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Episode 109

「遅ぉぉぉぉぉぉぉい!!!!!」


俺は戻るなりミディアの鉄拳制裁を受ける。


「オマエ!!!予定より1時間も遅いじゃないか!!こっちは心配したんだヨ!?鬼棲街で日が暮れた後はどんだけ危ないか分かってるだろ!?」


いや俺のせいじゃあないんだが……。


「申し訳ありません。」

「いえ劉さんが謝る事ではないですヨ。」


劉は蛇唆路で目を覚まし、そのまま素直にボラカイまで付いて来た。


「いやだから遅れたのはコイツの……。」

「うるさい!!!言い訳は後にしな!」

「まぁまぁミディアさん落ち着いて!シカさんもそれなりの理由があったんだと思いますよ?」


アンジュがフォローに入ってくれる。


「俺は俺の仕事を出来る限りちゃんと(こな)した!ミディアに文句を言われる筋合いは無い。」

「だったら成果はあったんだろうネ!?」

「…………。」


成果と言われれば何も無い……。


「望んでいる調査結果は得られませんでしたが、それは彼等のせいではありません。ですので依頼料も全額支払います。」

「そうですか……それは残念です。また調査を行う場合は是非声を掛けて下さい。」


声を掛けてくれって……俺はもうコイツとは行かないぞ!?


「…………その時があればよろしくお願いします。」


劉は浮かない顔で答えた。


「では表通りまで送りを出します。ガルディアン!?」

「はい姐さん!」


間髪入れずにディアンが応接間に入ってくる。

コイツも常にドア前に待機でもしてるのだろうか?


「誰か見送り出来る人間は居るかネ?」

「はい!用意します。」


イエスマンは大変だな。


「それでは劉さん。お気を付けて。」

「お世話になりました。」


ディアンに連れられて劉が部屋を後にする。


「それで……彼は何か言ってた?」

「何も。口を閉ざしたまま終わっちまった。だがやはり餓鬼共に用があったのは間違いなさそうだ。」

「やっぱり"ドルギース"に?何の用があるって言うのヨ。」

「俺が知るかよ。まぁ今回の依頼は調査協力とは言われてない。飽くまでナビゲートとボディーガードだ。依頼は完遂してるんだから細かい事は良いじゃあないか。」

「そうなんだけど……。結局何が目的だったんかネ……。」

「今回の仕事も完璧だったんですか!?流石シカさんです!」


いや完璧かと聞かれると(はなは)だ疑問だが……。

それに俺はアルの後ろに付いて回っただけと言う情けない物でもあった訳だし。


「ハッ!!!私今回何もしてない!!!と言うか出番これだけ!!?」

「まぁまぁアンジュ。今回はちょっとばかし危険かもしれない依頼だったからネ。ユージーンにだけ頼んだんだヨ。」

「そんなミディアさん!!!私達コンビなのに!ふぁくとたむなのに!!!」

「ごめんネ!」

「もぉぉぉぉぉ!!」

「あ!!そうだ!今日サーモン仕入れてあるんだヨ!ディナーも食べてってよネ。」

「え!?サーモンですか!!?」


機嫌がガラリと変わった。

食べ物に釣られる所とかやはりアルは似ている。

だから今日俺は久々に会うアルと何だかんだで上手くやれたのかもしれない。


「ネ?ユージーンも良いよネ?偶にはガルディアンと仲良く一緒に料理したら良いんじゃない?アイツも随分と腕を上げたからネ。」


それはこの前感じた。

コーヒーも料理も段々美味くなっている。


「そうだな。偶には良いかもな。」

「やったぁ!!シカさんのサーモン久々です!!!イクラはありますか!!?」

「「ありません!」」


ミディアと声が揃う。


「えぇ!それは悲しいかよ……。でも全っ然問題ありませーん!だってサーモンですから!!!」


奇妙なサーモンダンスとやらを踊り出すアンジュを尻目に俺はキッチンへ向かう。


「何だ?お前も来るのかよ。アンジュは放っておくのか?」

「大丈夫。あの娘あーなると止まらないし、置いてかれた事に気付いたら飛んで来るから。」


もう扱いに大分慣れていらっしゃる。


「それより男同士イチャイチャと、シッポリと料理してる所見たいじゃないか。」

「コラコラ変な言い方するなよ。お前そっちの趣味あるのか?」

「男が仲良くしてるのを見るのが嫌いな女は居ないと思うけどネ。しかもムキムキが2人…………。」


駄目だコイツ。早く病院に連れてかないと。


「兄さん!手伝ってくれるのですか?」


キッチンに入ると包丁片手にディアンが迎える。

それを後ろからニヤニヤ見つめるミディア。


「ちょっとー!!置いてかないで下さいよぉ!」


遅れてアンジュがやって来る。

こんなに騒々しいキッチンは初めてだ。


「さぁ兄さん始めましょう!」

「ワクワク!何が出来るんですかねー!」

「もっと2人くっ付いてヨ!」


ハァ……やれやれだ。


今日も溜息を漏らしつつも俺の顔は笑っていた。

8章完

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