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Episode 61

「シカリウス……何を血迷ったか知らんが、今ならまだ間に合う。ドンの所に行って全てを説明するんだ。」

「何を説明するって?俺が説明しなきゃいけない事なんて思い付かないが?」

「ハァ…………あんたとは上手くやって行けそうな気がしていたんだがな。何故にそうも拒絶するんだ?」

「最初に理由も聞かずに攻撃してきたのはお前等だぜ?」

「あれはカルロスの独断だったんだ。その事については謝ろう。だから理由があるなら教えてくれ。」

「さっき自分で言っていただろう?俺達は既に一線を越えちまったのさ。もうお前が何を言おうが信用出来ないし、俺がマッテオに会ったとしても殺されるだけなのは明白だ。」

「もうこちらに寄り添う気は全く無いか?」

「無いね!」

「そうか……こっちとしては譲歩のつもりだったんだがな。あんたにその気が無いなら仕方無い。今この場で始末を付けてやろう!」


急に態度が一変したクラウディオはこちらに銃を向ける。


「止めてくれぇ!!!」


ハンターのリーダー格が叫ぶが、無情にも銃弾は俺の肉の盾へと発射される。

数回の乾いた音と感じる衝撃、それと共に俺が掴んでいる男からは力が抜けた。


おいおい!マジでお構いなしに撃って来やがったぞ!!


「アンタ正気か!?オレ達は仲間だろ!!」

「足手まといになるくらいなら殺された方が本望じゃないか?ほら賞金首が逃げるぞ?」

「何てヤツだ……。チクショウ!お前等!こうなったらシカリウスを絶対殺るぞ!」


俺は何故この男がマッテオの側近に置かれているか理解した。

ハンター達の仲間を失った怒りは全てこちらに向けられる。


使い物にならなくなったその盾を思い切り蹴飛ばし捨てると、数発撃ち返しそのまま俺は近くの部屋へと入り身を隠す。

捨てる際にソイツからは銃を抜き取っておいた。しかしこれでも残弾は30発強。長期戦には持ち込めない。


幸いにも咄嗟に俺が入った部屋は、中から隣の部屋に移動できる構造となっていた。

俺が入った部屋のドアに意識が向いていた連中の意表を突き、別の場所から飛び出して移動しながら連中に向けて更に射撃を行う。連中も柱に隠れながら撃ち返してくる。

建物内は一瞬にして戦場と化した。


更に通路の左右の部屋を縫うように移動する。


「どうするシカリウス?反撃するのは良いが、ドンドンと袋のネズミへと追い込まれているぞ?」


あぁ分かってる!

出口とは逆に進んでる上に4対1だ。


「こっちは残弾も豊富にあるが、あんたは見た所それ程持ってないだろう?」


それも正解だ!

さっきの男から奪った銃はとっくに弾切れを起こし、投げ捨てていた。


「早く諦めて降伏しろ。下手に痛い思いをするより、一思いに殺してやるからよ。」


そりゃどうも。クソ喰らえ!

それでも部屋を移動する度に、牽制の為に2~3発消費する。

状況は悪化の一途を辿っていた。


ベレッタには既に最後のマガジンが装填されている。残弾8発。後が無い。

そんな時丁度辿り着いた部屋は重役の部屋だろうか。置いてある家具は高そうな物ばかりだ。

机にはシガーケース、棚には高そうなウイスキーが十数本残されている。


まだ天には見放されて無かったな……。


「ほらほら!隠れてないで撃ち返さないと距離を詰めるぞ?」


そう挑発するクラウディオの元に、扉の影からウイスキーの瓶が飛んで来る。

しかしそれは大きく外れ、柱に当たり砕け散る。


「何のつもりだ?まさかもう弾切れか?だったらそんな悪足掻きはよせ。素人の喧嘩じゃないんだぞ?」


呆れるクラウディオを余所に瓶はまた飛んで来る。

今度は彼の近くの壁で砕けたが、ダメージは無い。


「おいおい!折角のスーツに酒が掛かったじゃないか!クリーニング代を請求しなきゃな!」


しかし止まること無くウイスキーの瓶は次から次へと飛んで来る。

当てずっぽうに只投げられたそれは誰に当たる事も無く、辺りをガラス片と漏れたウイスキーで汚すだけだった。


「いい加減にしろ!酒が勿体無いぞ!!それにこんなガラス片を撒き散らしたからって、我々を足止め出来ると思っているのか?」


忠告は無視され、更に瓶は放たれる。今度は一直線にクラウディオ目掛けて飛んで来た。

それを射撃で撃ち落とすクラウディオ。しかし飛び出したウイスキーは先程より更に彼のスーツに降り掛かってしまった。


「もう許さんぞシカリウス……。今すぐ殺してやる!」


もう投げられる瓶は無い。

仕方無い、降参するか……。


最後にシガーケースからタバコを1本とマッチを拝借して、両手を挙げて部屋から出る。


「降参だ降参!アンタの勝ちだクラウディオ。」

「手間を掛けさせやがって。そのままゆっくりこっちに来い!殺してやりたいが、ドンは生け捕りを希望だ。」

「ハハ……マッテオに拷問されるくらいならこの場で死んだ方がマシかな?」


通路内はウイスキーの良い香りで充満している。

少しくらい飲んどきゃ良かったかな……。


「縛られる前に一服していいか?」


右手にあるタバコを見せる。


「…………それだけだぞ?」

「サンキュー!」


そう言ってタバコを口に咥え、マッチを灯した。


「何してる!クラウディオ!!!周りが見えてないのか!!?」

「何だ?」

「どけ!!!オレが撃ち殺して…………。」


彼等の会話が終わる前にタバコに火を付け、マッチをデコピンの要領で飛ばした。


もう遅いんだよバーカ!


マッチは弧を描き、クラウディオの居る方向へと飛んで行く。


「さてさて科学の問題だ。40°の酒はマッチで容易に火は着くだろうか?」


その瞬間にクラウディオの眼は見開かれ、向かって来るマッチに視線は集中した。


「!!!!!」


そのマッチは地面に落ちる直前に揮発したアルコールと反応し、激しく燃焼を始め、そのまま床に広がるウイスキーへと着火する。

連中の足元には既にウイスキーの池が形成されており、瞬く間に燃え広がった火は彼等を襲った。


「正解はYesだ。」

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