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あとがき
あの日の私は、
泣きながら、それでも必死に生きようとしていた。
誰かを守りたいと思いながら、
自分を守ることをすっかり忘れていた。
けれど今なら言える。
――生きていて、よかった。
あの日流した涙も、あの苦しみも、
すべてが「誰かに優しくなれる力」へと変わった。
過去は、決して消せない。
けれど、未来は何度でも描き直せる。
もしあなたが、今まさに暗闇の中にいるとしても、
その闇は永遠ではない。
ほんの少しでいい。顔を上げて、光を探してみてほしい。
その光は、きっと――あなたの中にある。
私は、あの日の私が生きたかった「未来」を、
今、生きている。
だから、あなたも。
どうか、自分の未来を、生きてください。
痛みは、完全には消えない。
それでも、人は痛みを抱えたまま笑うことができる。
もう二度と戻りたくない過去。
けれど、あの過去があったからこそ、
私は今を、こんなにも大切に感じられる。
涙の跡が、
新しい強さの証となりますように。
そして――
この物語が、誰かの小さな光になりますように。
完




