表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
141/146

Episode 139

空から突然目の前に人が降って来た。

その場にいる全員が呆気に取られている。


「グフッ!」


全身縛られているその男から苦しそうな息が漏れた。


「歳取るとなぁ。どうしても欲張りになっちまうらしい。若気の至りで捨てたモンも今じゃあ全部欲しくなる。」


声の主は上。


「そう……俺は欲張りなんだ。悪ぃがどれもこれも手に入れさせて貰う!」


頭上の空中回廊。

そこに立つ人影。


「シカリウス……。」

「よう!随分と久し振りだな……ヒロ!」


旧友の再会。

しかし片一方は微笑みを向け、もう片一方は睨んでいる。


「アンジュ……待たせてすまん。」

「シカさん…………。」

「シカリウス…………。どういうつもりですか?」

「いやぁ面白い人物を見付けたモンでな。お前等にお土産にと思って。」


縛られた男に注目が集まる。


「この男は…………。」

「ほう……これはこれは。」


まるで暴れる芋虫の様な動きをしているその男。


「正体はあなたでしたか。」


アドミンは納得したかの様に頷く。


「…………さま?」

「え?何ミカちゃん?」


今度はミカが反応を示した。


「ご主人さま!!!」


喫驚にも悲痛にも取れる様な叫びだった。


「飼い主か?そうだな?」

「えぇ恐らくは。しかし私が特定の決定打に欠けた訳です。何せ"死人"に登場されてはね……。」

「死人だと?」

「ヤーコフ・チカチーロ。元冷戦時代のソ連のスパイだ。"Decapitato(首狩人)r"って聞いた事あるだろう?」


話しながらシカリウスが地上まで飛び降りる。


Decapitato(首狩人)rって昔日本で首切りと言う派手な暗殺で証拠を多数残したにも関わらず、捕まる事は無かったと言われる?」

「そうだ。だからコイツは日本語もペラペラだ。おい!何か喋ってみろ。」


縛られているヤーコフは俯せに倒れながらも、顔だけをこちらに向ける。


「離してくれ!君達は勘違いしている!私は何も関係が無い!」

「ほらな。しかしずっとこの調子だ。」


シカリウスが肩を竦めている。


「誰なんだソイツは。オレは知らん。」

「ヒロさんが知らないのも無理ありません。私達の数世代前の人間ですから。私も情報収集の際に知っただけです。」

「私の情報だと?そんな……残ってる筈は……。」

「"Unseen(見えざる) executione(処刑人)r"。元スパイと言うより敵国スパイを捜し出して処刑する事に特化した隠密部隊。暗殺術はかなり高等で、当時西側諸国から前述の異名で恐れられていたそうです。しかしその行動はどんどん過激になっていき、彼は捕まえた敵国スパイに対し勝手に執拗な拷問を行い、処刑したその首を本国へ送り返すと言う行為を繰り返しました。秘密裏に事を行いたかった当時の連邦政府は彼を追放。ですが裏社会にも強力なパイプを持っていた彼は、そのままソ連崩壊後も元共産圏で暗殺やハンターを生業にして暗躍していました。ミディアさんの言った通り、日本でも分かってるだけで2回の暗殺を行っており、90年代にイスラム研究の学者、00年代に官僚夫婦……。」

「何故そんな事まで……。」

「消した筈ですか?気を付けた方が良いですよ。何せ噂話ですら全世界に記録として残ってしまう時代ですから。特にあなたの様に目立つやり方をする方は……。」

「クッ……。」

「その後彼は激化する中東紛争に傭兵として参加し、爆撃により死亡したとの情報でしたが……。」


ミディアは思っていた。

これは凄い大物が出て来たと。

しかし人形との関係性も疑問に残る。


「首狩り人形……。ミカの異名を聞いた時から引っ掛かる物があったんだが、まさか本当にコイツが関わっていようとはな。」

「だからそんな少女は知らない!」

「ハァ……。しかもコイツが中東戦争にイスラム過激派側で参加した理由も"大義の元に首を切れるから"と言うイカレた理由だ。相当な拷問愛好家でもあり、殺す時に相手は"人の形"をしてない事も多かったらしい。」

「貴様!何故………。」


ヤーコフはシカリウスを見上げた。


「あぁ……シカリウス……貴様まさかあの時の日本人のガキ……。」


言葉を遮る様にシカリウスはヤーコフの右脚を踏みつける。


「おっと!口は災いの元だぜ?その右義足を壊されたくなかったら黙ってろ。」


2人は顔見知り?


「クソォ……シカリウス!」

「爆撃では死ななかったらしいが右脚は失くした様だな。そういや高そうな杖も持っていた。そう……あのミカに新しく出来ている打撲痕を作るのに丁度良さそうな。」

「違う!関係無い!」

「ご主人さま!!」


ミカがヤーコフへと近付く。


「何だ貴様!!貴様の事など知らん!勝手に巻き込むな!!」

「うぅ……ご主人さま…………。」


しかしヤーコフは突き放した。


「ミカ……コイツはお前を見捨てる気なんだ。アンジュを裏切ってまで戻ったのに、その主人には大怪我を負わされて挙げ句には見捨てられる。それでもまだ未練があるってのか?」

「………。」


事態は思わぬ方向へと動いた。

一先ずミディアの役割は解消されただろう。

彼女はその隙に動けず座り込んだ状態のアンジュの元へと移動する。


「ミディアさん……。」

「ホントにバカな娘だヨ。撃たれてたらどうする気だったんかネ。」

「すみません……。でもミカちゃんはまだ……。」


確かに事態は何も好転してはいない。

ミカは未だ処刑の対象であり、アンジュにしてもその対象から外れた訳ではない。

その証拠にアドミンはミディア達が変な行動を起こさないか見張るが如く、いつものニヤケ面を崩さないまま睨んでいる。


「もう良いだろ!」


暫く黙っていたヒロが口を開く。


「間も無く夜になる。無意味な話し合いをしたいなら、懲罰棟でやらしてやるさ。2人を拘束しろ。処刑は後日行う。」

「御意!」

「ちょっと待て!2人だと?」

「そうだ。お前の所の女は初犯だからな。処分保留にしてやる。ありがたいと思え。」

「違う!俺が言っているのはミカも連れてくのか?って事だ。」

「ミカ…………人形の事か?それなら当たり前だ。殺人容疑と公務執行妨害。大罪を犯している。」

「そうか…………。」


その瞬間、ミディアは思わず叫びそうになった。

信じられない程馬鹿な行動を取っている彼に。


シカリウスがミカに銃を向けてるアドミンに銃を向けていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ