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Episode 78

「でも本当にシカさんの住んでる世界は私にとって別世界ですね!いや悪い意味じゃないですよ!?」

「リカは……。」

「はい何でしょう?」

「ここに来てもう俺の素性をある程度知ってしまっただろう?名前も……。」

「はい知ってしまいましたねw」

「詮索しないのか?俺の過去はリカが思っている以上に……。」

「しませんよ。」

「…………。」

「シカさんの過去がどうであれ、私の知っているシカさんが目の前に居る。私の信じているシカさんが目の前に居る。」


あぁ……この娘はいつもこうだ。

こういう事をサラリと言う。


「だから何も聞きません。」

「……そうか。」

「でももしシカさんが私に全部打ち明けたいと言うのなら、その時は心して聞かせて頂きます!w」


そんな時も来るだろうか?

でも俺の全てを話してしまったら、きっとリカとは一緒には居られない。


それも……選択肢の1つか…………。


「分かった!じゃあこんな何も無い所に居るより、下に降りてコーヒーでも飲まないか?」

「やったぁー!そうしましょう!!シカさんのコーヒー大好きです!!!」


飛び跳ねて喜ぶリカの姿を、俺は複雑な気持ちで眺めていた。

この無邪気さに俺は…………。


「お疲れ様です!兄さんに梨香さん!姐さんはまだ作業中です。」


またしてもすぐにディアンと遭遇する。

コイツは俺達の動きを監視でもしてるのだろうか?


「お疲れ様ですぅ!」

「あぁお疲れ。コーヒーでも淹れようと思っただけなんだが。」

「コーヒーですか?それならば自分が淹れますよ。」

「いや……。」

「兄さんが拘ってるのは知ってます。しかしこれでも姐さんには褒められるようになったんですよ?それにウチの設備なら自分の方が良く知っています。」


リカと顔を見合わせる。


「どうするリカ?」

「そうですねぇ~……。折角なのでお願いしましょう!」

「かしこまりました。淹れさせて頂きます。それとお食事はどうされます?軽食ですが。」

「う~ん……そんなに腹が減ってる訳じゃあないんだが……。」

「いえ!頂きます!!!!!」


リカの目はキラキラしている。


「アハハハ!では準備してきます。何処か適当にソファーに座っていて下さい。」

「ありがとうございまーす!!」


ディアンがキッチンへと向かう。


「あ!!!ディアン!!!リカのコーヒーは砂糖5杯とクリームたっぷり入れてくれ!」


その言葉にピタッと足を止めるディアン。


「マジですか?」

「大マジだ。」


複雑な表情で再びキッチンへと向かった。


あぁ分かるぞ。そんなに入れたらコーヒーを美味しく淹れても淹れなくても変わらないんじゃあないかと思うよな。

でもリカは意外と分かってくれるから!安心して淹れてくれ!


軽食とコーヒーはものの5分程で運ばれて来た。

リカの分は……軽食と言うには些か多いような……。


「朝食の件もありますからね。梨香さんはもっと食べるかと思ったのですが、これはおやつみたいな物なので控えめにしました。ではお召し上がり下さい。」

「わーい!頂きまーす!!!」


朝にどんだけ食べたのだろうか?

容易に想像出来てしまうのが何とも……。


「自分は仕事に戻りますので何かあったらお呼び下さい。」

あひがほうごはいまふ(ありがとうございます)!」


こらこら!そんなに口に物を詰めて喋るんじゃあありません!

どうやらこの癖は治りそうもない。


「兄さん?どうかしました?」


コーヒーを口に含み、浮かない顔をしていた俺に問い掛ける。


「……あぁ。何でも無い。」

「コーヒー口に合いませんでしたか?皆家族だと思って何でも言って下さい。」

「そうだな…………。じゃあやはり俺にもシュガーポットを持って来て貰えるか?」

「ハイ!?」


そんな天地がひっくり返った様な顔しなくても良いじゃあないか!


「マジですか?」

「大マジだ。」


今度は渋々といった表情で砂糖を持って来てくれた。


「自分のコーヒーはダメでしたか?」

「いや?美味いよ?只今の俺の気分だ。」

「そうですか……兄さんがコーヒーに砂糖を入れてるのを初めて見たので。」

「色々考える事があるからな。頭を冴えさせる為のもんかな。」


(もっと)もらしい言い訳だ。


「それなら良いのですが……。では本当に仕事に戻ります。」

「あぁありがとう。」

「ディアンさんご馳走様でしたぁ!」


もう食い終わったのか!!?

俺はまだ一口も口を付けてないのに……。


「ディアンさんのコーヒーも美味しいですねー!」


確かに腕を上げている。

散々ミディアに(しご)かれたお陰だろう。


「あとシカさん……いつも栄養剤ばかり飲んでないで食事もキチンとして下さい。」


一向に食事に手を付けようとしない俺にリカが苦言を呈す。


「あぁ……そうだな。ありがとう。」


確かに俺の悪い癖だった。

忙しくしていると食事を摂る事を忘れる。

と言うか腹が減らないのだ。そして思い出した頃に空腹に襲われる。

いつものパターン。


栄養は摂れる時に摂っておくに越した事は無い。

俺も食事に手を付け始めた。


何故だろうか?料理は好きだが、食べる事に関しては割りとどうでも良い。

自分でも変な性格をしていると思う。


そうこうする内にミディアが戻って来た。


「あら?お2人さんここに居たのネ。もう出来たヨ!」

「あ!!ミディアさんお帰りなさい!」


随分速いじゃあないか!

まだ1時間も経過していないと思うが……。


「大至急って言ったらすぐにバイク便で送ってきたヨ。まぁ情報は先に送っておいたし、写真と名前さえあれば発給出来る状態だったしネ。駐日代表機関もここからそんなに離れてないヨ。」

「あぁ!それでさっき私の写真撮っていたのですね?記念とか言って何の記念かと思いましたよw」

「ごめんネ。でも嘘じゃないヨ。あの時の写真はワタシの記念になったからネ。永久保存だヨ!」

「もう!ミディアさーん!」

「まぁ良いじゃない。それよりほら!パスポートだヨ!」


ミディアが緑色したそれをリカに渡す。


「わぁ!やったぁ!!ありがとうございます!」

「リカ……別に喜ぶ事じゃあないぞ?」

「えぇーそうなんですかー!?」


いやそうだろ。元の自分を捨てるのに。


「ちょっと待って!まだその名前で呼んでるの?もう"桑杏珠"になったんだヨ?呼ぶ時は"アンジュ"って呼ばなきゃ!オマエが決めたんだヨ?アンジュももうリカと呼ばれて反応したらダメだからネ?」

「はーい!ごめんなさーい。」

「はい!アンジュはよろしい。」

「……面倒臭ぇな。」

「そこの甲斐性無し!オマエはもっと協力しろヨ!」


怒られた。


「でも冗談じゃないヨ?運良く今アンジュの生死は曖昧になってる。このまま"堀井梨香"の存在が消えれば、本当に死んでいると思わせる事が出来るからネ。アンジュの身の安全に関わる事だヨ。」


そうでした。すいません。


「はい!呼んでみて。ユージーン!」

「ア……アンジュ…………。」

「はーい!シカさん!!」

「はい!良く出来ましたネ!アンジュは平気?」

「私はこう見えても一応役者をやっておりましてーw 役に入ったと思えば問題無いです。それより私、シカさんの事はシカさんと呼んでいても問題無いんですか?」

「うーん…………。その呼び方だったら問題無いと思うけどネ……。シカリウスとは呼ばない方が良いヨ。コイツは世界のお尋ね者だからネ。」

「何か……それ……カッコいいです!!!流石ですシカさん!!!」

「いや俺は迷惑しとるんだが……。」

「もしくはユージーンってのがコイツの名前だからそれで呼んだら?」

「だからその名前では呼ばない約束だったろ?」

「そうだったっけ?」


また(とぼ)けやがって。


「私もちょっと恥ずかしいのでやっぱりシカさんで///」

「まぁ好きに呼んだら良いヨ。コイツがどうなろうとどうでも良いしネ。」

「オイ!!」

「アハハハ!それは酷いですよミディアさんw」


そんな談笑をしている所にディアンが戻って来る。

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