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偶然よりも確率が低い 〜名前も知らない、好きという言葉しか知らない〜  作者: 阿部つくも
◆「名前も知らない。好きという言葉しか知らない」
2/2

2.三月下旬になると家の桜も咲いたが、お城の桜まつりに行った。 桜吹雪をあの人と歩いている気持ちになって、ぼくは歯を食いしばった。

【後編】都会から特急で三時間、山に囲まれた町を訪れた二十歳(はたち)の「ぼく」は、夏まつりで三歳年上の青年「あの人」と出会ってすぐに結ばれた。一年後に再会すると、お互いの名前も知らないまま、ふたりで暮らしはじめた。が、「ぼく」はひと月で部屋を出た。家で待つ大切な人から離れるわけにはいかなかった。それでも「ぼく」は「あの人」を忘れたことはない。

 海碧(みあ)はもう十四歳だったが、兄のぼくがそばにいるほど幼い子どものように癇癪(かんしゃく)を起こした。

 ツインテールの長い髪を振り乱し、一メートルはあるクマのぬいぐるみを持ち上げると、部屋とプールを隔てる薄いガラスに向けて投げつけた。

「あぶない!」

 背を向けてかばったぼくがガラスまみれになった。汗のように血が流れた。

 妹は大泣きする。

「お兄ちゃんを傷つけるためにやったんじゃない。海碧が悪い子だから。いらない子だから」

「そんなことないよ」

 音を聞いて駆けつけたメイドとふたりで海碧にかかったガラス片を取り除くと、抱き上げて別の部屋へ連れていきソファに寝かせた。

「だんな様もおケガの手当を」

「うん」

 シャツを脱ぐと、バラバラとガラス片が落ちた。背中を向けると、残った破片をメイドが数人がかりでピンセットで抜いた。

 医者が呼ばれ、ぼくに薬を塗り包帯を巻いた。

 海碧も診てもらった。

 興奮が収まって、ぼんやりとしている。

 医者は少しの切り傷に薬を塗ると、落ち着かせるための薬を出そうとしたので、

「いらないです」

 と、はっきり断わった。

 日が暮れて、プールとプールサイドにあかりが灯る。

 暖かいミルクを持ってこさせて海碧に与え、自分は別の者に用意させた新しいシャツを着た。

 海碧を抱き寄せる。

 窓の向こうの薄闇に大きな月がのぼる。

 二ヶ月前に別れたあの人のことは考えないようにした。



 あんな騒動のあとだったので、食事はトレーに載せて海碧のところへ持ってこさせた。ぼくも側で一緒に食べた。

 当分、風呂には入れない。

 メイドにケガをしているところは除いて海碧の体を拭くように言い、自分も部屋に戻って同じことをした。

 戻ると海碧はパジャマを着てぼくを待っていた。

「クマちゃんに謝りたい」

 ガラスまみれでプールサイドに転がるぬいぐるみを見る。

 ぼくは涙を手のひらで拭う。

「明日にしよう。クマちゃんも明日でいいよって。おやすみなさいだけ言おう」

「おやすみなさい」

 海碧はぬいぐるみにあいさつした。

 “おやすみなさい”とクマちゃんも答えた。



 海碧の手を引いてベッドへ連れていった。

 大きなそこでぼくも一緒に横になる。向かいあう海碧の背中に手を置く。

「なにか本を読んだほうがいい? ハリーポッターとか」

「いい」

「我慢しなくていいから。何をしてほしいのか言ってごらん」

「お兄ちゃんにだっこしてほしい」

 しがみついてくる。

 ぼくは海碧を大事に抱いた。

「お兄ちゃん」

「なに?」

「ずっと海碧のそばにいてね」

「ずっと海碧のそばにいるよ」

 繰り返した。



 朝になり食事の準備が整った。

 海碧は機嫌がよかったが、分厚いゴムの手袋に長靴、厚い生地のエプロンを付けさせて、プールサイドへ行き、一緒に昨日のクマのぬいぐるみを起こしてガラス片を取り除いた。

「“ありがとう”って言ってるよ」

「昨日は本当にごめんね」

「“怒ってない”って」

 クマを部屋の元の位置に戻してから席についた。

 銀器がバカみたいに不味い。糊とアイロンで固められたナプキンもちっとも口についた汚れを取ってくれやしない。

「ティッシュ取って」

 ぼくは言うがマナーが服を着たようなメイド達は動かない。腰をあげると先に海碧が椅子から降りる。走って部屋の隅の猫足のサイドテーブルからケースごとそれを持ってきてぼくの目の前に置いた。

「ありがとう」

 海碧は嬉しそうだった。

 食事を続ける。

「海碧、今日は港の方に遊びに行こう。観覧車とか水族館がある」

「お兄ちゃんも一緒に?」

「一緒だよ」

「じゃあ行く」

 名古屋でも晩秋は寒い。

 海風も強いのでなおのこと心配だ。

 海碧にコートを着せ帽子をかぶせる。

 行く先を執事に告げると、磨きあげられたどっしりした外車がポーチに回されたが、

「いらない」

 と、断わった。

 海碧には歩いやすい靴を履かせ、自分もファストクローズで買った安いジージャンをはおると、海碧と手をつないで門扉に向かった。

 執事がついてきて明らかに不機嫌そうに門扉を開けた。

 この家の(あるじ)はどっちなんだろう。どっちでもいい。

 海碧とバス停へ歩いていき、市バスに乗って地下鉄に乗り換えた。

「海碧、バスも地下鉄もはじめて乗るな。ずっと悪い人ばかりがいるから、あぶないからダメって言われてたけど。お兄ちゃんがいるし」

「うん。大丈夫だよ」

 “名古屋港”の地下鉄駅から地上にでると海の匂いがして赤い観覧車が建物の向こうに見えた。

 海碧が顔を輝かせた。

「あれ、乗りたい!」

 ちょっと離れているのに走るので帽子が落ちた。

 ぼくは笑ってそれを拾う。

「海碧、走らなくても観覧車は逃げないったら」



 赤い観覧車の乗り込んだ部屋がゆらりと持ち上がると、向かいの席で海碧は興奮しあちこちの窓の風景に見入った。

 海に大きな橋がかかっている。反対側には大都会の街と高層ビル群がかすんでいる。

 濃尾平野は三方を遠い山に囲まれ、北西に望める伊吹山は、もう、少し白い。

 飴を取り出して海碧に渡し、自分も舐める。

「海碧、夢を見ているみたい」

 つられて笑うというよりも涙が出そうになって、ぼくは海碧が眺める海と逆の方に体をねじった。

 どうしても目が北東の山を見る。

 あの山のずっと向こうにあの人がいる。

 逢いたい。

 鳥になって飛んでいきたい。

「海碧、イルカが見たい」

 そちらを見るとちょうど近くの水族館でイルカショーが行われているところだった。

「イルカのショー、久しぶりだな」

「海碧ははじめて」

「観覧車を降りたら行こう」

 案の定、歩き回って興奮しすぎた海碧は疲れて眠そうだったので、帰りはタクシーにした。

「お車でしたら、お嬢様が疲れることもなかったでしょうに」

 執事から嫌味を言われたが無視して、タクシーの後部座席で寝込んでしまった海碧を起こして手を引っ張りおぶった。



 クリスマスに届いた印字だけの親からのカードは暖炉に投げ入れた。

 ふたりで都心へ行った。大通りはイルミネーションで輝いていた。

 外商が持ってくるお仕着せのブランドの服ではなく海碧が見て気に入った服を買ってやった。

 スターバックスコーヒーで寒いのにフラペチーノを頼んだ。海碧は喜んで全部飲んだ。

 家に結婚式のようなバカでかいクリスマスケーキが届いていることは知っていたが、コンビニのロールケーキにヒイラギの楊枝が刺さったものを公園のベンチに座りふたりで食べた。

「生まれてから一番美味しいケーキだよ」

 海碧が欲しがったのでぼくは食べかけのものを渡した。

 新年も、またふたりで市バスと地下鉄に乗って名古屋で一番大きな神宮へ初詣に行った。

 たくさんの人が動かない列に並んで参拝する様子に海碧は驚いていた。

 おみくじを引いた。

 ぼくは小吉で、海碧は大吉だった。

「大吉は一番いいということだよ」

 拝殿で手を合わせるとあの日のことが思い出された。

 あの時ぼくはあの人とずっと一緒にいたいと願った。

 あの人はどうだったんだろう。

 今となっては知るすべもない。



 二月の上旬は名古屋でも十センチ程度の雪が積もる日があった。

 庭で海碧と雪だるまを作り、かまくらも作った。雪合戦もした。と、言うよりは一方的にぼくが投げられて逃げ回ったのだが。

 海碧にバレンタインデーの話をするとデパートへチョコレートを買いに行きたいと言うので連れていった。

 海碧の好きなものをふたつだけ買っていいことにした。

「お兄ちゃんはどれが好き?」

 と、聞くものの自分がかじりついて離れないショーケースがあるので、

「それが好き」

 と、答えた。

 ラッピングをしてもらい、家に帰って海碧から贈られたあと、ふたりで食べた。

 ゴディバをひと粒買っておき、トイレで泣きながら食べた。

 ホワイトデーの話もすると、贈られるものを買いたいと言い、またデパートへ行った。

 ステラおばさんのクッキーは可愛いパッケージが豊かで美味しかったので、それにしてまたふたりで食べた。

 三月下旬になると家の桜も咲いたが、お城の桜まつりに行った。

 桜吹雪をあの人と歩いている気持ちになって歯を食いしばった。

 海碧を不安にさせてはいけない。強い心がほしい。

 海碧が桜味のソフトクリームを欲しがったので、ふたつ買った。死んでしまいたかった。

 家に帰ると海碧の機嫌が悪かった。

「今日、お兄ちゃんは楽しくない感じだった」

「そんなことないよ。いろんな桜があるなって感動していたんだ」

 海碧は黙った。

「暖かくなったら旅行に行こうか」

 ぼくが誘うとパッと顔を輝かせた。

「本当?」

「海碧はなにが見たい? 海碧の見たいものを見に行こう」

「海。電車に乗って」

「うん」

「また水族館に行きたい」

「鳥羽がいいかな」

「とば?」

「近鉄特急に二時間乗って、大きな水族館を見る。夜は美味しいお魚や貝を食べる。真珠を作っていて真珠について教えてくれて、お土産に買える島もあるんだ」

「そこがいい」

 その日、海碧は自分で選んだ可愛らしい服を着てバッグを持った。その方が逆に大人っぽく見えた。

 近鉄特急に乗った。なぜあの電車は発車のメロディが哀愁をさそうものになっているのだろう。

 鳥羽には名古屋とは違う深い青色の海があった。ぼくの方が心が落ち着いた。

 鳥羽駅に荷物を預けて海碧とふたりで駅からすぐの水族館へ行った。

 アシカのショーがあったり、幅が広いのに見上げるような大きな水槽があったり、ペリカンがいたりした。名古屋の水族館とは違っており、海碧と共に楽しんだ。

 翌日は真珠島へ行った。

 真珠が作られる工程を見て、売店で海碧に選ばせて真珠がひと粒ついたネックレスを買った。

 つけたところで鏡を見せて、

「レディだ」

 と、言うと、

「もうすぐ十五歳だから」

 と、海碧は大人びた顔を見せた。

 ぼくはあの人の誕生日も知らない。

 デジカメを買ったので持っていき、たくさん写真を撮って、家に帰ってから気に入ったものを壁に貼った。

「もっと水族館に行きたい」

「そうだな。もっと遠くに行ってみようか」

「海遊館でジンベイザメが見たい」

 海碧は、はじめて自分から具体的にしたいことを話した。

「大阪か」

 海碧の誕生日は五月十二日だ。

 その日にあわせて大阪へ行くことにした。



 大阪には数えるほどしか行ったことがない。

 とりあえず東西南北で迷子にならない程度だ。

 初日は心斎橋で美味しい物を食べたりファッションアイテムを見た。海碧は見たもの全部を欲しがることがなくなった。

 いわゆるディナーには飽き飽きしていたので夜はお好み焼きを食べた。

「海碧、十五歳のお誕生日おめでとう」

 ウーロン茶とカルピスでお祝いした。

 海碧は見たことがないような笑顔で喜んだ。

「お好み焼き、美味しい」

 と、たくさん食べて、

「生まれてきてよかった」

 と、つぶやき、デザートのメニューに目をやった。

 ぼくは胸がきつく締めつけられた。

 店を出て手をつないだ。

「ずっと海碧のそばにいるよ」

「うん」

 海碧はまたスターバックスコーヒーを指さした。

「新しいフラペチーノが飲みたい」

 翌日、南港の海遊館へ行った。

 四角い外観なのに中は螺旋になっている。ぐるぐる回りながら巨大なジンベイザメを見た。

 そこで夕方まで遊び、帰りは街並みが見たいと言うので大阪駅へ行くのに環状線を使った。

 “森ノ宮”で停車すると、すれ違うように反対側の電車が発車する。

 ぼくはそちらに背中を向けていた。海碧は隣でデジカメで撮った写真を見直していた。

 隣の電車が加速する。

 ふと、そちらを見た。

 音がすべて消えた。

 あの人が走り去る電車の中から窓を叩く。

 立ち上がって自分も窓に手を当てた。

 電車がふたりを引き裂いた。

「どうしたの?」

 海碧がデジカメから目を離さずにたずねる。

 ぼくは崩れるように座席に腰を落とした。ドアを閉めるアナウンスが流れた。

「なんでもない」

 帰りの新幹線で海碧は無言だった。

「疲れた?」

「別に」

 窓に映る自分の顔を見つめている。

 家に帰ると、最近は別々のベッドで寝るようになっていたのに、久しぶりにぼくのベッドへ入ってきた。

「寂しくなった?」

 ぼくは体を向けると元気のない背中をなでた。

「お兄ちゃん」

「なに?」

「好き」

「わかってる」

 大阪旅行で疲れたのか、翌日から海碧は熱を出して寝込んだ。

 ぼくは寄りそい海碧が特に可愛く写った写真を選んで海碧の近くの壁に貼った。改めて写真を見ると、この半年でずいぶん大人っぽくなったと感じて眠る海碧を見た。

 そういえば大阪では手をつなごうとすると嫌がる素振りも見せた。店にもひとりで入りたがった。

 とはいえ、まだ子どもだ。

 ぼくがそばにいて守る必要がある。海碧の熱い頬に自分の頬を押しつけた。

 ずっとそばについているうちに夜になった。

「お兄ちゃん」

 海碧が目を開けた。

 泣いていた。

 ぼくは心配になり海碧の髪を指で撫でた。

「熱がつらい?」

 海碧は首を振って手をにぎってきた。

「お兄ちゃん、好きな人のところへ行っていいよ」

 返事ができなかった。

「今まで、ごめんね」

「なに、言ってるんだ」

 声がつまった。

「ずっと海碧のそばにいる」

「いらない。もうひとりで頑張れるし、頑張りたい」

「……海碧」

「私、学校へ行く。インターナショナルスクールに行く。いろいろ調べたし、歳の近い友だちもほしい」

「英語がしゃべれるようになって外国にも行きたい。お兄ちゃん、最初に言ってたみたいにひと月に一回だけ海碧のところに来て。海碧が大人になるのを見に来て」

「それでいいの?」

 ぼくの声が涙になった。

「いいよ。お互いに頑張ろうね」

「海碧」

 ぼくは妹を抱きしめる。

「ぼくはどこにいても海碧のことが大切だよ」

 海碧は手の甲で目元をおおった。

「海碧が寝てる間に行っていいよ」

「そんなのいやだよ。明日、朝ごはんを一緒に食べよう」



 ぼくはあの町へ向かう列車に乗った。

 はじめは列車を蹴って進めたいほど気持ちがせいたが、近づくにつれて怖くなった。

 五月中旬になっていた。

 一緒に暮らしていた部屋を出てから、九ヶ月もたっている。

 突然、いなくなったことを、あの人はとても怒っていて、冷たくされるかもしれない。

 他に好きな人ができたかもしれない。

 今は大阪に住んでいるのかもしれない。

 どこにいるのかさえもわからなくなったら、本当に会えなくなってしまう。

 列車を降りて改札を抜け、ふたりで住んでいた部屋を目指す。あの神社に、正面から入った。

 思えば、専門学校を卒業したあと、隠れて働いていたときの友達に連れてこられた夏まつりが始まりだった。

 視線を感じて顔をむけると、あの人は境内をめざす沢山の人の流れにさからい、自転車をゆっくり押しながらぼくを見ていた。

 流れにさからえる人なんだ、と、その勇気をうらやましく思った。

 近くなりすぎた視線をいったん外して、そのまま、すれ違った。

 どうしても後ろ髪を引かれ、もう一度、振り返って見た。

 あの人も、自転車を押す手を止めて、ぼくを見つめていた。

 その瞬間、恋におちた――。



 何度も祈った社殿をすぎる。

 今は祈らない。あの人と並んで手を合わせたい。

 神社を裏門からでる。ふたりで暮らした部屋が見えてくる。

 好きだ。やっぱり好きだ。

 我慢できずに駆けだした。

 あと二百メートル、あと百メートル……!

 その時、一台のきれいな車がアパートの前に止まり、中から箱を抱えた年下の青年が出てきた。足どりも軽くあの人の部屋へ向かい、扉を叩いた。

 あの人が姿を現した。何事か話してふたりで笑った。

 ぼくは頭の中が真っ白になり、そこで足が止まった。

 やっぱりそうか、と思った。

 年下の青年が、ぼくに気づく。

 目をそらした。後ずさり、そのまま(きびす)を返した。

 涙があふれた。

 誰もいない神社へもどり、境内を通ると参道をはずれて山のお稲荷さんに向かって石段をのぼる。二十五段目に腰掛け、顔をおおって泣いた。声にだして泣いた。

 名前も知らない。

 好きだという言葉しか知らない。

 それしかわからない。

 わからない。

 止まらない涙を何度も腕でぬぐった。

 そこへ、誰かを呼ぶ若い声が裏門から駆け込んできた。

 声はあちこちに向けられ、境内に響いた。

「ここに来たのか!?」

 あの人の声だった。

「どこにいるんだ!?」

 腹の底から叫んでいた。

「名前を知らない! 名前を知らないけど、好きなんだ! 好きなんだ!!!」

 離れていても同じ想いがずっとふたりをつないでいた。

 ぼくは夢中で石段を駆けおりた。参道に立った。

「ここにいる! ぼくはここにいる!」

 腕を広げると、あの人が駆けよってぼくを強く抱きしめた。

 ぼくもしっかりと抱き返した。

 何度も何度もキスをした。

 顔を離すと、かけがえのない人は優しくぼくを見つめた。

「名前を教えて欲しい」




<第一章・おわり>

※※※※

お読み下さりありがとうございました。

(ぼく)」の名前は?

これからのふたりの生活は?

獏はどうなるの?

海碧や紅子は?

と、新しいキャラも登場させて話を広げたいです。

→続編、始めました。

※※※※

◆180°違う話、異世界転移・NL連載中です。

「異世界で闇堕ち妃になった私は処女のまま正義と戦いあの女に必ず復讐する」

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