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第1話

 

 就職活動とは、人生において大抵の人間が通る大きな壁のようなモノである。


 現在の日本では、経理の仕事などを海外に委託したり、機械を導入することによって人件費を低く抑えたりしているため就職が困難になってきている。


 そんな時代に生まれた俺、如月連きさらぎれんは、必死に勉強してそこそこの大学へと進学し、大学でも就職を有利に進めるために、周りが遊んでいる中コツコツと様々な資格を取得していた。


 そして、とうとう俺も就活戦士となったのだが……


「はぁー、またお祈りメールか……」


 ぼろのアパートの一室で俺はパソコンを見て、ため息をついた。

 そこには見慣れた『貴殿の今後益々のご活躍をお祈り申し上げます』という文末のメールが表示されている。


 そう、俺は就活戦士となってから1年以上の月日が経ったにも関わらず、企業戦士にジョブチェンジできずにいる。


 そして、周りの人間は既に内定をもらっており、どんどん卒業が迫ってくる恐怖に俺は襲われていた。

 このまま就職が決まらないまま卒業してしまうと、履歴書に空白の期間ができてしまい就職がより困難になってしまう。


 俺自身なぜこんなにも内定が貰えないのかわからない。

 学歴と資格もあり、身だしなみも整えているし、面接でもしっかりとした受け答えをしている。

 自分で言うのもなんだがスペックは悪くないはずだ。


 悩みに悩み先日には、お払いにも行ってきたし滝に打たれたりもした。

 俺は今、それほどに追い詰められている。


 今日も今日とて、お祈りメールをチェックしている最中、俺は一つ怪しげなメールが届いていることに気が付いた。

 件名は『異世界で就職してみませんか?』と書いてあり、明らかに詐欺かクリックするとウイルスに感染しそうなメールである。


 俺はそのメールを開かずに削除しようと思ったのだが、就職という文字に目が引き付けられる。


「俺、完全に末期だな……」


 俺は恐る恐るメールを開くためクリックすると、案の定パソコンがフリーズした。


「やっぱりウイルスじゃねえか……」


 そうつぶやいた瞬間、急にめまいがして俺はパソコンの前で倒れた。




 ―――――――――――――――




「…………ん? どこだここ?」


 気が付くと俺は森の中にいた。


 うん、わけがわからない。


 辺りを見回しても、うっそうと茂る木がどこまでも続いており、なんだか不気味な雰囲気が漂っている。


 そんな中俺は、なぜかスーツにビジネスバックという就活装備になっている。

 ちなみにポケットにはハンカチしか入っておらず、携帯もないみたいだ。


「これは夢か?」


 おきまりのように頬をつねってみるが普通に痛い。

 というか、今更だが夢でつねっても関係ない気がする……


 状況がまったく掴めないが、とりあえず俺は歩き出した。


「やばいな、熊とか出そうだな……」


 都会育ちのせいか、森の中というだけで何かいやな想像をしてしまう。

 周りを警戒しながらしばらく進んでいくと、目の前にゲームでしか見たことのない水色のスライムが現われた。

 こっちに気が付いているのか、じわじわと近寄ってきている


 あっ、これは夢だな。

 こんな生物が地球にいるはずがない。

 それとも、もしかして俺は本当に異世界にとばされたのか?


 おっと、そんなことよりこの状況をどうにかしないとな。

 ド〇クエであれば俺は戦っているだろうが、夢とはいえ丸腰で戦えるわけがない。


 ……よし、ここは逃げの一択だ。

 スライムだし走ればついてこられないはずだ。


 1、2の3!


 俺はスライムの横を走り抜ける。

 すると、さっきまでゆっくり動いていたスライムが俺と同じくらいの速度で追いかけてきた。


「うわっ、えっ? はやっ!」


 何とか逃げ切るために全力で走った。

 ところどころ後ろを振り返って確認すると、予想以上にしつこく追いかけてきていた。


 あれから10分以上追いかけられ、気が付けば森を抜けて町が見えるところまで来ていた。


「はぁ、はぁ…… 流石に逃げ切れたか」


 後ろを振り返ると流石にもう追いかけてきてなかった。

 にしても、まじでスライム怖かった。


 ドラ〇エで逃げるを選択して、回り込まれる理由が分かった気がする。

 とりあえずスライムから逃げ切ることに成功した俺は、そのまま町へと向かった。




 ―――――――――――――――




「身分証の提示をしてしてくれ」


 いかにも頑丈に作られているかんじの石造りの外壁に、簡素な皮の鎧をきている門番が立っており、声をかけてきた。


 やばいな、そういえば保険証とかも持ってないな。

 まあ、使えないだろうけど。


「すみません。持ってないです」


「ん? ギルドカードもか?」


 門番は少しあきれれたような感じで聞いてくる。


 というかギルドがあるのか!?

 モンスターもいるし、中世ヨーロッパにあったギルドとかじゃなく、小説とかの冒険者ギルドみたいな感じかもしれない。

 あるなら、ちょっと見てみたいな。


 俺がそんなことを考えていると、門番は何か怪しむような視線で俺を見ている。


「……あっ、もしかして迷い人か?」


 話を聞くと、この世界では異世界から突然やってきた人間のことを迷い人と呼んでいるらしい。

 なんでも100年ほど前にもいたと伝えられており、不思議な格好をして、すごい力や知識を持っているのだという。


 俺も迷い人ってことになるだろうが、すごい力か……

 さっきスライムに追い回されてたし、そんな力はない気がする。


「迷い人ならステータスの称号に『迷い人』があるらしいぞ。 一応確認してくれ」


 門番が言うには、ステータスと唱えると自分のステータスを見ることができるらしい。


「ステータス」


 ―――――――――――――――


 [名前]レン・キサラギ

 [年齢]22

 [称号]迷い人、就活戦士

 [職業]なし

 [レベル]1

 [体力]3

 [魔力]3

 [身体能力]3

 [知力]3


 [スキル]

 ユニーク:就職


 ―――――――――――――――


 えっ、弱くね?

 しかもスキルが『就職』ってどうなの?

 ちょっと嬉しいけど、どうせなら転移前に欲しかった。

 自分のステータスを見て軽く落ち込んでいると、門番が何とも言えない表情で声をかけてきた。


「一応確認はできたみたいだな。 まあ、あんまり気を落とすな」


 どうやら俺の様子を察してくれたようだ。


「そろそろ俺は交代の時間だから、ギルドまで案内しよう」


 この門番はとてもいい人みたいだ。


 あ、そういえば名前言ってなかった。

 えっと、日本じゃないなら苗字はいらないかな?


「本当に助かります。俺はレンと言います、よろしくおねがいします」


「おう、俺はライナーだ。 じゃあレン、行くぞ」


 俺は門番のライナーと共にギルドへと向かった。




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