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Episode 128

1時間程で治療を終えたアンジュ達が戻って来た。

何やらゾロゾロと従業員達まで付いて来ている。


「杏珠さん!またライブ開いて下さい!!」

「は~い!w またカラオケ大会やりましょうか!」

「今度2ショットで写真撮って下さい!」

「2ショットですか……それは恥ずかしいですねw」

「お前だけずるいぞ!!」

「ちょっと喧嘩は……。」


皆でワイワイしている。

何なんだ一体…………。


「さぁさぁもう充分だ。アナタ達は遊んでないで仕事に戻りなさい。」

「了解です!すみませんガルディアンさん!」

「皆さんまた遊びましょー!」

「バイバイ杏珠さん!」


従業員達が去って行く。


「杏珠さんが歩いてるだけでこの調子ですよ……やれやれです。」

「この店で何が起こってるんだ?」

「皆んなアンジュのファンなんだヨ……。ウチに来た時に一緒になって遊んでたらネ……。ほらアンジュってアイドル性あるから。」

「え!!?アイドルだなんて……恥ずかしいですぅ///」

「何してんだお前等…………。」

「別に普通に酒飲んだり、カラオケしたり、アンジュが1人で漫才してた事もあったネ。」


頻繁にボラカイに遊びに行くと思ってたらそんな事してたのか。


「私の事より今はミカちゃんの事です!」


そうだった……。

ミカの右腕はキャスティングテープでグルグル巻きにされているが、その他は昨日より幾らかマシという程度の治療に見える。


「右腕の骨折は暫く掛かりそうですが、撃たれた左腕や下腹部は傷が塞がりつつありますし、その他の軽傷はほぼ完治しています。驚異の回復力です。一応感染症予防に抗生物質は投与しました。」

「シカさん聞いて下さい!ミカちゃん注射されても泣かなかったんですよー!偉いですよねー?」


親バカみたいな物言いだ。


「ユージーンも怪我の治り早い方だけど2晩でそれは凄いネ。やっぱり若いって事かネ?」

「おい!今密かに俺を年寄り扱いしただろ?」

「むかしからそうなの。ウチの体は少しおかしくて、大人より強い力を出せるしケガのなおりも早い。」


ミディアがあんぐりと口を開ける。


「初めて声を聞いたネ……。チョット変だけど日本語喋れるじゃないかヨ。」

「そう言えば自分を襲った時も結構喋ってましたね。」

「昨夜もちょこちょこ喋ってたよなぁアンジュ?」

「えぇ……ここに来るまでは私とは普通にお話してくれてました。まぁ主にアニメの話だったんですが……。」

「お前等がいきなり銃を向けるから萎縮したんじゃあないか?」

「それじゃワタシ達が悪者みたいじゃないか。そりゃ驚くヨ。オマエがいきなりガルディアンを襲ったヤツを連れて来たらネ。」

「ウチだって知らない大人からてきいを向けられてたらけいかいするわ。」

「ほれ見ろ。お前等が怖がらせるからだよ。」

「だからさっきは2人をどうやってしとめるかを考えていたのよ。とくにそっちの男の人のほうはかなり強いみたいだしね。」

「…………。」


場が凍り付く。


「おいユージーン?コイツ本当に危険はないんだろうネ?」

「た……多分な…………。」

「今はそんなつもりはないから安心して。お姉ちゃんのてまえもあるし。ちりょうしてくれた事にはお礼を言うわ。」

「まぁ良いヨ……。アンタがワタシ達をどう思ってるか。そこら辺の話をするのは後にするとして、今ワタシ達が聞きたいのはアンタのボスの事。何処のどいつで今は何処に居るのか。それを話して欲しいんだけどネ。」

「…………。」


また口を閉ざす。


「ミディアさん少し待っては貰えませんか?ミカちゃんもいきなり色々あり過ぎて疲れていると思いますので。」

「悪いけどアンジュ。あまり時間が無いんだ。これはミカを助ける事にも繋がる。」

「そうなんだヨ。この問題ではもう大勢の死人怪我人が出てる。その子の立場もハッキリさせないと助けられるものも助けられないんだヨ。」

「…………。」


ミカは俯いたまま。

話す気は無さそうだ。


「その子が親玉を庇う気なら悪いけどワタシ達の敵と見なすヨ?ボラカイとしてもそんな子の為にヴィジランテとやり合うのは真っ平ごめんだしネ。」

「それはそうですよね……。」

「さあミカ話すんだ。昨日も今朝も飯を食わせてやった恩を忘れたのか?」

「ユージーン…………。この子の心を突くには良い線いってるかもだけど……凄くダサいヨ?」

「…………。」


そんなダサい脅しにもミカは反応しなかった。


「お願いします。少しミカちゃんと2人にして貰えませんか?2人の方がきっと話し易いと思うんです。」

「杏珠さん危険です!その子はやはり気持ちが未だ"向こう"にある。2人になった途端殺されて逃げられますよ?」

「ディアンさん……。ミカちゃんは昨夜私の腕の中で震えながら寝ていたんですよ。タダ何かに怯えているだけだと思うんです。だったらせめてこの中では1番仲良くしてくれてる私と2人で話が出来れば……。」


今までもアンジュを殺して逃げる隙など幾らでもあった。

本当にハンターとして殺しの訓練を受けているなら指さえ動けば人など殺せるしな。


「アンジュ。さっきも言ったけど時間は無い。1時間。それがあげられる時間の限度だヨ。」

「それじゃ!?」

「姐さん!!いくら杏珠さんだからって今日は甘過ぎやしませんか?」

「事が円滑に運ぶならそれに越した事は無いさネ。」

「ですが……。」

「ガルディアンももっと信用しなヨ。アンジュはユージーンがパートナーに選んだんだから。」


何か照れるぜ。


「ワタシの部屋を使って良いヨ。あそこはスタッフも近付かないから。」

「ありがとうございます!行こうミカちゃん!」


アンジュがミカの手を引いて連れて行く。

オフィスを出る前にミカが振り返ってこう言った。


「ありがと"オバさん"。アナタももしかするといい人なのかもね。」

「なッ!!!!!」


爆弾を投下して出て行った。


「フフ……オバ……さん……?」


俺は笑いを堪えるのに必死だ。


「姐さん!あれくらいの歳の子は大人の女性は皆オバさんになってしまいますから!決して姐さんが……。」


ディアン……外国人の子だぞ?フォローになってない。


「あのクソガキィ……。やっぱり今すぐヴィジランテに引き渡してやろうかネ!」

「姐さん落ち着いて!」


ミディアは納得出来ては無いと言った様子だが、本気で激怒している訳でもなさそうだ。


「まぁ子供の言った事だしネ……。」


だが少し落ち込んでいる。


「それよりさっきミカが言っていた事だが……。」

「身体の事ですか?」

「あぁ。気になったのは大人より強い力を"出せる"って言い方だ。つまりは通常ではその力を持っていないって風に聞こえるんだが……。」

「確かに兄さんも襲われたなら分かると思いますが、あの体格で、あの大きな斧を、あのスピードで振り回すのは物理に反している様にも見えました。まるでファンタジー系RPGゲームのキャラを見ている様でしたよ。」

(たま)ーに居るらしいネ。興奮状態でアドレナリンが異常に分泌して、普段使っている力以上のものが出せる人。日本語で火事場のクソ力だっけ?そういう物の類だろうネ。」

「そうしたらミカは使いたい時にその力を使える。そういう風に解釈出来るな。」

「恐らくそうでしょう。右腕の骨折。物理的な骨折と言うよりも、疲労骨折に近い物でした。日常的に力を酷使していたのでしょう。しかし力を使い過ぎると身体が付いて行かない。怪我や故障は常態化していた筈です。」

「だけどもう1つの特殊能力、怪我の治りが早い事によって今まで再起不能には至ってない。そういう事だよネ?」

「もう1つと言うよりそっちがメインだと思います。これは治療時に彼女の無数の傷跡を見て思った自分の仮説ですが、彼女は幼少の頃より生まれ育った環境のせいで、何らかの身体的ダメージを負う事が多かった。ですからまだ発達途上であった身体はそれに適応するべく自己治癒能力を異常に高めた。」

「だがこの世界はMarvel Comicsの中じゃあない。特殊能力手に入れてそれだけで終わる訳無いよな……。」

「そうです。その能力と引き換えに失う物がある筈です。それは恐らく彼女は長く生きられない……。彼女の身体は幼少の彼女を生かすべく寿命を捨てて特殊能力を生み出した。エンジンと一緒です。回転数を上げれば良好な"燃焼状態"を作れますが、それは自身を消耗させ寿命を減らす事にも繋がります。彼女は常に"高回転状態"なのだと思います。力のリミッターを解除出来るのはその副産物でしょう。」

「何だか急に可哀想になって来たヨ……。もしあの子の飼い主がそれを知ってて利用しているとしたら…………。」

「とんでもねぇ野郎だ!テメェは前線に立たず、挙句に1から10まで青臭い餓鬼にケツを拭かせようってんだからな!」

「まだ相手が何を考えてるのか分かりませんが……。」

「自分が逃げる事しか考えてねぇさ。」


俺はそう言い残すとドアノブに手を掛けた。


「ちょっと何処行くのヨ!ユージーン?」

「ミカが喋るまでなんて待ってられない。その間に逃げられない様に俺が捕まえて来てやる。」

「そんな事言って宛てはあるのかネ?」

「無い。だがどうせ潜んでいるならイースト・エンドしか無いだろ?」

「本当に直情的な奴だヨ。ほらこれ!もうヴィジランテが調査してるから何も無いだろうけど、あの子が2日前まで使ってたアジトの場所だってヨ。情報0で動くよりかはマシだろ?」


ミディアから地図を渡される。


「そうだな……何も無いよりか良いか。サンキュー。」

「サッサと見付けて来なヨ?」

「すみません兄さん。自分もこんな状態ではなければお力になれたのですが……。」

「気にすんな。それよりミカを頼んだ。」

「お気を付けて……。」

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