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平凡貴族は僻地で暮らす!  作者: 六さん
5/9

1日目・仕事の評価は高いぞ、俺

お昼までまだ時間があります。

仕事を始めて、体感で2時間程たった。

最後と思われる書類にサインをいれる。


「ふー、これで終わり?」

「はい、こちらで最後になります。お疲れさまです、初めての執務でしたがいかがでしたか?」


書類を纏めながら聞いてくる執事は、何処と無く楽しげだ。

仕事の出来は悪くはなかったのかな?

まぁ前世の賜物なんだけどね・・・。


「んー、まぁ思っていたよりは難しくないかな。領地を取り扱う仕事だし、もっと面倒だと思ってた。」

「然様ですか。でしたら良かったです。常時はこの度より量は少なくなりますが、秋の収穫時期には倍に増えますので。」


(今日の仕事って普段より多い方だったのか。)


「ふぅん。収穫の時に仕事が増えるのは、父上がそうだったから分かるけど、他は何かあるの?」


金銭以外に麦や収穫物での税の支払いがあるから、収穫量を把握してないとちょろまかされたりするからなぁ。

その年の出来によっては増やしたり減らしたり調整しなきゃいけないから仕事が増えるのは納得出来る。


(他に突発的に増える仕事って何だ?事故とか?病気か?)


「そうですね、町中でおおきな事故や事件が起きた場合、ここでは領主であるウィリアム様が調停を行います。病気が流行った際には都から医者を呼ぶのですが、その頃合いや人数、受け入れ先や給金を決めねばなりません。新たな催しがあれば立ち会い、新たな商品や技術が出来れば販売や使用の許可にウィリアム様の証印が必要になります。この村には冒険者ギルドはあっても、商会ギルド及び技術ギルドはありませんから。他にはーーー」

「え、ちょっと待って、冒険者ギルドあるの?!」

「?ええ、ありますよ。この村は竜が住まうルヒルの高山のお膝元ですから。」


さも当然と語る執事は何も不思議な事はないと言う顔をしてるが、俺にとってはとんでもない事だった。

危うく話が長いな・・・。とか思いながら聞き流す所だった。

このチートもない異世界転生にきて、ワクワクドキドキはないが穏やかに暮らせそうだなとか思っていた所に、まさかの村に冒険者ギルドがある発言。

あると言う事は、逆に考えればこの村には必要と言う事じゃないのか?

まさかの周辺一体の森に魔物が跋扈している説?


(まじかよ、力がないとここって危ない感じ?)


そんな俺の不安そうな感情を読み取ったのか、執事は穏やかな顔で言う。


「大丈夫ですよウィリアム様。森に住まう魔物は我々でも倒せる小物ばかりですし、村まで来る事はありません。この村には魔物除けの魔法がかかっていますから。」

「そうなの?」

「はい。それに冒険者の方が目的としているのは森の魔物より高山の魔物です。それとルヒル山にある高価な草花や鉱石の類ですね。朝食でお飲みになったルヒルベリーもその一つです。」

「そっか・・・。」


安心した様に息を吐くと、執事は面白そうにきいてきた。


「ウィリアム様は魔物を狩りに行きたいとは思わないのですか?戦ってみたい、等も。」

「思わないよ。俺の腕前知ってるだろ。魔法も剣も特別得意じゃないのに戦っても死ぬだけだよ。」

「過ぎた事を言いました。お許しください。」

「いいよ・・・別に・・・。」


少しふてくされたように言うと、すぐに謝ってくる。

しかし頭を下げても、背の高い執事の顔は座っていても見える。


(笑い隠せてないぞこいつ・・・。)


はぁ、と再び息をついて、そう言えばと地図の事を思い出す。


「まぁいいから、地図見せてくれない?」

「かしこまりました。」


そう言いうと、部屋の本棚の一番上の長く大きな箱を取り出す。

そこでコンコンとノックの音が響いた。


「ウィリアム様、お茶をお持ちしました。」

「あぁばぁやか、入って。」


扉を地図を持った執事が開けると、そこにはばぁやがポットやカップが乗った木製のワゴンをたずさえた姿があった。


「失礼いたします。・・・あら?」


入室したばぁやは机をみて不思議そうな顔をする。


「お仕事はどうなさったのです?」

「終わりましたよ。ウィリアム様は優秀でいらっしゃる。」

「まぁまぁ!初めてでは午前中いっぱいはかかると思っておりましたのに!素晴らしいですわね!」

「はい。特に計算が早く、処理も的確でした。お兄様方は旦那様のお手伝いをされておりますが、ウィリアム様は特に教師もつけておりませんのに此の様に早く終わるとは。」

「大旦那様に似て、才覚がおありですのね!」


執事とばぁやが嬉しそうに話している。

その間もばぁやは手を止めずにお茶を入れている。


(何と言うか誉め殺しだ・・・。)


違うんです。前世の賜物なんです。とは言えずに微妙な顔で淹れられるお茶を眺める。

確かに新人に同じ事は出来ないだろうがそこまでだろうか?


(過剰評価は後が恐いなぁ・・・。)


品を失わない程度に楽しげに話す二人を眺めながら、ばぁやのお茶を飲む。

出されたお茶請けのクッキー?の様な物をかじりながらこの話題早く終わらないかなと考えていた。


取りあえず執事は地図くれ、地図。


ぶすくれる、とかこうとして変換がでないのでググってみれば方言だそうで。

しらなかったなぁ。

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