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11 説明

「説明してくれませんか?」


ぼくはポワピィくんにそう言った。


レッドローズちゃんは、まあ、天使みたいではあるし、非常に美人でいいと思うのだけれど、どうも魔法戦士であることばかり強調していて、現実的なお話をしてくれない。


だから、参謀役のポワピィくんに、とりあえずこのよくわからない現状の説明を求めたわけだ。


「俺たちのこととかか? いいだろう。俺が全部説明してやる。でもその前に、お前がどこまで知っているのかを教えろ」


うん、なんかこのポワピィくんは話がわかりそうだし、できる男って感じだ。


好印象。


「えっとですね、ぼくはみんなが超能力を手に入れたことと、白小百合ちゃんが悪者だってことと、レッドローズさんが正義の味方っぽいことと、二人は人知を超えた戦いをできること。それくらいはわかりました」


「ふーん、まあ、大体それくらいは知っているんだな」


赤リスくんはふむふむと頷いた。


「基本的にはそれで正しいが、まだ説明を付け加えられるな……」


そこから、マスコットキャラによる長い長い説明が始まった。



時は一万年前にさかのぼる。

平和の国プリンプリンには、国中のすべてのエネルギーを作り出す愛の結晶、ラブクリスタルがあった。

そのおかげで繁栄を極めたプリンプリン。

しかし、その栄華も長くは続かなかった。

突如として現れた闇の存在、ファントム・バイブレーション・シンドローム卿によってラブクリスタルが砕かれてしまったのだ!

彼は、自分を絶対元帥とした暗黒の王国『混沌の夜の騎士団ダークネスナイト』を作り上げ、ラブクリスタルのカケラを自分の闇の力でダーククリスタルへと変え、それを使って世界征服を開始した。

しかし、ファントム卿に立ち向かうべく五人の少女戦士が立ち上がった。

それこそが、魔法戦士『レッドローズ』『ブルーアイリス』『イエローダンデリオン』『ピンクチェリー』『グリーンリーフ』。

愛の力でダーククリスタルをラブクリスタルに戻す力を持った彼女たちは、ファントム卿と壮絶な戦いを繰り広げ、最終的に彼の野望を打ち破り、勝利を収めた!

すべての闇に染まってしまったものを浄化しようとする魔法戦士たち。

しかし、ファントム卿の心の奥に固まったダークコア。

これだけは、どうしてもラブクリスタルに変えることができなかった。

そのため、魔法戦士たちはこのダークコアを封印すると、その管理人を歴代の魔法戦士が務めることにした。

そして、時が流れ、現在。

煉獄の胡蝶ジャッジメントバタフライと名乗る者によって、ダークコアの封印が解かれ、この世界は再び混乱に陥った。

その影響だろうか、世界中の人間は魔法のカケラを使えるようになったのだ。

現代の魔法戦士。

第千代目レッドローズである山本やまもと優梨奈ゆりなは、この事態に立ち上がった。

封印の管理人の役目だけでなく、戦いの訓練もしていた彼女は、代々伝わる魔法着を着ると、魔法が使えるようになる!

イケメン、頭脳明晰、才色兼備、運動神経抜群、世界一のマスコットキャラ、ポワピィとともに、世界の平和を守るために今日も煉獄の胡蝶ジャッジメントバタフライと戦いを繰り広げる!!



……要約すると以上のことだった。


長かった。上に、最後の部分が異様に長かった。


レッドローズが味方にした妖精がどれだけ優れているかについてが、話の三分の一くらいを占めていたのだ……


あと、色々とツッコミたかったけれど、あまりにも饒舌で流れるような語りに、ぼくは何も言えなかった。


「わかったかい?」


満足げなネズミはぼくに聞くが、正直色々わからない。


大体、「一万年前の王国ってなんだよ」から始まって、「愛の力とかww」みたいなのとか、「第千代目ってすごいね!」とか、「それって大体、最近人気のあのアニメの設定ですよね……」とか、まあひどいけれど。


とりあえず、闇の組織っぽい人たちは、揃いも揃って中二病だということはよくわかった。


煉獄の胡蝶ジャッジメントバタフライの時点で食傷気味なんだけど、ファントム・バイブレーション・シンドローム伯爵だっけ? (シンドロームか!)


かっこいい名前をとりあえずつけてみましたみたいな感じがね、ちょっと痛いね。


意味わかってないよね、あなた、って言いたい。


だって、ファントム・バイブレーション・シンドロームって、幻想振動症候群のことなんだぜ!?


って、こっちの方がかっこいいな……


まあ、それはともかく、ダークコアというのはきっと中二病的な力が篭った、黒歴史ノート的な何かなんだなと、納得しているぼくに向かって、レッドローズちゃんが情報を追加してきた。


「あのね、ポワピィの話にもでてきたと思うけどね。さっき瞬間移動した……」


微妙にいいよどむ。


「……トイレがあった神社がね、私が巫女兼魔法戦士を務める、ダークコアを封印した聖域なのよ!」


はあ、道理でこの街が、世界の中でも特別みたいな感じで、よくわからない障壁で守られているわけですね。


そう心の中で突っ込んだ後に、気づいた。


そういえば、この街に現れたよくわからないバリアみたいなのの説明を聞いてない。


そう思って尋ねてみた。


「そういえばなんですけど、この街って外出れないじゃないですか。なんで?」


「えっと、それは……」


ちょっと困った顔をするレッドローズちゃんにポワピィが助け舟を出した。


「それは、封印の印の魔法なのさ。古代の強力な魔法によって、ダークコアが世界に広がってしまうのを防いでいるんだ」


そう言って、キメ顔をした。


うん、なんだか、一応、筋は通ったような説明を聞かせてもらえたような気もする。


まあ、全体的に嘘っぽいけど。


特に、ぼくは詳しいわけじゃないけど、最近人気の女児向けアニメの設定と大体似通っている気がする……というのはいかがなものなんだろう。


ポワピィとかいう赤リスのキャラも出ていたような気がするし……


「だからね、やよいくん」


「はい、なんでしょう」


思考中断。


可愛い魔法戦士の少女、山本優梨奈さんを見つめる。


「私と一緒に神社に来て」


胸の前で両手を組んでお願いするレッドローズさん。


まるで、漫画的表現だなと思った。


けれど、何が『だから』なのかはよくわからない。


そんなものなのだ。人の会話なんてちぐはぐなのさ。と勝手に悟ってみる。


まあ、それはさておき、ぼくは快諾した。


「え、いいですよ。何するんですか?」


魔法少女は自分のマスコットと目配せしてこう言った。


「魔法の国プリンプリンに行くの!」


また、ぶっ飛んだことを……




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