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平凡貴族は僻地で暮らす!  作者: 六さん
9/9

1日目・視察開始だぞ、俺

やっとお出かけです。

ながすぎないか?

土を踏む蹄の音がする。

側を歩く共の足音。

風が運ぶ匂い。

突き抜ける様な空の色。

全て記憶では知っているが、俺にとっては全部が初めてだ。

現代日本で生きていた俺は、仕事場こそ都心だったが実家は所謂田舎だった。

田んぼが広がっていたし山が近かった。

この樹木が近い空気の匂いは実家ににていて、長い事見ていなかった両親の顔を思い出させた。


(懐かしいなー。この匂い。青臭い様な湿っぽい様な・・・。でも不快ってわけじゃない匂い。)


懐かしい匂いに郷愁がわく。

だが、目の前の光景にやはりここは異世界なのだと思い知らされた。

ウィリアムが住む館は少し丘のようになっており村が見渡せる。

館の中からでは高い塀と木々で見えなかったが、門を出ればその全貌が見えた。


(中世の西洋の田舎って感じだなぁ)


白い壁とオレンジがかった屋根が青々とした木々と相俟って綺麗なコントラストになっている。

中には黒い屋根や、赤茶色のレンガ造りの建物も見える。

山の方に見える大きな建物が冒険者ギルドで、それより遠い所にある白くて高く尖っている建物が教会だろうか。


「ウィリアム様、あんまりきょろきょろしてると落ちますよ。」

「ウィリアム様、昨日はあまり外を見てらっしゃいませんでしたもんねー。」


どこかからかう様な護衛の声と少しおっとりした使用人の声がかかる。

”僕”は長く馬車に乗ってこのルヒルまで来た事もあり、中からほとんど外を見る事は無かったようだ。


「昨日は疲れてたんだ。馬車に長く乗るのなんて王都へ行って以来だったから。」

「ウィリアム様はあまり遠出なさいませんもんねー。」


記憶では遠出しないのではなく、出来ないが正しいかとも思ったがそれには返事を返さなかった。

後妻の三男坊が遠くにお出かけ、なんて出来る様な余裕はないのである。

そうこうしている間に、門からの下り坂は終わり、大通りに繋がる道に出る。

この村は頻繁に人の行き来があり馬車も通るせいか、道は確り鋪装されている。

大通りは二車線にで馬車を止めるスペースがある為か四車線程幅をとってあった。


(思ったより道路がしっかりしてるな。)


道は平でしっかりとならされてる。

土を踏み固められたわけでもなく、レンガやタイル敷というわけでもない。

記憶の中から数少ない他の街にいった時の事を思い出す。

どの街も大通りは同じ様な道だった。

アスファルトのようだと言う訳でもないがこの世界の文化レベルでは不思議なほど綺麗だ。


(もしかして魔法なんだろうか・・・?)


そんな事を考えながら道を進む。

店が立ち並ぶ通りに向かっているだけあり、どんどん人が増えていく。

それに伴いこちらに向けられる視線も増えていく。


(予想はしてたけどめっちゃ見られてる・・・。)


そりゃぁみんな新しい領主は気になるのだろう。

その上共を連れて、一人馬上でお綺麗な服をきているのだ。

目立たない訳が無い。


ーーーあれが新しいーーー

ーーザウバア家のーー

ーーーーまだ若いじゃないかーーーー

ーーあの人が領主様?ーー


ざわざわとざわめきの中から噂する声がする。

俺の見た目について話す声が多い。


(確かに若くて頼りがいがあるようには見えないよなぁ。)


鏡で見た凡庸な自分の顔を思い出して苦笑する。

男らしくて頼りがいのある領主にはなれない、だがーーー


(優しくて平民よりの親しみがある領主にならなれる。)


いくら主人公たるにはスペックが足りないとしても、経営やら書類仕事やらには多少アドバンテージがある。

ならそれを生かせば良いだけの事。


(そうするなら、それっぽく振る舞わなくちゃなぁ。)


もともとウィリアムは平民よりだ。

普段通りでかまわない。

そこに少しだけ貴族としての、領主としての余裕を持たせれば良い。

俺は徐々に馬の脚を緩め、ゆっくりとした足取りで進む。

にっこりと悠然と笑いながら、ばぁや方に仕込まれたであろう貴族としての立ち振る舞いを徹底する。

店並みをゆっくりと眺めながら馬の歩を進め、時折立ち止まる。


(それっぽく見えてるだろうかーーー?)


そんな事を思いながら店の品を見渡す。

さぁお買い物と領民との初接触のお時間だ。

次回は買い物回です。

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