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Episode 144

「ここに居るのは大丈夫なんですよね!?ここは聖域みたいな物だってディアンさんが……。」

「駄目です。ここも鬼棲街の中ですので。」

「それって……。」

「そうだヨ!実質死刑宣告と変わらないじゃないかヨ!ミカにはもう頼れる人も帰る場所も無いんだヨ!?どうやって生きれば……。」

「ちゃんと人の話を理解して下さい。全くここの人達は……。別に鬼棲街の中での居住が禁止されるだけで、その他の何処の場所に住もうがヴィジランテが口出すつもりはありません。」

「あっ!そうか!」

「何ですかミディアさん?ここ以外にミカちゃんが安心して暮らせる場所なんて……。」

「ワタシったらバカだネ。ボラカイだって街の外じゃないかヨ!」

「あっ!」

「もちろんボラカイに住まわせるのは構わないんだよネ?」

「ですから先程申し上げた通りです。」

「やりましたね!」

「良かったヨ。」

「姐さん本気ですか!?」


今度はディアンが難色を示す。


「まだ従業員達にも今回の事件の説明は済んでませんし、それにあんな凶暴な者を……。」

「何だい?オマエ怖いのかヨ?」

「うっ……それは…………。」


1度こっぴどくやられてるディアンが警戒するのも頷けるが。


「凶暴なんかじゃありませんよ。可愛い小さな女の子です!きっとディアンさんもすぐに仲良くなれますよw」

「ハハハ…………。」


苦笑いってヤツだ。


「それからもう1つあるのですが。」


アドミンが話を戻す。


「まだ何かあるのかヨ!もう丸く収まったじゃないかヨ!」

「まぁまぁ聞いて下さい。人形の為ですので。」


今日はヤケに食って掛かるミディアをアンジュが宥める。


「彼女は基本的に鬼棲街への立ち入りも禁止されますが、こちらの決めたプログラムに従って頂ければ限定的に許可します。」

「プログラム?」

「はい。それは道徳を含めた教育を受け、週に最低20時間の"健全"な就労を行う事。それを証明すればヴィジランテの許可を得て鬼棲街にも入れます。」

「私達とここでも遊べるって事ですね!?」

「遊ぶ事に許可を出すかは分かりませんが……何分あの歳と容姿では、下界だけで暮らすのは目立ち過ぎますからね。もし良き人間と認められれば鬼棲街の住人となる事も可能です。」

「随分と寛大な措置じゃあないか?ヒロはどうしちまったんだ?」

「まぁ今回初の試みですから。こちらも探り探りと言う訳です。」

「取りあえずミカちゃんは普通に暮らせる訳ですよね?やったぁー!私が毎日お勉強を見に行きます!!!」

「アンジュとじゃ勉強にならないんじゃないかネ?」

「ちょっとー!そんな事無いですよー!これでも赤点は取った事無いですからー!」


それじゃあ頭良いんだか悪いんだか分からん……。


「まぁ教育はワタシがするとして後は就労か……。」


ミディアがディアンをチラッと見る。


「オマエ助手を欲しがってなかったっけ?」

「え!?自分ですか!!?確かに誰かの手が借りられれば良いなとは思ってましたが……まさか!」

「なら丁度良いじゃないかヨ。流石に未成年を夜の店に出すワケにはいかないし、教えれば計算くらい出来るだろ。」

「マジですか?」

「大マジだヨ。」


戦々恐々のディアンに笑顔のミディア。

完全にミカがトラウマになってるな……ディアンは。

兎も角話は纏まりそうだ。


「それでは私の役目は終わりましたので仕事に戻ります。次の捜査も中々厄介なのでね。」

「あぁ俺達の事……色々気にして貰って悪かったな。」

「いえ……気になどしてません。ヒロさんの命令で無かったなら、あなた方には消えて貰いたいと思ってますから。私個人としては……ね。」

「…………。」

「ではまた…………。」


アドミンは1礼だけするとふぁくとたむのオフィスから去って行った。


「ホント何考えてるか分からない奴だネ!」

「きっと自分達を態々(わざわざ)呼び出したのも、鬼棲街で暮らせない彼女をボラカイで引き取る話にする為だったのでしょう。」

「良い奴なんだか嫌な奴なんだか…………。」

「根っからの悪い人なんて居ませんよ。アドミンさんだってきっとお優しい方だと思います。」

「そうだと良いんだけどネ……。」


さて……後はミカの回復を待つだけか。


暫くまともに仕事もしていないな。

何とか金を作らないとジイさんに分割にして貰った手術代も払えない。

割の良い仕事でも転がり込んで来ないものか……。


「ミカちゃん!?何してるの!!?ダメだよまだ動いちゃ!」


何と驚きの回復力。

昨晩手術したばかりのミカが点滴スタンドを引き摺りながら降りて来た。


「ごめんお姉ちゃん……でも……おなかすいた…………。」

「え?」


ミカの腹が鳴る。


呆れた奴だ。身体中が痛いだろうに、食欲が優先か。

しかし俺は笑いが込み上げていた。


「大した奴だよ。お前は。よし!今何か作ってやる。怪我人でも楽に食える物って言ったらまたお粥系になってしまうが。」

「うんほしい……またあれが食べたい……。」


遠慮も無くなってきたな……。


「仕方無いな……ほらここに横になって。本当はまだ絶対安静なんだからね!」


アンジュは客用のソファーにミカを寝かせる。


「じゃあ30分位待っててくれ。なるべく早く作るから。食ったらまたベッドで寝ろよ?」

「ありがとう……ご主人さま……。」


ご主人様!!?

あぁ……成り行きでそういう事にしたんだっけな。


「ホントにご主人様って呼ばせてるのかヨ?ユージーン……オマエ…………。」

「うるさいな!俺は飯作りに行くぞ!」


俺は逃げる様にキッチンのある3階へと向かった。


「まぁまぁミディアさん。ミカちゃんがシカさんを信頼しているのは良い事です。」

「またあのスケコマシが(たぶら)かして……。」

「スケコマシ???」

「あぁ何でも無いヨ。気にしないで。それよりミカ……身体は痛むかネ?」

「えぇ少し……でも昨日よりかなりらくだわ。」

「今は薬が効いてるんだと思うヨ。だから無理はするんじゃないヨ?」

「そうするわ……さすがにウチもつかれた……。」

「でも本当に大事には至らなくて良かったです!医者のお爺さんにも感謝しなくちゃですね!」

「彼にはボラカイからも謝礼金を出しましょう。」

「そうだネ……。ユージーンだけで返せる額じゃなさそうだしネ。」

「……ウチの事でお金がかかっているの?」

「大丈夫。心配しないで。私とシカさんが本気を出せばお金なんてあっという間に稼いでみるから!」

「そうだヨ。子供が変な心配するんじゃないヨ。」

「…………。」

「まぁ起きているついでに言っておくけどネ。アンタはボラカイで預かる事になったヨ。」

「それは……どういういみ?」

「アンタへの処罰はウチで学を身に付け、ガルディアンの仕事を出来る限り手伝う事だヨ。そうすれば普通にここで暮らしていける。」

「……そう。殺されるのならそれもしかたないと思ってたけど……。」

「私達が絶対にそんな事はさせない!だから一緒に生きて行こう?ここで…………。」

「…………ありがとう。」

「フン!分かったらしっかりと勉学に励み、汗水垂らして働く事だネ!ワタシはアンジュみたいに甘くは無いからネ?」

「分かったわ。アナタも……ありがとう"オバさん"。」

「な!!!!」

「あ……姐さん……。」

「コラ!ミカちゃん!ミディアさんはお姉さんでしょ!」

「そうなの……?てっきり日本では30すぎたらオバさんってよぶのかと…………。」

「このガキャ!先ずはしっかりとワタシが礼儀と日本語を叩き込んでやる必要があるネ!!!」

「まぁまぁ……。」

「ウチそんな悪い事言ったかしら?」

「この澄ました顔も気に食わないんだヨー!!!キーッ!!!!!」

「ちょっとミディアさん落ち着いて……。」

「そうです姐さん!相手は子供ですから……。」


…………。


何だか下の階が騒がしい。

気になるが調理の途中で離れる訳にもいかない。


…………。


やがては笑い声も入り交じる。

楽しそうだ。


「俺だけ除け者かよ……。」


俺は賑やかな輪に参加出来ない寂しさを1人感じつつも、ミカの為に最高の物を作ってやろうと張り切っていた。


とかくこの世は世知辛い……。

それでも……ウチは美しいと思う…………。

10章完

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