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Episode 99

「アンジュ!!どっちに行った!?」

「シカさん!!その路地を右です!!」


ジッとしていても汗が零れ落ちる7月13日。

天気予報では後1週間程で梅雨明けの予定だが、まだまだ鬼掛かっている蒸し暑さ。

そんな中俺達は現在鬼棲街の路地を、汗を撒き散らしつつ走り回っている。


「すばしっこい奴だな!」

「そりゃ当たり前ですよw 相手が相手ですからね。」


アンジュの耳を頼りにターゲットを追い掛けているが中々捕まえられずにいる。


「あ!!反転してそっちの方向に向かって来ますよ!チャンスです!!!」

「マジかよ!それはそれで怖いぞ!」

「怖がらないで頑張って下さいw」


まぁ小さい相手だ。何とかなるだろう。


チリン……。


その時俺にも音が聞こえた。


「接触します!左手の路地から飛び出して来る筈です!」


その連絡にコンマ数秒遅れて視界の隅に動く物体を捉える。

俺は間髪入れずにそれに飛び掛かった。


これは…………猫じゃねぇだろ!!!


思わず心の中でツッコミを入れる。

滞空時間の一瞬に俺の目に入って来たのは、確かに情報通りの黒とオレンジ色の斑紋(はんもん)のある毛並みに、赤い首輪とそこに下がっている鈴。

ネコ科の動物だと分かるが、見た目はまるで小型のヒョウ。


やはりこういう事か……。


しかし1度跳び上がった身体は止める事が出来ずに、俺はそのヒョウらしきモノに掴み掛かった。


そのまま縺れ合った俺達は勢い余って近くの木箱に衝突する。

辺りに響き渡る箱が壊れる音と獣の鳴き声。


「シカさん!?大丈夫ですか!!?」


体勢を崩しながらも透かさず持っていた麻酔薬を打ち込み、大人しくなるまで必死に押さえ付けた。


「ハァハァ……。大丈夫だ。何とか捕まえたぞ!」

「流石です!!私も今そちらに向かってますので!」

「頼む。俺はもう疲れた……。」

「お疲れ様です!すぐに行きますので待ってて下さいw」


しかしこれが飼い猫の捕獲だとは笑わせる。


優に10kgは超えてるだろう横たわるその"猫"を眺める。

目を閉じ、身体が小さく上下している。どうやら麻酔薬のお陰で眠りへとオチてくれた様だ。


これは追加料金貰わないとな……。



―*―*―*―*―*―*―*―*―



遡る事2日前。


「アンジュ大変だ!!」

「何でしょう???」


鬼棲街に越して丸一日が経つが、俺は重要な事に気が付いた。


「実は…………金が無い!!!」

「うぇ!!?それは一大事ですぅ!!!!!」


叫びの様なリアクションを受け流しつつ俺は思っていた。

金が無くなるのは当たり前だ。

現在俺の資産は全て土に埋まってしまっている上に俺達には収入が無い。

最後に残っていた手持ちの金も、このビルを借りるのにミディアに殆ど取られてしまった。


「お金が無いとご飯が買えない……。ご飯が買えないとお腹が減る……。お腹が減ると死んでしまう!!!」


おいおい。腹が減った程度で死ぬならアンジュは毎日死んでるじゃあないか!


「何とかしなくちゃですね!?シカさん!!!」

「あぁ勿論だ。」


何か収入を得る仕事をしないと……。

しかしもう殺し屋は廃業状態だし、俺に何が出来るだろうか?


「私に出来る事と言えばアテレコか……歌う事か……。そうだ!ストリートで歌ってお捻りを稼ぎましょう!!」

「そういうのは金を持っている奴等が居る場所でやって初めて貰えるんだぞ。ここでは俺達みたいに金の無い奴等ばかりだ。」

「そんな……ではどうしましょう…………。」


やはり俺がアンジュに内緒でミディアから殺しの仕事を……。


「と言うかシカさん!忘れてましたけど私達コンビ組みましたよね?」


確かに名屋亜美救出の際に盛り上がってそんな事になったな。


「まだコンビ名も決めて無かったですし丁度良い機会じゃないですか?私達コンビで正式に何かやりましょう!!何せ私はシカさんにとって最強の相方ですからねーw えへへーw」


また言ってる……。

余程嬉しかったのか?

しかしアンジュでも出来る仕事か。

どっちにしろあそこを頼るしか無い様だな……。

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