間話一 春樹の思考
何度でも、繰り返して来た世界。
魔剣士として、魔術と聖剣を携え、僕一人がいるだけで勝利を収めることが出来た世界。
科学が発展した世界で、最高の機械兵器を造り、パートナーと共にバトルで勝利を収めた世界。
時には、訳の分からない、童話のような世界もあった。
小人として、楽しく暮らし、人間にとってはなんて事の無いことでも、小人としては災害と同じレベルに感じる世界もあった。
魚となり、水族館に運ばれたこともあれば、同じように動物となり、動物園や人に飼われた世界もあった。
そうそう、動物といえば、僕が犬となり人間の少女と恋をするという可笑しな世界もあった。
そういった、禁断の恋という物もいくつもして来た。
けれどそんな中で、僕はどこか物足りなさを、いや、正確に言えば、そこにいるはずの人がいなくなったかのような、そんな違和感を感じることが多々あったのだ。
いるはずなのに、いない存在。
矛盾はしているけど、僕はどうしてもそう感じてしまうのだ。
そして、『あの場所』に至る時、僕はいつも思う。
もしかしたら、『彼女』が足りない存在なのではないか、と。
確証はない。
もしかしたら、寂しそうに微笑む『彼女』がただ一人でいることが、どうしようもなく切なく思えるから、『彼女』を一人にしたくないという僕の願望なのかもしれない。
けれど、記憶を保持した状態でこの世界にいることで、その思いはより一層強く感じた。
この繰り返される世界での共通点はいくつかある。
例えば、どの世界でも、恋をしていることであったり。
例えば、僕が体験して来た過去の記憶を失うことであったり。
例えば、『彼女』そこにいないことであったり。
そういった、ちょっとした共通点がこの繰り返される世界での、何かしらの『鍵』となるのかもしれない、と僕は思っている。
そして、この世界では。
『現段階において、選択肢が表示されている者から一人攻略せよ』
これはあきらかに一つ目の『例えば』に当てはまるのでないだろうか。
だが、これだけでは情報が全く足りない。これだけでは、判断しかねる。
やはり、僕はこの世界において、選択する他ないのだろうか……。
間話を読んで頂きありがとうこざいます。
その内、第二話も投稿しますので読んで頂けたらなと思います。