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Episode 73

逃げる様に店を出ると、バイクを置きっ放しにしてあるホテルへと向かう。

この所の雨で動かす事が出来なかった。


ボラカイからものの30分で現地に着いたが、このまますぐに帰っても巻き込まれそうだ。

丁度近くに深夜まで開いているカフェを見付けたので、取りあえずそこで時間を潰す事にしよう。


「いらっしゃいませ!ご注文はお決まりですか?」

「えーと……カフェラテを1つ。」

「かしこまりました。砂糖はお入れしますか?」

「…………。」

「あの……お客様?砂糖は…………?」

「あ……あぁお願いする。」


何故砂糖入りをオーダーしてしまったのか…………。

まぁ最近では砂糖入りを飲むのも慣れて来てしまったが。


ボラカイを出て2時間は経っただろうか。

時刻は日が変わり始める頃になっていた。

流石にそろそろ戻らないと逆に怒られそうだ。


カフェを後にするとバイクで真っ直ぐ六本木へと戻った。

麻布通り近くの駐車場に停め、徒歩でボラカイに向かう。

この時間の表通りは人が減って来てはいるが、賑やかな往来が止む事は無い。これが一晩中続く。

変わって国際通りは深夜0時に閉まる店も多いので、通りの活気は少なくなる。

この時間はそれぞれのコミュニティの酒場で皆飲んでいるのが通例だ。


因みにクラブボラカイもまだオープンしている…………筈なのだが、今日はもう閉めた様だ。

それに裏口へと回り一直線にオフィスへと入るが、そこにはミディアもリカも居なかった。

2人して何処へ行ったのだろうか……。


斡旋所側には誰も居なかった。そうなるとクラブ側か……。

しかしおかしな事にそちらからも人が活動している気配が無い。

いくら早仕舞いしたとしてもまだ掃除やら片付けをしている筈だろう。

それにミディアとリカが俺に何も言わず外に出たとは考えにくい。居るならこの先しかない。


物凄く嫌な予感がする。こういう違和感を感じて何事も無く終わった例は無い。

それが的中するように、丁度クラブ側の領域に入った通路で黒服の1人が倒れていた。


「おい!大丈夫か?」


すぐに駆け寄り声を掛ける。


「う~~~~ん……。」


生きてはいるが、意識が混濁している様だ。薬でも盛られたか?

俺はその時には既に銃を抜いていた。襲撃の可能性を真っ先に考える。


警戒しながら先へと進む。この辺りから周囲に酒の臭いが充満し始める。

酒を飲む場なので当たり前と言ったら当たり前なのだが、その臭いの強さが異常に感じた。


進むに連れて床に横たわる従業員が増えて来る。

症状は先程の黒服と同じ。皆生きているのが幸いだ。


何があった!?

セキュリティーに関しては少し甘い所もあるが、そう簡単に侵入出来る場所でも無い。

それにこれだけの数の従業員を無力化出来るとは……。


やがてクラブボラカイのメインホールが見える通路まで辿り着く。

ここから見えるメインホールにも従業員が転がっている。

銃を握る手にもより一層の力が入り、身体は緊張していた。


そこにこの状況を作った者が居る……。

襲撃か何か知らんが、ボラカイとリカに手を出したのなら俺が全員殺してやる!


ホールの入口ギリギリで壁を背に立つ。

相手の正体が不明な以上俺が完全に不利だ。

奇襲により一瞬で制圧する必要がある。

周りの空気が張り詰めるのを感じた。

踏み込むタイミングは…………。


「そこに居るのはシカさんですよね!?やっと帰って来たぁ……助けてくださいぃぃ!」


リカ!!?無事なのか??

内容からするに拘束されているのだろうか。

しかしこうして俺に声を掛けられると言う事は、襲撃者はもうこの場に居ない事になる。

それともリカを囮としてどこかに隠れて見ていると言う可能性も……。


「ミディアさんがぁぁ!しっかりして下さいぃぃぃ!!!」


ミディアがヤバイ!?

もう考えてる余裕は無い!!!


その叫びに俺は陰から飛び出し、一目散に声のする方へと駆け出した。

目標はVIP用の区画にある1番大きなソファー。そこから声が聞こえた。

幸いにも襲撃者からの攻撃は無い。本当にもう居ないのだろうか……。


カーテンで遮られ中は死角となっているVIP席。俺は躊躇(ちゅうちょ)すること無くそこに一気に飛び込んだ。

そしてそこにある光景を目の当たりにして全身が大きな脱力感に包まれる事となる。


「リ~~カァちゃぁぁぁぁん!もう何で……ヒック!そんなに……ヒック!可愛いのヨォ……ヒック!」

「ミディアさぁぁん!近い!近い!物凄く近いですぅぅ!」


そこには酒瓶片手に全身でリカに絡み付くミディアの姿が…………。


「あ!シカさぁぁぁん!助けて下さい!ミディアさんが酔い過ぎてこんな事に……。」

「あぁん?シカさんだぁ!?ヒック!ユージーン!!!ワタシのリカから気安く呼ばれないでヨ!!!ヒック!」


今度は俺が額に手を当て、頭を抱える番となる。


「オマエお呼びじゃないのヨ……ヒック!ワタシとリカの仲を邪魔しないでよネ……ヒック!」

「シカさぁん…………。」


どういう状況なんだこれは???

確かミディアはリカに敵意を剥き出しにしていた筈だが……。

それにここにも転がっている従業員は一体……。


「すみません兄さん。一応は止めたんですが……。」


マトモな奴が居た。

ボラカイの古参の黒服、名をガルディアンと言う。

実質現在のミディアの右腕となっている。俺は彼をディアンと呼んでいる。


「ディアン。説明してくれるか?」

「はい…………。」

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