「三日坊主」
「なぁなぁ、もしも神様がひょっこり現れて、三日の命になるかわりに何でも願いを叶えてやるって言ったら、なに願う?」
「じゃあ、長生きできるようにしてくれと頼む」
「無茶言うな、お前」
「そうか?神ならなんでもしてくれそうではないか」
「そーなんだけどなぁ…もっとちゃんとしたモンを頼めよ」
「短命になるくらいなら、わざわざ願いたいとは思わん」
「そんなもんかねぇ。じゃあさ、願いは叶えるけど、その効果は三日できれるって言ったらなに願う?」
「赤ちゃん」
「は?」
「育ててみたいな」
「…、…、…、…は?」
「人が言った事を一回で理解できないのか」
「お前…赤ん坊だぞ?人間だぞ?水あたえれば育つ植物じゃねぇんだぞ?わかってんのか?」
「お前以上に理解力は持ち合わせているつもりだが。普通、水では育たないだろ」
「当たり前だ。普通じゃなくても育たねぇよっ」
「大体、水で育てるなんて発想、お前くらいしか思いつかんだろうな」
「思いついた事じゃねぇよ。てか、産みてぇのか?」
「産めるか。僕は男だぞ。そんなことも知らないのか」
「そういう意味じゃねぇ!誰かと家庭でも築きてぇのかって聞いてんだ」
「別に。今のところそれはない。ただ単に子供を育ててみたいと思っただけだ」
「ポンって子供ができるかよ」
「何を願う?と聞かれたからそう答えただけだ。神様そっちのけで、実現可能なものの中から選ばなければならなかったのか?」
「イヤ、そーでもないが…」
「子供を育ててみたいな」
「じゃあ、本当にそれを願うんだな?欲のねぇ奴め」
「いや、願いはしないな」
「なんで」
「すぐ別れが来るものに情をもちたくない」
「…」
「だから、いらない。自分の望みくらい、自分で叶える。三日とは言わせないさ」
「へぇ、すごいなお前は」
「尊敬してもらっても構わないぞ?」
「それがなきゃいいんだが。じゃあ、願いを述べよなんて言いながら神様が出てきたらどうするんだ?」
「引っ込めって言う」
「せめて俺に譲ってくれ…」