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Episode 88

突然アンジュが叫んだ。


「お隣の方は気付かれた様ですね。」


確かに横たわる女性が見えた。

でも名屋亜美!?


「こんな不鮮明な映像じゃ人違いって可能性は……。」

「いいえ私が間違える筈はありません。あ~みんさんなら人ゴミの中からだって一瞬で見つけ出す自信がありますから!」

「私からも断言させて頂きます。その映像の中に居るのは名屋亜美さんです。」

「動かないけど彼女は生きてるの!?」


その時突然この部屋のドアがノックされる。


「姐さん!緊急の速報です。入っても大丈夫ですか!?」

「何だいこんな時に!早く要件を言って!」


ガルディアンが慌てて入って来る。


「ヴィジランテから情報提供が…………って姐さんの所にも来てましたか。」

「ガルディアンも来た様ですね。では私から皆さんに説明しますので、スピーカーにでも切り替えて貰えますか?」


全員デスクに集まり一斉にアドミンの説明を受ける。


「まず状況から説明しますと、名屋亜美さんと言う方は生きています。誘拐され監禁されている様です。場所は分かりません。犯人達は情報の扱いに長けている様で、尻尾を掴ませてくれません。」


もしかして亜美はパラダイムに居た!?

ならミーナ達を殺したのと、この誘拐犯は同じと言う事になる。


「何の為?」

「間違いなく"誰かさん"を誘き寄せる為のエサでしょう。」

「兄さんでしょうか!?」

「それ以外無いでしょうね。彼等はハンター達で今日パラダイムを襲ったのと同一人物。そこで名屋亜美さんが捕まったとなれば、私共の目撃情報とも一致します。」

「そんな……だって彼女は関係無いじゃない!」

「私の……せいですね…………。」

「アンジュ!」

「おや?お隣の方はもしかしてシカリウスと名屋亜美さんの知り合いでしょうか?」


電話越しでも伝わるコイツのニヤけた態度。

何処まで知っているのヨ。


「私のせいであ~みんさんは巻き込まれたんです。どうしよう……助けに行かなきゃ!」


不意に部屋を飛び出そうとするアンジュを引き止める。


「落ち着いてアンジュ!」

「止めないで下さい!あ~みんさんが危ないんです!!私が助けないと!」

「だから落ち着きなさい!助けに行くったって何処に行くのヨ?」

「それは…………探します!!」

「バカな事言わないで。こんな映像だけで場所が分かるワケ無いヨ。」

「じゃどうしたら……。」

「だからみんなで解決策を考えましょう。とにかく無闇に飛び出したって何にも出来ないヨ。」

「そう……ですね…………。」


冷静になった様だけど浮かない顔。


「自分は別の方面から情報を探してみます。」


ガルディアンが部屋を出て行く。


「アンタもホントに他の情報は知らないのアドミン?」

「残念ですが今はこれだけです。」

「そうか……ありがとネ。」

「お礼ならヒロさんに。それではまた……。」


アドミンとの通話も終える。

後は…………。


ダメ元でユージーンにもメッセージを送る。

でもアイツはこんな時いつも未読無視するんだよネ……。


「シカさん……。私が自分勝手なのは重々承知していますが、あ~みんさんが捕まってしまいました。もし出来るなら連絡を下さい。協力をお願いします。」


アンジュも同じ考えらしくボイスメッセージを送っていた。


「ユージーンは期待しない方が良いヨ。」

「ダメでしょうか……。でも他に私何をしたら良いか……。」

「今は待つしか無いヨ。映像が広まればまた新たな情報も入るかもしれないし。」

「待ってるだけですか……。」


今も流れている映像を見つめ悲しそうな顔。

アンジュのこんな顔は見たくないヨ。

仕方無い……気でも紛らわせてやろうかネ。


「只待ってるだけもつまらないから面白いモノ見せてあげるヨ。ベッドルームに行こう!」

「何でしょう??」

「良いからおいで。」


ベッドルームに入り、クローゼットの中から秘密の金庫を引っ張り出した。

鍵を開けそこからあるモノを取り出す。


「パスポート……ですか?日本の物ですね。」


もうすっかりくたびれてしまったパスポート。


「そうだヨ。もう失効してるけどネ。でもこの持ち主にきっとビックリするヨ!」


パスポートをアンジュに手渡す。


HOMICIDA(ほみしだ) EUGENE(えうじね)さん?しかも可愛い外国人の男の子ですね!この子日本人なのですか?」

「まぁまぁそれは置いといて、漢字のサインがあるよネ?」

「えぇっと……難しいですね……。御路多悠仁(おみちだゆうじん)さん……でしょうか?」

「誰だと思う??」

「え!?私の知ってる方ですか?」

「ワタシ達が良~く知ってる奴だヨ。」

「おみちだゆうじん……ユージン……ユージーン!!!シカさん!!?」


御路多悠仁オミチダユージーン


「正解~!」

「シカさんの子供の頃の写真ですか!?めっちゃ可愛い!!!」

「だよネ!!?でも今じゃあんなに憎たらしい顔になっちゃって……。」

「ミディアさんとシカさんはこんなに小さい頃から知り合いなんですか?」

「いやいや。ワタシ達が初めて会ったのは十数年前だヨ。これはその時のユージーンの持ち物。アイツこれと銃1丁だけで日本に来たんだ。」

「その前はどちらに?」

「詳しくは話してくれないから知らないんだけど、銃器の扱いや、戦闘経験も豊富な事からどっかの戦場に居たんじゃないかと。」

「そうなんですか……凄い人生を送ってらっしゃったのですね。」

「それにネ……。ワタシ本名知っちゃったから興味本位で調べてみたんだヨ。そしたらこの"御路多悠仁"って子は20年くらい前に、海外で事故に遭い亡くなってたのヨ。」

「えぇ!!?どういう事でしょう???」

「さぁてネ……ユージーンが只そのパスポートを入手して持ってただけって可能性もあるけど、ワタシが初めてユージーンをその名で呼んだ時のアイツのビックリした顔。それに唯一の持ち物が他人の、しかも亡くなった子のパスポートなんて……。」

「この写真もやっぱりシカさんの面影がありますもんね!」

「そう思う?ワタシもだヨ。だからワタシは本人だと思ってるヨ。」

「あ!!!!」

「え?どうしたの?」

「シカさんの誕生日…………。」

「あぁ7月4日だネ。ついこの間だヨ。」

「そんな……聞いても何も言ってくれなかったのに…………。」

「う~ん……。ワタシ達もこのパスポートを見て、昔サプライズで祝った事があるんだヨ。そしたらどうしたと思う?ユージーンのヤツ睨みつけて『余計な事はするな!』だってさ。」

「何があったんですか?」

「ワタシにも分からないけど、どうやら自分の誕生日が嫌いみたいだネ。だからそれからは何もしない事にしてるヨ。」

「そうですか……寂しい話ですね。」

「まぁ人にはそれぞれ事情があるからネ。」


元気付けるつもりがしんみりした話になってしまった。


「でも何故ミディアさんがシカさんのパスポートを持っているのですか?」

「昔チョットあってネ。ユージーンは紛失したと思ってるのヨ。でも今返したらきっとアイツ捨てちゃうと思うんだよネ。だからワタシが持っている事は秘密ネ?」

「はい分かりました!この可愛い写真を守る為にも協力しますw」


良かった。少し笑顔を取り戻したネ。

やっぱりアンジュは笑顔でなきゃ!

だから早く解決してあげたい。


ユージーン……頼むヨ…………。

アンタのせいなんだからネ…………。


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