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Episode 105

「やっほー!!こっちだよ!時間通りだね!あ!!!シカリウス!!?やっぱマジでこの街に居るの!?ウケる!」


鬼棲街の入口でヴィジランテの1人と合流する。

しかし俺はソイツの登場に頭を抱えた。


何でこんな奴が……。

まぁ俺としては他の奴より気は楽だが。


「どうもー初めまして!こんにちは!今日案内人を務めるジョヴィアルです!よろしくねー」

「劉です。よろしくお願いします。」

「よろしく……。」

「なんだよーシカリウスー!つれないなー!」

「おい!!お前逆に邪魔になるから帰れよ!」

「酷くない!?これでも僕はもうヴィジランテの幹部なんだよ??今日はアドミンの指名を受けたんだから!!」


アルが幹部!!?

ヴィジランテは相当人手不足と見える。


"能天気"と言う言葉がこれ程ピッタリな奴を他に俺は知らない。

アンジュと通ずる物もあるが、アルの場合はまた違ったベクトルで、言うなれば底抜けのアホ。


「あの何か問題が?」

「いえいえ!何も問題無いっすー。この人がちょっと繊細なだけなんで。見掛けによらずにね!」


この野郎……。


「とにかくその調査とやらを急がないと!僕も夕方以降の鬼棲街では安全は保証出来ないからね。」


ニヤリと笑うアルに大人びたモノを感じる。

確かにコイツも俺が去った後10年、この街で危険な仕事をしながら生き延びて来たんだ。


「えーっと!依頼主さんはどんな場所がご所望かな?」

「若者が集まりそうな場所が希望です。もしくは中国系のコミュニティがあれば……。」

「若者……ね…………。」


やはりコイツも曇った表情を浮かべる。

鬼棲街の餓鬼共は基本的に誰もが嫌忌する存在。


「取りあえず若者ってのは置いといて、中国系から攻めるかね!とは言ってもこの街は人種の坩堝(るつぼ)で、同じ人種だけのコミュニティってのはあまり聞かないな……。」

「我々は世界の何処に居ても独自に集まってしまう嫌いがあるのですが……。」

「やっぱ中国人の総数は多いけどね!街自体がそんなに大きくないから、彼等だけってのは聞いた事無いなぁ。」

「この街は昔からそんな感じだったな。面白い話で、母国語で会話していると虐げられるんだ。だから同じ国の出身者のみでのグループが出来難い。」

「そうですか。それはまた不思議な街ですね。しかしそれならどうすれば……。」

「ま!じゃ!宛もなく歩いてみますか!」


だからコイツはアホなんだ……。


「馬鹿野郎。それじゃあどうしようも無いだろ?」


アルとヒソヒソ声で話す。


「でもシカリウス?この人何がしたいか分からないし、アドミンからも適当に誤魔化せる事は誤魔化しとけって言われてるんだ。」

「しかし収穫ゼロにしたって満足してくれないだろ?」

「でも僕達の仕事は案内と護衛であって、調査が上手く行くかは関係無い。元々真面目に協力する気なんて無いよ。」


一理ある。

コイツ等にとっては招かれざる客だ。


「あの!行かないんですか?」


劉が痺れを切らす。


「よし!じゃシカリウスは放っといて始めよう!」

「お……おい!待てよ!」


俺を置いて2人が歩き出す。


これはまた一筋縄では行かない日になりそうだ…………。


本当に宛もなく只街を彷徨う俺達。

アルは完全に遊んでいる様だ。


住人達からの好奇の目に晒される。

当たり前だ。銃の携帯を許可されているヴィジランテの幹部に、スーツ姿の上品そうな中国人。それに加え目付きの悪い謎の男のセットがウロウロしてるのだから。


「何か我々が目立ってる様ですが……?」

「当たり前だよ!そもそもこの街にスーツを着てる人なんか居ないからね!」


この時間は住人の野外活動が活発な分余計だろう。

昼過ぎから日が落ちるまでが最も人が外に溢れている。

その後は著しく治安が悪くなる為、皆屋内か比較的安全な街の西部へと活動の場を移す。

午前中はと言うと……"あそこ"のジジイ共を含めた年寄り連中や、1部の者達しか外には出て来ない。


「それに想像してたのと違いますね。もっと若い人達が多い街だとばかり……。」


劉は住人の顔を確認するだけで特に調査をしてる様な素振りは見せない。


「昔はもっと多かったけどな。この街も少子高齢化の煽りを受けているのさ。」

「僕はまだまだ若者の部類じゃない!?シカリウスと違って。」


アドミンと言いヴィジランテの野郎共は同じ様に俺を馬鹿にするんだな。


住人の殆どは怪訝そうな顔で俺達を見るが、アルはその人当たりの良さから偶に話し掛けられる。

特に年配からが多い。孫の様にでも感じているのだろうか?


その内容は世間話ばかりで、役に立ちそうな物は殆ど無かった。

それでもアルがヴィジランテだからか、中には物騒な話を振ってくる者も居た。


「先程の老人が言っていたイースト・エンドとは何でしょう?」

「え?イースト・エンド?この街の東端にあるエリアの事だけど?」

「今日はそこへは?」

「悪いけどいくら昼間だからってあそこの調査には連れて行けないんだ。何が起こるか分からない、そんな場所だからね。」

「そうなんですか……。」


劉は少し不満そうな顔も見せるが、俺達は再び宛も無く歩き出す。

やはり会話をするのは年配とばかり。本当に協力する気が無いらしい。

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