第一章 プロローグ
目を覚ますと、そこはどこかの花畑だった。
春夏秋冬、どの季節の花も咲き誇り、幻想的な雰囲気を醸し出す。
そんな花畑の中で、一つだけだけポツリと立つ大きな巨木。
その根元で『彼女』はいつも眠りながら、僕が来るのを待っていた。
そして、僕が目の前に来ると『彼女』はいつもタイミング良く目を覚まし、柔らかに微笑む。
「あ、また来たのね」
「ああ。今回も色々と話たいことがあるんだ」
「クスッ。それじゃ、今回はどんなお話を聞かせて貰えるのかしら」
『彼女』の目の前に座り、僕は今まで体験して来たことを話す。
これで何度目になるだろうか。
いつの間にか、僕はこうして『彼女』に生きていた頃の話をするようになった。
そう、『生きていた頃』の話である。
例えば。
とある世界で、僕は勇者として仲間たちと共に魔王軍と戦った。
とある世界で、僕は天才と呼ばれほどの科学者だった。
とある世界で、僕は普通に恋をして、普通に結婚して、温かな家庭を築いた。
こうして何度も生まれ変わってはその世界の記憶を失い、また新たな人生を歩み、死んで、ここに来て記憶を取り戻し、『彼女』へ話をしてまた新しい人生へと。
無限に思えるループを繰り返し、少し疲れたと思ってしまう時もあった。
けれどそん中で、どこか温かな物を感じていた。
『彼女』に話を聞かせている時だ。
『彼女』が何者なのか、名前すら分からない。
それでも『彼女』は良く笑い、良く泣き、良く興奮した様子を見せてくれる。
その反応を見ていると、大袈裟だなと思いながら、とても面白く感じていた。
「……っていう訳で、今回はこんな風に終わったんだ」
「クスッ。やっぱり、貴方のお話は面白いわ」
「それは良かった。……あ」
話を終えると、僕の体は粒子となり透け始める。
終わりの始まりの時間だ。
「それじゃあ、また次の世界へ行ってくる」
「ええ。次のお話も楽しみにしているわ」
「……ああ」
そう言って微笑む『彼女』は、どこか寂しげだった。
だからこそ願う。
ここで一人眠り続ける『彼女』に、また、逢えますように、と……。
まだプロローグだけですが、読んで頂きありがとうございます。
初めて小説を書きますが、色々と分からないことが多いです。
ですが、最後まで付き合って頂けたら嬉しいです。