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「おかあさーん」


「……」


「あ、ここにいたんですか…」


「…………」


「…おとうさんは今ごろなにをしてるんでしょうね」


「……」


「一応エルフさんも一緒ですから、危ないことはないとは思いますけど…」


「………………」


「だ、だめですよ行っちゃ! いくらおかあさんでも身重の状態で遠出するのは禁止です!」


「」


「まぁ…おかあさんの気持ちはよくわかりますよ? 私だって寂しいですし…」


「……、

「でもそれとこれとは別の問題です」

「」


「…少々よろしいでしょうか?」


「ふぁ!? か、神様、どうしました?」


「いえ、その……自慢ではありませんが、私はこの惑星にすむすべての種族の言語を翻訳する機能がありますし、一キロ先に落ちた針の音も聞き取れる聴覚センサーも搭載しています」


「は、はぁ…」


「ですが…先程のあなた方の会話が全く聞き取れませんでした。どういった方法で意思を疎通さているのか、よろしければ教えていただけますか?」


「あー…これはその、私にもなんと言えばいいのかわからないのですけど…」


「……#*£¥&%」


「! むぅ…ひどい…」


「#¥¥@£∩〒、△▽●∠≫♯#′@※▲↓」


「……なるほど」


「あ、わかるんですか?」


「私の幼き娘は風の申し子たる私の満月の輝きのごとき静けさとまばゆさを持った声なき声をその秋に実る稲穂のごとく豊かな心の耳で聞いたのである。我らの崇める神達の住み処であり故郷でもある森の木々より世界創造の神々のおわす天空の広さを測ることなど、偉大なる大地を掘り返しそこに隠れ潜む野ウサギのような我々にできるものだろうか、いやない。……古代エルフ言語ですね。産み出した種族の見た目と同じく詩的で美しい」


「あー……えっと、たしかに古代エルフ語には違いないんですけど……」


「? 翻訳は完璧なはずですが?」


「えっと、意訳みたいなものですけど…この子が聞きたいことを聞いているだけ。それは一部でしかなく、それが全てではない…と言ってました」


「…ずいぶんと簡潔ですね…」


「あ、あの、多分直訳すると神様の言ったような感じになると思うんです。エルフ語は言葉に魔力を込めて情報量を増やしてますし」


「なるほど…変換のための音声データが語数に対してやたら重かったのはそういう理由ですか…」


「………」


「ということは…発声しなくとも魔力のみで会話が可能と?」


「う、うーん…できることはできますけど、完全には無理で…」


「ふむ……あ、その答えが先程の?」


「そう…なんでしょうかね?」


「…………」


「……はぁ…だめですね。やはり機械の私と魔力は相性が悪い」


「あの、あまり気にされない方がいいですよ? この意思の伝え方は本来狩りをするための技術で簡単なことしか伝えられませんし、他の種族では受信すること自体が困難ですから…」


「たしかに、聞き取れる人物は他の方々のなかでもごく少数なようですが…あなたの父親はどうなんですか?」


「うーん…それがわからないんですよね…まぁ本人も理解してるわけではなさそうなんですけど、それでもある程度正しく反応を返してるので。…見た目は特殊でも中身は普通の人族なはずなんですが…」


「£#&℃¥£℃、♀¥●*§£&℃%*¥★」


「はい?」

「お、おかあさん?」


「∃※£℃$♀♂%§、★⊇∝♀∞$£&℃%#¢$Å♪¢∬¶◆。#○≧¥♀$∴%£¢! &#∞Ŷ%℃§#&%¥¢▲、¢℃⊆〓&¥♀⊃↓◇£@$

「おかあさん! ちょ、まって、落ち着いて!」


「…すみません、私が何か怒らせるようなことを」


「あ! いえ、違うんですその、怒ってるわけではなくてですね…その…」


「…♭℃°£″℃、≧¢★@♪

「あかあさん、いいから! わかりましたから! 完全に伝えるのはちょっと無理ですけど…」


「私も翻訳にかけていますが、あまりにも長いのと注釈が多すぎて解読に少々時間がかかりそうですね……」


「あー、ほとんどは修飾語ですからそういう部分は聞き流してください」


「はぁ……それで、まとめると?」


「ええと…あの人は(語り尽くせぬ何か)すごい」


「……」ンフー


「なんでどや顔してるんですか」


「……つまり、」


「はい、たんなる惚気ですね…母がすみません」


「なるほどたしかに…全てを伝えることも、理解することも言葉だけでは難しいことですし、聞きたいことだけを聞いていられた方が幸せなのかもしれませんね」

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