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Episode 123

「さて……アドミン。」

「何ですヒロさん?2人きりになった所で遂に私に愛の告白ですか?」

「…………。」

「嫌だなぁ。冗談ですよ。」

「お前が言うと冗談に聞こえんな。」

「ウフフ。それで……?」

「お前の事だからどうせ正体の目星はついているんだろ?」

「えぇ。床の方は昔からこの街の情報屋の男です。最近ではアンブラにも情報を売っていた。そんな危ない事をしていればいつかはこうなると思ってました。」

「そっちじゃねぇよ。人形の方だ。」

「あぁ……それが……さっぱりですね。何か1つでも手掛かりがあれば……。」

「そうか……。」


焦っていたとしても相手もプロ。

他に決定的な証拠など残ってはいなかった。


「バスルームにはこの変な鞭しかなかったよ。」

「鞭ですか……前の住人の物かもしれませんし、これから犯人に辿り着くのは難しそうですね。」

「でも何に使っていたのかな?やっぱSMプレイ?ホントに変態さんだねぇ。」

「う~ん。それにしてはお遊び用の鞭ではない様にも見えますが。……ヒロさん??」


ヒロが考え事をする様にジッと鞭を見つめている。


「あ……いや…………。」


その時丁度ヤンクも戻る。


「キッチンは何もねぇな。本当に人形はここに居たのか?生ゴミの1つも落ちてないぞ?」

「良く気が回る連中だと言うことです。逃げる前に処分したのでしょう。」

「ゴミね…………。ここらではゴミはどうしてるのか分かるか?この建物にはラビッシュシュートがあった様だが?」

「今は収集される訳でもないですからね。新しく捨ててもシュート内に詰まっているだけでしょう。」

「そいつら今日の分は隠滅で持って行ったとしても昨日までのはどうだろうか?」

「……見てみる価値はありますね。」


全員で部屋を出てシュートの前に移動する。


「えぇ!!なんで僕がまたこんな臭い所に降りなくちゃいけないの!?」


ジョヴィアルが自分の役割に大きな拒絶を示す。


「我慢して下さい。あなたが1番身体が小さくて体重も軽い。この縦穴の狭いシュートに入るにはうってつけなのですから。」

「おえぇぇぇ。嗅いでみてよ!さっきよりも臭いよこの中!」

「明日"あの店"のフルーツタルトを買ってあげますのでお願いします。」

「うぅ。また物で釣ろうってのかいアドミンは?こんな臭いが鼻に残っちゃったらタルトだって美味しく食べられないよ……。」


ブツブツ言いながらもシュートを降りる準備を始める。


「おーい!大丈夫かー??」


ヴィジランテの兵隊がジョヴィアルに綴り付けられたロープを支え、ヤンクがシュートを覗き声を掛けた。


「あと2mくらい下だよー!!そこで詰まってるー!!」

「OK! ジョヴィーボーイ!お前等!2m降ろしてくれ!」


ロープはゆっくりと降ろされていく。


「着いたよー!!止めてー!!ヤンクー!!」

「よし!!お前等ストップだ!」

「おえぇぇぇ!!!ホントに臭いー!!でもピッタリだよー!!ありがとヤンクー!!」

No(どう) problem(致しまして)!! 気を付けろよー!」

「何かありますかー!?」


アドミンが口を挟む。


「うーん……。まだ新しいコンビニ弁当みたいなのがあるけど……これは何かの証拠になるー!?」

「コンビニ弁当ですか……。そんな物では手掛かりにならないですね。他にはありますかー!?」

「他にはー!!えーっと……。あっ!!!ワインボトルみたいなのがあるよー!!」

「飲食物だけでは彼等を特定する証拠にはなりませんね。」

「いや待てよ?ワインボトルだろ?」


ヒロが反応する。


「アルー!!そのボトルを持って来れるかー!?」

「これ1つなら余裕だよー!!」

「持って来てくれー!!」

「あいあいさー!!」


降ろす時と同じ様にゆっくりとジョヴィアルを引き上げる。


「ハァ…………。(ようや)く着いたぁ。もう僕は絶対に行かないからね!!?」


ボトルをヒロに手渡しながら不満を訴える。


「ご苦労だった。オレからも今度何か奢ってやろう。」

「ホントに!?やったー!!忘れないでよ???」

「あぁ。約束だ。」


小躍りを始めるジョヴィアル。

普段ヒロに褒められる事があまり無い彼には、これ程嬉しい事は無いだろう。


「それでヒロさん。何か分かりますか?ワインボトルにしては小さいですね。」

「あぁ。これはコニャックだ。しかも旧ソ連時代のモルドバ産だな。高級品だ。しかも海外から持ち込まれている。」

「と言う事は……?」


ヒロはアドミンを制止し、今日手に入れた証拠品を改めて見回す。


「アドミン。」

「何です?」

「キッズポルノを調べられるか?」

「えっ!!?」


ヴィジランテの面々がヒロからあからさまに距離を取る。


「ヒロさん……。どんな性的誘惑にも屈しないと思っていたら…………。」

「Oh...ボス……。そんな……まさかボスがペド…………?」

「ヒロ君?そういう趣味なの?」

「うるせぇお前等ぁ!!!」


ヒロはキレ気味に叫んだ。

その表情はアドミンをも黙らせる貫禄を備えている。


「じょ……冗談ですよヒロさん。でキッズポルノですね?」

「……ったく。そうだ。それも5年前くらいから最近に至る迄、東欧から出回ったヤツを探してくれ。」

「成る程……。そういう線ですね。かしこまりました。」


アドミンは全てを理解したか様にそのニヤケ顔が更に濃くなった。


「何々??僕達は蚊帳の外かい?」

「アドミンには別の件で動いて貰う。それでお前等にはあの部屋の掃除を任せる。」

「えぇ!?アドミンだけずるいよー!!」

「お前にアドミン程の情報収集能力があるなら交代してやっても良いが?」

「……すみません。無いです。」

「じゃ各自さっさと取り掛かってくれ。」


その場の全員が揃ってヒロに対し了解の合図を送る。

その姿は訓練された軍隊の様だった。


「その前に……。今からこの案件を最優先事項とする。ヴィジランテ全隊に通達してくれ。」

「新型ドラッグの方は……?」

「後回しだ。どうやら鬼棲街はとんでもねぇ化け物を迷い込ませちまったみたいだからな。」


ヒロが先程の部屋を見つめながら口元を引き締め呟いた。


「全員に銃器の携帯、発砲を各自の判断で許可する!」

「かしこまりました。」

「さぁて……化け物退治と洒落込もうか…………。」


ヒロは闇夜に不敵に笑う。しかしその目には笑みが一切無い。

外では降りつける雨がこの街の闇を一層深く落とし込んでいた。

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