2 誰かの願い
神様の気まぐれかなにかで、人類は産業革命以来の大革命を経験したわけだけど、実は、ぼく達の町にはもうひとつ変化があった。
何が起きたかって?
いいよ、話そう。
町から一歩も出れない。それがぼく達の町の現状だ。
さらに言えば、外から町に入ることもできない。
うん、言葉にすると至極簡単だね。
けれど、ちょっと理解できない。
『声』の後、すぐに起きた現象だから、きっと神様の『力』が関係しているんだろうけど……
「町を他の世界から分離させたいと思っていた」人なんて変じゃないかな。
一体、何を願ってたらこんな現象を起こすんだろう?
いっそ、『力』とは無関係だって考えた方が楽なんだけど、少し不自然な仮説だ。
他人の考えていることなんて分からないし、分かろうとするのはおこがましいことなのかもしれないな。
きっと、世界には、自分の町を世界から孤立させたいと思っている人だっているんだ。
これ以上考えても無駄だから、ここで思考を停止。
そうそう、なぜか? っていう疑問は科学の発展にも欠かせない重要な感情だけど、もっと大切なのは今をどうするかってことだからね。
今はなんとかなっているけど、時間が経てば世界との繋がりを断ち切られたこの町は、だんだんとその機能を停止していく。
その前に暴動が起きるかな?
それか、もしかしたら超能力バトルみたいなことが起きるかもしれない。
まあ、どちらにしろ、今の状況ではぼく達の町が滅びるのは、正に時間の問題だということだ。
電波や光や音は町の出入りをできる。
けれど、手に持てるような物は、全然何も町の境界を超えることはできなくなった。
インターネットもテレビも繋がるから外の情報は手に入るけれど、食べ物も衣服も生活に必要な品物はことごとく手に入らない。
大人達はみんないろいろと騒いでる。
『力』を規制するとか、町を救出する方法だとか。
けれど、ぼくはこの日常に訪れた、非日常に次ぐ非日常に興奮を覚えていた。
何かが変わりそうな予感。
日常の崩壊。
見えない未来への希望、期待。
トイレ瞬間移動能力でなにしようか?