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第8話 私、すくすくと成長しています! 【中編】

このところ世界観の説明を垂れ流してばかりなので、退屈を感じさせているかもしれません。

次話からは、話をしっかりと動かすようにします。

 私がアリスといちゃいちゃしていると、気づけば太陽が最も高く昇る時刻、すなわちお昼ごろのになっていたようだ。


 扉の開く音が聞こえた。アリスと私は、自然とそちらの方へと目を動かす。


 そこには、エリックさんがうさ耳メイドのシアンを連れて入室している姿があった。シアンはエリックさんの後ろで静かに控えている。


 エリックさんが背後にいた彼女に小さな声で何かをぼそりと呟いた。距離が離れていたので、その内容は聞き取れない。

 そして言葉を受け取ったウサ耳は、私とアリスの元へゆったりとした足取りで歩いてきた。そのままアリスに声をかける。


「アリス、交代よ」

「ふぇ? 今日は私の時間ですよ?」

「残念ね。今日の午後は私がお嬢さまにつくことになったの」

「えー。どうしてですかぁ!」

「どうしてもよ。あなたは別の仕事でもしてなさい」

「ぶー」


 アリスが口を膨らませると、シアンが目を細めてふふっと笑う。私と話すときのメイドさんたちは、当然いつも敬語なので、こういう少女然とした自然体の話し方をみるのは新鮮な気分だ。

 それに私の知ってる人同士が仲のいいやり取りをしているのを見ていると、それだけで心が温まる。


 さて、どうやら会話の内容から、私の側付きはシアンに交代するようだ。私はアリスを見つめる。ムッとした様子で、少し不満そうだ。


「ありす。あそんでくれてありがとぉ。またね」


 アリスの方に軽く手を振って、全力ではにかんでみる。


「スカーレットさまぁ……」


 彼女は諦めたように肩を落とした。そして名残惜しそうに、とぼとぼとした足取りで退出していった。

すれ違う様にしてシアンが私の元へ近寄ってくる。

 私は部屋から出ていくアリスの姿を目で追いきってから、やがて近づいてきたシアンに身体を向ける。


  目が合った。すると彼女は花のような笑みを受かべた。

 私は思わずシアンにぎゅっと抱き着いた。


「しあん!」

「ふふふ。お嬢さま」

 シアンが私の頭を軽くなでた。


 と、そうやって数秒ほどシアンとじゃれた後、彼女から離れる。シアンもすぐに切り替えて、私の背後に立った。


 私は、もう一人の来訪者のエリックさんへと注意を向け直した。彼は、私がメイドさんたちと会話をしている間に、すっかり私の目の前まで移動していた。


「えりっくさん、よろしくおねがいします」

 私は、出来得る限りの誠意をこめた声と姿勢で彼に応対する。そして彼の理知的な顔立ちを、あらためてまじまじと見つめた。


 彼のさらさらとした金髪が、灯りを受けて輝いているのが見える。口元は、笑みの形で固定されていた。

 そして、彼の翠色の瞳が、奥の方から強い意志の力を帯びて、妖しく光っているように感じられた。その瞳だけは、何を考えているのかがさっぱりわからないようなポーカーフェイスには不釣り合いなほどに、爛々をとしていた。


「ええ、こちらこそ」

 私を軽く眺めてから、彼はあくまでも柔らかい声色で応える。


 でも、これから何がはじまるんだろうか。以前あった時は、家庭教師とは聞いたけれど。


「何をするの?」


 考えていても仕方ないので目の前にいるエリックさんにとりあえず尋ねてみた。

 彼は顎に手を置いて一瞬考える素振りをするが、すぐに口を開く。

 

「そうですね……正しい言葉遣いに始まり、貴族特有の言い回し、挨拶の仕方や一通りの礼儀作法。教えなければならないことはたくさんありますよ」


 その回答は、あまりにも貴族らしいものだった。私が上級貴族の令嬢として生まれた以上、当然と言えば当然なのかもしれない。避けては通れないのだろう。

 しかし、現在メイドさんたちの教育で十分に育っているのだから、専門の家庭教師を設けて教育を始めるのは、やはり不可解な感じもする。もちろんこの世界について何も知らないのだから、あまり偉そうなことは言えないのだけれど。


「ほかの子も、もうそんなにいろいろおしえられてるの?」

「さて、どうでしょうね」

 私の質問に対して、エリックさんは曖昧に答えた。


 なんだか、はぐらかされている気がした。


 私はじいっとエリックさんを見つめる。しかし彼は不動の笑みからピクリとも表情を動かさない。どうしても彼の表情の裏は読み取れなかった。


「他の貴族になめられるのも嫌でしょう?」


 私が黙って見つめていると、エリックさんは、私の視線を余裕の態度で受け止めて、依然として優しい調子で私に告げた。やはり、そのうちにある真意が読み取れない。

 残念ながら、今の私にはその不動のポーカーフェイスを崩すことはできそうもない。少しだけ悔しい。


 だけど、だからといって彼の言葉の内容に同意をするつもりもなかった。

 そもそも私はまだ他の貴族と会ってはいないのだし。


「そんなことはありません。ヴァルムフォードほどの家格であれば、すぐに他の貴族と接する機会を持ちます」


 私が考えていると、その思考を見透かしたかのようにエリックさんが先回りしていった。


 え、もしかして思考が読まれた?


 ちょっとだけ恐く感じて、私は上目がちに彼を見た。相変わらずの不自然にまでに自然な笑顔があるだけだった。


 私の感じた空恐ろしさなど、まるで意に介していない様子で、彼は続ける。


「例えば、四歳になったとき一度中央に赴く必要がありますよ。血の精錬もありますからね」


 言葉の中に、 “血の精錬“という謎の単語が再び現れる。そろそろ何か教えてほしい。ずっと気になっている事だった。以前アリスに聞いた時も、詳しくは答えてもらえなかったのだから。


 話の腰をおる事になるが、尋ねてみよう。そのくらいは許されるだろう


「ちのせいれんって?」

 私は質問すると、彼は少しだけ目を丸くした。


 その表情には人間味があって、私は少しだけほっとする。


「エレンからは聞いてないのですか?」

 私はこくりと頷いた。


 すると彼は再び考え込むような様子になる。そして少しの間、沈黙が場を支配していた。



「ふむ、そうですね……一言で言えば、それは魂の固定です」


「えっと……?」

 その端的な説明では何も理解できなくて、思わず首を傾げた。そんな私の様子を見て、エリックさんが続けて説明する。


「生まれたばかりの魂は酷く不安定なのです。そのままだと魂が崩れ、人としての形が保てなくなるほどにね。ですから我々は幼いうちにその魂の不安定さをある程度抑える必要があります。

 その方法こそが王家の御力をもって行う儀式“血の精錬”であり、四歳に迎えた子供はみなそうする必要があるのですよ」


 なんと、はじめて知ったこの世界のシステム。

 でもそれだと、色々と問題がありそうな気がするけど。まず、国中の幼児に儀式を行っていたら王様は大変というレベルではないだろう。物理的に不可能な気がする。


「みんな? でも、四才の子っていっぱいいるよね? そんなにたくさんで行ってだいじょうぶなの?」


「いっぱい?………………ああ、なるほど。いえ、スカーレットの心配しているようにはなりませんよ。というのも、血の精錬が必要なのは貴族だけですから」


「きぞくいがいのひとは、いかなくていいの?」

「ええ。平民の魂はもともと何もしなくても強く結合していますので。逆に我々貴族の魂は“血の精錬“を経た後でさえ、平民に比べたらずっと不安定なのです」


 え、それだと貴族って平民よりもずっと劣ってない?よく今まで統治できていたね。

 というか、同じ人と言う種でなんでそんな違いが生まれているのだろうか。貴族と平民で身体の仕組みが異なるの?

 それに、平民がいかなくていいというのはわかったけれど、遠方に住んでいる貴族はどうしているんだろうかという謎も浮かぶ。


 もっと言えば、そもそも魂ってなに? 魔力とか魔法がある世界観だから今さらスピリチュアルな事象が出てきてもそれ自体は突っ込まないけれど、魂と言う存在がどういうものなのかは教えてほしい。


 結局、一つ教えてもらうたびに余計疑問点が増えていくばかりだ。


「じゃあ、へいみんのほうがすごいの?」


「まさか。魂同士の結合がゆるいからこそ、我々は魔法という神秘を扱えるのですよ。魔力とは、すなわち魂から分離された力ですから。魂が固く閉ざされている平民は、魔法が使えません」


「たましいが、まりょくなの?」


「それは少し違います。魂とはここにあって、ここにないものです。それは自分という主観的存在あって、それ自体は世界に観測することができません。成長するにつれどんどん膨大に膨れ上がっていく魂が、やがて自身の器という臨界点を超えた時、余剰部分が現実世界に表出され、それが魔力となるのですよ」


 説明は観念的なものであったが、なんとなく理解できた。ついでに魔法、魔力という概念についての理解も深まったのは予想外の収穫だ。魔法っていうのは貴族だけのものらしい


 もしかすると、魔法の行使が可能である事実が、貴族が国を支配する特権的身分でありえることの、理論的支柱となっているのだろうか。

 また逆に言えば、魔法の有無で身分階級がわけられるという事は、魔法と言う存在はかなりの影響力のあるものなのだろうか。


 まだ魔法と言う概念の存在を知っているだけで、実物はみていないから、この考えは推測の域をでない。


「でも、どうして、きぞくだけがそうなの? きぞくもへいみんも、同じにんげんなのに」


「それは大きな誤解です。そもそも我々貴族と、平民と言うのは全く別の存在ですので」


「ふえ?」


 別の存在。貴族特有の選民思想だろうか、と私は考えた。しかし続いて得られた回答は、私の予測からはるかに乖離していた。



「エルフやドワーフ、さらには獣人や天使と言ったかつて存在した数多の幻想族。魔法と言う人には扱えない法則の支配者、おとぎの世界の種族達。それらの血を引くのが我々貴族なのですよ」


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