第0章 プロローグ
屋敷の一室。明かりの消されたその部屋には警護とおぼしき死体が転がっている。
血だらけの部屋に人影が二つ。片方は後ろ手で縛られ正座している。
「*はどこだ。」
「さぁ 俺にはなんのことだか分からんな。
(あれ いや 、あいつを知られる訳にはいかない。意地でも……守る。)」
拘束された男は固く決意する。
「ふざけるのもいい加減にしておけ。お前は知っている。そして…… 隠している。」
問いている女は実に楽しそうである。
「知らないし、隠してなどいない。
(表情には出すな。あいつによれば相手は筋肉の動きからこちらの感情を読み取れるらしい。)」
男は冷静を保ちつつもこれからのことを考え手に汗がにじむ。
「ほぅ、いい度胸ではないか。言っておくが、我等の尋問を耐え抜いたものは未だ誰もいない」
「(あいつはメイドと一緒に逃がした。
段取りは完璧。
失敗はできない。
するわけにはいかない。)」
男は恐怖を圧し殺し口を開く。
「へぇ そりゃぁ大変そうだなぁ。だが生憎お前も俺もここから出ることはないさ。」
「フッ 貴様がこの状況からなんとかできるとでも?」
確かに両手を後ろで縛られ魔法の対象がとれない。だが……
「俺は言ったはずだぞ。お前も“俺も”とな。」
途端、轟音とともに発生したその爆発はジギリタス邸を飲み込み消し飛ばした。
それを遠くから見つめる二つの影。
「ぼっちゃま、亡き御両親のためにも最後まで生き抜くのですよ。
……なんて、7歳に言うことではありませんか。」
二人は深い闇へと消えていった。