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平凡貴族は僻地で暮らす!  作者: 六さん
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1日目・状況確認は大事だぞ、俺

主人公は少しばかりこの状況に困惑しているようです。

当たり前ですね。

とりあえずーーー自分の事を思い返してみる。


”僕”は田舎貴族の三男坊、ウィリアム・ワミード・ザウバア

ウィリアムが名前。

ワミードが建国当初からある貴族だけが名告れる古い貴族の証し。

ザウバアが家名。

男爵家。

"僕"は家を継がないから1つ下がって准男爵。


兄が二人に姉が一人、妹も一人。

”僕”と妹は後妻の子。

兄達と姉は前妻の子。

兄弟仲は悪くない。

母上と兄姉の仲も。


”僕”は今、家の領地のはじっこにいる。

なぜなら貴族の習慣通り16歳で成人して独り立ちする事になったからだ。

今は男爵だが建国当初からあるおかげで、ザウバア領は辺境近いが広い。

だから"僕"は領からは追い出されずに領地のはじっこに自分の領地をもらった。

准男爵だから一代限りの領地だが、貰えるだけありがたいんだろうな。


”僕”の領地の名前は竜の咆哮が聞こえる村、ルヒル村だ。

それなりに広い村だが、周りを山脈と森と崖に囲まれる僻地中の僻地だ。

近くに母の生家であるボハイラ家の領地が湖を挟んである位。

山の標高は高く、その頂きには竜が住む。


そうーーーこの世界には竜がいる。

魔物もいる。

魔法がある。


そんな世界に”僕”であるウィリアムは生まれ育った。


一方俺は何の変哲も無い日本人で、ブラックとは呼べないがホワイトとも呼べない企業で働くおっさんサラリーマンだった。

だったーーーはずなんだが。

(生まれ変わるにしてもいつ死んだんだ・・・俺は・・・)

自分の死を覚えていなかったが、覚えていた所で死因にトラウマ抱いても嫌だし、とそれ以上思い出そうとするのはやめた。

(それより、これからどうするかなぁ・・・)

幼い頃からの不思議な夢は前世の記憶として、”僕”も”俺”も自分だという意識がある。

しいていうなら人生経験が倍程ある”俺”の割合が多い気がする。


(まぁいいか・・・、それより異世界転生ってもっとこう子供の頃に記憶が戻るとかさ・・・)

最近は仕事が忙しくて全く読んでいなかったが、"俺"はそういう小説を嗜んでいた事がある。

気軽に読める文字量やその形態、チープでテンプレな所が好きだった。

だから思っていた。


子供の頃から努力して、神様に会って、とんでもない事が起きて、チートで、ハーレムで、ドキドキ冒険ワクワクウハウハじゃないんですかー!?と。

こんな辺境近くの貴族で、山脈や崖や森を含むから広いけど使える土地はそうでもない村の領主になって、しかも記憶が戻るのは成人してから!

魔法はあるけど特別得意じゃないし、剣も同じく。

領主だから冒険者にもなれない。

こんな僻地の領主が爵位上げようと思ったら戦争で手柄あげるかとか、疫病止めるとかしかなくない?

戦争の気配はここんとこないし(周りは同盟国ばかり)、病だって城勤めの魔法薬師が薬作った方がずっと早い。


(内政チート出来る程の知識も無い・・・・出来る事なくね・・・?)


よくある石けんだの何だのを作る知識なんかねぇよ!

料理だってそんなに上手くねぇわ!

と思いながらもんもんとしていると、ふと、壁にかかる鏡が目に入った。


(はっ!チートが無くてもハーレムはどうだ?!)


鏡の前に立つ。

前世の様な鏡ではなく、銅鏡のような金属を磨いた物だったがしっかり自分の姿が映る。


(うん・・・ハーレムもないな・・・この顔ではない・・・知ってた・・・)


別段不細工でもないがイケメンでもない。

稲穂の様な母譲りの金髪に、父譲りの若草色の瞳。

しかしどうにも母方の祖母に似た、良く言えば穏やか、有り体にいえば子供っぽい顔立ちだ。

16歳になってもどうもお坊ちゃん臭が抜けないモブ然とした佇まいだ。


(これは、大人しく僻地で領主してろってことですか神様・・・)


これはもう大人しくしてるしか無いなぁ、なんて思いながらベッドに座り直した。

するとコンコンとドアをノックする音があった。

それに”いつものように”返事を返す。

入室してきたのは世話係のばぁやだ。


「お早う御座います。坊ちゃん。」

「坊ちゃんはもう止めて欲しいんだけど・・・。」

「あらあらそうでしたわね、ウィリアム様」


ほほほ・・・とばぁやは微笑ましそうに笑ってる。

何人か実家から着いて来てくれた使用人の一人だ。

生まれた時から世話になっているだけあってあまり強くは出れない。


「さぁウィリアム様、お着替えなさいますよ」


ばぁやがそう言うと、すすす・・・と使用人達が入ってくる。

カーテンを開いて、服を用意して、洗顔の用意をする。

それに俺が答えるように支度をしていく。

着替えを手伝われている辺り子供扱いじゃ・・・と一瞬思うが、貴族なんてこんなもんか・・・と思い直す。

可愛がられている自覚はあるが、暫くすればこの扱いも治まるだろう。


(治まる・・・よな?)


「ウィリアム様、朝食はどうなさいますか?」

「しっかり食べるよ。今日は外を見て回りたいし・・・。」

「そうですわね、村民・・・いえ領民達にウィリアム様のお顔を覚えてもらわねばなりませんものね」

(そういうつもりじゃなかったけど・・・)


ただ転生先が見てみたかっただけ、とは思ったが口には出さず、1つ頷いておく。

着替えも済み、朝食の席に向かう途中で今日の予定を確認しておく。


「今日は外に行く以外に何かすることあった?」


そう俺が言うと実家にいた若い方の執事がよってくる。

まだ二十代後半だが忠実なことはよく知っている。


「ウィリアム様、いくつか執務がございますので午前中は執務室にて書類を片付けましょう。ですので領内を検分いたしますのは、昼食後の午後からになります。」

「そっか、執務か・・・。さっさと終わらせないとね!」


とは言ったものの書類って何だ・・・そして朝食はなんだ・・・パンか・・・・と、やや朝食多めに思い描きながら食堂まで歩く。

そんな会話をしてから、考えながら歩いていたせいか、俺の様子を見て微笑ましげに眺めている二人いた。

が、なんだか気まずいので気付かない振りをした。



”僕”の記憶が消えた訳ではなく、混じり合っているおかげで転生した事はそこまで悲観していません。

だってどっちも自分だし。

お仕事に関しても前世があるし何とかなるだろ、とおもってるウィリアム。

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