表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
92/146

Episode 90

為す術もなく時間は無情にも経過していくが、昼も過ぎた頃に映像に変化が起こった。

名屋亜美が微かに動いている。どうやら目を覚ました様子。

取りあえず胸を撫で下ろす。


「あ~みんさん!!!頑張って!こっち来て!!こっち!!!」

「アンジュ……ここで叫んでも声は届かないヨ……。」


アンジュも加わり3人でこの中継に(かじ)りついている。


「あ!そうですよねw」


恥ずかしそうに笑う。どうやら本気で話し掛けていた様だ。


「これで事態が好転すれば良いのですが、何分これだけの痕跡を晒しておきながら誰にも居場所を掴ませない誘拐犯達は、こんな事は想定済みか寧ろシナリオ通りかもしれません。」


業界切ってのハッカー達でさえ、未だ彼等に辿り着けずに居る。


「見てるだけってのも凄くもどかしいモンだネ……。」

「私も早くあ~みんさんを助けに行きたいです!でもシカさんからも連絡無いですし……。」


ユージーンは何やってんだか。

まぁアイツの行動が掴めないものいつもの事だけどネ。


中継動画の中では名屋亜美は体を起こし、辺りを確認している様だ。


「あ~みんさん……。お願いします神様!あ~みんさんを助けて下さい!!」


天に向かって祈りを捧げるアンジュ。


「それは何の宗教なんだヨ……。」


その様子は色々な宗教の祈りのミックスとなってしまっている。


「あっ!姐さんに杏珠さん!!画面見て下さい!」

「何だヨ…………。えっ??」

「うわ!!あ~みんさん!!!!」


映像は暗転し何も映していない。


「何かトラブルかネ?」

「壊れちゃったんですかー!?」

「待って下さい!右下のカウントダウンは続いています。」


真っ暗な映像に切り替わったが、右下で減り続けている数字は表示されている。


「これは意図的なモノですね。映すとマズイ事でもするんでしょうか。」

「チョット!変な事言わないでヨ!」

「あ~みん……何かされてしまうんですか?」


涙目のアンジュ。


「いえ……すみません。自分は只、亜美さんが起きてしまったのが想定外だった為、また眠らせに犯人達が部屋に入る必要があったのかと……。」

「まぁ確かに十中八九連中が部屋に入るんだろうネ。流石に自分達の姿は晒したくないだろうし。」

「ブツブツブツブツブツ…………。」


アンジュは相変わらず謎の祈祷を捧げている。


その祈りが効いたのか、その後中継は15分程で何事も無く再開された。

薄暗かった部屋には明かりが灯り、名屋亜美の口元のテープは外されている。

やはり部屋に入り、何か会話をしたのだろうか。

しかし彼女は歩き回り、脱出口でも探している様な素振り。

どうやら常時監視されている事には気付いていないらしい。


そして画面下には新たな字幕が表示される。


「やっぱりユージーンの誘き出しが確定したネ。でも何だろう?単語の羅列の様だけど……。」

「えぇっと……。Sicarius, Moment, Allvis, Saucers, Mousedriver, Tempes, Horamですね。暗号でしょうか?」

「アンジュは何かピンと来るモノ無いかネ?亜美に関係する事とか。」

「それがぁ……私ぃ……こう見えてもぉ……。」


目が泳いでいる。


「英語はからっきしで!!!」


見たまんまじゃないか!

しかも単語は英語だけでもないしネ。


「あ~みんさんに関係する事…………。も特に無いですw 英語も喋れるとは聞いた事無いですし。」

「そうしたらやっぱり暗号しかないヨ。ユージーンには分かる様に出来てるのかネ?」

「アナグラム……って可能性ありませんか?」

「あなぐらむ???」

「それだヨ!!入れ替えたらメッセージになってるんだ!」

「ちょっと考えてみましょう!」

「あの……あなぐらむって…………?」


取りあえずアンジュは置いといて、紙とペンを用意し、ガルディアンと解読を試みる。


「あぁ私完全に無視されておるぅ~。悲しみあるぅ~。」


ごめんネ、アンジュ。でも外国語が分からないとこれは無理だと思うから。

ワタシとガルディアンは数ヶ国語に精通している。

ユージーンなんて何ヶ国語を知っているのだろう……。相当多い筈だけど……。


答えは出ないまま30分程が経過する。

一応アンジュにも説明して考えて貰ってはいるが、独り言を言っているだけで何も書き出せていない。


「あぁぁ!!分かんねぇ!」


先に音を上げたのは意外にもガルディアンだった。


「まずどの言語をベースに考えれば良いかも分からないですし、これは相当難易度高いですよ!」

「そうだろうネ。ユージーン以外に知れたら元も子もないだろうし。」

「兄さんは本当にこれ分かるんですかねぇ?」

「さぁ……?でもじゃないと成り立たなくなるよネ。ワタシにもさっぱり分からないけど。アンジュは?」

「私ですか!!?そのぉ……あのぉ……全然分からないですw」


やっぱネ…………。


そんな時にワタシの携帯が着信を知らせる。

皆が使っているSNSからの音声通話。

しかし相手が……。


「Unknownって…………。」

「どうしたんです姐さん?誰からなんです?」

「それが見てヨ。こんな事ってある?」


明らかに不審な着信に応答出来ずにいるが、未だ鳴り続けるその画面を見せた。


「こんな表示初めてだヨ。それにこのアプリって友達承認してないと音声通話出来ないハズだよネ?」

「確かに今まで見た事無いですね。」

「うわ!何ですかそれ!怖いです……。」

「取りあえず出てみるかネ……。」


応答をタップする。


「こんにちはミディア。」


若い男の声。日本人だ。


「誰だヨ。」

「そんな怖い声出さないで欲しいなぁ。僕はLepus(白ウ) Albus(サギ)って言ったら分かるよね?」


コイツ……白ウサギか。

確かトミオカの知り合い。

凄腕のハッカーだけど直接のやり取りはトミオカに任せ、人前に姿を現さない謎の多い人物。

彼の情報力は凄まじい物があるけど、ウチとは畑違いの為関わってくる事は無かった。


「アンタか……ならこんな風に電話してくるのも容易いのかネ……。でもこんな忙しい時に何だヨ。下らない事ならまたにしてくんない?」

「まぁそう邪険にしないで。何せ僕の用事は貴方達が今目の前で悩んでる事についてなんだからね。」

「何!?アンタも関わってんの?」

「そうだね。でも安心してよ。何方かと言うと貴方達の味方側だから。」

「へぇ……じゃこの暗号でも解いて教えてくれんのかネ?」

「それが残念ながら僕にもまだ分からない。でも名屋亜美の監禁場所は現在解析中。恐らくそれ程時間は掛からない。相手も相当出来る奴だけど、この僕には及ばないみたいだしね。」


業界のハッカー達がお手上げ状態の中この自信。

やっぱり世界に名が通っているコイツは格が違うのかネ。


「まぁそれは追い追いの話として本題は、今そこに僕の新しいパートナーが向かっている。彼はまだそのメッセージを知らないので教えてあげてほしい。」

「誰が来るってのさ。」

「きっと彼なら解ける筈だよ。いいや……彼にしか解けないかもしれない。」

「どう言う事?」

「解けたら僕にも知らせて欲しい。じゃ任せたよ!」

「あっ!チョット!!」


通話は一方的に切られてしまった。


全く!一方的な男は女にモテないヨ!!


「誰だったんです姐さん?」

「どっかのクソ野ウサギさ!」

「???」

「それよりお客さんが来るってヨ。手厚く歓迎してあげなきゃネ。」

「姐さん……それは"どっち"の意味ですか?」


ガルディアンの顔が強張る。


「ハァ……ホントに味方である事を願うヨ…………。」


溜息がまた出る。

色んな事が交錯するこの状況に頭が混乱しそうだヨ。


「うぇ!!?マジで!!?ねぇ!ミディアさん!?」


ストリートの監視カメラのモニターを1つ見てアンジュが叫ぶ。


「何だい?」

「このカメラの映像もリアルタイムなんですよね?」

「そうだヨ。ここにあるの全部そう。」

「ほらこれ見て下さい。そのお客さんって…………。」

「え!?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ