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Episode 138

なんだかまわりがうるさい。


「人形を渡して貰えませんかねぇ?あなたは死刑になる程の罪は犯してませんが、そのままだと一緒に撃ち殺してしまう事になりますが?」

「い……嫌です!」


いしきはもどったけどいまだに体中がイタイ。

でもつつまれるぬくもりも感じていた。


「…………も対象に入ってるんだヨ!!ヒロ!!?」

「そのつもりは無かったがな。あれを見ろ。」


今はだれかのウデの中?


「まぁオレも思う所があってな。どっちか1人は助けてやるって言ってるんだ。責任はオレが持つ。」


さっきおきた時よりも少しらくになっていた。


「1人を撃って終わりだ。残りの1人は罰を軽減してやる。簡単だろ?血迷っただけの知り合いか、この街を脅かしたアンブラか。迷うまでもない。」


なんとか目があけられる。ウチをかかえているのは……。


お姉ちゃん!?


「撃たない選択肢もあるぞ?但しその場合はボラカイをヴィジランテの敵と見做して潰させて貰う。」


やっぱりお姉ちゃんが助けてくれたんだね。

それに今がどうなっているかなんとなく分かったわ。


「分かったヨ……。」


こっちにハンドガンを向けている人。ボラカイと言うところで会った人。

手がふるえている。


あぁ……このままウチは殺される。

でもきっとこれでいい。

バケモノのさいごなんてこんなモノ。

むしろやっとらくになれる……。


「ミディアさん。私を撃って下さい。この子を助けると決めた時から覚悟してました。」


ちょっとまって……。

それはダメ……。

ぜったいにそれはダメ!


「寧ろここで私を撃って頂かないとミディアさんを一生恨む事になっちゃいます。」


お姉ちゃんを死なせるワケにはいかない。

気をとられてウチをかかえてる力が弱まってる今がチャンス。


おねがい!うごいてよウチの体!

バケモノなんでしょ!!?


「何を迷う必要がある?オレからしてみれば1択しかないぞ?」


うごけ!!!


「その人の言うとおりウチを殺したらいいわ。」


体中がやけるようにあつい。

でもちゃんと声も出た。


「ミカちゃん!?そんな……動ける身体じゃなかったのに……。ちょっと待って!」

「おっと!杏珠さんは動かないで下さい。さもなくば私が人形の頭を撃ち抜きます。」


なんだろう……この男の人。きっとすごく強い。


ウチはボラカイの女の人へちかづく。


「アナタたちがうるさいからおきちゃった。」

「ミカちゃん戻って!!」

「お姉ちゃんごめんね。でもウチが死ねばかいけつするから。」

「ダメ!!!そんな事!!!」


え!?


「杏珠さん!!!もう1度動いたら今度は本当に人形の方を撃ちますよ?」


お姉ちゃんになんて事を!


ウチはうった人をにらんだ。

でもその人はまったく気にするようすもない。


「面白い。これで撃ち易くなったなミディア。」


この人…………。

口にしてる事はこうげきてきなのに、どこかかなしそう……。

なんでだろう?


「早く殺してくれないかしら?ウチもこれだけ人を殺したんだもの。いつか返りうちにあう気がしてたし、べつにアナタをうらまないわ。」

「ミカちゃんが死ぬ事無い!!!それはあなたのせいじゃない!!!今まで誰もあなたを正しい道に導いてあげられなかったから……でもミディアさんは違う!シカさんは違う!きっとあなたをキチンと導いてくれる!だから生きて!!私はその為だったら……。」

「ありがとうお姉ちゃん。はじめてアナタみたいなやさしい人にあったわ。だからこそウチのかわりに死なせるワケにはいかないの!」


ボラカイの女の人をまっすぐに見つめる。


「さぁウチを殺して。」

「クッ!!」

「ミディアさん!!私を撃って下さい!!!」


すごいこまったかお。


「ハァ……お涙頂戴のクソつまらないドラマはテレビの中だけにしてくれ。そろそろ決めないと"撃たない"選択肢を選んだと見做すぞ?」


ウチとこの人はなにもかんけいがない。

なぜまよっているの?


「ミディアさん!!」

「姐さん!!」

「うって!!」


なぜウチをうたないの?


「早く選べ。"友達ごっこ"でしか無い仲間の命を捨てるか、正義の名の下に少女を捨てるか。または何方も選ばず何もかも捨てて、この街の秩序を乱すのか。」


人を殺した事、あるでしょう?

ウチには分かるわ。


「選べ!!!」


ハンドガンがまたウチに向けられる。


「ミディアさん!!!」

「それでいいのよ。ウチの人生は"世知辛い"事ばっかりで生きているのもつらかった。だからこれで……。」


そう……それでいい。

おもえばホントにヒドイ人生だった。

いい事なんてほとんどない。

ウチはなんのタメに…………。


しぜんとなみだが出ていた。


また泣いた。

ウチは泣き虫だったのね。でもうれしい。

お姉ちゃんと会ってから、なくなったと思っていた感情がもどったから。


「まだまだこれからじゃない!!ミカちゃんあのアニメ好きだって言ったよね???あの主人公だって最後は……。」

「もういいの。ウチとあの子じゃちがいすぎる……。ウチはヨゴレすぎてるのよ…………。」

「そんな事無い!!!」

「分かってる。ウチは"バケモノ"。おとぎ話の中ならたいじされてとうぜんなの。ならせめてお姉ちゃんのタメに死ねるならウチはうれしい。だってお姉ちゃんは……ウチの……。」


ヒーロー……とは少しちがうけど……。

はじめてウチをたいとうな"人"としてあつかってくれた大人。

いつかどこかで殺されるなら、ここでお姉ちゃんにみとってもらうのも悪くないわ。


目をゆっくりととじた。

中にたまっていたなみだは、そのひょうしに外へとあふれ出る。


「やれ!ミディア!!!」


でも……会ってみたかった。

どこかにホントにいるなら。

タダ泣いていればかけつけてくれる……。


ウチの…………。


「…………全部だ!!!」


ウチはその声にうっすらと目をあけた。


ヒーロー…………?

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