表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/146

Episode 49

地下の部屋に到着すると、そこはまるでアメリカのガンショップの様な光景が広がる。

テーブルや、壁一面に飾られた銃火器類をメインとした違法物の山。そのどれもが頑丈なケージに守られている。


早速リカは俺の手を離れ、古今東西新旧揃えられた武器を眺め始めた。


「え!?武器じゃないですか!これ売ってるんですか!?ヤバないですか???」


その後も"ふえ~"だの"ほえ~"だの奇声を発しながら眺め回るリカ。

時々1人で大きなリアクションをして、1人で笑っている。まるでその姿は……。


「何じゃあの珍妙な生物は。」


追って降りてきたジイさんがリカを見て呟く。久々に意見が一致したな。


「客は良いのか?」

「あぁもう帰った。それと……20分ってトコだ。」

「悪いな……。まぁ弾を仕入れに来ただけだから時間は取らない。」

「そうか……しかしさっきの九五式重戦車のスプロケットホイールとは何だ!マニアック過ぎて笑いそうになったぞ!」

「これでもここに来る時はいつも必死に考えているんだぜ?」

「まぁ良い。それにしても全く……お尋ね者が昼間から堂々と……。呆れるわい。」

「俺も晴れて有名人だな!サインいるか?」

「そんなゴミ要らんわ!それよりあの娘なのか?お前さんが春鳥から盗んだってのは。」

「盗んだとは人聞きの悪い。奴等が捨てたから俺が貰ったまでだ。」

「ワシにも情報は回って来ていたが、まさかあんな少女だったとは……。また厄介な物を背負い込みおって。それに春鳥にまで喧嘩を売ってまで手に入れた価値はあの娘に有るのか?」

「さぁな……。」

「何じゃ?理由も無く助けたのか?理由も無くお主が人助けとは……。もしかしてあの娘に惚れたか?」

「そんなんじゃねえよ!!!放っとけ!」

「え!?うぇ???嘘だろ……鉄扇売ってんじゃん!!!シカさ~ん!!!鉄扇がありますよー!!!!ってあれ?さっきのおじいさん?こんにちはー。」


夢中になっていたリカが初めてジイさんの存在に気付く。


「シカさん?」


ジジイがニヤけながら俺の顔を覗く。


「……放っとけ…………。」


バツの悪さを感じながらリカの居る場所へと歩み寄る。


「何だ?何があったって?」

「鉄扇ですよ!!これ!見て下さい!!」


リカの指差す先には装飾も何も無い無骨な扇子がある。


「私の好きなゲームのキャラクターがこういうの使って戦うんです!」

「ふむ。それは江戸時代に作られた総鉄扇だな。売り物ではない。只飾っとるだけだ。」


ジジイの趣味だった。


「えぇ~売ってないんですか~???これを手に入れれば、イザという時に私も戦えると思ったのに……。」

「これは通常よりサイズが大きいので女性が扱うのは難しいぞ。まぁ持ってみるか?」

「良いんですか~!!?やったぁー!!!おじいさん良い人です!」

「そうか?」


目をキラキラさせるリカとニヤニヤ照れるジジイ。

まんまとリカの術中に嵌ったな。その無邪気の術に……。

鍵を開けてリカに鉄扇を渡す。


「うわ!!重!!!これは結構大変です。ゲームの中では女の子が軽々振り回しているのに!!」


俺の頭に筋骨隆々の女性戦士のイメージが浮かぶ。


「そうだろう?本来女性向きの武器ではないからのぉ。それにこれは開いたままで閉じないタイプでな。携帯するのにも不便だろうて。」

「……そうなんですね……残念ですけど諦めます……。」


渋々扇子を返すリカ。


「おいジイさん!そんな事より俺のを早くしてくれ!時間が無いんだろ?」

「おぉそうだった。ちょっと待っとれ。」


カウンターからバックヤードへとジイさんが入って行く。


「シカさん何か買うんですか?」

「あぁ弾をな。」

「銃の弾ですか?やっぱり殺し屋さんなんですね……。」

「…………。」


そう言ってリカは再び鑑賞ツアーへと1人戻った。

ジイさんは1分も掛らず戻って来る。


「ほら9mmだ!それとお前さんが欲しがってたスタングレネードと.50AEが手に入ったぞ。値は張るが、スタングレネードはSWAT採用の純正品だ、勘弁してくれ。」

「おぉありがとう。助かるぜ。」

「お前さんがスタングレネードなんざ必要になるのか?」

「最近生け捕りの依頼が多かったからな。それに使えると思ったんだ。まぁもうそんな事態では無くなったが……。しかしこの前追手に囲まれた時に、手製の閃光火薬が役に立った。逃走にも役立つかもしれん。」

「そうか……。まぁ気を付けてくれ。」


ジイさんが俺の左脚を見やる。

やはりまだぎこちないのか……。


「おっと!もうそろそろ発った方が良い。」

「そうだな。ほら金だ。」

「また来ると良い。指名手配犯でも金を払えば立派な客だ。」

「サンキュー。おーいリカ!もう行かなくちゃならない。帰るぞ!」

「はーーーい!!」


大きな返事で駆け寄って来る。


「上手くやれよ。お嬢ちゃんも!」


ジイさんが上の階まで見送ってくれた。


「ありがとうございます!ガラクタ屋のおじいさんも!」

「何じゃって!?ガラクタ?」

「あれ!?ガラクタ屋さんじゃないんですか??シカさんがそう言っていたので……。」

What(何て) the(こっ) heck(たい)!!」


ジイさんに睨まれながら店を後にした。

別に間違った事は言っていない。


バイクに乗り走り出すとすぐに黒塗り外車の1団と擦れ違う。


時間ギリギリだったか……。

まぁこちらは2人共フルフェイスで新しいバイクだ。気付かれる心配は無いだろう。


「何か凄い車の集団がおじいさんのお店の方向に行きましたけど何でしょうかね?」


バイク走行に早くも慣れてきたのか、リカが話し掛けてきた。


「ありゃ俺達を追い掛けている奴等だ。」

「えぇ!!?そしたらおじいさん巻き込まれてしまうんじゃ!!」

「大丈夫だ。それに通報したのはあのジイさん本人だからな。」

「そんな……おじいさんは味方じゃないんですか?」

「彼は誰の味方にもならない。その代わり誰の敵にもならない。だから今回も手配書の回っている俺を見付けた事を組織に報告し、その事を俺にも伝えて逃げる猶予を与えた。どちらにも5分5分で義理を通す。それが彼のやり方だ。」

「聞いているだけで大変そうな世界です……。」

「リカもこの先出会う人間を誰も信用しない事だ。俺の事もな……。」

「それも寂しいですね……。でも私はシカさんの事だけは信用します!!!私がそうしたいんです……。」


その純粋さはいつか仇となる。

でも彼女の様な心の持ち主が報われる世界であって欲しい。そう願わずには居られない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ