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Episode 95

「うわ!!!シカさん!!!!全然少しだけではないじゃないですか!!!!!」


合流したアンジュは俺を見るなり漫画の様なリアクションを取った。

どうやら俺の左耳からは結構な量の血が出ていたらしい。

そりゃあ自分で自分の耳は見れないけどさ……。


「簡単な応急処置しか出来ませんがしゃがんで下さい!今治療を……ってシカさん!!!耳が千切れてますぅ!!!!!!!」


耳元でうるさい……。

頭にキーンと響いた。


「そう言えばそんな感覚があったな。」

「えぇ!!?とてもアッサリしてらっしゃるぅ!!!うわぁ……見れば見る程痛々しいです……。」

「気持ち悪いなら自分で治療するから。」

「いえ!大丈夫です!忘れたんですか?もっと酷い怪我も治療したんですよ私は!ドヤァ」

「あぁアンジュが俺の裸を覗いたヤツか。」

「ちょ!!!まっ!!!!!シカさん!!!!!!!」


思いっ切り背中をシバかれる。

怪我人を叩かないでくれ……。


「でも……無理しないで……とは私が言える立場じゃないですけど、シカさんはいつも凄く心配になります。」

「そうか……すまないな。」


応急処置を受けながら微妙な空気になる。

こういうのは苦手なんだ……。


「はい!おしまいです!!これならヘルメットを被っても痛くないでしょう!」


喪失した部分をガーゼとテープで圧迫してくれた。


「ありがとう。世話を掛けるな。」

「いえいえとんでもない!だって私は"最強の相方"ですもんね!?」


今までにない位の満面の笑顔だ……。


「ね!?シカさん?"最強の相方"ならこれくらい当然ですよね?だって"最強の相方"ですからね!!?」


勢いとはいえ変な事を言ってしまった……。


「あぁ……そうだな……。」

「はいもう1度言って下さい!私は"最強の相方"だと!!!」

「…………。」


これは逃げられそうにない……。


「アンジュは俺の…………ョウの相方だ。」

「シカさん!!!肝心な部分が発音出来てないです!!!"最強"ですよ?"サ・イ・キョ・ウ"!!!はい!」


あくまでテストで100点を取った子供の様な笑顔で追撃するアンジュに俺も少し吹っ切れる。


「あぁ!間違いない。アンジュは俺の"最強の相方"だ!!」


本当にそう思う。

アンジュのこの特別な力は、CIAに就活に行っても即採用されそうな程の精度だ。


「わーい!!やったぁ!!!よしよしよし!!」


全身を使ってのガッツポーズ。


「喜ぶのはまだ早いぞ。本来の目的はこれからだ。」

「そうでした……。あ~みんさん!今行きます!!!」


次に向かうは秋葉原だ!


バイクに戻る途中に白ウサギから連絡が入る。


「やぁ元気かい?そっちは無事に終わった様だね。」

「お陰様で。身体の1部を数g程落としたけどな。」

「何の事だい?」

「……気にするな。それより何か用か?」

「そうだね。僕は貴方を急がせる話をしなくちゃならない。実は春鳥の奴等が動き出したんだ。」

「本当か!?何の為にだ?」

「恐らくは名屋亜美を回収する為だと思う。奴等にとっては余計な事を知られてるかもしれない危険人物だからね。助け出されると困るんじゃないかな?」

「それで急げと。」

「まぁそれだけじゃないんだ。実はね、鏑木会にも名屋亜美の居場所をタレコミさせて貰ったよ。」

「何故そんな事を!現場を無茶苦茶にしたいのか!?」

「僕にとって最悪なのは春鳥に名屋亜美を取られる事。そうなればこのゲームは僕の負け。それは避けたい。だからその可能性を少しでも減らさせて貰ったまでだ。」

「パートナーとか言っといて俺は只のコマかよ。」

「怒らないでよ。保険を掛けるのは至極当然の事じゃないか。それに現状では貴方が1番早く現場に着く計算だよ。このまま急いでくれれば支障は無い筈だけど。」


この野郎……。

でもそうと分かれば今は言い争ってる暇はない。


「後でシバいてやるから覚えとけよ。」

「ふふっ。お手柔らかに頼むよ。それに言い忘れたけどね、僕が情報を流したのは鏑木会の最高顧問"神崎"率いるグループだ。」

「…………。」

「因みに彼等は名屋亜美とも面識があるんだ。」

「何だと!?どういう事だ?」

「だから貴方がミスっても多分大丈夫だから安心してよ。それじゃーね!」

「あ!お前!!!」


通話は切れる。

何故かいつも余裕の態度が気に障る奴だな。


「シカさん。何かトラブルでしょうか……。」

「いや大丈夫だ。しかし少し急がねばならない事になった。」

「それはシカさんが……また危ない目にあったりする事ではないでしょうか……?」

「俺の事は心配するな。名屋亜美を助けたいんだろ?なら兎に角急ごう。」

「はい!ありがとうございます!」


ここから秋葉原までは然程遠くはない。

10分もあれば行けるだろう。


鏑木会が名屋亜美を助けられれば大丈夫?奴等は彼女を知っている?

お前の情報だって何処まで正しいか分からないし、奴等だって今はバルトリと組んでるんだ。信用はならないぞ。


インターカムで何かを叫んでいるアンジュを無視してバイクを飛ばす。

向かうは繁華街から少し外れた雑居ビル。

駅付近から離れると、未だあの街もディープな雰囲気を残している所がある。


現場に到着すると、辺りは殆ど人の気配の無い寂れた路地だった。

幸いにも俺達が1番乗りらしい。

ビルの前に2人で堂々と立つ。


「どうだ?この辺りは静かだから中の音は聞こえるか?」

「はい……聞こえます。ゲームをやっている音。そして啜り泣く声。間違い無くあ~みんの声です。とても悲痛な声で、私も悲しくなってしまいます……。」

「位置は分かるか?」

「はい。5階のここから見て右側のエリアです。」

「分かった。ありがとう。では作戦の確認だ。俺が何とか見張りを無力化して名屋亜美を連れ出す。アンジュは建物内の安全な場所から指示をしたり、周りの変化の情報を伝えてくれ。何度も言うが名屋亜美に会わせてやる事は出来無い。すまないが……。」

「らじゃーです!会えないのは残念ですけど、シカさん……あ~みんさんをよろしくお願いします!!」

「御意!」


念の為に罠をチェックしながら進むが、それらしい物は無さそうだ。

連中もここがバレてるとは思って無かっただろう。

侵入者を迎え撃つ準備はされていない。


「こちらアンジュです。私は1階の裏口側に待機しています。相変わらずゲームの音とあ~みんさんの声が聞こえています。」

「了解。」


俺は西側階段の3階付近をゆっくりと登っていた。

中央にはリフトもあったが、それを使う程馬鹿ではない。


4階を過ぎた辺りから俺にもゲームのBGMが聞こえてきた。

全く呑気な野郎だ。


しかしこちらの足音も相手に聞こえる距離になって来た。

階段を登る脚にも緊張が走る。


カラカラカラカラ!!


そんな事を考えてる矢先に、落ちている破片を蹴飛ばして階下に落としてしまった。


「¿Hay() alguien(か居るの) ahí()?」


やっちまった。


男が近付いて来る足音がする。


「シカさん大丈夫ですか!?」


2回ノックする。


「あぁ!どうしましょう!!!」


何故アンジュが1番慌ててるんだ?

まぁやっちまったもんは仕方が無い。

このまま押し切る!!

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