配達ロワイヤル
ショート映画(15分)を目安に作った脚本です!
久しぶりに脚本作品作って楽しかった!
配達ロワイヤル
EXT.高層ビル出入り口― 夜
男(ケン、23歳)の目の前、大きな自動ドア。
エントランスが見え受付係の若い女性が待機。
女性、座り、パソコンを操作。
ドア越しから覗くケン。
手に中サイズの箱を抱えるケン。
箱を眉ひそめ、見下ろし、ため息つく。
羽織るジャンパーポケットを探り
スマホ取り出す。
ホーム画面上に
「新着メールが1通」と表示、下部にその内容
「大丈夫、安心しろお前が一番乗りだ」
続けて2通目が表示。
「白猫ナデシコ配達の代表として、頑張れ!」
ケン、目を閉じスマホをポケットに戻す。
一度、深呼吸。
上を見上げ、高層ビルを感じる。
ケン「っし……僕なら、できるできるできる」
視線戻し、唱えながら、自動ドア作動。
一直進にエントランスの受付カウンターへ。
INT. 高層ビル内−夜
受付係「こんばんは、どうなさいましたか?」
受付場に若い女性一人。
ケン、足を小刻みに動かし、伝える。
ケン「え、えと、白猫ナデシコ配達です……」
言葉を詰まらせる。
名乗ると受付の女性はパソコンを操作。
受付係「お名前は?」
受付の女性は無表情。
顔を上げず、名前問う。
ケン「あ、えと加藤ケンです……同僚の鈴木が欠勤の為、配達員、変わりました……」
ケン、目を泳がし、スマホを取り出す。
スマホ覗くが何も無し。
ケン、静かにしまう。
ケン「21時に配達を頼まれました……
えと平子様、宛の荷物です」
受付係「はい、了解いたしました」
受付係パソコン画面見つめ、軽く、あしらう。
パソコン操作を繰り返す。
マウスのクリック音、聞こえる。
受付係「21時の白猫ナデシコ配達の加藤様、最上階35階の3501号室の平子様、宛の御配達ですね」
ケン「はい、間違いないです」
と食い気味に答えて目を見開く。
受付係「はい、ありがとうございます」
と受付係が立ち上がり、右手を挙げ
エレベーターを指す。
受付係「それでは彼方のエレベーターをご使用下さいませ配達中、何かご不明な事が御座いましたら、お声掛け下さいませ」
と流暢に受付係は話す。
ケンは首を縦に何度も振る。
ケン「はい!分かりました」
とゆっくりと動き出す
受付係「それでは」
と受付係が頭を下げ、椅子に座る。
カウンター上のアナウンスマイクに口向ける。
EXT. 高層ビル エレベーター内 −夜
ケン、エレベーターに乗り、ため息つく。
扉が閉まるとケン、階層ボタンを見る。
ケン「うあ、また、このパターンかよ」
と小さく嘆く。
階数ボタンは21階まで。
ケン、21階のボタンを強めに押す。
アナウンス「それでは今宵の配達員をご紹介致しましょう!」
押すと同時に
エレベーター内から放送音が流れる。
ケン、音に反応し、膝を曲げて縮まる。
ケン「はあ、もう……何なんだよ!」
エレベーター内に響く大きな声。
アナウンス「相良急便の田中様!そして――」
ケン、足を震わせる。
放送の声は先程の受付係の女性。
高い声であり、聞きやすい声。
アナウンス「白猫ナデシコ運輸の加藤様!」
ケン、額に汗を流す。
放送は陽気。
ケン「マジかよ……」
と小さく、呼吸が荒くなる。
エレベーターの階数表示19階から20階に変わる。
アナウンス「それでは今宵は、2名様による
配達ロワイヤルが始まりますよ!」
アナウンス「先に届け先に到着した方に報酬!
後の人は報酬無し!」
ケンは唇震わせ階数表示を見つめる。
アナウンス「さあ皆々様
準備は出来ていますでしょうか!」
エレベーター階数表示が21階に変わり
エレベーターが開き出す。
ケンは背中を丸めて身構え、扉の正面に移動。
アナウンス「それでは今宵も
Have a nice delivery……」
と放送は低音を効かせて終了。
同時にエレベーター開き出す。
開くと同時にケンの瞳孔も開く。
真正面、エレベーターも開く。
そこに、薄毛の中年の男が直立。
中年の男、中ダンボールを抱えている。
両者、見合う。
ケン、中年の男「うぁぁぁ!」
両者、雄叫びを上げる。
エレベーターから出て、直ぐ横の階段を駆け走る
両者、ダンボールを抱え、踊り場を通過
額の汗と頭皮の汗が辺りに飛び散る。
ケン「うあぁぁぁ!!」
放送、再び始まる
放送「あーあー、聞こえているかな?」
放送の主は低い男性の声。
放送、響く中
25の文字が描かれた壁に背中をつける。
ケン息を整える。
放送「どうも株式会社Hirako、社長の平子です、本日は私の貴重品を配達して下さる、御二方に感謝申し上げます」
放送流れる。
ケン「ちくしょ!何が感謝ッ!」
唾を吐くケン。
放送「“配達ロワイヤル”以前から、話は聞かされていたのですが、ホントに面白いですねぇ!」
ケン再び走り出す。
放送「こう、参加者のバックボーンを知ると、余計に楽しくドラマティックに感じるんですよ」
ケン、踊り場で頭を振る、汗が飛ちる。
ケン「っち!」
ケン、舌打ちをして階段を走る
だが次の階段にシャッターが。
放送「実は今回の参加者さんの情報を仕入れているので、見てみますねぇ……ええと」
放送「白猫ナデシコ運輸の加藤さん」
ケン、シャッターを蹴って、声を荒げる。
放送「彼は23歳という若さでの参加になります」
ケンは深呼吸をして息を落ち着かし目を閉じる。
放送「実は加藤さんは会社の同僚さんの代役という事で……この経緯ですら既に面白いよね?」
ケンは息を整えながら辺りを見渡す。
唾を何度も飲み込む音。
放送「して、彼が配達ロワイヤルに参加することになった理由は少し触れましたので、次にバックボーンにも触れておきましょうか」
辺り、部屋室がズラリと左右に。
それぞれの部屋室を歩きながら目視するケン。
放送「彼は女手一つで育ててくれた母親に報くいる為に高校卒業後、白猫ナデシコ運輸に就職――」
3001 3002と続き
3008の地点で正面向いて立ち止まる。
ケン「……っ、あの」
ケン、目の前に、先程の中年男。
中年男「ハッハッ、な、なんだよ……オマエ」
男は息を切らし、目が充血。
男のダンボールに首筋の汗、滴る。
ケンは唇を噛んで後退りする。
放送「就職後直ぐに運輸界隈に“配達ロワイヤル”と言う物があると知ると酷く慄いたそうだね」
ケン、荷物を片方の肩に乗せ
右腕をぶら下げた。
中年男「アンタ、顔色悪いな?」
中年男、ニタニタと笑いながら。
ケン、睨むが男は笑う。
放送「何度も何度も退職希望を取ったが中々、タイミングが合わず、今日に至る――」
中年男「どうやら俺が最初に配達出来そうだ!
この金で海外旅行するんだオレは!」
中年男「邪魔すんな!」
中年男、ケンの真横3008号室の
ドアノブに手を掛ける。
(ダンボール荷物を持ったまま)
中年男「あら、開かね!」
中年男、何度もドアノブを捻る。
(ダンボール荷物を持ったまま)
それを見たケンは3008号室正面の3024号室へ。
3024号室は開く。
思わず口角上げるケン
それを見て地団駄する中年男。
部屋に入るケン。
(ダンボール荷物を持ったまま)
飛び入ろうとする中年男。
ケン、扉を閉めると同時に中年男に言い放つ。
ケン「アンタ……顔色悪いぞ!」
ドアを肩で押さえながら鍵を閉めるケン。
EXT. 高層ビル30階 3024号室―夜
放送「どうだい?彼は可哀想な境遇だろ?
1人親の辛さや苦しさ、そして親への愛……」
と声高らかに放送主。
ケン「っち!」
玄関ドアに、もたれながら。
ケンの正面、月明かりが差していた。
ケン「絶対、仕事辞めてやる……」
月明かりに導かれるケン。
歩いていくとベランダが見える。
窓を開けて外へ出るケン。
ケン「流石に外からは聞こえないな」
ケン、ベランダから身を乗り出す。
下を覗き苦い顔をする。
身体戻して辺りを見渡す。
壁にくっつく、鉄のハシゴ見つける
ケン「あぁ、マジかよ、持ったままだぞ!」
ハシゴへ移動する。
ケン「っくそ!」
眉間寄せるケン。
ハシゴをしばらく見つめ、目を瞑る。
ケン、動き出す。
ハシゴとハシゴ、壁を利用し荷物を挟む。
そうして少しずつ登っていく。
INT. 自宅(食卓)―今日の朝(FLASH BACK)
母とケンが朝食を囲む。
テレビが少し離れた所で流れる。
ケン、表情柔らかく白米を食べる
母はその姿を見て微笑む。
母「アンタって本当に美味しく
ご飯食べるわよねぇ誰に似たんだが……」
ケンの目を見ながら。
ケンは目を丸くするが気にせず食べる。
2人、何も言わずテレビを見る。
ケン「母さん……」
ケン、水の入ったコップ持ち
テレビ見ながら母に語りかける。
母、何も言わずテレビを眺める
テレビの内容は天気予報。
ケン「今日、遅くなるから……」
ケン「夜ご飯要らない」
と吐息を混ぜながら。
INT. 高層ビル――夜
月明かりが、ハシゴを登るケンを照らす。
ハシゴの最先端までやってきたケン。
その場はベランダ、何もない広い空間。
荷物の下を、ゆっくりと持って上り切る。
荷物を持ちながら肩を回す。
呼吸を深く繰り返すケン。
ケンはベランダの柵から身を乗り出し
上を見上げる。上階は存在しない。
窓へ移動し部屋に入る。
部屋は暗い、月明かりが場を照らす。
月明かりによってケンの影が作られる。
ケン、直進し玄関扉を開く。
訪れた部屋号3524号室を確認して
千鳥足で歩くケン。
3508、3507と目視し、ゆっくりと。
ケン3501号の目の前に立つ。
扉を上下左右、確認し最後に部屋号を確認。
ケン、深呼吸をし、呼び鈴を押す。
ケン「白猫ナデシコ運輸です!
御荷物を届けに参りました!」
玄関に近づく足音が聞こえる。
ドアが、ゆっくり開く。
平子「おお、待っていたよ加藤さん……」
口髭が特徴的な男が出迎える。
放送の声と同じ声。
ケン「コチラ……御荷物になります」
ケンは持っていた荷物を平子に見せつける。
荷物は汗で所々、濡れている。
持ち手も潰れかけてデコボコ。
平子「うん、ご苦労だった」
と鼻を鳴らして、荷物を受け取る平子。
平子「ハンコかい?それともサインかい?」
荷物の上部に貼ってある配送ラベルを見て
口を曲げる平子。
ケン「いえ、大丈夫です……」
ケン、頭を下げて踵を返す。
平子「待ってくれ……どうぞ中へ、君とゆっくり会話をしたい」
と平子が白い歯を見せる。
踵を返し、肩をすくめるケン、後ろを振り返る。
黒目を大きくするケン。
INT. 高層ビル35階―夜
平子「コーヒーか紅茶、どちらがいいかい?」
と平子、リビングから少し歩いたキッチンで。
ケンは広いリビングのソファに座る。
ソファ、机、カーペットのみの部屋。
カーテンは開いている。
ケン「え、こ……紅茶で」
ケン、太ももを摩って落ち着かない。
掌が赤くなっているのを見て、手をぶらつかせる
平子「今回は運良く、参加者が君含めて2人しかいなかったと言う事で……どうだったかな今回は?」
平子、ティーカップを二つ分両手に持つ。
一つはケンの向かいへ。
二つ目を持ちながら平子座る。
ケン、出された紅茶を見つめる。
瞬きを何度も行う。
ケン「……」
ケン、黙る。
平子、ティーカップを掴んで
静かに呑み、再びスタンドへ。
平子「多い時は4人、5人と対戦するのを見た事があるよ、推しの配達員が脱落したり案外、予想していなかった配達員が配達した時は心が踊るよ」
ケン、ソファに背をつけて
紅茶に反射する平子の顔を見る。
平子「働き方改革ってこう言う意味だったんだなって感心に思ったよ、業界全体が“配達ロワイヤル”に夢中だよ」
平子は淡々とケンを見て話す。
ケン「教えてくれますか……」
ケンは胸に手を置く。
ケン「本当に、コレが面白いのかって」
徐々に顔を上げて、平子を睨む。
平子は表情変えず。
平子「まあ、それも含めた娯楽さ……
仕事は楽しくなくちゃね、私の会社も子供向けの玩具を販売したりするから、学ぶ事があるよ」
ケンは立ち上がり玄関ドアへ向かう。
俯く目、何も言わず。
平子「そうだ今日、君が届けてくれた物を
君に見て欲しいんだ……」
と平子、平然と机の下から荷物を取り出す。
ケン、振り返らず動く。
平子「もしかしたら、配達中に壊れてしまったかもしれないけど……」
ケン、玄関ドアにつく。
ドアノブに手を掛ける。
その時、後ろから音色が聞こえてケン振り返る。
平子がケンに見せびらかす様にして
オルゴールを持つ。
そのオルゴールからリンリンと音が流れる。
平子「これは今は亡き母が作った物なんだ」
オルゴールの音がケンの耳に入る。
ケンは涙を流す。
鼻を啜る音とオルゴールの音。
平子「君が命懸けで送り届けた荷物は少なくとも私の大切な物なんだ……仕事ってそう言う物さ」
ケン、涙を袖で拭う。
平子は目を閉じて音を聞いている。
平子「もう1人の配達員の中身も
いつか届くといいな」
平子が小さく声を震わせて呟く。
ケン、ドアノブに手を掛けて
扉を半分、開ける。
ケン「安心して下さい……必ず届きますよ」
ケン、開けながら平子に向けて。
振り返らず静かに扉を閉める。
中年男「はぁはぁ……やっと、やっと着いた」
奥の3524室が開き、中年男が直立。
酷く汗をかいており、フラフラと歩く。
ケンは頬を緩める。
ケン「お疲れ様です……」
と中年男とすれ違い様に深く頭を下げる。
INT.自宅(食卓)―夜中
ケン、千鳥足でジャンパーを脱ぐ。
伏目で、欠伸を大きくする。
母「お帰り……ケン……」
食卓に座る母。
ケンは一瞬、止まる。
ケン「起きてたの?こんな夜に?」
手に持ったジャンパーを椅子に。
ケンは母と迎えになる様に座る。
母「……だってほら、こんなに月が綺麗」
母、窓の方を向いて。
月明かりが暗闇を照らす。
ケン、その明かりを見る。
ケン「そ……うだね」
食卓の上を見るとラップの掛けられた
ご飯、唐揚げ、味噌汁。
ラップ越しから湯気が出ている。
ケン「夜ご飯……」
母「なあに、母さんの夜食だよ」
母は静かに笑ってケンに笑顔を見せた。
ケン「そっか……んでも、凄いなタイミング」
ケン、ラップを外しながら。
母は変わらず頬杖付いて窓の方へ。
母「母さん……見てたよ“配達ロワイヤル”」
ケン、味噌汁に口をつけていた。
少し咽せるケン。
ケン「え?教えてなかったのに……」
母は頬杖付いたまま、ケンの顔を見て
母「母さんの為なんでしょ……
今日まで辞めなかったの」
ケン、箸も全て置いて母を見る。
母「よく頑張ったね……」
配達員がバトルのロワイヤル的な事をする
って言う設定は3年前から、ずっと温めていた物だったので作り上げれて良かったよ!
細かい世界観の描写やキャラ感情描写あんま出来てないのが課題かなぁ。
まあ、後は見た人のフィーリングに一任します!