たった一度のラブレター(400字小説)
貴方から初めて貰った手紙は、結婚式で読んでくれたラブレターでした。
その内容は愛に溢れていて、どんな宝石よりもキラキラしていて、言葉の端々に込められた思いは私の頬で涙に変わりました。
ズルイ、ズルイよ。
こんなもの読まれちゃったら、私は貴方に付いて行く事しか出来ないじゃない。
貴方はいつもこうして、私を追い込んで行ってしまうんだから。
嬉し涙でボロボロの私を、貴方は笑って。
嬉し涙でボロボロの私は、貴方に笑って。
いつまでも傍に居させて欲しいと、私の方からお願いするの。
ところで、署名にある『貴方を世界で一番愛している甲斐性無しのダメ男より』って誰ですか?
私を愛してくれる人なら知ってますが、その人は甲斐性無しのダメ男なんかじゃありませんし。
私は知らない人から手紙を貰っても嬉しくありません。
だから私は手紙を貰ったその後で、署名を正しく書き換えておきました。
『貴方を世界で一番愛している貴方の王子様より』って。