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Episode 85

「只事じゃないネ?」

「はい、ハンター達が出没しました。昨夜雇った例のバーテンダーからの連絡です。」

「何て事!白昼堂々と……。」

「まだ何か事を起こしたとは聞いてませんが、何か仕出かす可能性は高いです。急ぎましょう!」


参ったネ。見誤ったヨ。

この展開の早さも、昼間なら大丈夫だろうと(たか)を括っていた事も。

まだ誰も警備に参加してない状態で、ワタシもガルディアンも居ないとなるとセキュリティは穴だらけ。

焦り過ぎた完全にワタシの采配ミスだヨ。


更に不幸にも車は渋滞に捕まる。


「だから首都高は嫌いなんだヨ!」

「これは時間が掛かりそうですね。困りました。」

「取りあえず電話で出来るだけ指示を出すヨ!店の営業は一切禁止。ワタシ達が戻るまで住人の外出も制限。特に情報屋達は身を隠す様に。」

「分かりました。自分も手伝います。」


ガルディアンも運転の合間に連絡を取ってくれている。

ワタシは…………。


「これはこれはミディアさん。あなたから電話して来るなんて驚きました。」


アドミン……。


「ワタシもアンタが素直に応答した事に驚きだヨ。ヒロは居る?」

「残念ながら近くには居ませんよ。」


ダメか……ワタシ達ではヒロへ直接連絡出来無いのは厳しいネ。


「アンタでも良い。チョットストリートがリアルにヤバいんだヨ。どうしてもアンタ達の協力が…………。」

「賞金稼ぎですね?知ってますよ。メキシコ系の3人チームの様です。」


コイツは……。

どんな情報網を持って居たら、こんなに素早く正確に知る事が出来るんだヨ。

スパイ衛星でも持ってるんじゃないかネ。


「なら話は早い。頼むヨ。今はアンタ達しか居ないんだ!」

「いやぁ手伝ってあげたいのはヤマヤマですが、ヒロさんの許可が出ないと下界には関われないんですよー。」


そんなウキウキした声で言われても……。


「分かったヨ。他の幹部に連絡するからネ。」

「別に良いと思いますが返って来る答えは同じだと思いますよ?」


カマかけてもダメか……。


「そんな薄情な奴等はもう知らないヨ!」


悔しさのあまりガチャ切りしてしまった。

負け惜しみみたいだネ…………。


あの娘にも伝えないと。


「もしもしアンジュ?今どこ?」

「あっ!!ミディアさんお疲れ様ですー!!!部屋に居ますよー?もう帰って来たんですか???」

「それがもう少し掛かりそうなんだヨ。ごめんネ。お腹空いてない?」

「お腹空きましたー!でも大丈夫です!ミディアさんが戻るまで耐えますので!!」

「ホントごめんネ。ところで本題なんだけど、特にアンジュの行動は制限して無かったよネ?でも今日はワタシが戻るまで絶対部屋に居て貰える?」

「あっはぁい!分かりましたぁ!何か……ん……か??」

「あれ!?声が突然遠くなったネ。アンジュ聞こえる?」

「はい……丈夫……ミディ…………ですか?」

「上手く聞き取れないヨ。とにかく出来るだけ早く戻るから。心配しないで。」

「了解……た!お待……て…………す!」


アンジュとの通話を終えても車は数10mしか進んでない。


「これは恐らく事故ですね……。遠くでサイレンの音も聞こえます。」

「何て悪いタイミングだろうネ。高速じゃ車を降りて向かう事も出来無いヨ……。」

「事故処理が終わるまでは殆ど進まないでしょうね。」


最悪…………。

八方塞がりだヨ。

時刻は午後4時を回ってしまっている。

何てもどかしさだろうネ!!


刻一刻と時間だけが過ぎていく中、ワタシ達は何も出来る事が無いまま、只ひたすらに事故処理が迅速に終わる事だけを祈っていた。


結局ストリートへと帰り着く頃には6時を過ぎてしまっていた。


「状況はどうなってるの!?バーテンからの連絡は?」

「それが4時過ぎから途切れてしまって……一旦ボラカイに戻りましょう。」


足早にボラカイへと急ぐ。

ストリートはいつもなら活気の溢れている時間に、ゴーストタウン(さなが)らに店も人も静まり返っている。

当たり前だ。昨日の今日でこんなに強い指示を出されたのだから住人は現実を知った事だろう。


ボラカイのネオンサインも今日は消えている。

その正面から入ると脇目も振らずにモニタールームへ向かった。

そこはワタシのオフィスとは別に用意してある、普段はガルディアンや雇われた監視員が使う部屋。

ストリート各所と了承を得ている店、蛇唆路の1部にも設置されている監視カメラ全てを見る事が出来る。


しかし部屋に入ってもそこに居る筈の例のバーテンダーが居なかった。

それに映し出されている映像の殆どが暗転している。


「一体どうなってるの!?」

「彼のベストとネクタイがそこに置いてあります。仕事を放棄した訳では無く、何かしら席を外す必要があったみたいですね。」


居合わせた従業員に話を聞くと1時間程前に突然出て行ったと。


映らないモニターといい何があったのかネ……。


「とにかく生き残ってる録画の中から連中の映っている映像を洗い出すヨ!まだこの場所に居るかもしれないしネ!」

「はい!今人員を集めて来ます!」


数は多いけど、ハンター発見の連絡は午後3時。

そこからワタシ達到着までの3時間ちょいを調べれば良い。

増援が到着する前に自分で検証を始める。


「あれ?おかしいネ……。録画を保存してあるサーバーにアクセス出来無いヨ。」


監視カメラは全てワタシ達で設置し、この店にあるサーバーとモニター達とVPNで繋がっている。

ネットワークが何かしらのトラブルを起こしている?


ホントに今日はツイてないネ……。

ガルディアンに見に行って貰おうか。


ネットワークの不具合はサーバーのトラブルに依る事が多い。

サーバーを直接確認してみれば何か分かるかもしれない。

しかし電話を掛けようとしても携帯すら圏外になっていた。


「この場所で一体何が起こってるんだい……。」


すると突然にカメラの映像が全て復旧した。


「姐さん!!彼が帰って来ました!」


ガルディアンが戻って来る。

傍らには監視役のバーテンダー。


「復旧した様ですね。ミディアさん。お目に掛かるのは初めてです。よろしくお願いします。」

「悪いけど自己紹介をしてる暇は無いんだ。手短に頼むヨ。」

「そうですね。では説明します。まず相手ですが恐らくメキシコ辺りか南米からのハンター3人組です。」


アドミンの情報は正しかった。


「最初現れた際には3人バラバラに行動していたので正体に気付きませんでしたが、同じ男を探していた事からハンターだと判明しました。」


その男って……。


「彼等が探していたのは情報屋の張と言う男です。」


やっぱり恐れていた事が……。

アレだけ派手にユージーンの事嗅ぎ回っていたら、目を付けられるのは当たり前だヨ。


「恐らく張の居所を突き止めたのでしょう。3人が1か所に集まりました。でもその時には監視カメラの存在にも気付いていた様で、カメラのデバイスに直接ジャミング装置の様な物を取り付けられてしまいました。」

「VPNの穴を突かれたネ。」

「はい……共有状態にある全てのデバイスにウィルスの様に拡散し、全ての通信を遮断されました。その副産物の電波妨害により、この辺り一帯の携帯電話の通信も不安定でした。これはそろそろ安定する筈です。」


最近のハンター達は情報戦にも優れているワケだネ。

全く…………手強いじゃないか。


「オレもここから遠隔で復旧を試みてたのですが、やはり装置を外さなきゃどうにもならない様で、直接外しに行き、その後サーバーとのVPN再構築を終えて今戻って来た所です。」

「じゃもしかして……。」

「申し訳ありませんが、ハンター達のその後の足取りは不明です。まだストリートの何処かに居るのか、とっくに去ったのかさえ分かりません。特に今日はミディアさんが外出禁止令を出されたので目撃者も期待出来無いでしょう。」


肝心の情報が…………。


「サーバーに録画は残ってないかネ?」

「いえ……オレも確認してみましたが、今日1日分の記録が飛んでいます。奴等情報の扱いもかなり心得てますね。」


それは残念だヨ……。

しかしどうしようかネ…………。

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