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Episode 135

10分後にはガルディアンが報告に来た。


「姐さん……もし自分が想像してる状況が正しいなら最悪な状況です。」

「何だヨ。ハッキリ言ってヨ。」

「襲撃にはスモークグレネードが使われたそうです。」

「!!!」

「自分ももう勘付いているので言いますが、襲撃者は杏珠さんですよね?倉庫から盗られた物。その中にはGearsから仕入れた特注品のスモークグレネードがあります。アンジュさんがヴィジランテに手を出したのだとしたら…………姐さん???」


ワタシはガルディアンが考える最悪の状況を聞きながら笑みが零れていた。


「あぁごめんネ。でも大丈夫。オマエの考えてる最悪はワタシのより幾分マシだヨ。」

「どういう事です?」

「そのままの意味さ。さぁワタシも現場に行くヨ!」

「意味が分かりませんよ!何言ってるのですか姐さん!!それにヴィジランテとの約束が……。」

「アイツラだってウチの従業員を最前線で使おうってんだ!ワタシが介入したって問題無い筈だヨ。」

「それならば自分も行きます!」

「そんな姿で何しようってんのヨ?」

「車椅子は安静にする為の物です。歩くのには支障はありません。」

「じゃ安静にしなきゃネ。」

「しかし姐さんや杏珠さんだけ…………。」

「これは命令だヨ。今は怪我を治しなさい。」

「…………分かりました。」


オマエの気持ちは痛い程分かるけどネ。

今は我慢してヨ……。


終わらせなくてはいけない仕事を放り出してワタシは店を飛び出した。

実は結構焦っている。

何せ一大事である事には変わりないからネ。


シトシトと降り続く雨が余計にワタシの心に不安を運んで来る。


アンジュがヴィジランテに手を出した。

怪我人は出てないとの話だけど、明確な攻撃の意図はかなり罪が重いんだヨ。

バレる前に何とか2人を回収しないと!


「しかしまさかあの娘がホントにそこまでやるとはネ。」


思わず独り言が漏れた。


スモークグレネードの使い方なんて誰に習ったんだろう?ユージーンかネ?


アイツの影響だろうか……アンジュの行動は大胆になりつつある。

それでも誰も傷付けない様にするのはあの娘らしいと言うか……。


いつもは女1人で歩けば必ず誰かに絡まれるこの街だけど、今日はヴィジランテの動きが活発なせいか、イースト・エンドまでの道程でその様な輩に出会す事は無かった。


「お疲れ様です!お1人で大丈夫でしたか?」


ヴィジランテ本隊と出会う前に何とかウチの捜索隊と合流出来た。


「猫も杓子もヴィジランテにビビっちまって静かなモンだヨ。こんな鬼棲街は久し振りさネ。そろそろ夕方だってのに。」


16時を超えたイースト・エンドは霧掛かって薄暗く、しかしながらドルギースもアンブラもその活動の兆候を見せない。


「それでももうすぐ夜だ。完全に夜になる前にアンタ達は抜けるんだヨ?」

「了解しました!」

「ワタシはヒロに気付かれない様に単独で行動したいんだけど、今はどういう状況かネ?」

「我々は今人形が奪還された場所から東に100m地点のビルを中心として、円状に追い込む様にしてその中心に向かっています。誰が何処に居るかは不明ですが、後30分もすれば包囲は完成するでしょう。」

「そうか……誰か人形達を目撃した者は居るかネ?」

「今の所その報告はありません。まるで我々の動きが分かるかの様に、全く網に引っ掛からないので不気味です。」


アンジュの耳ならそんな芸当が出来てもおかしくはないネ。


「人形を奪って行った者は一体何者なんでしょうかね?」


そりゃアンタ達の大好きなあの娘だヨ。

なんて言えるワケない……。


「ワタシは何とかその輪の中に入ってみるヨ。アンタ達は引き続きヴィジランテの指示に従って行動して。」

「了解しました。」


包囲網は確実に狭まっている。

ワタシもウチの仲間の手引きが無かったら内側には入れなかった。

ヒロが直接現場に来ている程だ。誰もこの輪の中からは出すつもりは無いだろう。


思った以上に厄介だネ。

手詰まりになる前に早く何とかしなきゃ!


…………また銃声?


時折響く銃声はワタシの不安な心を煽り立てる。


アンジュ達じゃないだろうネ?


中で動く物があれば必ず銃を向けられる。例えこのワタシであってもネ……。


実は包囲が完成する前ならこの網からの逃げ道はある。

いくらヴィジランテと言えどもこの乱雑に建てられた建物群と、入り組んでいる路地や回廊を全てカバーしながら捜索する事は出来無い。


だけどアイツラは追い詰められる者の心理を良く知っている。

ワザと大きい音を出しながら進み、それから逃げる者は人気の無い方へ無い方へと向かってしまう。

そうしている内に包囲は完成し、逃げ道は完全に塞がれる。


ヴィジランテの動きを理解している奴等は捕まりにくいけど、小物のアンブラ達は大体これで捕まるんだ。

アンジュもそんな経験は皆無だろうし、あの聴力のせいで余計に罠にハマり易い。


だけどそのおかげでワタシにもアンジュを見付けられる算段がある。

包囲完成までは後30分。急がないと。


「…………アンジュ?…………アンジュ?」


ゆっくりと路地を移動しながら、ワタシは小声で囁く様にあの娘の名前を呼び続けた。

ヴィジランテまで届かないギリギリの声量。


果たして聞こえているかネ?

正直あの娘の能力はどこまで小さな音を、どの範囲まで聞き取れるのか分からない。

でもこの方法しか今のワタシには思い付かないんだヨ。


「…………アンジュ?…………アンジュ?」


反応は無い。


近くに居る筈だけどネ。

聞こえないんかネ。


包囲網の内側はもうそれ程広くはない。

だとしたら建物を移動している?


ワタシは適当な建物に入り、アンジュの名前を呼びつつ、空中回廊を使って建物を渡り歩いた。

用心もしなければならない。すぐ隣の部屋にはアンブラが居るかもしれないから。

銃のセーフティーロックは既に解除されている。


「…………アンジュ?…………アンジュ?」


まだ聞こえないかネ。

もしかして建物内だとワタシの声は遮られて余計聞こえづらいんじゃ……。

そろそろ時間的にも厳しくなってきたヨ。


…………。


思い切ってもう1度地上に降りた。

その時。

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