、乱暴になっていった。
反抗期に入ったのも原因の一つかもしれない。
毎日親と喧嘩した。
「なんでこんな名前にしたんだよ!」
「せっかく付けてあげたんだから大事にしなさい!」
「それ何回も聞いたよ!大事にできねぇよこんな名前!いじめの原因になるって予想できなかったのかよこの低脳がぁ!」
「何よ!低脳って!最近流行ってるじゃないキラキラネームってやつ!あんたのクラスにもいるでしょ!?」
「いねぇよ僕だけだよ!流行ってたからってノリで付けるなバカが!子供の未来を考えろ!」
「ただいまー」
「あ、パパ聞いて!またチートが名前のことを」
「あ?チートお前何回言ったらわかるんだ?親から貰った名前を大事にしろ!」
流石に父には勝てなくてボコボコにされた。
こんな名前を付ける親だ。きっと昔はヤンキーだったに違いない。
親から貰った名前は大事にしろ!を何回も聞かされたあの日々。
学校でいじめられ、家でも殴られ、もうボロボロになっていった。
一対一で勝てても集団で攻められると流石に負けてしまった。
ある日僕は学校をサボった。
もういじめられるのは嫌だと思ったんだ。
「行ってきます」
そう言って学校へ行くふりをし、途中にある公園で遊んでいた。
しかし休む連絡なく無断で欠席すると当然教師から親へ電話がいく。
速攻でサボりはバレた。
また親に殴られて、学校へ行きいじめられる。
自殺しようかと考えた。
もう生きててもどうしようもない。
こんな名前じゃきっとどこへ行ってもいじめられる。
将来だって明るい未来がない。
だったら自殺した方がマシじゃないか。
そう考えた。
しかし実際に自殺をすることはなかった。
当たり前だ。あの時死んでたらここに僕はいない。
怖かったんだ。死ぬのが。
結局僕は苦しみながら生き続けた。
もう明るい未来はない、そう思ってた。
しかし、一人の少女が救ってくれた、未来を変えてくれたんだ。
ある日のことだ。その日は雨が降っていた。
帰ろうかと思って下駄箱にある傘立てを見ると僕の傘がない。
前を向くと、僕をいじめてたやつが、
「ちょうど傘忘れてたんだ。借りるぜ!」
と言って走って帰っていった。
傘がない僕は濡れながら帰った。
服やカバンが重たくなっていく。
もう歩く気力もなくなり道路の脇に座り込む。
雨で顔が濡れてわからなかったが、涙を流していたのかもしれない。
すると突然誰かが目の前に現れた。
細い足だけが見える。
誰だ?
疑問に思っていると、声がした。
「君、こんなところで何してるの?」
優しい声だった。
「家に帰りたくなくて…」
小さな声で僕は言う。
「なんで?」
「親に会いたくないから」
「どうして?」
「僕がいじめを受ける原因をあいつらが作ったから」
「原因って?」
「名前だよ」
僕は素直に答えた。
名前のことを話したら変な目で見られることはわかってる。
でももういいんだ。
敵が一人増えたところでどうってことない。
「僕の名前、チートって言うんだ。笑うでしょ?変でしょ?これが原因で小学校の頃からいじめられてるの。親にこの子の話してもせっかく付けてあげた名前なのに不満か!?って殴られるし、不満だよって叫ぶとさらに殴られるし、僕は悪くないのに、全て親のせいなのに身も心もボロボロにされて、もう家に帰るのも学校に行くのも嫌なんだ」
僕の声は震えていた。
「さあ、君も僕のこと笑うんでしょ?だったらどっかいってくれ。もう僕を苦しませないでくれ」
すると少女は言った。
「チートって名前?私は全然変だと思わないよ?」
僕は驚き顔を上げる。
静かに微笑む少女が立っていた。
「私はあなたの名前のこと、変だと思わないし、むしろ素敵だと思う」
「嘘つけよ。チートって変だろ。名前につけるもんじゃないだろ」
「変だとして、それでなんであなたがいじめられなきゃいけないの?名前で人の全てが決まるわけじゃないし、名前はいじめの理由にはならない」
「いじめられてるんだよ!これ以上言わせんな!名前が原因で苦しい思いをしてきたんだよ。誰一人僕の仲間はいなくなったんだよ!」
僕は叫んだ。
「じゃあ、私が仲間になってあげる」
「え?」
「もしいじめられてたら、私が止める。もし泣きたくなったら、嫌なことがあったら、全部聞く。そしてみんなに伝えようよ。名前はいじめの理由にしてはいけないって」
気づいたら涙は止まっていた。
「本当か?」
「本当だよ。私はあなたの全てを受け入れてあげる。さぁ、帰ろ?家まで送ってってあげる。立てる?」
僕は彼女の傘に入れてもらうと、歩き出した。
「しかしお前って変だよな。急に現れて急に仲間になるとか」
「だってこんな雨の中ボロボロになってるのを見たら、放ってはおけないよ」
彼女は笑顔で答えてくれた。
「実はさ、私もよく笑われてるんだ。私ドジっ子だから、すぐドジしては叱られてみんなに笑われる。君は笑わないでくれる?」
僕は頷いた。
「よかったぁ」
「ところで、君の名前は?」
「青山空だよ」
それから彼女は頑張ってくれた。
僕をいじめる子たちに止めるように呼びかけて、みんなに僕のことを教えて、仲良くするよう言ってくれて。
今思うと先生みたいだなって思う。
でもあれのおかげでいじめもなくなり親と喧嘩をすることもなくなって今の生活ができるんだ。
血斗はケータイの電源を開き、葵に「ありがとうな」とメールを送った。
すぐに「なんのこと?」返信が来たが、「いや、気にしないでくれ」と返した。




