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童貞魔王と第四皇女:最終章 (1)

 夫人達は円卓を囲んで紅茶を楽しんでいた。周りではシルフィアとデモイラの子供が駆け回り、夫人達がそれを見て破顔する。見ればシルフィア・エフィリ・ロノリー・マシドナは大きなお腹をしていた。


(あぁ…これは夢ね…)


 長兄のカリオンを最後に見たのは、はたしてどれぐらい前だろうか。キールホルツ連邦自治領の自治領主長の就任式だったから、カリオンが60歳だったはずだ。こんなに幼い姿ではない。

 そうシルフィアが思った途端カリオンの姿が変化し、マクシムによく似た壮年の男性になった。混血であるカリオンは老化が遅く、実年齢の半分ほどの外見を維持している。


(やっぱり夢ね…夢の中で夢と気付くと、少し興醒めしてしまうわ…)


 見ればデモイラの子のアウロニスも大きくなり、王太子に相応しい風格を醸し出していた。夢が現実に近付いている。

 シルフィアは懐かしむように微笑みながら夫人達を順番に見ていった。


 マーマン種のフィシア・マーマジネス第四夫人。マーマジネス海洋共和国の元第二十八王妃。

彼女は御茶会に参加する事は無かったが、不思議とこの夢の中に現れた。彼女は11歳で輿入れし、一番最初にマクシムと子を成した。その数は4年ごとの3度の交合で138人にも及ぶ。短命種の為か23歳の交合を最期に大海にて消息を絶ち、その姿を確認した者はいない。シルフィアが見たのは最初の交合の時だけなので、夢の中の姿はその時のままだった。


 エルフ種のエフィリ・エルスペル第二夫人。エルスペル首長国連合の元第三王女。

輿入れした時が確か248歳で、今では330歳を迎えるが美しいままだ。年齢を重ねる事により落ち着きと艶美さが加わり大人の女性へと変貌している。マクシムとの間に7人の子供を授かり、彼らも外交や連合の要職に付いていた。500歳の寿命を持つ彼女は、今もマクシムと交合しているだろう。


 ノーム種のロノリー・ノムグラス第五夫人。ノムグラス共和国の元第八王女。

輿入れした時は24歳だが外見は10歳前後にしか見えず、それは80歳の天寿を迎える時にも変わらなかった。12人の子を授かり、その子達に混ざると判らない程だったのだ。母であるマチュリーの素行の為に交合に嫌悪感を持っていたが、ベッドに入れば一番貪欲で苦労した相手だとマクシムから聞いている。


 ドワーフ種のマシドナ・ドワギア第六夫人。ノムグラス共和国の元第八王女。

シルフィアの鍛錬法の師匠である。活動的で裏表のない性格は変わらず、110歳を過ぎた今も鍛錬を続けている。5人の子を授かり、閉経後は保健体躯省の特別顧問として保険体躯の普及に努めている。


 ハーピー種のハネラ・ハジュン・ハピスカイ第七夫人。ハピスカイ民国の元翁主。

8歳で輿入れし、12人の子を授かり、30歳を前に亡くなる。短命種である彼女が夫人達の最初の葬儀となった。短い期間の関係だったとはいえ、夫人達の互助関係を考える切欠となる。帝国崩壊後にハピスカイ民国は大統領制に移行したのだが、彼女の孫にあたる者が初代大統領に選ばれたのは驚きだった。


 アラクネ種のクモア・アラクヨワ第八夫人。南アラクヨワ連邦の当時の首相の第十二女。

北オガバレス連邦との戦争終結後、11歳で輿入れ。3年で45人の子を授かり、以後は子供たちの教育に専念した。短命種の為に40歳で亡くなるが、子供たちは祖国へと帰って復興に尽力しているそうだ。


 オーガ種のログネダ・オガバレス第九夫人。新オガバレス自治区初代代表の妹。

マクシムの2倍以上に大きい彼女は自治区とのパイプ役として尽力し、48歳で亡くなるまでに5人の子を授かる。子供達は彼女の役職を継ぎ、魔王国との友好を背に北オガバレス連邦の切り崩しに尽力している。


 第十夫人枠である獣人種だが、猫系・猪系・牛系・兎系の4種族の代表が3年交代で輿入れした。魔王国と戦争を起こした狼系はこれに含まれない。輿入れ二巡目にはより強固な同盟を築く為に子を成すようになる。妊娠すると郷に戻る為に正式な人数は不明だが、少なくとも50人を超える子を授かっているはずである。

 同様に竜人種も第十一夫人枠を持ち、こちらも何人の子を授かったか不明である。


 夫人枠には入らないがドライアド種のミドリア・パンドゥは、今も温室にて魔王国の環境指導役を担っている。観測者としては十一種の交流が盛んとなり混血種も珍しくなくなったこの世界に満足しているようだ。


 気付くと一人の女性が隣に座っていた。彼女はシルフィアの右手を取ると、その甲を優しく撫でてくる。彼女の手は温かく、夢にしては現実味を強く感じた。


 魔族のデモイラ・マクデゾン正妃。大ゴウディン魔王国西方公爵の第三公女。


「こんな風に2人で話すのは初めてね……いえ、貴女は眠っているのだから、話しているとは言えないわね…」


 デモイラはシルフィアを見下ろしている。シルフィアはいつの間にかベッドに寝ていた。そんなシルフィアを覗き込むデモイラの瞳は優しくも暗かった。


「魔王様なら別室で仮眠を取っているわ…貴女が危篤になってから7日間、無駄と知りながらも回復魔法を掛け続けたからよ。あの体力自慢の魔王様も、流石に昏倒されたわ」


 シルフィアは撫でられている右手を動かそうとした。しかし指一本すらまともに動かせない。


「……デモイラさん……」

「あら、お目覚めかしら…けど魔王様をもう少し寝かせたいから静かにしててもらうわ…そう、意識があるのね……良かった、最期に伝える事ができるわ」


 デモイラはシルフィアの右手を持ち上げ、その枯れ枝のような手に頬擦りする。

シルフィアは自分の右手を見て思い出す。自分が100歳にも届く老婆で、そして死に際にいる事を。


「シルフィア……シルフィア・ゴウディン…寄る辺無き故に唯一ゴウディンの名を与えられた者…私は貴女の事が憎くてたまらなかったのよ」

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