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Episode 137

遂に四方八方からヴィジランテが集まり始めた。

その先陣を切っているのはヒロ。


「アドミン。居なくなったと思ったら手柄だな。」

「ヒロさんお待ちしてました。勝手に居なくなって申し訳ありません。」


ヒロ…………。

ヴィジランテ共が到着しちゃったヨ。


「おいおい何でミディアが居るんだ?アドミン説明しろ。」

「ミディアさんは人形の居た場所まで私を案内してくれたのですよ。ねぇミディアさん?」


クッ!


「本当か?それにしてはやけに反抗的な目付きをしているが?それにそっちの女。人形の仲間なのか?」


ヒロがアンジュを顎でしゃくる。


「杏珠さん!?何故杏珠さんがここに居るんですか?」

「それに何で人形と一緒に……?」


ウチの捜索隊がざわつき始める。


…………。

何も返す言葉が無い。


「聞いての通り彼女は杏珠と言うそうです。先程の襲撃犯です。」

「そんな少女がか?」

「確かに若いですが、シカリウスの所で雇ってる女性だそうで侮れませんよ。」

「そうか……。大体状況は掴めた。」

「それでは先ず人形の処刑を済ませてしまいましょう。もう日が暮れてしまいます。」


全員が一斉にアンジュと人形を見た。


アンジュは後退りを始める。

しかし後ろにもヴィジランテは居る。

逃げ道などもう無い。


「人形を渡して貰えませんかねぇ?あなたは死刑になる程の罪は犯してませんが、そのままだと一緒に撃ち殺してしまう事になりますが?」

「い……嫌です!」

「それはどっちの"嫌"ですか?」


アドミンは再び銃を向け直した。


アンジュ…………。

あぁどうしたら良いんだヨ。


「ミディアさん!!!どういう事なのですか!?」

「杏珠さんが人形と居るって事は何か理由があるんですよね?だったらオレ達は……。」

「アンタ達!!バカな事考えんじゃないヨ!!!」

「そうか邪魔しに来たのか……。やはりお前等全員ヴィジランテの敵の様だな。」


ヒロの1言にヴィジランテが彼等との間に距離を取る。


ヤバい……皆んなが!


「チョット待ってヨ!ワタシ達はそんなつもりは……。」

「じゃ人形の敵だな?」

「うぅ……。」

「だったらそれを証明して見せろ。」

「え!?」

「ミディアがこの場で銃を抜く事をオレが許可する!誰もコイツを撃つな!アドミン退ってくれ。この女に処刑をやらせる。」


何だって!?


「成る程。良い案ですね。」


アドミンのニヤケ顔に深みが増した。


「何を言ってるのヨ!ワタシが処刑!?そんな事出来るワケが……。」

「お前が何を言ってるんだ!オレ達は共にこの街の秩序を守る組織だろ?ならそれを乱したこの2人を撃てる筈だ。」


ワタシがアンジュと人形を撃つ!?


「何でアンジュも対象に入ってるんだヨ!!ヒロ!!?」

「そのつもりは無かったがな。あれを見ろ。」


アンジュは今度は人形を腹側に抱きかかえ、素直に渡すつもりは無さそうだ。


「あぁして庇っているんだ。同罪でもおかしくはないだろう?」


殺される事を告げられても、アンジュの瞳はそれに屈する事は無い光を帯びている。


「とは言ってもオレも鬼畜じゃない。どっちか1人を選ばせてやる。」


どういう事?


「まぁオレも思う所があってな。どっちか1人は助けてやるって言ってるんだ。責任はオレが持つ。」


何を言ってるんだヨ…………。


「1人を撃って終わりだ。残りの1人は罰を軽減してやる。簡単だろ?血迷っただけの知り合いか、この街を脅かしたアンブラか。迷うまでもない。」

「何故ミディアさんにそんなショーみたいな事をさせる!?」

「テメェ等は黙ってろ!!」


ヒロの恫喝は皆を黙らせる。


「撃たない選択肢もあるぞ?但しその場合はボラカイをヴィジランテの敵と見做して潰させて貰う。」

「ワタシがやらなきゃいけないんだネ?」

「そうだ。オレはいい加減お前の甘さに嫌気が差してた所なんだ。丁度良い機会だからお前の真意を試してやる。」

「分かったヨ……。」

「ミディアさん!!!」


参ったネ……。

確かに人形を撃てばワタシ達は丸く収まる。

でもきっとアンジュは…………。


「ミディアさん。私を撃って下さい。この子を助けると決めた時から覚悟してました。」


やっぱりネ……。

またアンジュの強い眼差し。


「寧ろここで私を撃って頂かないとミディアさんを一生恨む事になっちゃいます。」


笑顔でそれを言うんだから……。

キッツイヨ……。


「何を迷う必要がある?オレからしてみれば1択しかないぞ?」


希望通りにアンジュを撃つ?

もちろんそんな事出来るワケ無い。


『撃たない選択肢もあるぞ?』


皆んなの顔を見渡す。

ボラカイの面々はどうして良いか分からないと言った表情。


スタッフ達に罪は無い。

それにワタシは組織の長として皆んなを守らなきゃならない。


じゃ……やっぱり……人形を…………。


頭を打ち付ける雨は、ワタシの決断力を鈍らせる。


「その人の言うとおりウチを殺したらいいわ。」


!!!


人形がアンジュの腕を飛び出し歩き始めていた。


「ミカちゃん!?そんな……動ける身体じゃなかったのに……。ちょっと待って!」

「おっと!杏珠さんは動かないで下さい。さもなくば私が人形の頭を撃ち抜きます。」


アドミンは人形に銃口を向けている。


「アナタたちがうるさいからおきちゃった。」

「ミカちゃん戻って!!」

「お姉ちゃんごめんね。でもウチが死ねばかいけつするから。」

「ダメ!!!そんな事!!!」


アドミンが動こうとしたアンジュの足元に威嚇射撃を行う。

アンジュはそれに驚きへたり込んだ。


「杏珠さん!!!もう1度動いたら今度は本当に人形の方を撃ちますよ?」


アドミン……アイツ本気だヨ。


「面白い。これで撃ち易くなったなミディア。」


確かにこれで間違ってアンジュに当たる事も無いし、頭を狙って苦しめずに即死させてあげられるネ……。


「早く殺してくれないかしら?ウチもこれだけ人を殺したんだもの。いつか返りうちにあう気がしてたし、べつにアナタをうらまないわ。」

「ミカちゃんが死ぬ事無い!!!それはあなたのせいじゃない!!!今まで誰もあなたを正しい道に導いてあげられなかったから……でもミディアさんは違う!シカさんは違う!きっとあなたをキチンと導いてくれる!だから生きて!!私はその為だったら……。」

「ありがとうお姉ちゃん。はじめてアナタみたいなやさしい人に会ったわ。だからこそウチのかわりに死なせるワケにはいかないの!」


この子……思ったより良い子じゃないかヨ!

何でだヨ……。この子がホントに救い様の無い化け物だったなら、それ程楽な事は無かったのに……。

これじゃまるで…………。


「さぁウチを殺して。」

「クッ!!」

「ミディアさん!!私を撃って下さい!!!」


正しい答えなんか無い。

でもやらなきゃ……。


「ハァ……お涙頂戴のクソつまらないドラマはTVの中だけにしてくれ。そろそろ決めないと"撃たない"選択肢を選んだと見做すぞ?」


決めなきゃ!


「ミディアさん!!」

「姐さん!!」

「うって!!」


どうする!?


「早く選べ。"友達ごっこ"でしか無い仲間の命を捨てるか、正義の名の下に少女を捨てるか。または何方も選ばず何もかも捨てて、この街の秩序を乱すのか。」


そんなの選べるワケ無いヨ!

でも選ばなきゃ全て失ってしまう……。


雨で濡れているせいじゃない。

ワタシは震えている。


「選べ!!!」


あああああ!!!!


ワタシは人形に銃を向けていた。


だって……これしか無い…………。


「ミディアさん!!!」

「それでいいのよ。ウチの人生は"世知辛い"事ばっかりで生きているのもつらかった。だからこれで……。」


人形からは涙が流れていた。

胸が張り裂けそうだった。


「まだまだこれからじゃない!!ミカちゃんあのアニメ好きだって言ったよね???あの主人公だって最後は……。」

「もういいの。ウチとあの子じゃちがいすぎる……。ウチはヨゴレすぎてるのよ…………。」

「そんな事無い!!!」

「分かってる。ウチは"バケモノ"。おとぎ話の中ならたいじされてとうぜんなの。ならせめてお姉ちゃんのタメに死ねるならウチはうれしい。だってお姉ちゃんは……ウチの……。」


人形は涙が止まらないまま眼を閉じ、撃鉄は目一杯起きている。


「やれ!ミディア!!!」


ごめんネ……。

アナタを救う事はワタシには出来無かったヨ……。


トリガーに最後の力を込める。


「…………全部だ!!!」


え!?

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