新たな事実。
それから数日後、母と私は再び警察署の扉をくぐった。
あの日とは、どこか空気が違っていた。
報告書の記入を終え、担当の人は言った。
「今後、彼から連絡が来ても動じないように」
私は一度席を立ちかけた。
だが、胸の奥に残っているものがひとつだけあった。
それを告げずにいる限り、私は本当の意味で前に進めないように思えた。
数日後、私は迷いながらもう一度、相談機関へ電話した。
深く息を吸って、言葉を紡いだ。
「……裸の写真を撮られました。
消したと言われたけれど、本当に消えているか確認してほしいです。」
その告白のあと、室内に重い沈黙が落ちた。
時計の秒針だけが、やけに大きく耳を打つ。
「それから、トイレのときに撮られそうになって……
気づいてカメラを返したら、『見せろ』と言われて、結局トイレの中までついてこられて……」
唇が震えて、それ以上の言葉は出なかった。
「……尿を、コップに取らされたこともあります。」
その一語を放った瞬間、胸の奥で何かが崩れ落ちるのを感じた。
その夜、仕事で遅くなった母から電話があった。
受話器の向こうで、怒りと悲しみが混ざった声が震えていた。
「……意味がわからん。どんだけひどいことされとると……」
数秒の沈黙のあと、母は震える声で訊ねた。
「……生理は、ちゃんと来とると?」
怒りでも責めでもない、ただただ恐怖が滲む声だった。
私は何も答えられなかった。
泣くことも、言い訳することも、できなかった。
電話が切れたあと、胸の奥でまた一つ、静かに崩れる音がした。
翌朝、母と私はふたたび警察署へ向かった。
自動ドアが開く冷たい音が、いつもより大きく感じられた。
母は無言で歩き、横顔には迷いがなかった。
今度こそ、この闇のすべてを終わらせる――
そんな確かな決意が、その背中から伝わってきた。




