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Episode 82

チッ!チョットマズったネ……。


昼間はまだマシになったこの街も、夜となると話は違う。

ワタシ達でも把握しきれていない正体不明の輩が活動を始める。

それに外部からの密入者も100%は防げない。こんな街にワザワザ夜に訪れる奴は間違いなくヤバイ奴だ。

ヴィジランテでさえ夜にパトロールなどを行う際は、最低でもスリーマンセルで行動する事を義務付けている。


まだ急げば大丈夫だよネ……。


「これはこれはミディアさん。またお会いしましたね。何と言う偶然!」


あまり見たくなかったニヤケ顔の男が立っている。


「偶然なモンか。アドミン……アンタ待ってたんだよネ?」

「バレました……?」


白々しいネ!!


「さっきもクッサイ男共の手厚い歓迎ありがとネ。」

「さぁて……それは私の与り知らぬ事ですが……。」


ニヤケ顔に陰湿さがより一層濃くなる。


「で何の様かネ?」

「そんな邪険にしないで下さいよ。出口までお見送りしようと思っただけです。こんな時間じゃ不安でしょ?」

「アンタが隣に居る方が不安だヨ。」

「ハハハ!私だって本当はミディアさんがどうなろうと知ったこっちゃ無いんですが、ヒロさんがこの街の英雄を外まで護衛しろなんて言うものですから。」


ヒロ……もうツンデレは流行ってないヨ……。

まぁ自分と会った直後にワタシに何かあったら、流石に後味が悪いんでしょうけどネ。

でもコイツじゃなくでも良いじゃない……。


「理解して頂けたならさっさと行きましょう。私も夜1人で帰るのは怖いんでね。」


嘘付き。

アンタが護衛を連れてるのなんか見た事無いヨ。

この男の実力は誰も知らない。さぞ強いんでしょうネ。


アドミンと出口までの一本道を2人歩く。

不思議と人々はワタシ達を避けている。

きっとこの男が居るからだろう。


結局は何事も無く蛇唆路まで着いた。

まだ完全に陽が落ちてないのも幸いしたのだろう。


「さぁここから先は大した事無い連中しか居ませんから。大丈夫ですよね?」

「………あぁありがとうネ。一応礼を言っとくヨ。」

「礼なんて珍しいですね。もしかしてミディアさんツンデレだったり?」

「んなワケ無いヨ!」


このニヤケ顔が腹立つ!


「冗談ですよ。ではお気をつけて。」

「ヒロによろしく。」

「はい…………。」


鬼棲街から出て歩き出す。

蛇唆路の人間はボラカイから近いだけあって知ってる者も多い。

ここまで来れば問題無い。


「あぁそうそう!!」


またしてもアドミンが背後から叫ぶ。


人を呼び止めるのが好きな奴だネ!


「ミディアさんはこの街に現在何人の人間が住んでいるかご存知ですか?」

「ワタシ達の記録によると確か700人位だったかネ。」

「はぁ……やっぱりですか。」

「何だヨ!」

「2548人。」

「は?」

「今日の正午の時点での記録です。」


2548!?

何なのその数字は!3倍以上?冗談だよネ?


「もちろん蛇唆路の住人も含めてですが、今日久々に中まで来て随分と高い建物が増えたと思いませんでした?」


確かに……ヒロと屋上に居た時はまだ辺りはギリギリ明るかった。でもビルを出た瞬間にはまるで夜だったヨ。

それだけ遮蔽物が多くなってると言う事だネ。


「あなた方の知らない間にも人の流入は止まらず、彼等は勝手に建物を増築し住み始める。その数は多過ぎて私達でも現在止めきれていない。鬼棲街が数百人規模と言うのは今は昔の話ですよ。」

「何を言いたいのかハッキリして欲しいんだけどネ。」

「まぁ聞いて下さいよ。その住人の中の何人の素性が分かっていると思います?」

「そりゃホントにそれだけ正確な数を出しているなら、殆ど分かっているんだろうヨ。」

「いいえ……我々が把握しているのは1126人分。半分にも満たない。後は名前も何処に住んでいるのかも何をしに街へ来たのかも分かってないんです。」


半分以下!?じゃ逆にここに住んでる連中の事は全然分かってないって事?

それにここまでウチの記録と規模が違ったなんて……。

ワタシ達がやって来た事は何だったのヨ。


「分かりますか?あなた方が入口でしているお役所仕事は意味が無い。"管理"は私の方が精度が高いですから、あなた方に我が物顔されるのは気に食わない。」

「我が物顔なんてしてないと思うけど……。」

「少なくとも自分達がこの街にとって特別だと思っている。違いますか?」


それは否定出来ないネ……。


「でもワタシ達は外国政府からの保護を獲得しているし、住人の雇用も作っているヨ?」

「結局犯罪の温床になっているのは変わらないですし、あなたの言う雇用を得ているのは殆ど蛇唆路の住人ですよ。私共はあなた方の存在意義は感じていない。それを知って貰いたかっただけです。」


返す言葉が見当たらないヨ。


「それではまたお会いするのを楽しみにしています。」


律儀に90°のお辞儀をした後に見せたのはやっぱりニヤケ顔だった。

ワタシは複雑な気持ちを抱えながら今度こそ帰路に就く。


結構ショックな話だったヨ。

アドミンが嘘を言ってた可能性もあるけどネ。


でも真実なら?

ワタシがあれだけ書類と格闘しながらやってた事は間違っていて、しかもアドミンはその3倍以上の数を(こな)している事になる。


ワタシ達の存在意義……ネ…………。


それでもまだ止めるワケにはいかないヨ。

今は自分達を信じるしかないネ。

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