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Episode 69

ふと1台の車が入って来るのが見えた。

黒のマセラティ。降りて来たのは外国人風の男達。

彼等はそのままホテルに裏口から入って来る。


その光景を見た瞬間、新しいお茶を淹れてリカと談笑している大森麻衣に銃を向けた。


「リカ!ソイツから離れろ!」


2人して呆気に取られている。


「早くしろ!やはりこれは罠だ!」

「ちょっ!シカさんどうしたんですか急に。」

「外を見てみろ!春鳥の連中が乗り込んで来た!」

「!!!」


ビックリした様に大森麻衣を見つめるリカ。


「そんな……大森さん……?」

「ち……違います!私じゃない!!私は何も企んでません!!」

「じゃあ何だあの車は!?」


大森麻衣は窓の外を確かめに行き、俺はリカの側へと移動した。


「あの車は…………。間違いありません。ウチの関係者の車です。」


クソッ!この場でこの女を殺してやりたいが、きっとリカがそれを許さないだろう。

兎も角早く逃げないと、連中がこの部屋に辿り着くのはすぐだ。

この際リカが生きている情報が漏れるのは仕方がない。どうせいつかはバレる運命だったんだ。


「リカ!行くぞ!一刻も早く逃げないと連中に見付かる!」

「は……はい!でも大森さんが…………。」

「アイツは敵だ!俺達は嵌められたんだ!」

「信じられません……。大森さんが……。」

「あぁ!クソッ!!」


ウダウダしているリカの手を引っ張り、連れ出そうとする。


「待って下さい!もうここがバレていると言う事は、上手くこの場から逃げれても周辺で待ち伏せされている可能性があります。出て行くのは危険です。」

「よくそんな事が言えるな。アンタが嵌めたクセに。」

「もう信用して頂けないのは重々に承知してますが、私に1つ提案があります。」


此の期に及んで……。


「そこに人が入れる程のクローゼットがあります。その中で隠れていて貰い、後は私に任せて下さい!何とかして見せます!」

「信用しないのを分かってるならそんな提案をしないでくれ。俺が受け入れるとでも?」

「でもそれしか無いんです。それが1番安全ですから……梨香さんの為にもお願いします!」

「シカさん……私は大森さんの提案に賛成します。やっぱり裏切られてるとは思えません。」

「…………。」

「元々自己責任と言う話で私が無理矢理付いて来たので、もしシカさんが嫌なら先に行って下さい。お1人ならきっと逃げれると思いますので。大森さんと無事にここを出れたらその時連絡します。」


今回この娘は自分の意見をやたらと主張する。

まぁそれ程大森麻衣の存在は大きいのだろう。


「…………ハァ。分かったよ。リカ1人を残しては行けない。俺も付き合おう……。」

「良いんですかぁー!?やったぁ!流石シカさん!」


またしても言い包められる俺。

しかし状況が良くなった訳ではない。これはほぼ賭けなのだ。


「ちょっと……狭いですね……。」

「すまん……我慢してくれ。」


確かに大きめのクローゼットであるが、流石に人が2人隠れるには小さかった。

俺とリカは正面を向き合ったまま密着する形となってしまった。

俺達は身長差があり、リカの顔は俺の胸の辺りに来ている。


「閉めますよ?音を立てない様にお願いします。」


外側から扉は閉められた。


「リカ……連中の"音"は聞こえるか?」

「はい。真っ直ぐこちらに向かっている様です。」

「ここまで正確に情報が漏れているのに、まだ大森麻衣を信用するのか?」


身動きが取れないながらもいつでも撃てる様に、右手に握られた銃の先はクローゼットの外に向けられていた。


「大森さんは絶対にそんな事しません!」


信頼はやはり厚いか……。


だが俺はどんな不測の事態にも備えなくてはならない。いざとなったら戦闘になるだろう。

しかし今装填してあるゴム弾はどれ程の貫通力があるのだろうか。目の前の木製の扉は破れるのか?

ジイさんは一応殺傷能力はあると言っていたが……。


俺も随分リカに影響されたもんだ。

殺し屋が不殺を目的とした銃弾を使おうとは。

思わず鼻で自分を笑ってしまう。


「シカさんもう部屋の前まで来ています。」


無言で頷く。

リカから見えない様に銃を構えている右手からは汗が滲んでいた。


ジリリリリリリリ。


連中は律儀にも呼び鈴を鳴らした。

油断させるつもりだろうか?だがお前等の存在はとっくにバレている。


「はい……。」


返答しながら大森麻衣が扉を開ける音がする。

声が震えているぞ!大丈夫なのか?


「やぁ大森君。元気かな?」

「トムさん!?どうしたんですか?何故私がここに居ると?」

「何故かは分かっているんだろう?奥に居る人間に会わせて貰おうか。」

「えっ?ちょっと……。」


会話は途切れ、数名が踏み込んで来る音がする。


「ほう……姿が見えないな。おい!バスルームを見てくれ!」


連中が彼方此方(あちこち)を探す音に、俺の緊張は最高潮に達している。


「誰を探しているんですか?ここには誰も居ませんよ?」

「嘘を吐くなら状況証拠を隠してからにするんだな。そこに飲みかけのティーカップが2つあるが?」

「あ…………えっと……それは……。」


やはりコイツは嘘を吐くのが壊滅的に下手だ……。

何も出来ない事にヤキモキする。


「誤魔化しても無駄だ。居たんだろう?シカリウスが。」


置いてあるカップは2つ。大森麻衣が会ったのは俺だけだと思っている。

それは不幸中の幸いか……。


「私はもう会社を辞めた人間です。あなた達に従う義務も、質問に答える義理もありません。」

「君は分かってないな。何故ドンが今回の核心を知っている君を殺さず簡単に手放したか。ドンは全てお見通しだ。君がどう動くかもな。案の定君はシカリウスに近付いた。」

「泳がされていた……?そんな……。」

「君の知っている情報など殆どがウチからの物だ。Gearsもこのホテルも何もかも。そして近付いた君にシカリウスは何故か接触した。何の為だ?どんな事を話した?今は何処に居る?全て答えて貰おう。これは君の義務や義理ではない。我々は強迫しているのだ。」

「…………。」


会話からするに大森麻衣は限りなくシロに近くなったが、これは雲行きが怪しくなって来た。

もしこの場で拷問でもされたら、耐性の無い彼女は簡単に口を割るだろう。

リカを見ると、目を閉じ必死に何かを祈っている様だ。


「……はい。私は彼と会いました。」


なん……だと……。

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