表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
四葉のクローバー  作者: KIKU
23/28

終わりと、はじまり


結局――母の言うとおり、

彼を法で裁くことはしなかった。


その選択が正しかったのか。

今でも答えは出ない。


ただ、あの頃の私はもう、

戦う力をどこかに置き忘れていたのだと思う。


後日、警察が彼の部屋に入り、

問題の写真をすべて確認し、削除を命じた。


それで、すべてが――終わった。

はずだった。


だが通報したことで、

逆恨みの危険があると告げられた。

家のまわりや学校の近くではパトロールが強化された。


また、

「ひとりで帰らないこと」

「細い道には入らないこと」

「夜道を歩かないこと」

と指導を受けた。


守られているのに、

心はずっと閉じ込められたままだった。


それでも、少しずつ世界は静けさを取り戻していく。


けれど、残ったものはほとんどなかった。

かすかに残ったのは、

見えない心の傷と、

ひとつの“夢”だけ。


どれくらいで癒えるのかも、

どうすれば忘れられるのかもわからなかった。


それでも前を向こう、と小さく決めた。


あの日、私を救ってくれた警察官の背中を思い出す。

堅いと思っていた制服の中に、

意外なほどのあたたかさがあった。


――ああ、私もこんなふうに誰かを守りたい。

――この痛みを、誰かの光に変えたい。


その想いが芽吹いた瞬間、

胸の奥で小さく灯がともった。


警察官になりたい。

あのときの私のように、

孤独の闇で助けを求めている誰かを、

もう二度とひとりにしないために。


いつか――生活安全課で。

あの優しい人たちのように、

静かに寄り添える存在になりたい。



そう思えた時、

ようやく本当の意味で、

“終わり”が“始まり”に変わった気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ